ハイスクールD×D ~神殺しの王は赤き龍の帝王となりて王道を征く~   作:ガーネイル

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 最後のストックです。
 また当分投稿できません。
 本編に入るのは今回ですが、中盤より少し後ろ辺りになります。


2.それぞれの事情

 ウルスラグナとの戦いを終えた時、和希は霧に包まれた場所で横になっている。どこからともなく響くように声が聞こえる。

 

「エピメテウスと私が残した呪法、愚者と魔女の落とし子を産む暗黒の生誕祭。神を贄として成功する簒奪の秘儀」

 

 和希が目を開くと長いピンク色の髪を二つに分けた幼女がいた。

 幼女は和希が目を覚ましたことも気にせず、顔を覗き込みながら何かの詩を読むような話し方で話を続ける。

 

「つまり、全ての条件が揃ったの。まさに天の采配ってやつね」

「何の話だ」

「まぁ、簡単に言うと貴方は相打ちで神殺しに成功した。あのウルスラグナに」

 

 話が読みこめなかった和希が幼女に何の話をしているのか聞くと、今までの話し方とは打って変わり、元気よく話す。今までの話し方は猫でも被っていたのだろうか。

 ただ、目の前にいる幼女が誰なのかが分からない。

 

「殺した? ってか、あんたは誰だ」

「全てを与える女、パンドラ。あなたはカンピオーネとして生まれ変わるわ。神殺し、王の中の王。カンピオーネ」

 

 

 パンドラが和希に顔を近づけていく。その中で和希の意識はどんどん遠のいて行った。

 和希が目を覚ましたのはルクレチアの家に備えてあるベッド。ぼんやりとした意識の中、ベッドの上で体を起こす。

 遠くを見つめながら何も動かない。おそらくまだ寝起きで頭が働かないのだろう。ややあってようやく動き出す。

 和希は部屋から出ようとフラフラと蛇行しながら歩いて行く。扉を開けるとルクレチアとアティが会話しているところだった。

 

「お、少年。ようやく起きたか、まる二日死んだように寝ていたのだから心配したぞ」

「よかったです、目を覚ましたんですね」

 

 アティは目を覚ましたことに安心したようだが、ルクレチアは普段と何ら変わらない様子で和希に言葉をかける。

 和希はルクレチアから聞いた言葉に一つ引っかかりを覚える。さっき彼女は何と言った?

 ルクレチアは「『まる二日』死んだように寝ていた」と言ったのである。まる二日、つまり和希がウルスラグナと対峙してから二日経過していたのである。

 

「まる二日!?」

「あぁ、そうだぞ。ウルスラグナと戦い、倒れたお前をアティが連れてきてれくれたのだ」

「そう、なのか……。アティさん、ありがとうございます」

「和希くん、敬語じゃなくていいですよ。ウルスラグナと戦っている間もそうだったじゃないですか」

 

 

 アティにそう言われ、思い出す。あの時は必死で気にしている余裕はなかった。だがそれも当たり前である。戦場で余裕を持てる者などいないだろう。余裕でも油断でも持ったら最後。待っているのは『死』だけなのだから。

 アティはそれを知っている。何故なら、彼女は家庭教師である前に軍人である過去を持っているのだから。

 だからこそアティは気になった。たった十六、七の少年がそれを知っていることだった。和希は贔屓目に見てもどこにでもいる高校生に見える。だと言うのに、あの時に和希から感じたそれは普通の十六、七歳の男の子ではない。考えても分からないアティは和希に聞くことにした。

 

「和希くん。あなたに聞きたいことがあります」

「何?」

「あなたは戦場にいたことがありますか?」

 

 アティは改まって和希に質問した内容は戦線に参加したことへの有無。

 和希が戦場にいたかどうか。この世界ということで括れば答えはNoである。だが、前世のことも含めるとしたらYesだ。

 アティが聞きたいのは誤魔化しなどではなく、事実。

アティへの質問の答えは一つだ。

 

「あるかないかで言ったらYes。だが、この世界ではなく、前世。この世界に生まれる前という条件が付く」

「前世、ですか?」

「あぁ。俺は前世で戦場を走り回った。早く戦いを終わらせる。それだけの為にいくつもの戦場を駆け抜けた。相手が強いとか弱いとか関係ない。偽善と言われても構わない。それでも俺は皆に幸せに生きてほしかっただけなんだ。それで無理が祟ったのかな、それで最期は戦場で立ちくらみを起こして致命傷。それでこの世界に転生したんだ。ついさっきまでは普通の高校生だったさ」

 

 アティはその説明で自分が危険でも逃げようとしない和希の人となりをそれなりに理解した。本人は理解していないだろうが、皆が幸せに過ごしてほしいという思いもあるが、格上の敵と戦うのも好きなのだろう。後者のことに関して、恐らく和希は気付いていない。本来神殺しという大きな偉業は心の底から戦いが好きな者にしか達成できないのである。一方、ルクレチアはまだ何かを考えている。そして次はルクレチアが質問した。

 

「ならば、少年。お前が持つその力は何だ? ウルスラグナとは違うまた別の力。想像を現実のものへと昇華する力だ。それも以前から持っていたのか?」

 

 和希でも知りえない未知の力。それを視ることが出来たのはルクレチアの魔女としての持つ力の一端。

 

 

「そんなものは持っていない。使ったことがないからな」

「ならば、一度試してみよ。おそらく最も作りやすいものは剣の類であろうな。自分が今、必要とする剣を思い描くのだ。そして自然と思い浮かんだ言葉を口にしてみよ」

 

 和希は一度頷き、目を閉じる。頭に思い浮かんだものは前世で使い、自分の半身とも言える剣。それが脳裏に色濃く浮かび上がる。

 和希は手を真っ直ぐに掲げ思い浮かんだ言葉を口にする。そしてその言葉は奇しくも守護者、錬鉄の英雄と呼ばれた者と同じものだった

 

投影(トレース)開始(オン)

 

 言葉を紡ぐと同時に和希の手の中に現実のものとして現れる。

 和希とアティは本当に出来たということに驚き、ルクレチアはやはりな、言いたげに納得した顔で頷く。と

 和希が作り出したのは日本刀に近い形状をしていた。

和希は剣を消す為にはどうすればいいのか、悩むがすぐに解決する。

 

投影(トレース)解除(オフ)

 

 そう唱えると剣は何もなかったように消える。

和希に関する一連のことが終わる。すると、アティが「それでは」と言い、自分の過去を話し始める。

 アティもこの世界ではなく、異世界の住人だ。ただ、和希のように転生したわけではない。強いて言うなら異世界訪問だろうか。

 彼女が元軍人であること、今は家庭教師だったこと、そして召喚術というのを使え、過去に何をしてきたかということ。この世界に来てから各地の伝承や神話。一般常識などを調べていたことを伝える。

 和希は神々との戦いのときに発揮していた彼女の身のこなしに納得する。そしてこれからの話になる。

 その中でアティが和希に着いてくると言う話になった。そして和希がいる学校の先生になることのもいいと思ったらしい。

 だが、アティはこの世界で必要な戸籍、国外に出る時に必要なパスポートを持っていない。つまり外へ出る方法はアティの使う召喚術。彼女が中型の竜を召喚し、それに乗る。という方向で話は決まった。

 

 それから一週間の間、和希は二つ目の権能を手に入れる。ケルト神話の神王ヌアダから簒奪した権能である『切り裂く銀の腕(シルバーアーム・ザ・リッパー)』。握ったものは全てを切り裂く魔剣に変化させる。この権能は使用中、右腕がヌアダの義手のように銀色に変わり、切ることに特化した権能である。

 

 サルデーニャの地を離れ、何時間経過したか分からないが、ようやく日本に到着する。

 携帯を見ると春休み最終日の昼だった。和希はアティを案内しながら歩いて行く。アティは初めて見る日本の街並みに興味が尽きないようだった。

 街中にいる人々は和希とアティを羨望の眼差しで見るが、二人は何で見られているか分からず、とりあえず早く家に向かう。

 

「ただいまー」

 

 和希が玄関を開けると奥から妙齢の女性が出てくる。和希の母親である。玄関で和希とアティを目にすると慌てだす。

 それはそうだろう。息子が単身でイタリアに行ったと思ったら女性を伴って帰ってきたのだから。

 

「い、いらっしゃい。か、か、か、和くん。この人は?」

「母さん、落ち着いて。ほら、爺さんの知り合いでルクレチアさんっていただろ。その人の親族で日本に興味があって連れていけって言うから連れてきたんだ」

「え、えぇ。そういうことなのね。和希の母の美奈と言います。よかったら家のようにくつろいで下さい」

「ありがとうございます。私はアティと言います。今日からよろしくお願いします」

 

 美奈が落ち着くのは早かった。最も爺さんの知り合いでその親族ということに納得した部分もあるのだろう。

とりあえず、問題なく和希の家にホームステイすることが決まった。

 この日の夕ご飯は、美奈が腕を振るい豪勢なもので楽しい時間が流れる。アティの部屋は和希の部屋の正面にある。

 元々知り合いが多い和希の祖父がたまに連れてくることがあり、泊まれるために部屋を作ったからだ。

夕飯も終わり、自室のベッドで横になる。すると、二日前のことが浮かび上がってくる。

(これは、あの時の……)

 

 

 黄金の剣を使い終え、和希が倒れている。アティは和希の頭を脚の上に乗っけている。いわゆる膝枕というやつだ。和希が目を覚ますとウルスラグナが宙で燃えている。

 和希が目を覚ましたのに気付き、アティが和希に語り掛ける。

 

「和希くんに教授の術で授けたのはウルスラグナの知識。これが黄金の剣を抜くための鍵のようです。それによって、和希くんは黄金の剣を使えるようになり、黄金の剣でウルスラグナに止めを刺しました」

「見事だ。見事だ、良き戦士よ。勝利の神の権能を簒奪した神殺しよ。何人よりも強くあれ! 再び我と戦う時まで何人にも負けぬ身であれ!」

「ウルス……ラグナ」

 

 そう言ってウルスラグナの身が焼かれて塵になったように消え去る。ウルスラグナは消え、彼が使う十の化身を表している不思議な円盤だけが残り、和希の元まで降りてきて体の中に入っていく。

 この世界で初めて神殺しの王が誕生した瞬間だった。

 

 

 扉がノックされ体を起こす。部屋の外からアティはお風呂が開いたことを伝える。和希は「了解」と答え、脱衣場に向かう。

 私事を全て終わらせ、明日に備えて眠りにつく。

 

 

 

駒王学園正門付近

 

 和希が学校に着くと後ろから声をかける男子が二人いる。それは松田と元浜という名の変態である。

 

「おー、和希! 今日も元気そうだな」

「そう言うお前らはいつも通りだな」

「当たり前だろう。それじゃあ俺たちは行くところがあるからな。またな!」

 

 そう言って走り去っていく変態二人。どうせ彼らは女子更衣室を覗く為なのだろう。和希は一つため息を吐いてから教室に向かう。

 そして神殺しになった弊害というべきか、体質として神を含め、天使や、悪魔。堕天使と言った人外が身近に存在していると体のボルテージが上がっていき、戦いに備えるようになる。

 和希が駒王学園に入った時からボルテージが上がっているのが分かる。この学校に人外がいるという衝撃の事実。

 ……俺はそんなこと知りたくなかった。

 そんなことを思っても後の祭りである。

 

 

 和希が教室に入り、席に着くと本を読む。タイトルは『アーサー王伝説』。なぜ、彼がそれを読むかというのは彼が死んだ後に見たとある少女の一生が関係していた。それ以来、彼はそれを読むようになっていた。そしてその傍らにはもう一冊の本が置いてある。タイトルは『錬鉄の英雄』。これもまたとある少年の一生を描いたものである。

 チャイムがなり、朝礼が始まる。担任が入ってきて一人の少女を呼んだ。入ってきたのは長い黒髪が腰まである。ほとんどが美少女と言える容姿をしている。

 

「天野夕麻です。今日からよろしくお願いします」

 

 教室内にいる男子が色めきたっている。だが、和希は一人、興味はないと言わんばかりに本を読み続けていた。

 

 

 そしてその日の放課後。和希は天野夕麻に呼び出され、近所の公園に来ていた。和希は夕麻に対して警戒している。何故ならカンピオーネの体質が機能しているからである。だからこそ、人外であることが分かり、警戒しているのだ。

 だが、夕麻からの一言は思いがけないものだった。

 

「あなたのことが好きです! 付き合ってください」

 

 和希は人生初の告白を受ける。あまりにも予想外な言葉にフリーズして固まっている。そしてすぐに再起動する。

 

「ごめん。君と付き合うことはできない」

「そう。……なら死んでくれないかしら? 恨むなら物騒な神器をその身に宿したことを恨むのね!」

 

 

 夕麻はそう言って光の槍を和希に向かって投げる。その矢が和希に突き刺さる。普段の和希だったら何の問題はないだろう。だが、こうなるとは思っていない。(おおとり)の化身を使えるだけの時間がなかった。和希は薄れゆく意識の中、ウルスラグナ第八の化身・牡羊(おひつじ)を使う。

 即死でなければ基本的に元通りに戻し復活する化身。もっとも蘇る前に一度死んでから肉体再生させたうえで蘇生させるという形になる。

 夕麻が去っていき、意識を失う寸前紅色の何かが現れたように感じる。が、それが何かまでは和希に理解することが出来なかった。

 

 

 和希が目を覚ましたのは翌日の朝。起き上がろうとしたとき、何か違和感を感じる。体を起こし、違和感の方へ目を向けるとフリーズした。

 何故ならそこには腰まである紅髪の少女が裸で寝ているからである。

 和希は必死に昨日の夜に何かあったか思い出そうとするが何も思い出せず、焦りだけが募る。そして一階からアティの声が聞こえた。

 

「和希くん! 起きてますか?」

 

 そして階段を上がってくる音が聞こえてくる。

 このままじゃまずい。

 そう思って和希は大声で返事をする。

 

「大丈夫、起きてるよ」

 

 和希の頭の中ではサイレンが鳴り響いている。が、現実はどこまでも残酷である。アティはそのまま階段を昇ってくる。

 和希は必死に打開策を練る。

 大丈夫、俺は神を殺せたんだ。これくらい抜け出す策を捻り出すくらい造作もないはずだ!

 

「ならよかったですが、いつ帰ってきたんですか? まだ十六歳なのに深夜まで外にいるのはいただけません。なので話を聞かせてください」

「分かった! 後で話すから!」

「家庭教師の時の感が言っています。それは誤魔化しだと。なので今、直接話を聞きます」

 

 なぜこういう時の女性は妙に察しがいいのだろうか。

 和希は諦めず策を練るがそれは虚しくも無へと帰る。ついにアティが部屋に到着してしまった。ドアノブが回され、開く瞬間がやけにスローに感じた。そしてアティが和希の部屋に入る。

 そしてタイミング悪く紅髪の少女が目を覚ます。

 和希は絶望した。

 アティは顔を真っ赤にして叫んだ。

 

「一体ナニをしてたんですか! 和希くん!」

「誤解だぁぁぁぁ!」

 

 

 朝から風峰家の中ではアティと和希の大声が響き渡っていた。




 今回はここまでです。しばらくしたら投稿します
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