ハイスクールD×D ~神殺しの王は赤き龍の帝王となりて王道を征く~ 作:ガーネイル
それはそれとして、今回はタイトルから分かるように『ありふれ』要素が入ってきます。本当は入れる予定はなかったはずなんだけどなぁ。読んでる作品の影響を受けすぎた……。
前置きはこれくらいにしてそれではどうぞ。
和希がアティと出会い、神殺しに至る前。コカビエル戦の後に知った行方不明となっている友人たちとの出会い。どこにでもあるような、そんなありふれた出会いの話。
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過去に遡ること二年ほど前。とある大型書店の中。
宗教や歴史、神話などの本が置かれているコーナーに少年はいた。顔立ちこそ幼いがその少年が後に色んな種族や敵と大立ち回りをする風峰和希その人である。
そんな彼の右手には既に何冊か本を抱えられている。ひとしきり往復して悩んだ後に彼はそのコーナーから離れる。レジに向かい、本を購入し終えた顔はホクホク顔で満足そうである。そんな彼が帰路に着いた時一件のゲームセンターの前を通ったその時、彼の視界にいかにもヤンチャしていますとのを体現している青年達に絡まれている老人とまだ小学生になっていない位の少年。そして庇うように気弱そうな少年が二人の前で土下座しているのが映った。
通りを歩く人々は巻き込まれたくないのか素通りしている。触らぬ神に祟り無し。まさにその通りだろう。好き好んで厄介事に自ら首を突っ込む者などそうそういないだろう。
だが、買い物を終えた和希は一つため息を着いて買った本を路地の隅に置き、青年達の元へと歩いて行く。そして土下座している少年の隣に立ち、青年達を見上げる。
「お前ら何やってんだよ」
「おいおい、坊主。正義の味方気取りか? あんまり生意気な面してると痛い目みるぜ」
小馬鹿にしたように茶髪の青年がそう言う。あまりにもベタと言うべきか、そんなことを宣う彼に少年は真っ向から刃向かう。
「子供老人に絡むような人間に負けないよ、俺は」
「「あぁ!?」」
少年の言葉にカチンときた青年が声を荒げるが、そんなものに取り合うことはせず、隣の少年に声をかけ、手を貸して立ち上がらせる。
「大丈夫か? 君はそこにいるおばあさんたちと一緒に居てあげて」
「で、でもそれじゃあ、君が!」
土下座をしていた少年が青年達に刃向かおうとする彼の心配をする。だが、そんな心配を余所にニッとした笑顔を浮かべる。
「大丈夫。俺、結構強いから」
そう言ってガラが悪そうな二人の方に向き直る。
「良い度胸してんな、坊主。いいぜ、お望み通りボコボコにしてやるよ!」
「恨むなら首を突っ込んできた自分を恨めよ!」
そう言って飛びかかってきた二人の攻撃を何でもないかのように避ける。そして腹パンと蹴りを入れ一撃ずついれて伸した後に路地の片隅に寄せる。
そして何もなかったように戻ってくる。
「おばあさん達は怪我はありませんか?」
「ありがとうねぇ。二人のおかげで孫も無事で済みました。出来ればお礼がしたいのですが・・・・・・」
「いえいえ、お気になさらず。自分が見ていられなかっただけですので。な?」
「う、うん。そうだね」
お礼をしたい老人とそれを辞退する少年二人の構図が出来た後に自分たちの代わりにその分孫にいいものを買ってあげてほしいと言って少年達はその場を後にした。勿論、その際に書店で買った本の回収は忘れずに。
しばらくして少年達は駅の近くにあったファミリーレストランに居た。注文した後に和希の方から口を開く。
「そういえば、流れのままにここまで来たけど自己紹介がまだだったな。俺は風峰和希。中学三年。君は?」
「僕は南雲ハジメ。僕も中学三年だよ。さっきは助けてくれてありがとう」
「気にすんなって。でも、南雲君が土下座なんかしてたんだよ」
「僕のことはハジメでいいよ。土下座してた理由・・・・・・だったよね。えっと、僕も最初は首を突っ込む気なんてなかったよ。あの男の子があの不良達の服を汚しちゃってお婆さんがクリーニング代を渡す所までは見てたんだ。でも財布まで取り上げたのが聞こえてきて体が勝手に動いちゃったんだよね」
結果はあんな有様だけど、と。頬を掻きながら恥ずかしそうにするハジメ。話し終えたところでちょうど注文した商品が運ばれてきた為、話を逸らそうと昼食にありつく。
和希はそんな彼に微笑ましいものを見るような表情を向けてから昼食に手をつける。ハジメは和希が持っていた購入済みの本が気になっていたようで内容を聞いたハジメは今日一番の興奮を見せていた。
ハジメの両親はゲームや漫画といったコンテンツで生計を立てている。その影響といえば良いのだろうか、彼自身がオタクというのもあり、神話や伝承、それに登場する生物や武器にもある程度造詣が深い。
和希は個人的にそういうものが好きなわけでゲームや漫画といった二次元的なコンテンツにしっかり触れることはあまりなかった為、ハジメとの出会いは彼にとっても良いものであったのは確かだった。
昼食と雑談をほどほどにしてこの日は解散することになった。また今度の休日に一緒にゲームセンターに行こうという約束を交わして。
時は進み、数日後の休日。和希はハジメたちを助けたあのゲームセンターの前で人を待っていた。和希が到着して数分後にハジメが到着した。
「ごめん、和希くん! もしかして僕が遅刻しちゃった?」
「そんなことないよ。ほんの少し俺が先に着いただけだ。じゃあ、早速入ろうぜ」
和希にとってゲームセンターで遊ぶというのは新鮮なものだった。UFOキャッチャーやガンシューティング、レースゲーム。音楽ゲームに格闘ゲーム。このゲームセンターに置かれている筐体を時間が許す限り遊び倒した。
ちょうど時計の針が十二時を回った頃。お腹も空いてきたということで前回同様、駅の方にあるファミレスで昼食を取ることにした。
この時から既にトラブルに愛されていたと言うべきか、そうは問屋が卸さない。駅に着いたまではいいのだが、二人にとって見覚えのある男二人が今回は女の子に言い寄っているのを見てしまった。どこからどう見ても少女達は困っているのが分かる。まだ出会って友人となってから間もない二人だが、アイコンタクトで意思疎通を取る。
(どうする?)
(まぁ、ある意味見知った顔な訳で・・・・・・)
二人は一つため息を吐く。なんだがデジャヴだなぁ、などと思いながら歩みを進める。
「つい先日ぶりだな、あんたたち」
「「あぁん?」」
ガン飛ばしながら振り返った先に居るのは自分たちを伸した少年と老人を庇った少年。数日前の出来事を思い出し、一瞬で及び腰になる。
「「えっと、すいませんでした!」」
あまりにも呆気のない事態収拾に呆然とする四人。和希とハジメもまさかこんなことになるとは思いもしなった。このどうしようもない状況に沈黙が流れ、周りの喧噪だけがこの場を支配する。一刻も何とかしようとハジメが口を開いた。
「何もなったようでよかったよ。それじゃあ、僕たちは行く場所があるから」
そう言って和希とハジメは再びアイコンタクトを交わし、この場を離れようとした。だが、思わぬ所からストップがかかる。
「あ、あの!」
声を出したのは黒髪をまっすぐに下ろしている少女だ。勢いよく声をかけたのは良いがどう続ければいいのか分からず、口を開いたり閉じたりしている。その隣で濡羽色の髪をポニーテールにしている少女が一つ息を吐いて助け船を出す。
「もし、よかったらお礼をさせてくれないかしら?」
「いや、そんなつもりで助けた訳じゃないので」
そう言って立ち去ろうとすると待ったをかけた少女が口を開く。
「そ、それじゃあ、友達としてお誘いするのはだめですか? 助けてもらったのにこんなお願いをするのは変だとは思うんですが・・・・・・」
一歩も引こうとしない少女に折れたのはハジメの方だった。
「ねぇ、和希くん、駄目かな?」
「・・・・・・分かったよ」
そんな二人の会話を聞いた少女はとびきりの笑顔を浮かべる。
「ありがとう、ございます! 私は白崎香織です。隣にいるのが・・・・・・」
「八重樫雫よ。よろしくね」
「えっと、僕は南雲ハジメです。でこっちが」
「風峰和希だ。友人としてということなら堅く苦しいのは無しの方向でよろしく」
ざっとお互い名乗り終え、和希とハジメ的には当初の目的だったファミレスに向かった。そこでの会話で全員が同級生であることが分かったり、数日前の出来事を実は目撃していたということが判明したり、和希とハジメの友人づきあいがそこから始まったという話をした。 そんな会話の中で和希は既に香織がハジメに対して若干の熱を持っていることを察した。自分に対するあれこれは鈍いくせに他人の機微に対しては察しが良すぎるそれは生前のことも相まって既にこの時点で完成していたのである。
ファミレスを出た後、和希は香織に対して助け船を出すことにした。
「そうだ、ハジメ。この後の予定は今度で良いから白崎に予定があるならそれに付き合ってやれよ」
「そうね、南雲くん。香織のことお願い出来るかしら?」
「「えぇっ!」」
ハジメと香織は和希からの思わぬ言葉に動揺する。こんなに驚かれると思っていなかった和希はケタケタと笑いながら、また今度な。とその場を後にする。
今度は香織と一緒に来ていたはずの雫もそう言って和希の後を追っていく。彼女もまた、香織の想いは知っているのである。
そんなこの場に残された二人がどんな関係に至るのか。それが分かるのはもう少し先の話だ。
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和希に追いついた雫が質問を投げかける。
「香織のこと、知っていたの?」
「いや、知らない。ただ、あいつのハジメを見る目に熱が入っているような気がしたからそういうことか? って思っただけだ」
「そう……。周りのことよく見てるのね」
「普通だよ、それくらい」
「……そういうことにしといてあげる。じゃあ、風峰君。香織の代わりに付き合ってくれないかしら?」
「はい?」
思いも寄らない提案に対し、今度は和希が呆気にとられるのであった。そんな彼の表情を見てクスクスと雫が笑う。
「風峰君でもそんな顔するのね、何だか意外な気がするわ」
「一体、八重樫さんは俺を何だと思ってる?」
「そうねぇ・・・・・・。年齢の割には落ち着きがあるから見た目と中身が一致してない中学生、かしら」
雫が人差し指を顎に当てながらそう言う。呆気にとられたままの和希は声にこそ出さなかったが、そう言われたことに対し、内心驚愕した。だが、彼女の言ったことは事実であるため、否定できない。
それならばと、まるで良いことを思いついたかのようにハッとした顔をしてから雫の前に立ち、手を差し出す。
突拍子もない少年の行動に雫は怪訝な表情を浮かべる。
「じゃあ、俺がお前を守るよ。さすがにいつでも、どこでも。なんて漫画みたいに格好良いこと言えないけどさ。お前が、本当にどうしようもない時は俺が何とかしてやる。約束するよ」
「……何よ、それ。そこまで言うならちゃんと最後まで格好つけなさいよね。でも、ありがとう」
そんなことを言われると思ってもみなかった雫は顔を背けながらもお礼を言って差し出された手を取る。その顔は、熱があるかと聞かれそうなくらいには紅みを帯びていた。
実は彼女の実家は道場というのもあり、雫もまたかなりの実力者ではある。だが、そんなことを知らずとも、良い笑顔を浮かべながらも、守ると言ってくれた彼の言葉が嬉しかった。数年前から共に過ごし、恋心を抱いた少年にも似たような事を言われたことがある。だが、そんな少年よりも目の前に居る和希の言葉はずっと真っ直ぐで、彼女自身のことを思っていた。
出会ったのが今日で、そんなに長い時間を過ごしたわけでもない。それでも和希という人間が信用に足るかどうか。どんな人柄であるのか。ハジメからの話もあり、ある程度は理解できたつもりだ。それに彼女自身もまた、年頃の女の子なのである。そういうことを言われて嬉しくないわけじゃない。幼馴染みの少年を想っていた時以上に体の奥底からあふれ出るようなこの熱(想い)は一体何なのか。
その熱を誤魔化すように走り出す。急に走り出したことに驚くが和希の手が離れることはない。
「時間は有限なの。早く行くわよ!」
駆け出しながらそう切り出す彼女の顔は太陽のようにまぶしいものだった。
彼女が恋焦がれ、再会を強く望むようになるのはほんの少しだけ遠い未来の話。
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高校一年から、高校二年に上がる春休み。和希がイタリアに行く数日前。少年は約一年半ほど前に出会った友人、南雲ハジメらと共にカラオケに行こうということで遊びに来ていた。 昼過ぎに駅前の待ち合わせ場所に集合し、目的地に向かう途中、ハジメが和希に声をかける。
「和希くん、一つ言いたいこと、というか報告があるんだけど……」
「報告?」
ハジメはそわそわし出し、言い澱む。それに伴いというか、彼の隣を歩いていた香織も釣られて落ち着きがなくなる。そんな二人を見て何となく察したが、黙ってハジメの言葉を待つ。
「えっと、あのね。バレンタインからなんだけど白崎さん……じゃなくて香織と付き合うことになったんだ」
「やっとか……。おめでとさん」
「「……え? 和希(風峰)くん、分かってたの?」」
驚かれることもなく、すんなり受け入れられたことに戸惑いを隠せない二人。まだ付き合い始めて数ヶ月しか経っていないのに息が合っているカップルに苦笑しながら口を開く。
「まぁ、初めて会ったあの時から白崎がハジメのことを好きなのは分かってたからな。押されるままに付き合うまですぐかなって。こんなに時間がかかるとは思わなかったけどな」
「「そうなんだ……」」
「風峰君もあまりいじめないであげて、香織なりにようやく勇気を出して付き合えたんだから」
まるで手のかかる妹を持っている姉のようなことを言う雫。そんな彼女に、結果的に付き合えたんだからいいじゃん。と抗議を入れる香織。それをぞんざいに扱う雫の姿は端から見ても姉妹のようだった。
そして、和希は少し悪い笑顔を浮かべ、白々しい言葉をハジメに投げかける。
「あ~あ、それにしてもまさかハジメに恋人が出来るとは思わなかったなぁ」
「だ、大丈夫! 和希君にもすぐに恋人が出来るよ!」
からかわれていると分かっているのだが慌てながら励ますハジメ。なんだかんだ二人のやりとりを聞いていた香織は雫の方にちらっと視線を投げる。投げた視線の先に居る少女は顔を紅くしながらもそっぽを向いている。
「そんなことないだろ。まぁ、ただ、そのうち出来ればいいかな」
少女二人の様子に気付かず、和希本人も本気で言った訳ではない為、ハジメの言葉は軽い慰め程度に受け取る。
ハジメは和希に見えない位置で一喜一憂している少女とそれを励ます少女の姿を見て苦笑するのであった。
目的地にたどり着いて真っ先にマイクを取ったのは香織だった。選曲はハジメの影響もあるのだろうが、がっつりアニソン。意外な選曲に和希は驚くが、雫は事もなさげにしていたため、このことを知らなかったのはこの場で和希だけだった。
プロ顔負けの歌声を披露する香織が次に使命したのは恋人となったハジメではなく、その隣に座る和希だった。
「……俺?」
「うん。だって風峰くんがこういうところに来るのってあんまり想像できないし、ちょっと面白そうだから」
混じり気なくそう言われた和希は曲を入れてマイクを手に取る。まず、ピアノの音が流れ、そこからギターなどの他の楽器隊も入ってくる。表示された曲のタイトルは――――。
今回、カラオケに行くと言うことで和希が動画サイトで曲を探している時に見つけた歌。その歌詞は転生する直前に見た養父から受け継いでしまった正義の味方という夢を叶える為に奔走した紅い外套に身を包んだ青年のことを幻視せずには居られなかった。
和希の歌を聞いている三人がその青年の人生を知ることはまずないだろう。だが、その曲調に、歌詞に胸を撃たれた。
歌い終えた和希はマイクをハジメの前に置く。
「和希くんはこの歌のモチーフを知ってるの?」
「どうなんだろうな。俺はただとある人の生き様に似ているなって思ってな。つい覚えちまった。……そんじゃ、次はよろしく」
そんなこんなで時間はあっという間に過ぎていった。雫がアイドルの曲を歌ったり、和希とハジメが一緒に歌ったり、カップルが一緒に歌ったり、楽しい空間だったが、終わりを迎えるのはあっという間だった。
和希がイタリアへ出かけることも知っている為、遅くなりすぎない時間で解散した。
その数日後、和希はアティと出会い神殺しになり、休みを終えた後、ハジメ達は行方不明となった。そんな彼らが再会するまで、あと……後の話である。
こんな感じで締めさせていただきます。次回かその次あたりで本編に戻ろうと思います。
色々話したいことはありますが、上手くまとまらないので終わろうと思います。
これからもよろしくお願いします。