ハイスクールD×D ~神殺しの王は赤き龍の帝王となりて王道を征く~   作:ガーネイル

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 久しぶりの月一更新です。来月も出来るかな……。出来るといいなぁ……。
 まぁ、それはそれとしまして今回から原作二巻に入ります。序盤からなんかもう無茶苦茶というか、全然形になっていないというか、相変わらずご都合主義で腑に落ちない点も多いです。毎度のことながらそんなツッコミどころの多い拙い文章ですが、これからもお付き合いのほどよろしくお願いします。


8.不死鳥来たる

 あれからアーシアは和希の家に花嫁修業も兼ねてホームステイという形で同居することになった。その際、リアスが暗示を使い、和希の両親を丸め込んだことには目を瞑る。アティはアーシアと暮らせることを楽しみにしているし、アーシア本人たっての要望であるということも関係している。ただ、この際、増えていく女性率に関して和希は頭を抱えたとか抱えてないとか。

 それはそれとしてアーシア、アティという綺麗所に囲まれながら登校する和希にはモテない男たちや通行人による嫉妬や僻みの視線が集まる。だが、当の本人たちはどこ吹く風。全く気にしていない。

 そんな登校風景から一日が始まり、教師による子守歌を聞き、部活で一日を終える。

 レイナーレの件が終わってから当たり前だった平和な日常に戻った。だが、それも長くは続かない。まるで荒れ狂う波のように荒事が押し寄せてくる。

それもまた突然の出来事だった。

 

「カズキさん、先にお風呂いただきますね」

「お? あぁ、いってらっしゃい」

 

 和希が部屋で一休みしているとアーシアがお風呂に向かう。部屋から出ていくのを見送った後ベッドに寝転がる。それから、間もなく視界の隅に紅い魔法陣が浮かびあがる。それが意味するのはただ一つ。グレモリー眷属の誰かが転移してきたということ。そして、転移してきたのは他の誰でもなく、グレモリー眷属の主たるリアス・グレモリーその人。だが、その本人は思いつめた表情をしている。ただ、ここ最近リアスはずっとこんな感じなのである。

 ただ、起き上がりベッドに腰掛けた状態で固まっている部屋の主の頭の中は混沌としている。

 

「リアス……さん?」

「カズキ。今から私を抱きなさい」

 

 突然、放たれたリアスの言葉に和希は呆けるしかない。察しの悪い和希に焦れたのか止めになりそうな言葉を放つ。

 

「私の処女をもらってちょうだい。大至急よ」

「え、ちょ、はぁ!?」

 

 オブラートに包まれることなく、放たれた言葉はストレートすぎて顔を赤くしながら慌てるしかできない。

 分かるのは青少年には過激すぎる一言だったということだけである。

 リアスは勢いでそのまま和希を押し倒す。

 

「私ではダメかしら?」

「いえ、そ、そういうことではなくてですね。一度落ち着いて話し合いません!?」

「色々考えたけどこれしか方法がないのよ」

「それ、何の方法です!?」

 

 何の脈略もなく、いきなり結論を出されたため、思わずツッコミを入れる。実際どのような問題で、過程を説明されることなく、結論のみ出されたら戸惑うくらいしか出来ないだろう。

 だが、悲しい哉。リアスはそんな叫びにも聞く耳を持たず、自らの制服に手をかけていく。そして下着を外したあと和希の手を取り自分の胸へと押し当てる。

 手を掴まれている本人は自分の許容範囲を超える事態になり、声にならない悲鳴を上げる。脳が急な情報処理に追いつかない。

 振り払おうにも彼本来の優しさがあってかそれが出来ない。

 

「カズキは初めて? それとも、もうアティさんと経験したことあるのかしら?」

「したことないに決まっているじゃないですか!?」 

 

 何をとは言わない。さすがにそこまで察しは悪くない。なんだかんだ言っても彼も年相応の青少年、興味がない訳ではない。まぁ、前世ではこういった色物に割く時間はなかった故にその分が今に来ている可能性もある。ただ、年齢と人生の経験値がイコールではないという点は存在している。

 

「そう。ならお互い初めて同士上手くいかないでしょうけど、最後まで頼むわよ」

「あ、あの……!」

 

 和希が言葉を紡ごうとした瞬間、また別の魔法陣が浮かび上がる。だが、紋様はグレモリーのもの。オカルト研究部の誰かが来たのかと慌てる和希。その反対にリアスは落ち着いていた。最初からそれくらい落ち着いていれば多少話が出来たはずだが、少なくともこの場にはそうツッコミをいれる者は誰もいない。

 

「どうやらここまでのようね」

 

 魔法陣から出てきたのは和希の知るグレモリー眷属の誰かではなくメイド服を着た三つ編みにして一本にまとめた銀髪の女性。見た目通りなら二十代くらいだろう。最も彼女も魔法陣から出てきて悪魔であることが分かっている以上見た目と年齢は一致していないだろう。

 女性がベッドの上にいる二人を見て口を開く。

 

「そんなことをして破談に持ち込もうというわけですか?」

「そうでもしないと、お父さまもお兄さまも私の意見を聞いてくれないでしょう?」

 

 メイドの放たれた言葉の節々からは呆れが含まれている。それに対し、返したリアスの言葉はどこか幼い子供が自分の意見を着て欲しくて駄々をこねる様子を思わせる。だが、このメイドにそんなものは通用しない。

 

「ですが、そのような下賤な輩、その上、ただの人間に操を捧げると知れば旦那さまとサーゼクスさまがさぞお悲しみになるでしょう」

「私が認めている人に捧げて何がいけないのかしら? お兄さまたちを悪く言うわけではないわ。きっとこの子には勝てないわよ。それだけの力を持っているもの」

「どこにでもいる人間のような彼にですか? 面白いことを言うのですね。何はともあれ、あなたはグレモリー家の次期当主なのですから無暗に殿方へ素肌を晒すのはお控えください」

 

 女性は脱ぎ捨ててある上着をリアスの肩にかけた後、視線を和希に移し頭を下げる。

 

「はじめまして、私はグレモリー家に仕えている者でグレイフィアと申します。以後、お見知りおきを」

「ご丁寧にどうも。どこにでもいそうな人間ですが風峰和希と言います。有象無象の人間と思ってくださればいいので、覚えてくださらなくて結構ですよ」

 

 きっとグレイフィアは知らないだけだろう。

 ただそれでも、和希にとって固有結界は、宝具は、特別なモノだ。

 皮肉屋だが、何処か憎めない。誰よりも純粋に正義の味方に憧れ、最期にはその理想に裏切られた紅き弓兵が持っていた、真作の一つ。その一端を託され、宝具を譲り受けている。

 それを馬鹿にされたように感じてそれが悔しかった。だから先ほどの皮肉をそのまま返す。

だが、その名前に聞き覚えのあったグレイフィアの視線が興味深気なものに変わる。どうやら顔を知らなかっただけで名前は聞いたことがあったようだ。

 グレモリー家の者である以上、リアスから聞いていたとしても何の不思議もない。ただ、彼女が家の者にどれだけの情報を話したのかという懸念は存在する。特にウルスラグナの権能は諸刃の剣。切り札である同時に弱点になる可能性がある。使用条件、そして一度使った化身は日にちが変わらないと使えないなどちょっとしたがばれてしまえば簡単に対策を立てることが出来てしまうからだ。いくら十の化身を扱えたとしても決して万能ではないのである。

 

「カザミネカズキ。それではこの少年が……」

「えぇ、そうよ。人間でありながら神殺しに成功し、その力を簒奪した者。グレイフィア、私の根城に行きましょう。話はそこで。朱乃も同伴でいいわよね?」

「『雷の巫女』ですか? 構いません。上級悪魔たるもの傍らに『女王』を置くのは常ですから」

 

 リアスが和希の頬に手を添える。

 

「迷惑をかけたわね、ごめんなさい。貴方の言う通り、一度落ち着くべきだったわね。明日、部室で会いましょう」

 

 リアスはそう言ってグレイフィアと共に魔法陣の中に消えていく。先ほどまでの状態が嘘のように部屋の中に沈黙が訪れる。

 

「あとは和希くんだけですので、早くお風呂に入ってくださいね」

 

 部屋の外からアティの声が聞こえたのは運よく彼女らが部屋から消えた後だった。

 

******************

 

 翌日の放課後。

 和希とアーシア、祐斗。そして途中でアティも合流し四人で部室へと向かう。

 旧校舎に入ると同時に和希とアティは目配せをする。何故なら部室の方からこの中で最も強い気配を感じ取ったからだ。

 

「木場、部室に誰かいる。念のため警戒しておいた方がいいかもしれない」

「分かったよ、カズキ君が言うなら間違いないだろうからね」

 

 部室への扉を開けると今まででも一番機嫌が悪そうなリアス。朱乃は変わらないようでどこか冷たいものを感じる。子猫は関わりたく無さそうに部屋の隅にある椅子に座っている。そして何もなさげに佇んでいるグレイフィア。

 部屋の空気に気圧されたのかアーシアが不安気な表情を浮かべる。アティがアーシアのそれを感じ取ったのか、大丈夫という意味を込めて笑顔で頷く。

 

「先生、含めて全員揃ったわね。部活を始める前に一つ話があるの。実はね」

 

 リアスの言葉が続く前に部室の床に描かれた魔法陣が光りはじめる。そしてグレモリーの紋様が知らないものに変わる。

 隣にいる祐斗が三人に聞こえる声で言葉を漏らす。

 

「――フェニックス」

 

 そして人影が姿を現すとともに魔法陣から炎が巻き上がる。炎の中に佇む男性と思われる影が腕を横に払う。それと共に炎も消える。

 

「人間界も久しぶりだな」

 

 そう言葉を放ったのは着崩した赤いスーツに身を包み、姿を現した男。見た目からの印象はホストの一言に尽きる。その後ろには十五の眷属悪魔が控えている。

 そして男は部屋の中を見渡し、リアスを視界に入れると口角を上げる。

 

「会いに来たぜ、愛しのリアス」

 

 一方、そう言われた方のリアスは半眼で男を見ている。両者の温度差が物凄くある。それはもう天と地ほど差がある。

 これはどこまでいっても一方通行でしかないやつである。だが、男がそれに気付く様子はない。

 

「さて、リアス。早速式の会場を見に行こう。日取りも決まっているんだ。何事も早めの方がいいだろう」

「……放してちょうだい、ライザー」

 

 更に機嫌が悪くなるリアスに対し苦笑いを浮かべるだけのライザー。

 説明も何もない状況に焦れた和希がグレイフィアに尋ねる。

 

「グレイフィアさん。この悪魔は誰ですか? そして先輩とはどういうご関係で? 大きな括りでフェニックスということは分かりますが、個人の名前は知らないもので。」

「そうでしたね、失礼いたしました。この方はライザー・フェニックスさま。純血の上級悪魔であり、フェニックス家の三男でございます。リアス様とのご関係は婚約者でございます」

 

 思いがけない関係性に悪魔になったばかりのアーシアと人間二人はただ固まるしかなかった。

 

―――――――――――――――――

 

 

 アティと和希は協力者とはいえ、人間であるため退室した方がいいのでは。ということで部屋から出ようとしたが、グレイフィアやライザー、リアスが構わないということでそのまま部屋の中に残ることになった。

 

 リアスとライザーの会話を掻い摘んで説明するとこういうことらしい。

 リアスは以前からライザーとは結婚したくないと言っているようだ。次期当主である以上、相手は自分で決めるつもり。当初の話では人間の大学を出るまでは自由にさせてくれるということだったようだ。

一方のライザーの言い分としては純血の上級悪魔同士の御家がくっつくのはこれからの悪魔情勢を考えて当然。新しい血も必要だが、純血を途絶えさせるわけにもいかない。そのために自分たちが選ばれたんだと。

 

 これは悪魔同士の話であり和希やアティには関係のない話だ。これに首を突っ込む必要性はどこにもない。だが、リアスは言った。人間の大学を出るまでは自由にしてくれると。紅き弓兵は言った。自分が大切だと思うものをどこまで守れるか見せてみろと。

 オカルト研究部は和希にとって大切な居場所の一つだ。そこにいる人が嫌がっていると言うのならそれを助ける。それを黙って見ているという選択肢は存在していなかった。故に少年は動き出す。

 

「くだらない」

 

 和希が吐き捨てるようにそう言う。

 

「和希くん!」

「ライザーって言ったっけ? まぁこの際御家や名前なんてどうでもいい。リアスさんは俺が大切だと決めた場所にいるうちの一人だ。どうしても彼女が欲しいと言うのなら、俺と戦ってください」

 

 アティの静止を押し切り、和希がライザーの前に立つ。そしてその時初めてライザーは和希を一人物として捉える。

 

「あぁ? 何だ、貴様。ただの人間風情が舐めたことを! 貴様程度、俺が直接手を下す必要がない。やれ」

 

 ライザーは自分の下僕であるうちの一人に攻撃を仕掛けさせる。子猫と同じように小柄で童顔。だが確実に違うのは速さと持っているものだ。彼女は自分の身長以上ある棍を器用に使う。

 通常の人間なら追えない速度だが、和希にはそれが見えている。

 

「その程度の速度なら問題ない」

 

 祐斗ほどの速度はないが常人のそれより速く繰り出される突きや薙ぎを全て紙一重で回避していく。そして牡牛の化身を発動し、胴へと放たれた突きを受け止める。

 少女は掴まれた棍を動かそうとするが一切それが出来ない。それもそのはず。神が使う権能のその一端。それを一介の下僕悪魔が上回ることなど出来はしない。

 

「その程度か。なら、用はない」

 

 和希が拳を握り、少女へと攻撃を加えようとした時、アティが二人の間に割って入る。和希はギリギリのところで拳をずらす。もう少し遅かったら確実に少女ではなくアティに攻撃が当たっていた。

 

「アティさん、一体何のつもりですか?」

「話し合いでは解決できないことがあることも承知です。ですが、今まだ話し合いの途中です。なら、力で解決するのは間違っています。それは少なくとも今ではないはずです。私の言っていることは間違っていますか? 和希くん」

 

 その言葉に何も返すことが出来ない。まだ話し合いの途中であったことは確かであり、そこに割って入ったのは和希のほうである。和希は棍を放し、元の席に戻る。アティはグレイフィアに頭を下げる。

 

「すみませんでした、グレイフィアさん。お話の続きをしてください」

「申し訳ございません。仲裁に入っていただき感謝いたします。ですが、最終手段は先ほどの延長線上です。リアス様が未成年であるため、非公式ではありますが『レーティングゲーム』で決着を付けましょう」

「俺は問題ない。これでも俺は公式のゲームを何回か経験してるし、勝ち星の方が多い。それでもやるのか、リアス?」

「やるわ。あなたを消し飛ばしてあげるわよ!」

「ふん、いいだろう。そちらが勝てば好きにすればいい。だが、こちらが勝った時は即結婚してもらう。そしてそこにいる人間の女ももらっていく」

 

 そう言ってライザーはアティにも手を伸ばす。

 その瞬間、和希の中にある一線が切れた。ただでさえ、先ほどまでリアスに対する発言で腹の虫の居所が悪いのである。普段ならともかく、現状で一線を越えるのは容易なことだった。

彼女が誰かに守らなくてはいけないほど弱くないことは知っている。だが、和希にとってアーシアと同等、いやそれ以上に守りたい存在なのだ。そして戦闘で自分の背中を預けられるのはアティ以外には考えられない。本当は危険とは無縁で安全な日常の中で楽しく生活してほしい。和希にとってアティというのはそれだけ大切な存在なのだ。

 それほどの存在に手を出そうというのだ。全力を以て叩き潰す。

 きっと無理かもしれない、難しいかもしれないと言われるかもしれない。それでもアティという存在にまで手を出された以上、和希は黙って見ているわけにはいかないのだ。

 和希はダメもとでレーティングゲームに参加する意思表示をする。それに対するグレイフィアの反応はやはりというべきか、あまりいいモノではない。

 だが、それを是と言ったのはライザーだった。

 

「俺は構わない。こちらとの戦力差を考えればいいハンデだ。人間一人入れたところで何も変わらんさ」

「……かしこまりました。それではそのように話を進めさせていただきます」

「せいぜい楽しませてくれよ、人間」

「悪魔如きが俺の女に手を出そうとしたんだ。生まれてきたことを後悔させてやる、覚悟しろよ」

 

 グレイフィアが両者に合意を取る。

 両者が睨み合い、緊迫した空気が生まれる。そして先に視線を切ったのはライザーだった。再び視線をリアスへと戻し、言葉を発する。

 

「10日だ。それだけあれば時間があれば多少いいゲームが出来るだろう。俺としては今すぐやってもいいがそれでは面白くないからな。次はゲームで会おう」

 

 そう言い残し、眷属悪魔と共に部室から姿を消す。

 彼らがいなくなった後の部室の中は険悪な空気で包まれていた。

 




 とりあえずこんな感じの回でした。
 使い魔の回はないのかって? それはそのうちやりますとも! ……たぶん、きっと、maybe……。
 
 それはそれとしまして次回もよろしくお願いします

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