悪夢の少女と   作:ヤマシロ=サン

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書きだめが切れたが、俺はまだまだかけるぞぉぉ!!





第13話 チャンピオン

 

 

 

「やっべ、もう試合も終盤じゃねーか!」

 

一番前の二つ空いてる席を見つけて何とか座る。

 

 

「わー!すごい歓声だね!」

 

 

ヤヨイは目を輝かせた。

 

 

「そうだな。そりゃチャンピオンと四天王の一人の試合なんてそう見られるもんじゃないしな。」

 

 

試合はどうなってんのかな?そう思ってスタジアム中央上側の大モニターに視線を移す。

 

 

『シロナ ○○○ vsオーバ ○** 』

 

 

「まじかよ。シロナさん圧倒的にリードしてんじゃねえか。」

 

モニターを見る限り三対三のシングルバトルのようだが、オーバはあと一体しか残っていない模様。

 

 

ーー

 

「くそっ、あとはこいつだけか……。頼む!ゴウカザル!!」

 

 

オーバは最後の一体、相棒のゴウカザルを繰り出した。

 

 

「きぃぃ!!」

 

 

シロナはポケットからボールを取り出す。

 

 

 

「頼むわよ。ガブちゃん!!」

 

 

 

「任せてください。あとガブちゃんと呼ぶな。」

 

 

 

シロナのエースポケモン、擬人化しているガブリアスだった。

 

 

 

『出たぞぉ!!シロナ選手のエースモンスターガブリアスだぁ!!』

 

 

 

周りのボルテージは最高潮に達した。

 

 

 

「ちっ、メンドクセェ奴がきたぞ……!」

 

 

オーバは苦い顔をする。しかし、オーバにもプライドがある。ただ一方的に負けるわけにもいかなかった。

 

 

「よし、ゴウカザル!マッハパンチだ!!」

 

 

「キィィッ!!」

 

 

ゴウカザルの鋭いパンチがガブリアスを襲う。

 

 

「ガブちゃん避けて!!」

 

 

「ガブちゃんッ……言うな……ッ!!」

 

 

「おらぁ!ゴウカザル!オセオセで行くぞぉ!!」

 

 

マッハパンチを連続で繰り出し、ガブリアスはそれを避け続けた。

 

 

『おーっとガブリアスがどんどん追い込まれていくぞぉ!!このままゴウカザルが押し切ってしまうのかぁ!!?』

 

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

「……まぁ、それはないだろうな。」

 

 

『だね。あのガブリアス、ゴウカザルのマッハパンチを完全に見切ってるしね。』

 

 

俺とアグノムはガブリアスが余裕だと言うことに気づいていた。

 

 

「私だったら、マッハパンチの一発目の時にゴウカザルの拳ごと跳ね返してるんだけどなぁ……。もしかして、あの同族……弱い?」

 

 

ヤヨイは首を傾げながらそんなことを言っていた。

 

 

「お前、本当にそんなことできるのか?」

 

 

俺は念のため尋ねた。

 

 

「もちろんだよ。私はお父さんを世界一にするためには何だって手に入れるよ。圧倒的な攻撃力だって、どんな攻撃も見切れる反射神経も、どんな攻撃も躱す瞬発力だってね。」

 

 

そう語るヤヨイの目はまるで飢えたケモノのような目をしていた。

 

 

「……そうか。でも、あまり無理はするなよ?俺は別にそこまで急いでるわけでもないんだ。まだ、始まってすらいないんだぜ?」

 

 

 

「……うん。」

 

 

 

ヤヨイは静かに頷いた。

気づけばヤヨイは俺の手を優しく握っていた。気づいた俺も握り返した。

 

 

 

『バギィッッッ!!!!』

 

 

すると、真ん中の方から鋭い打撃音がした。俺はハッと中心に視線を戻した。

 

 

そこには今にも倒れそうなゴウカザルと余裕の表情を見せるガブリアスがいた。

 

 

ーーー

 

 

「ガブちゃん!!ギガインパクトよ!!」

 

 

 

「御意ッ!!」

 

 

ガブリアスはものすごいエネルギーを身体に纏い、全速力でゴウカザルに突っ込んでいく。

 

 

 

「ゴウカザルッ!!!避けろぉぉぉ!!」

 

 

「ギッ……ィィ………!」

 

 

しかし、ゴウカザルはもう立つことができず、膝をついた。

 

 

 

「ゴウカザルーーーーーーーッ!!!」

 

 

そして、ゴウカザルはもろにギガインパクトを受けた。

 

 

 

『ズドォォォォォォォン!!!!』

 

 

ゴウカザルはそのまま弾き飛ばされ、壁に激突した。

 

 

 

ゴウカザルは倒れ伏せ、完全に気絶していた。

 

 

 

「ゴウカザル戦闘不能!ガブリアスの勝ち!!やって勝者チャンピオンシロナ!!!」

 

『試合終了ぉぉぉ!!シロナ選手のストレート勝ちに終わりました!!!』

 

 

周りから凄まじい歓声と拍手が飛び交った。

 

 

 

「まぁ、こんなもんかな。」

 

 

ガブリアスは軽く息を吐いた。

 

 

「お疲れ様、ガブちゃん。」

 

 

「ガブちゃん言うなって言ってるでしょ。てか、直す気ないですよね?」

 

 

「うん(即答)」

 

 

「氏ね。」

 

 

「酷くない!?」

 

 

 

 

すると、ガブリアスは少し表情を険しくした。

 

 

「……、感じるな。」

 

 

「どうしたの、ガブちゃん?」

 

 

ガブリアスは目を細めて辺りを見渡す。何かを探しているようだった。

 

 

「ここの何処かに僕と似てるものを感じたんですよ。…………同族か?」

 

 

「へぇ、あなたが探すくらいだから……相当強いのね。」

 

 

 

「気配だけですけど………まぁ、強いですよ。」

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

 

「………。」

 

 

(うわ……、絶対あのガブリアス、ヤヨイのこと探してるわ。どうしよ……。)

 

 

 

無表情で冷静な表情をしているが冷や汗が止まらず、内心焦りに焦っていた。そう、あいつ(ガブリアス)に見つかったら間違いなく面倒なことになる。俺の直感がそう言っていた。

 

 

 

「……ヤヨイ。」

 

 

 

俺はヤヨイに視線を移す。

 

 

「なに?お父さん。」

 

 

「ちょっとボールに戻ってくれ。理由はめんどくさいことになりそうだからだ。」

 

 

「えっ、めんどくさいことって?」

 

 

「多分、あのガブリアスはお前のことを探してる。見つかったら表に引っ張り出されそうだからな。つーわけで頼む。」

 

 

 

「うーん、戦ってみたかったけど、お父さんの頼みなら断れないよ。わかった。中に入ってるね。」

 

 

 

俺とヤヨイはいったん裏に周り、ヤヨイをボールに戻した。

 

 

 

「……ふぅ、これでよし。」

 

 

 

 

ーーー

 

 

「………なるほどね。」

 

 

シロナは観客席を見ていた。そして、何かを把握したようだった。

 

 

 

「気配が消えたか……。ここを去ったみたいですね。」

 

 

「そうね。」

 

 

 

すると、マイクを持ったMCの人が出てきた。

 

 

 

「シロナさん!!お疲れ様でした!!四天王のオーバに対して三連勝のストレート勝ちでしたが、感想はどうでしたでしょうか!?」

 

 

「そうね、相手がほのおタイプだったのもあって、相性自体は悪くなかったわ。だから、勝てない試合じゃなかった。あとは今回は偶々運が良かっただけよ。」

 

 

「なるほど!確かにガブリアスをはじめとするほのおタイプに強いポケモンが多かったですもんね!」

 

 

「それでも、さすが四天王ってところね。最後のゴウカザルのマッハパンチはすごかったわ。ガブちゃんでも完全に見切ることはできなかったし。」

 

 

「そうでしょうか……私から見たら見切って全て躱してるように見えましたが……。」

 

 

「いや、結構かすってるよ。腕のところとか少し傷になってるし。」

 

 

ガブリアスが割り込んで、実際に右腕の若干のキズを見せた。

 

 

「なるほど、確かに所々当たっていたようですね。それでも最後はギガインパクトで締めたのでよかったのではないのでしょうか?」

 

 

「確かに今回はうまく決まってくれたけど、そもそもゴウカザルは素早さが高いから避けられる可能性も高かった。半分賭けみたいなものね。避けられてたら反動で動けないガブちゃんを叩かれてたと思うわ。いろんな面から見れば反省点もたくさんあったってことよ。」

 

 

 

「なるほど、今回は勝ったけど課題点や反省点も多く見られた試合だったということですね!お疲れ様でした!次の試合も期待してます!それでは最後に会場のファンに一言お願いします!」

 

 

 

「そうね……、結構早く終わったからまだ大丈夫よね。」

 

 

シロナは辺りを見渡してある一点を見る。

 

 

 

「そうね、中々ハードな試合だったけどまだまだ足りないわ。そこで私はこの会場に来てるあるトレーナーと戦いたいのよ。というより戦え。」

 

 

 

あたりがざわめき出す。流石にMCの人もそれは想定外だったようで、少し驚きの表情を見せた。

 

 

「この会場にチャンピオンが戦いたくなるトレーナーがいるのですか?初耳ですけど。」

 

 

「そうね、そのトレーナーはまだ若いわ。しかし、将来性は高いし、いずれこのチャンピオンの座を必ず獲りにくると思ってる。だから私はこのチャンピオンシップにその子を招待したわ。」

 

 

「チャンピオンがそこまで評価するなんてそこまで強いんですか?そのトレーナーは。」

 

 

「えぇ。」

 

 

シロナは頷いた。そして、

 

 

 

「出て来てちょうだい!!そこのトレーナー!!」

 

 

 

シロナはそのトレーナーを指差し、大声で呼んだ。

 

 

 

 

ーーー

 

 

「そうね、中々ハードな試合だったけどまだまだ足りないわ。そこで私はこの会場に来てるあるトレーナーと戦いたいのよ。というより戦え。」

 

 

 

「へぇ、そんなトレーナーが来てるのか。タワータイクーンのクロツグさんとかかな?シロナさんも面白いエンターテイメント用意してくれてるじゃん。」

 

 

『………。』

 

 

アグノムはなぜか無表情だった。

 

 

「どうした?アグノム。」

 

 

『い、いや、なんでもないよ。うん、確かに楽しミダネ。』

 

 

後半棒読みだった気がするが気のせいだろう。

 

 

MCとシロナの会話は続く。

 

 

「この会場にチャンピオンが戦いたくなるトレーナーがいるのですか?初耳ですけど。」

 

 

「そうね、そのトレーナーはまだ若いわ。しかし、将来性は高いし、いずれこのチャンピオンの座を必ず獲りにくると思ってる。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

「へぇ、若いトレーナーなのか。将来性も期待して………、招待し……た……って………ん?」

 

 

なんだろうものすごく物あたりがあるぞ?招待した?招待したって言ったよな?

 

 

『……どんまい。』

 

 

「うぉい!?なんだよその諦めの表情は!?そそそそもそもまだ俺って決まったわけじゃねーだろ!?」

 

 

俺の額から冷や汗が止まらない。焦れば焦るほど焦ってしまう(語彙力欠落)やべえよ……w、マジで震えて来やがった……www

 

 

 

「出て来てちょうだい!!そこのトレーナー!!」

 

 

 

突然シロナさんが大声で呼ぶ。思わず「ひゃいっ!?」って叫んでしまいそうになったがそれを死ぬ気で堪え、なんとか声に出さずに済んだ。

 

 

俺はすぐに下を向いて目を瞑った。そして、そのまま何も起こらずに終わることをひたすらに祈り続けた。

 

 

 

(このまま終われこのまま終われこのまま終われこのまま終われこのまま終われこのまま終われこのまま終われこのまま終われこのまま終われこのまま終われこのまま終われこのまま終われこのまま終われこのまま終われこのまま終われこのまま終われこのまま終われこのまま終われこのまま終われこのまま終われこのまま終われこのまま終われこのまま終われこのまま終われこのまま終われこのまま終われこのまま終われこのまま終われこのまま終われ……)

 

 

 

「…………。」

 

 

(このままおw……、なんだ?会場が妙に静かだぞ?)

 

 

そう、さっきまで熱気であふれていた会場が嘘のように静か、無音なのだ。

 

 

 

違和感を感じ、そーっと顔を上げる。

 

 

 

 

「なんd…「はい、捕まえた!!」ファッ!?」

 

 

 

背後から肩を叩かれた。振り向くとそこにはなんかすげー黒い笑顔を浮かべてるシロナさん(畜生)がいた。

 

 

 

周りの観客は誰一人として帰っておらず、下を向いて祈ってるうちにシロナさんがわざわざ俺のところまで来ていたのだ。

 

 

「私はあなたのことを指名したのよ。あなたもわかってたんでしょう、ハルトくん?」

 

 

「ナンノコトカワカラナイ。ボク、はるとジャナイ。ヒトチガイヒトチガイヒトチガイダヨー。」

 

 

 

「あ"?」

 

 

「すみませんすみません調子こきました俺みたいなクズがチャンピオン様様様相手にシラを切って本当にすませんした助けてくださいお願いなんでもしますから………はっ!」

 

 

「それじゃ来てもらうわね?」

 

 

俺はシロナさんに腕を掴まれ無理やり引っ張られる。

 

 

「いやだぁ!!行きたくないよおおお!!!シロナさんに公開処刑されるなんて嫌だよぉ!!誰かたすけてぇぇぇ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

そんな悲痛な叫びも届くわけもなく俺はバトル場のど真ん中にひきづり出された。

 

 

 

さっきのMCの人がやってきた。

 

 

「君がチャンピオンの言っていたトレーナーだね。名前は?」

 

 

「あまり周りに知られたくないので黙秘します。仮名でA氏とでも呼んでください。」

 

 

「そ、そう……(結構冷静だなこのガキ……てか、よくも俺とシロナ様の時間を………!!4ね!!)」

 

 

 

シロナさん、は思い出したようにもう一度俺のところに来た。

 

 

 

「あ、ハルt「げふん!!げふごふん!!げほごっほ!!」A君、少し話があるんだけどいいかな?」

 

 

「なんすか……?どうやってぶちのめすか予め教えてくれるんすか?」

 

 

「違うわよ。あなた……手持ちのポケモンって何がいるの?あ、さっきの何でもするまだ有効だからね?全部教えてもらうわよ。」

 

 

「は、はい……(この鬼がぁぁぁぁぁ!!)」

 

 

 

 

ダークライ(メア)アグノム(ソラ)ガブリアス(ヤヨイ)だけですよ。」

 

 

 

「……やっぱりガブリアスがいたのね。」

 

 

 

「シロナさんのガブリアスってば、めちゃくちゃヤヨイのこと探してたんで、面倒ごとにならないうちにボールに戻したんですよ。ま、結局無意味に終わりましたけど。」

 

 

 

シロナさんは少し考えた後、こちらを見た。

 

 

「……よし、あなたに3対3のシングルバトルを申し込むわ。いいわね?」

 

 

 

 

「拒否権は…「無いわ。」…デスヨネー」

 

 

 

 

「わかりましたよ。その勝負受けます。」

 

 

 

こうして、俺の初バトルはいきなりチャンピオンのシロナさんということになってしまった。………帰りたい(泣)

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回……


『大番狂わせ』


デュエルスタンバイ!!

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