悪夢の少女と   作:ヤマシロ=サン

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自分で書いてて、「なにこれwww意味わからんwww」って思いましたw

ま、夜中のテンションだったから仕方ないね。


第13話 依存

 

『チャンピオンの指名で突如現れた少年A(仮名)!!果たしてチャンピオンも認めるその実力とは如何にッ!?さぁ、バトル開始だァ!』

 

 

 

周りのボルテージは再び最高潮に達する。……こいつら元気だな。俺はこんなにも精神的にやられてるのに……。

 

「行くわよ!!ハルト君!!」

 

 

「なんでそんなにテンション高いんすかねぇ……、力の差なんて歴然でしょ……あれですか、俺を晒し者にして社会的に殺すつもりですか?ひどいですねぇ、さすがチャンピオンは格が違いましたわ。」

 

 

そうだ、王者はこうやって地位を上げていくんだった。そうだったそうだった、忘れてたよ。

 

 

 

 

「ちっ、違うわよ!貴方のポケモンが気になったから呼び出しただけよ!ほら、早く出しなさい!!」

 

 

 

「えぇ……そもそも戦いたくないんすけどぉ……(絶望)」

 

 

 

「もう!貴方がなんと言おうと戦うわ!!行くわよ!!ルカリオ!!」

 

 

 

「グァウ!!」

 

 

『チャンピオンの繰り出したポケモンはルカリオだぁ!!果たして少年Aは何を繰り出すのかぁ!!?』

 

 

 

かくとう・はがねタイプのルカリオを見て俺は脳をフル回転させ思考する。

 

 

 

(……普通に考えたらエスパータイプのソラを出すところだが、こいつをこんな全国生中継にこんな伝説ポケモンを晒すわけにもいかない。絶対ギンガ団に目をつけられて捕まることになるわ(確信)。ヤヨイを出してもいいが、なんかシロナさんの思うツボみたいになって嫌だな……。てか、ヤヨイレベルになると全員コマ切れチャーシューにしてしまいそうで怖いんだよな……)

 

 

気づけばメアを出すしか選択肢が無くなっていた。そして、メアの入ったボールが妙にキラキラしているのは気のせいだろうか。

 

 

『マスター私を出してくださいマスター私を出してくださいマスター私を出してくださいマスター私を出してくださいマスター私を出してくださいマスター私を出してくださいマスター私を出してくださいマスター私を出してくださいマスター……』

 

 

気のせいじゃなさそうだ。すげー出して欲しそうにしてるなこりゃ。

あとシロナさんに勝つわけにもいかないから予め手を打っておくか……、俺の未来のためにね。

 

 

「……おい、ソラ。」

 

 

『おっ、なんだいハルト。結婚したいの?』

 

 

 

「ちゃうわ。ちょっとお前にしかできないことがあるんだ……。」

 

 

 

 

 

数十秒後……

 

 

「ハルト君!さぁ、君のポケモンを出して!!」

 

 

「……はぁ、お手柔らかに頼みますよ。割とマジで。行くぞ!メア!!」

 

 

俺はメアを繰り出した。

 

 

「まっかせてくださーい!!私があんな犬コマ切れチャーシューにして明日の夕飯のラーメンの具材にしてやりますから!!」

 

 

すげぇ元気そうにとんでもないこと言いながら出てきた。

すると、周りが急にざわめきだした。……まぁ、人型だからな。無理もないか。

 

 

『なんと!!少年A選手は人型のポケモンを持っていたようだァ!!それは予想外!!面白い展開になりそうだぞ!!しかも!さっき入った情報によりますと、少年A選手のだしたあの人型は『ダークライ』というポケモンだそうだ!!さぁ、あまり知られていない未知のポケモンの実力や如何に!!?』

 

 

 

 

「ふふっ、まさかいきなり相性の悪いダークライを繰り出すなんてね。あの子は繰り出さないのかしら?」

 

 

 

「まぁ、ヤヨイを場に出したらちょっとやばいことになるのでだそうにも出せないんすよ。それにこんな場にソラを出すのも命取りになりかねないし、そうなったら必然的にメアしかいないんすわ。つっても、メアは相性関係なく強いですよ?」

 

 

「ふふふ、流石私のマスター、わかってますねぇ……!私に相性なんて関係ないも同然!!さぁ、行きますよ!!」

 

 

メアもすごく気合が入っていて燃えていた。これなら何とかなるかな。

 

 

「行くわよ!ルカリオ!!はどうだん!!」

 

 

「グァルァ!!」

 

 

ルカリオの両手から青色のエネルギー弾が放たれた。

 

 

「かわして、前進だ!!」

 

 

「はいっ!!」

 

 

メアは高速で飛んでくるはどうだんを躱しながら、ルカリオとの距離を詰めていく。

 

 

「メア!!一発ドロップキックかましてやれ!!」

 

 

「はいっ!!喰らえこのクソ犬やろう!!」

 

 

メアの鋭い蹴りがルカリオを襲った。

 

 

「ルカリオ!!躱してインファイトよ!!」

 

 

「ッ!!」

 

 

「グァウ!!」

 

 

ルカリオはメアの蹴りを紙一重でかわし、そのまま高速でパンチを繰り出した。

 

 

「メア!!」

 

 

高速で繰り出されるパンチをメアも何とか受け流していた。

 

 

 

「くっ!やりますね!!でも、マスターの期待を裏切るわけにはいきませんッ!!!」

 

 

『ルカリオの鋭いインファイトがダークライを襲うぞおおお!!しかし、ダークライも必死に避ける!!』

 

 

「なかなかやるわね……!!ルカリオのインファイトをほとんど避けるか受け流すなんてね……!!」

 

 

 

「まぁ、メアの動体視力も伊達じゃないのでね!!今だ!!ルカリオがよろけてるぞ!!あくのはどうだ!!」

 

 

「はいっ!!」

 

 

「なっ!?躱して!!」

 

 

「遅いですよ!!喰らえぇぇ!!!」

 

 

インファイトで守りが手薄になったところを狙い、メアは黒いエネルギーの塊をルカリオの腹に叩き込んだ。

 

 

 

「グァァッ!?」

 

 

「ルカリオッ!!」

 

 

ルカリオはインファイトの影響でぼうぎょととくぼうが手薄になっていたのでかなり効いたのかすこし動けなくなっていた。

 

 

「メア!!まだまだいくぞ!!物理攻撃で押して押して押しまくれ!!」

 

 

「はいっ!!」

 

 

メアの強烈な蹴りや拳がルカリオを襲った。避けようとしているがほとんどをまともに食らっていた。人型の長所を十分に活かせた攻撃だと自分でも思った。

 

 

『おーっと!!かなり一方的な展開になってきたぞぉ!!ルカリオがダークライの攻撃にかなり押されている!!これは決まるかぁ!!?』

 

 

 

すると、シロナはニヤリと笑った。

 

 

「ッ!!今よ!!カウンター!!」

 

 

「何ッ!?」

 

 

 

「ぐぁぁぁぁう!!!」

 

 

『バギィィッ!!』

 

 

 

ルカリオの鋭い拳がメアの顔面を捉えた。

 

 

「ぐっ………はぁ………ッ!!?」

 

 

「メアッ!!!」

 

 

「こうかは抜群よ!!ルカリオ!!はどうだん!!」

 

 

そして再びルカリオの両手から青色のエネルギー弾が放たれた。

 

 

「メア!!あくのはどうでむかえうて!!」

 

 

「はいっ!!だぁぁぉぁぁ!!!」

 

 

メアの両手から黒い光線が放たれた。

 

 

『ズドオオオオン!!』

 

 

はどうだんとあくのはどうがぶつかり合い、爆発して砂煙が上がった。

 

 

「っ!!メア!!」

 

 

「ルカリオッ!!」

 

 

 

 

『おーっと!!はどうだんとあくのはどうのぶつかり合いで会場が砂煙で見えなくなったぞ!!果たしてどうなっているのかぁ!!?』

 

 

砂煙が会場中を覆い尽くし、周りが見えなくなった。メアとルカリオがどうなっているのか気になるが見えなくて確認することができない。

 

 

 

すこし経つと、砂煙が晴れて見えるようになってきた。そこにいたのは……

 

 

 

「ッ……!」

 

 

「ルカリオッ!!」

 

 

地面に倒れ伏せているルカリオとそばに立っているメアだった。

 

 

「いや、違う!!あれはッ!!」

 

 

「そうです。シロナさんのルカリオはおそらく眠っています。」

 

 

「砂煙の立っているうちにそばに行ってダークホールを食らってもらいました。実は私ってすごく目がいいので砂煙くらいではどうってことありませんので。今、ルカリオは私の特性のナイトメアとあくむを同時に受けています。だから、ほら。眠っているのに苦しそうでしょ?」

 

 

 

「ぐぅぅ……ぁッ………!!」

 

 

 

メアは不敵な笑みを浮かべる。文字通り、ルカリオはすごく苦しそうに悶えていた。

 

 

「ルカリオ!!起きて!!」

 

 

シロナさんは必死に叫んでルカリオに呼びかける。

 

 

「ぐっ……ああぅ!!!」

 

 

ルカリオは叫び声を上げて苦しんでいる。まだ、目を覚ましそうにはなかった。

 

 

 

「ダークホールはポケモンであろうと人であろうと喰らえば、睡眠時の一番眠りが深い状態にまで持っていくのでそう目がさめるわけありませんよ。ふふふ……。」

 

 

メアは不敵な笑みをずっと浮かべているがどこか自虐的に見えたのは気のせいだろうか。

 

 

 

「………私はこの悪魔のような能力でいつも人を苦しめてきました。正直胸が苦しかったです。」

 

 

「メア……お前……。」

 

 

やっぱり、メアはこの特性に苦しめられていたらしい。

 

 

「でもね、私は『マスターのために』って思えば躊躇なく使えます。マスターを守るために私はこの忌々しいチカラを使うんです。だから今は微塵も辛くありません。」

 

 

「ぐぅぅぁ……ッ………ぁぁっ!!」

 

 

その間もルカリオは悶えて眠ったままジタバタしている。これ以上見てるのはこちらとしても辛いのでそろそろ勝負を決めることにした。

 

 

「メア……ゆめくいだ。」

 

 

「ッ……!」

 

 

メアが一瞬躊躇したように見えた。

 

 

 

 

 

ーーー

 

 

「メア……ゆめくいだ。」

 

 

 

「ッ……!」

 

 

 

 

マスターから指示されたのは、相手が眠っている時に相手の夢を喰らい、その半分ほど自分の体力に変える『ゆめくい』という技だった。

一瞬躊躇してしまったが、マスターの命令ならば仕方がないと腹をくくり、技を繰り出した。

 

 

 

「ぐっああああっ!!?ぐっおおおおああぁぁっ!!!」

 

 

ルカリオは眠りながらも目を見開き、苦しみの声をあげた。そう、私が夢を喰らったのだ。

 

 

 

「ぐっ……!」

 

 

ルカリオの夢が自分の中に入り込んできた。すると、突然自分の身体が何か岩を背負ったように重くなり、視界も歪み、今にも全てを吐き出したくなるようなそんな気持ちの悪い吐き気に襲われた。

 

 

 

そう、私がゆめくいを使いたくないのは使うと副作用なのか知らないが体力は回復するが、さっきの吐き気のような精神的な負担が私を襲うのだ。以前はそんなことは無かった。しかし、今はこんなことになってしまっている。どうしてそんなことになってしまったのか……その原因は…………マスターだった。

 

 

***

 

一週間ほど前にさかのぼるが、私がマスターと添い寝をしていた時、ふと思ったことがあった。

 

 

『マスターの夢を食べてみたい。』

 

 

自分でも可笑しいことはわかっていた。しかし、自分は夢とは良くはないが縁のあるポケモンだったせいか、その好奇心を抑えられなかった。……きっと本能的なものだったのだろう。

 

 

そして、その夜私はこっそりゆめくいでマスターの夢を食べたのだ。

すると突然私の視界が真っ白になり、身体が宙に浮くようなそんな感覚になり、とてつもなく癖になるような、そんな快感に襲われた。マスターの夢は他の汚い欲望だらけの生き物とは違う、周りのためを想い、そしてこんな私のことも想うそんな純白でとてつもなく綺麗な欲望と夢を持っていたのだ。私は心がとても安らぐような快感に身を任せていると気がつけば朝になっていた。

 

マスターは目を覚ました。しかし、眠っていたころの記憶が残っていなかったらしい。私はいつの間にかマスターの昨日の夢を全てを食べつくしてしまっていたらしい。すごく申し訳なく思い、二度とマスターの夢を食べないようにしようと誓った。しかし、その日から私に異変が起こったのだ。

 

 

チャンピオンロードでいつも通り特訓も兼ねて野生の強いポケモンと戦っていたときのことだった。私はいつも通りダークホールで敵を眠らせ、ナイトメアで瀕死寸前まで追い込み、ゆめくいでトドメを刺すというのが必勝パターンとなっていた。そして、私がゆめくいを使ってそのポケモンの夢を食べたときにそれは起こった。

 

 

「ぐっ……!?何……こ……れ……、すごく………ぐる……じ……っ!」

 

 

そう、昨日まではどうも無かったのにゆめくいで夢を食べると身体がその夢に拒絶反応を起こしたかのように苦しくなるのだ。体力は回復しているがそれよりも精神的なダメージの方が遥かに大きかった。

 

 

そして………更に致命的な欠陥が生まれてしまった。それは……。

 

 

 

***

 

 

「ルカ……ォ……とう……のう……て……しゃ……くら……」

 

 

審判からの判定がかすかに耳に入った。その瞬間、私は安堵し、抑えられなくなった。

 

 

 

「ますたぁ………ますたぁ……」

 

 

私はマスターのことしか考えられなくなっていた。そう、致命的な欠陥とはゆめくいを使ったあとまるで禁断症状を起こしたかのようにマスターを求めてしまうのだ。きっと身体がマスターの夢での快楽を覚えていて忘れられなくなってしまっていたからだろう。しかし、そんなことを考えられるような状態でもなかった。

 

 

 

「………メア?」

 

 

気がつけば私はマスターの目の前にいた。そして、無意識に私はマスターの胸に顔を埋めていた。

 

 

マスターの香りが私の鼻孔を通り、全身に行き渡る。すると、胸が熱くなり夢で感じたようなそんな快感に再び襲われるのだ。とてもフワフワして幸せな気持ちになる。そして、思わず声が漏れた。

 

 

「ふひひ……ますたぁ……」

 

 

 

ああ、どうしよう。わたし……絶対にマスターに嫌われた……どうしよう、でもマスターから離れられない……。いやだ、嫌われたくない……嫌われたくないのに……!!自分を今すぐ殺してやりたくなるようなそんな自己嫌悪に襲われた。

 

 

「……うぅぅ……!」

 

 

マスターの顔に埋めたまま気づけば目からは涙が出ていて、マスターの服にシミを作ってしまっていた。情けない……快楽に抗えないこんな自分が情けなくて仕方がなかった。

 

 

 

「えっ………?」

 

 

自分でも頭が追いつかなかった。マスターは私を優しく抱きしめてくれたのだ。私は思わず顔をあげた。そして……マスターは何かを察したような顔で

 

 

「そうか………、よく頑張ったなメア。」

 

 

そう言ってマスターは優しく微笑んだ。

 

 

………こんな狂った私でも愛してくれる。

 

 

気づけば再び目から涙が溢れていて、再び胸に顔を埋めた。そして、また幸せな感覚が蘇る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………あぁ……マスター、私の愛しい愛しいマスター。

 

 

 

 

 

 

………ずっと、永遠に愛しています。

 

 

 

 

 

 

 

私は静かにこの幸福な時間を感じながら意識を落としていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

 

ルカリオは苦しみながら叫び声をあげ、そして、動かなくなった。

いや、死んだわけじゃないからね!?死んでないからね!?気絶しただけだからね!?

 

 

「ルカリオ戦闘不能!!勝者ダークライ!!」

 

 

 

『ルカリオ倒れたぁぁぁ!!!なんと大番狂わせが起きたぞぉ!!いきなり少年A選手!!チャンピオンのポケモンを一匹倒したぁ!!』

 

 

周りのボルテージもマックスになる。

 

 

「ふぅ……とりあえずこのままメアで………ん?」

 

 

気づけばメアは虚ろな目でフラフラとこちらに歩み寄ってきていた。

 

 

「どうした?メ………ア…?」

 

 

すると、突然メアは倒れこむようにして俺の胸に顔を埋めていた。

何が起きたのかわからないでいると、

 

 

『………なるほどね。あの時躊躇していたのはこのせいだったのか。』

 

 

ボールの中からソラの声が聞こえてきた。

 

 

 

「どういうことだ?」

 

 

『メアのゆめくいは何か訳ありみたいらしい。使うと発作のようなものが起きて………この状態を見る限り、ハルトを本能的に求めてしまうらしいね。』

 

 

 

そうか、だから一瞬戸惑いを見せていたのか。

 

 

 

「ふひひ……ますたぁ……」

 

 

 

 

「うぅぅ……」

 

 

 

 

最初は笑っていたメアも気がつけば、震えるようにして泣いていた。きっと俺にこんなことをして嫌われたと思っているのだろう。そんなことで俺はメアのことを嫌いになったりはしない。なら、俺にできることは……。

 

 

 

「え………?」

 

 

 

優しく抱きしめ返してやることだった。

 

 

 

 

 

「よく頑張ったなメア。」

 

 

 

メアは大粒の涙を流し、再び俺の胸に顔を埋めて、気づけば眠っていた。

 

 

 

 

「ふぅ……てか、メアのやつ。俺が苦しくないが離れられない程度の力で抱きしめてやがる……!!離れられねぇじゃん!!」

 

 

 

俺のプランはすぐに破綻してしまった。

 

 

『どうする?ボクがいこうか?』

 

 

ソラが尋ねてきた。

 

 

「いや……もう、こいつで行くしかないだろ。」

 

 

 

 

 

俺は仕方ないと腹をくくり、ポケットからボールを取り出した。そして……

 

 

 

 

「行け!ヤヨイ!!」

 

 

 

 

 

俺はヤヨイを繰り出したのだった。

 

 

 

 

 




はい、お疲れ様でした。おやすみなさい。

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