ハイスクールD×D ~神殺しの王は赤き龍の帝王となりて王道を征く~   作:ガーネイル

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 ストックの一つを下しました。
 続けるにしても不定期であることに変わりないのでご了承ください


1.神殺し

 ルクレチアは一人でソファの上で寝転って猫と遊びながらつぶやく。

 

「頑張れよ、少年。私が見たところ。お前もまた、大智と同じ才を持っている。……女たらしのな」

 

 ルクレチアとの会話を終え、夜になった。ルクレチアが呟いたことを知らず、和希はアティといっしょにいる。客室で和希のいる日本について話している。

 アティが持っている日本の情報は全て古く現代社会とは無縁ともいえる江戸や明治くらいの知識だった。特に食いついてきた話は学校の話。どのようなことを勉強しているかが気になるとのこと。予想以上の食いつきに和希はなぜこんなことを気にするのか聞いてみる。すると、アティは自分が家庭教師をやっていったこともあり、そういうことには興味がある。という何とも言えない答えが返ってくる。アティが眠りに着くまでそんな時間が続いた。

 

 そして朝、起きた瞬間は晴れていたはずだった。が、突然強い地響きがする。そして雨が降り出す。和希が外に出ると霧がかかっている。

 アティは和希より先に外にいるがいた。が、和希には気付いていない。アティの視線は一定の位置から外れない。和希はその視線の先を見ると巨大な男がいた。そしてアティが男に話しかける。

 

「お待ちください!」

 

 アティの声は届いたらしく、こちらを振り向く。

 

「何だ、人の子の分際で神の前進を止めるとは僭越であるぞ」

「非礼をお許しください。あなたは昔、フェネキア人が崇めた神の王。メルカルト様でございますか?」

「ほぉ。今の世にも古き王の名を知る殊勝な者がいたか。……儂こそメルカルト。かつてこの島。いや、この海全てをしらしめた王者である!」

 

 改めて自ら名乗りを上げるメルカルト。突然雷が飛来し、メルカルトの左腕に直撃する。

 

「雷?」

「サルデーニャ島にはあまり雨は降らないみたいです。ということは……」

 

 和希は雲の合間から何かがいるのを見た。メルカルトも同じものを見ている。

 

「相変わらず器用に姿を変える奴よ。急がねば……」

 

そう言ってメルカルトは再び前進を始める。

 

「和希くんは逃げてください」

「逃げてくださいって。アティさんはどうするんですか!?」

「彼らの争いを止めます。メルカルトさんは地中海で一番強い神様らしいです。そんな彼が本気で戦えばこの島が消えてしまいます」

「でも、どうやって止めるつもりですか?」

「子供たちの未来を守るのが大人の役目ですから」

 

 そう言うアティの言葉と表情は一つの覚悟を持ったものだった。そんなアティに和希は何も言うことが出来なかった。

 

 

 

 

 アティが運転する車には和希も一緒に乗っている。アティは運転しながら和希のことを心配する。

 

「本当に危険ですよ。もしかしたらあなたを助ける余裕がないかもしれません」

「大丈夫です。それくらい分かっています」

 

 そう言いながら和希は今、手に持っている石板。昨晩にルクレチアからもらったプロメテウス秘笈を見る。思い返すのはアティが寝た後にルクレチアと交わした会話。和希がアティと一緒にいる理由の一つ。

 

「そう。神々を欺くトリックスター。人間に炎と英知を与えた英雄、プロメテウス。その力がこれには含まれている。神の権能を盗み、我が物として使える力がある」

「権能?」

「神の能力。力だ。そこには既に神の化身、白馬の力が込められている。詳しいことは言えないがアティは何でも一人で背負い込む性格でな。一般人である少年を巻き込むことに抵抗があるのだろう」

 

 

 和希は確かに何も知らない一般人だ。それでも、和希は他人に事を任せて自分だけ逃げるということは出来なかった。それは前世から来る脅迫観念に近いものかもしれない。でも、例え、何もできないとしても知ってしまったからには無視できない。それに賭けに等しいとはいえ、プロメテウス秘笈が和希の手元にある。それが何かの手になるかもしれないのならそれを使う。そう考えている。

 

「見てください」

「何もいない?」

 

 アティに促され外を見ると車と並走するように大きな鳥が飛んでいる。だが、上空には何も飛んでいない。

 そもそも悪天候の中、影が発生していることがおかしい。

 アティは自分なりの見解を和希に教える。

 

「おそらく、先日の猪と同じですね。昨日は魔獣と言いましたが、正確には神獣ですね。きっと一つの姿になるために集まろうとしているのです」

 

 道が開け、前方にはメルカルトがいる。その傍らには昨日、和希が話をした少年がいる。手を腰に当てながら少年がメルカルトに話しかける。

 

「久しぶりだな、メルカルト」

「待ちわびたぞ……」

 

 メルカルトの声が辺りに響き渡る。そしてメルカルトと和希が同じ名を口にする。

 

「「ウルスラグナ」」

「知ってたんですか?」

「古代ペルシャの軍神にして光の神」

 

 そこまで言って再び、ルクレチアの言葉を思い出す。

 

『強風、牡牛、白馬、駱駝、猪、少年、鳳、牡羊、山羊、そして黄金の剣を持つ戦士。十の化身を持つ常勝不敗の軍神、勝者。これに閉じ込めてあるのはその十の一つ、白馬。ウルスラグナはわざとお前に武器を与え、戦いを楽しもうとしている』

 

 アティは車を止め、先に神々の元へ向かう。和希を遅れて車から出てアティを追いかける。

 一方、ウルスラグナとメルカルトは相対したまま動かない。ウルスラグナが口を開き、メルカルトに話しかける。

 

「以前に立ち合うた時の傷、まだ癒えぬようじゃな」

「フン、儂を蘇らせてまで強者との戦いを望む貴様の思い上がり。手負いを理由に見過ごすわけにもいかん」

「楽しみだ」

 

 そう言ってから挑戦的な表情を浮かべ、右手を上に掲げる。すると、風が巻き起こる。そして上空から駆けてきたのは山羊と鮮やかな赤い鳥。これらが渦巻いた風に飲み込まれ、ウルスラグナの元へと入っていく。

 

「これで残る化身はあと一つ」

 

 そう言ったのが開戦の合図だったのか、メルカルトが右手にもつ棍棒を振り上げる。その瞬間。アティの声が二人の間に届く。

 

「お待ちください!」

「あの魔女は……」

 

 アティは神々に見られながらも恐れることなく胸を張り、言葉を口にする。その胆力とでもいえばいいのか、度胸はなかなかのものがある。

 和希は前世にも似たような女性がいたような気がすると思いながらアティを追いかける。

 アティに言葉を返したのはメルカルトだった。

 

「ふむ、この地はもはや儂らの雌雄を決するための戦場。諦めろ、人間」

「魔女よ、神にあらがわんとする心意気、あっぱれじゃ。が、分を弁えよ」

 

 ウルスラグナがアティの元へ雷を落とす。アティはそれを危なげなく跳躍してウルスラグナが落としていく雷を避け続ける。五発、六発と順調に避けていくが徐々にスパンが短くなり、捌ききれなくなってくる。

 そしてついに直撃コースで避けられない一撃が飛んで来る。和希がアティを抱きかかえ横に飛んで回避する。

 

「和希くん」

「あの時の……」

「こっちだ!」

 

 ウルスラグナが和希を視界に入れる。そしてウルスラグナは和希がつい昨日会った人間の子供だと理解する。

 和希は起き上がりアティの手を取って走り出す。今の緊迫した状況に和希は年上に対して敬語ではなく、普段の言葉遣いが表に出ている。

 和希がアティの手を引きながら走っている間に出てくるのはまたもルクレチアとの会話。

 

『今のお前はその不思議な石板に、神々のいるこの未知な世界に心が躍っている。違うか?』

 

「(そんなの当たり前だろ!)メルカルト! ウルスラグナの白馬の力はここにある。どうだ、手を組まないか? 俺たちを守ればあいつが完全に戻ることはない!」

 

 和希はメルカルトに一つ提案を持ちかける。その提案は上手くいく保障なんてどこにもない。和希にとってこの提案は分の悪い賭けでしかない。

 和希の顔には僅かながら笑みが浮かんでいる。言葉の節々にも挑戦的なところが見受けられる。

 メルカルトは和希の方を無言で見続け笑い始める。

 

「貴様、神である儂を使おうというのか」

「神と取引するなんて初めてだ。でも悪くないと思うんだが、そこのところはどうだ?」

「いいだろう。面白い、面白いぞ人間! フン!」

 

 左手で持つ鉈をウルスラグナに振る。ウルスラグナはそれを軽々と避ける。

 ウルスラグナが和希を見ている。ウルスラグナの顔には笑みが浮かんでいて楽しそうである。メルカルトから視線を外し、和希に狙いを定める。

 

「どうやら我の見立てに狂いはなかったようじゃ。楽しませてくれよ!」

「和希くん!」

 

 そう言ってウルスラグナは再び右腕を上に掲げ、雷を落とす。

 和希は回避の動作も何も起こさない。

 雷が和希に降りかかる前に見えない何かに遮られ、霧散していく。ウルスラグナが視線をメルカルトに戻す。

 メルカルトは笑いながら応える。

 

「神の加護というやつだ。感謝しろよ、人間」

「これからどうするつもりですか?」

「考えてない。なるようになるさ」

 

 ウルスラグナがメルカルトに気を取られている間にアティは和希が次にどうのように行動するかを聞く。それに対し、和希の答えは衝撃的なものだった。

 考えてない。その一言だけだった。でも和希の顔に浮かんでいるのは笑顔。どこにも不安げなものはどこにもない。

 アティはそこに疑問を抱いた。

 

「どうして笑っているんですか?」

「何でかな。自分でも分からないくらいこの瞬間が楽しいんだ」

 

 ウルスラグナの顔には今までより深い笑みが浮かんでいる。戦いというものを心の底から楽しんでいる。

 ただ、その姿は見方を変えれば楽しいことが好きな子供のようにも見える。ウルスラグは今までにないほど大きな声を上げる。

 

「さすが、我の見込んだ子! じゃが、我を負かすにはまだ足りぬ!」

 

 そう言って左手を上に掲げる。次に現れたのは雷ではない。横に薄く光が伸びる。その光が形を帯びていく。そしてその光は黄金の剣になる。

 次の手は打たせないとばかりにメルカルトが右手に持つ棍棒を振り下ろすが、それより早く和希の方へ肉薄していく。メルカルトが棍棒を振り抜いた時にはもうその場にウルスラグナがいない。

 そしてウルスラグナが剣で切りかかろうとするが、神の加護に阻まれる。が、それを切り裂き、徐々に侵入してくる。

 

「何!?」

「忌々しい黄金め!」

「黄金の剣……もしかしてあの剣には神の力や神格を切り裂けるのでは?」

 

 アティが一つの考察を和希に告げる。和希はその考察に納得がいった。ウルスラグナは常勝不敗の軍神。そんな力があっても不思議ではない。

 

「我、敗北を求めたり! 古い王よ、人の子よ、もっと我を楽しませよ!」

「和希くんは逃げてください!」

「秘笈は俺が持ってる。使える手は使えるのが俺なんだ」

 

 アティはルクレチアの屋敷に出る前と同様に逃走を促すが和希は一歩も動かず譲ろうとはしない。和希はまだ諦めていない。

 和希の言葉にアティは怒鳴るように言う。それでも和希の顔にはどこか笑みが浮かんでいる。どんなピンチな状況でも楽しむそんな感じすらする。

 

 

「何を言っているんですか! それでもしダメだったらどうするんですか!?」

「何もしなくても命を落とす。違うか? ならやらないで後悔するよりやって後悔しなきゃ。それに、そんなことしたら俺は、自分が許せなくなる。今まで自分がしてきたことを無駄にしたくないんだ」

「和希くんはエピメテウスみたいな人ですね」

 

 突然言われたことにキョトンとする。だが、自分がそう言われるとは思っていなかった。知っているはずなのにおうむ返しのように名前を繰りかえす。

 

「エピメテウス?」

「愚か者、バカ」

 

 そう言うと、アティは和希の頬に軽く口付けをして和希から距離を取る。

 

「おまじないです。思いっきりやってください」

 

 和希はその言葉に対し、頷いて答える。

 その瞬間、ウルスラグナが和希達にかかっているメルカルトの加護を切り伏せ、ガラスが割れたような音がする。

 それに合わせ、和希は秘笈を前に掲げる。すると、秘笈からは白馬を象っている炎が雄叫びと共にウルスラグナの元へ駆けていく。

 至近距離で白馬の炎に巻き込まれるウルスラグナ。

 

「はああぁぁ!」

 

 和希は叫びながら秘笈を掲げ続ける。神の化身である白馬から発生している衝撃は凄まじい。和希はそれに負けないよう堪えていた。

 白馬が秘笈から出ていき、炎が止まる。ウルスラグナは白馬の炎に包まれている。

 和希は弾かれたように後ろに倒れ、アティが和希の元へ駆けよる。

 

「我自身が、我の化身に負けるにはいかぬ!」

 

 和希は咳き込みながら立ち上がる。その目からまだ戦意は失われていない。和希はボソッと言葉を零す。

 

「盗んだ。アイツの剣を。黄金の剣を!」

 

 その顔は勝利を確信したかのような笑みを浮かべている。そしてその言葉と同時に最初から何もなかったかのようにウルスラグナの手から黄金の剣が消える。

 ただ、盗んだのはいいが使い方が、どうすれば使えるのか和希には分からない。秘笈に込められたわけではないから尚更だ。

 

 

「最後の一手。どうすればいい。どうすれば使える!!」

 

 叫ぶようにそう言う。

 それを無言で見ていたアティはさっきと同じよう和希の元へ近付く。が、さっきとは違い、両手を和希の頬へ添える。和希は少し、困った顔をしている。そしてアティは頬を赤く染め和希にキスをする。

 ただ、それはただのキスではなく、教授の術をかけている。和希の頭の中に改めてウルスラグナの知識が入っていく。

 

 そして太陽の光が昇るのと同時に眩い光が一帯を包み込む。

 世界が変わる。サルデーニャの一部ではない。黄金の大地に無数の剣が生えている。夜空の中に無数の黄金の剣が浮いている。それはまるで黄金の剣で出来た墓標のようだ。和希の手にはさっきまでウルスラグナが持っていたものと同じものが握られている。

 上を向いて宙に浮いている黄金の剣の全てがウルスラグナの方へと向きを変える。その中の一本がウルスラグナに突き刺さり、ウルスラグナの体はさらに炎に包まれる。常勝不敗の軍神、勝者。そう言われる神が人間に負けた瞬間だった。

 

 

 

 その者は覇者である。天上の神々を殺戮し、神を神たらしめる至高の力を奪い取るが故に。

 その者は王者である。神より簒奪した権能を振りかざし、地上の何人からも支配されえないが故に。

 その者は魔王である。地上に生きる全ての人間が彼に抗う程の力を所持できないが故に。

 その者は神殺しの王(カンピオーネ)である。

 




 次から本編に入ります。こんなのアティじゃないも思う方もいらっしゃると思いますがお許しください。サモナイ5のアティ先生しか知らんのです。
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