悪夢の少女と   作:ヤマシロ=サン

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キャンパスライフ「地獄の業火で焼かれてもらうぜ。」


第18話 再会

いろんなことがあったが、気づけば半年も経っていた。え?展開が早いって?人生あっという間だからそんなもんだよ。

 

 

「ほとぼりっていつくらいになったら冷めるんだろうな…」

 

 

そう、シンオウの情報が全く無いのでどのタイミングで帰ればいいのかさっぱりわからんのだ。

 

 

「もう一生ここにいようよ〜」

 

 

ラティアスが横から抱きついてくる。

 

 

「やだよ。シンオウをぶらぶらしたいもん。それにソラもいるし。」

 

 

「………ねぇお兄ちゃん。なんで別の女の話してるの?そんなにあのメスの方が大事なの?ねぇねぇねぇ…」

 

ラティアスがすかさず目からハイライトを消し、俺を見つめながらとんでもない力で俺の右腕を抱きしめていた。

 

 

「……帰るって約束しちゃったからな。約束は普通守るだろ?」

 

 

「へぇー…………」

 

 

怖いです。笑ってるのに目が全く笑ってないんですもん。

 

 

『速報です。シンオウリーグを最年少で制覇し、チャンピオンとなったシロナ氏が本日ホウエン地方に上陸しました。』

 

 

「は?」

 

 

テレビ画面を見るとそこには大きな客船から降りてくるシロナさんの姿があった。

 

 

「しかもミナモの船着場じゃん。遭遇したらやばいから引きこもってよう。」

 

 

『ピンポーン』

 

 

すると、突然インターホンが鳴った。

 

 

「あ、誰かきたな。行ってくるから離してくれ。」

 

 

「むぅ……」

 

 

ラティアスはしぶしぶ俺の右腕から離れた。

 

 

 

 

 

「はーい今いきまーす。」

 

 

俺は玄関の扉を開けた。

 

 

「はーい、どちらさまです………か………。」

 

 

「久しぶりね。遊びに来ちゃった☆」

 

 

そこには腰まで伸びた長い金髪に黒いスーツ……は来ておらず白いブラウスといった少し薄着でただでさえスタイルもよく、胸もあり目のやりどころがないくらい魅力的でまた、俺をホウエンにまでおいやった張本人、シンオウリーグチャンピオンのシロナがいた。

 

 

「………。」

 

 

俺は思考する。そして、俺の出した答えはただ一つ。

 

 

『バタン!!』

 

 

「えっ、ちょっ!?」

 

 

扉を迷わず閉めたのだ。これでいい、これでいいのだ。てか、なんでこの人俺のいる場所知ってるんだよ、誰にも教えてないはずなんだが……。さてと、メアたちが買い物から帰ってくるまで一眠りするかな。

 

 

「………今から5秒以内に開けないとガブちゃんのげきりんでドアをこの部屋ごと吹き飛ばすわよー、はい、ごぉー、よーん…」

 

 

「すみません調子乗りました。どうぞどうぞ。」

 

 

野宿&借金生活は嫌なので素直に開けました。ハイ。

 

 

 

***

 

俺は今シロナさんと向き合って座っている。そして尋ねた。

 

 

「なんで、俺の場所知ってたんですか?」

 

 

「君のお母さんから聞いたのよ。そしたらあっさり教えてくれたわ。」

 

 

「マジかよ……!」

 

 

何故張本人であるシロナにあっさり教えてしまったのか少し母さんの考えが理解できなかった。

 

 

「てか、ポケモンリーグ大丈夫なんですか?わざわざこんなところまで来て……」

 

 

「別にいいわよ。そもそも四天王にすら勝てないやつらばっかりだし。最近のトレーナーって。」

 

 

「え、四天王ってそんな強いんですか?」

 

 

「そうよ、ってその話はどうでもいいの!なんで、あの時逃げたの?」

 

 

「あの時って?」

 

 

オレハアノトキノコトナンテシラナイ……シラナイ……

 

 

「私と戦った時よ!!」

 

 

「だって、なんか照明が勝手に落ちたから、こんな負け試合やってられなくてラッキーって思って逃げたんすよ。当たり前でしょ?」

 

 

「私のルカリオ倒したくせに?」

 

 

「あんなのマグレですよ。そもそも相性もあるでしょ?」

 

 

「マグレで私のルカリオは倒せないわよ!!」

 

 

シロナが腕をブンブン振りながら言った。その時に同時にシロナの胸も揺れて、とても、眼福であったことは伏せておこう。

 

 

「それに……唯一の友達の貴方がいなくて寂しかったんだから……。」

 

 

は?うせやろ、友達いないの?

シロナは俯いてとても寂しそうな表情を浮かべているあたりマジらしい。

 

 

「電話しても出ないし……、自宅にわすれていったんでしょ?」

 

 

「あっ」

 

 

そう、実は携帯を家に忘れて来たのだ。すると、シロナはポケットから何か………ハッ!!俺のケータイ!?それを開く、すると待ち受けに映されたのは、

 

 

 

『不在着信 242件 新着メール 184件』

 

 

「うっわ、どんだけメールしてるんすか…」

 

 

「だっ、だって……!急にいなくなるから不安だったんだもん……!」

 

 

急に弱々しく話すシロナさんを見た俺は驚いていた。てか、もう泣きそうじゃん、俺がやったことってそんなやばかったのか…?

 

 

「勝手にホウエンに逃げたことは謝ります。ごめんなさい。でも、言っておくとその原因を作ったのは貴女ですからね?」

 

 

「…はい。」

 

 

「で、今日どうするんですか?どっかホテルにでも泊まるんですよね?」

 

 

「えっ…」

 

 

「えっ?」

 

 

急にシロナさんが驚いたような表情をする。

 

「泊めてくれないの?」

 

 

「えっ?」

 

 

「えっ?」

 

 

「「………」」

 

 

お互いに気まずい状態になってしまった。

 

 

「てゆうか、まずいですよ!もし、見つかって記事にでも取り上げられて見てくださいよ!一巻の終わりですよ!」

 

そう、記者とかは割とその辺に敏感なのだ。仮にバレたりしてみろ、わざわざホウエンまで逃げて来た意味がなくなるじゃないか。

 

 

「別にいいわよ。それくらい。というわけで泊めさせてもらうわね。」

 

 

「…………はぁ。」

 

 

結局シロナさんを泊めることになってしまった。食費がががが……

すると、後ろのおれの部屋の扉が開く。

 

 

「ねぇ、お兄ちゃ………ん……?」

 

 

ラティアスだった。その後、一瞬で間合いを詰められ、ハイライトのない目で見つめられた。

 

 

「……だぁれ?その女……」

 

 

「し、シロナさんだよ。そ、そのシンオウリーグのチャンピオンの人なんだぜ!?すすすごいだろ!!!」

 

 

「ふぅん……で、あのメスと何かしてたの?」

 

 

「いやいやいや、何もしてないって!!話してただけだよ!!」

 

 

「………ならいいけど。」

 

 

許されたらしい。ラティアスはそのまま俺の隣に座り、体を預けて来た。

 

 

「むふぅ……」

 

 

「その子は?お兄ちゃんって呼んでたけど。」

 

 

「えっと、ラティアスです。色々あって妹になりました。」

 

 

「えぇ!?ラティアスって、あのラティアス!?」

 

 

「そうです。めちゃくちゃ懐いてて離れようとしないんですよ。あと、そのせいで胃が痛いです。」

 

 

「……なんでハルトくんってそんなに珍しいポケモンたくさん持ってるのよ……しかも、人型だし。」

 

 

シロナさんは呆れたように言った。実際に俺もそう思う。俺の手持ちに普通のポケモンが一人もいないのだ。

 

 

『ガチャ』

 

 

「ただいま戻りましたー!」

 

「マスター!」

 

 

 

「ぐぼぇ!?」

 

 

メアがすかさず俺の胸に飛び込んで来た。

 

 

「ふぇぇ……ましゅたぁの匂い……♪」

 

 

俺の胸に顔を埋め、匂いを嗅いでくる。その時のメアの表情はとても蕩けていてすこし恐怖を感じた。

 

 

すると、俺の左側にアオイがすとんと座り、俺の左腕に抱きついてきた。

 

 

「ご主人様♪」

 

 

大きく()()()アオイの双丘が俺の左腕に当たり、柔らかく大きく変化する。彼女は半年前とは違う。ピンクの瞳、そして、腰まで伸びた()()()髪にてっぺんだけピンク色のアホ毛が立っている。そう、本来ならアホ毛以外もピンクになるはずが実際は水色だった。彼女は色違いのミロカロスなのだ。そして、何故か知らないがメイド服を着ている。進化した時は急に背が伸び、スタイルが遥かによくなって自分でもびっくりしたが、胸が大きくなりすぎて進化前の時のメイド服の胸元が破れてしまったことは今でも脳裏に焼き付いている。……あれはほんとうに忘れられんわ。ほんとうに凄かったよ、うん。(鼻血)

 

 

アオイのうつくしさを上げるのを確かめる際にポケモンコンテストに出ようとした際に、「なんでご主人様以外のニンゲンの測りでうつくしさを決められないといけないんですか?」と真顔で言われた時は焦ったものだ。それでもミナモシティのコンテストではマスターランクの大会で優勝し、世界大会にも推薦された。勿論、興味なんてないので断ったが。おかげでアオイの美しさはホウエンでもトップレベルだろう。それに、今のメイド服でも威力は凄まじく、大きくなり強調された胸と、見えるか見えないかギリギリ、いわゆる絶対領域が素晴らしいとおもう。(語彙力)

 

あと、料理がめちゃくちゃ美味しい。この家に住み始めてから徹底的に家事のことを学び始め、料理のスキルを徹底的に磨き、気がつけばミナモシティの中で一番のレストランのシェフを負かせたほどであった。ミロカロスに進化し、さらなる美貌を手に入れた彼女はパーフェクトメイド(既視感)へと神化(しんか)を遂げたのだ。

 

 

「…はは、す、凄いわね…」

 

 

流石のシロナさんもこれには苦笑いのようだ。だろうね、正直暑苦しいもん。それに動けないしね。

 

 

 

「おい、暑苦しいから離れろー。」

 

 

 

「「「いや(です)」」」

 

 

「頼むから離れてください。俺を蒸し殺す気ですか?」

 

 

 

「マスターからすれば3人の女子に囲まれてるんだからむしろ役得じゃないんですか?」

 

 

「言うな。」

 

 

その核心を突く一言まじで辛いからやめてほしい(切実)

 

 

 

「……お兄ちゃんの半径1メートル以内にいてかつ、接触してないと死んじゃいます。(直球)」

 

 

 

「なにその病気、怖い。」

 

 

 

ラティアスの力が強すぎて腕がちぎれそうなんですが。

 

 

 

「えっ、私を捨てるんですか?ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい…」

 

 

アオイにおいては泣きながら左側からすがるように腰に抱きついてきて、全く離す気がない。てか、胸当たってるからやめてほしい。

 

 

…と、このようにまとも?なのがメアしかいないのだ。残り二人は色々とヤバイ(確信)

 

 

 

「あら?そういえばあのガブリアスの子は?いないみたいだけど。」

 

 

 

「あー、そらのはしらでレックウザとタイマン張ってるらしいです。」

 

 

 

「えっ!?」

 

 

そう、ヤヨイはトレーニングに明け暮れた日々を送っているのだ。週に一回帰ってくるのだが、おととい帰ってきた時にレックウザを連れてきた時はまじで焦ったものだ。話すとめんどいので話さないが。

 

 

すると、突然玄関の扉が吹き飛んだ。

 

 

「!!?」

 

 

そこには息を上げながら真剣な表情をしている。紺色のジャージを着たヤヨイがいた。胸周りがきつs.ゲフンゲフン!

 

 

「おとうさん!シロナさんが来たってホント!?」

 

 

「あ、あぁ、ほらここにいるぞ。」

 

 

「こ、こんばんわ…」

 

 

「ま、待ってくださーい!はぁ、はぁ、早いんすよヤヨイさんわぁ……!!」

 

 

そして、ヤヨイの後に入って来たのは緑色の髪をツインテールにしており、ヤヨイとお揃いの緑色のジャージを着た女の子………こいつも胸が(殴)、実は彼女、レックウザである。

 

 

「あっ、お久しぶりっす!お義父さん!お邪魔してます!」

 

 

レックウザは俺に頭を深々と下げる。

 

 

「俺はお前の親になった覚えはないんですが?」

 

 

「そんな!ヤヨイさんの父親なら、私の父親も同然っすよ!」

 

 

どうしてそうなるのか。

実はヤヨイとこのレックウザ、二人はそらのはしらで鍛えあっている仲(らしい)のだ。二人がやりあった際に仲良くなったらしく、今でもそらのはしらでトレーニングを続けている。

 

 

「そんなことより!シロナさん!ガブちゃんさんはいないんですか!?是非是非、一戦交えたいのですが!!」

 

 

ガブちゃんさんって、そんな、さ○なクンさんみたいな呼び方やめろやw

 

 

 

「ごめんなさいね、ガブちゃん連れて来てないのよ。カンナギタウンで働かせてるから。」

 

 

「えぇー、そんなぁ……!」

 

 

ヤヨイががっくりと膝を落とす。

 

 

 

「働かせてるって何させてるんです?」

 

 

 

「先週くらいに大雨でちょっと土砂崩れが起きて家が一軒壊れちゃったのよ。その復興ってところね。」

 

 

「てか、主のシロナさんがこんなところにいて大丈夫なんですか?」

 

 

 

「いいわよ別に。」

 

 

冷たいなぁ……カワイソス、ガブちゃんさん。

 

 

 

その後も夕食を食べながら談笑していた。シンオウのことも聞けたので正直よかったと思う。そして、全員風呂を済ませ、寝ることになったのだが。

 

 

「シロナさん、俺の部屋使ってください。流石に客人にのソファーで寝かすのは申し訳ないので。」

 

 

「いいわよ別に。私はソファーで…」

 

 

「いいからいいから、そこは甘えてくださいよ。自分ソファーの方が寝心地いいので気にしてないですよ。」

 

 

「だめです。」

 

 

すると、急にメアが割り込んで来た。

 

 

「あのベッドはご主人様のみの為のベッドです。他者を寝かすわけにはいきません。」

 

 

何故かアオイもメアに同意している。

 

 

「なんでだよ?」

 

 

「「匂いが変わるからです。」」

 

 

「あ、シロナさんベッドで寝ていいっすよ。」

 

 

「アッハイ。」

 

 

「「えぇ!?」」

 

 

結局ベッドに寝かせることにした。匂いなんてどうでもいいのだ。

 

 

***

 

 

 

「………」

 

 

「……ふふっ」

 

 

「なんで来るの?しかも、ソファーなんだからクッソ狭いんだけど。」

 

 

何か隣がもぞもぞ動くから何かと思ったらアオイがいたのだ。月の光が少し当たってぼんやり見えるのだが、水色の薄いネグリジェを着ており、なかなかなかなかな格好をしているのだ。

 

 

「……お前本当に変わったなぁ。」

 

 

「それは悪い意味ですか?それともいい意味で言ってますか?」

 

 

「……いい方だと思ってくれ。本当綺麗になったよ。まぁ、それも全てアオイの努力の賜物だからな。そういうひたむきなところ本当に尊敬するよ。外見も内面も合わせて美しいよ。」

 

 

()()()()()……。私は貴方に出会わなかったら一生蔑まれてつまらない一生を終えてました。貴方に出会えたから私は変われた、貴方が居たから私はどんな辛いことでも耐えられた、全てご主人様のおかげです。だから私は恩返しがしたいんです。」

 

アオイはまっすぐ俺の目を見ていた。暗くてあまり見えないがそれははっきりとわかった。

 

 

「別に恩返しなんかしなくていいぞ。俺はただ事実を教えただけだからな。」

 

 

「ふふ、まぁ、私はご主人様のことを宇宙で一番愛してますし、もうご主人様から絶対に離れられないです。私はご主人様のモノです。だから、一生お仕えしますし、ご主人様が亡くなったら私もそのあとをすぐに追いますから。」

 

 

「よし、お前の忠誠心はよーくわかった。だから、ボールに戻れ。ソファーでただでさえ狭いのにお前が横にいるせいで余計狭いんだよ。」

 

 

 

「それじゃあ、こうすればいいですね。」

 

 

なにかを閃いたかと思ったらアオイは急に俺を強く抱きしめてきた。むにゅううううううううと俺の胸にアオイの豊満な胸が押し付けられてつぶされている。

 

 

「私の身体はすべてご主人様のモノなんですから、好きにしていいんですよ?ご主人様のやりたいことが私のやりたいことなんですから。」

 

 

「むぐぐぐ……」

 

 

てか、苦しいんですけど……あと、アオイのシャンプーの香りが俺を刺激する。

 

 

「あっ……///ご主人様、固くなって……ますよ……?」

 

 

例によって男の生理現象が発動する。しかも、当たりどころが悪すぎる。

 

 

 

「ふふっ、それじゃ私の『ハジメテ』もらっちゃってください♡」

 

 

やばい……このままだと堕ちる……!!でも、身体が動かせねぇ!!アオイのやつ、俺の力じゃ振りほどけないくらい強く、かつ丁寧に優しく抱きしめてやがる……!!

 

 

俺はするしかないのか、そう思った瞬間だった。

 

 

 

 

「なにしてるの……?」

 

 

そこには普段の明るさなど微塵も無い金髪の女性、シロナさんがいたのだ。

 

 

 

「何って見ればわかるでしょう?これから私の『ハジメテ』を捧げるんですよ。わかったらとっとと部屋に戻ってください。」

 

 

アオイも普段の穏やかさなど残っておらず、低く冷たい声をしていた。

 

 

「……………よ。」

 

 

「はい?」

 

 

 

「ダメよ……。」

 

 

 

「ハルトくんはそんなこと望んでなんていないわ。彼の表情をみればわかるわ。」

 

 

「あっ……」

 

 

 

 

 

 

 

「………ごめんなさい。」

 

 

アオイは震えながら俺に頭を下げてくれた。

 

 

「別にいいよ。別に気にしてな………いや、気にしてはいるなぁ。」

 

 

「ほんとにごめんなさい!!」

 

 

あれを気にしてないっていうのは無理があるからなぁ、仕方ないね。

 

 

「そうだ!」

 

 

シロナさんが指を鳴らしてなにかを閃いたみたいだが、俺の第六感がやばいと警告ランプを点灯させている。

 

 

「ハルトくんのベッドで3人で寝ましょう!」

 

 

「えっ……」

 

 

「いいですね!!」

 

 

「そうと決まれば早速部屋に行きましょう。」

 

 

「ちょっ、おまっ…!」

 

 

 

***

 

 

「ハルトくん…♪」

 

 

私は今まで生きてきた中で一番の幸せを味わっている。そう、隣にハルトくんが眠っているのだ。ハルトくんは私に普通に話してくれた唯一の友達であり、愛おしくて愛おしくて仕方ない人で、私の生きる希望なのだ。

 

 

私はカンナギの大富豪の末っ子として生まれてすぐに親に捨てられた。どうやら余計に生まれてしまったらしく邪魔だったらしい。捨てられた私はその後、召使いとしてどこかの洋館で働かされ、まともに休みもなく地獄のような日々を送っていた。周りの人間は幸せそうになる暮らしているのにどうしてわたしだけこんな目に遭わなければならないのかわからなかった。掃除をしている最中、ゴミ箱の中に一枚の紙が入っていた。

 

 

『ポケモンリーグ チャンピオンシップ』

 

 

そこには各地方で最強の、いわばチャンピオンと呼ばれる地位の人たちが載っていた。

 

 

「わたしも……つよくなれば、幸せな生活が送れるのかな…」

 

 

そのあと私は夜中に館を抜け出し、何日も飲まず食わずで歩き、コトキタウンのポケモン研究所に立ち寄った。そして、ナナカマド博士にポケモントレーナーになりたいと言って、ポケモントレーナーになった。それから私はシンオウで最強のポケモントレーナーとなるべく、死に物狂いで知識を蓄え、ポケモンの育成に励んだ。そして、ポケモントレーナーとなって早2年史上最速のスピードで私はシンオウの頂点に立ったのだ。たくさんのお金が入り、一躍お金持ちとなった私はやっと幸せな生活を手に入れた………はずだった。しかし、私がチャンピオンになった途端、カンナギの私を捨てた親から電話が入り、『帰ってこないか?』と言われたのだ。声は穏やかだったが明らかに私を利用しようとしているのは目に見えてわかった。カンナギに戻ってきたが、自分の家を作り、旅をしながらのんびり暮らしていた。しかし、環境が良すぎる方向に変わりすぎてしまったのか、周りの私を見る目が変わったのだ。チャンピオンとしてまるで珍しいものを見るかのような目、また私を見る男たちの視線は私の胸や尻にいっていた。当時はまだ幼かったものの何故か13才になったあたりから急に胸が大きくなり始め、大人の女性にかなり近い体型に変わり始めたのだ。正直うっとおしかった。

 

 

そんな何のために生きているのかわからないような状態だった私はコトブキシティで彼…ハルトくんと出会った。彼は私に普通に話しかけてくれた。他の人とは違う、ちゃんとシロナ(わたし)を見てくれていたのだ。そのことが嬉しくて仕方がなかった。そのあとチャンピオンマッチの時も電話をかけたのは彼の声が聞きたかった、彼と話したかったからだ。試合後に彼を呼び出したのは彼をもっと近くで見たかった、一緒にいたかったからだ。彼を中央に引っ張っていくときの彼の手の感触は心地よいものでそれだけで心が温かくなっていくのがわかった。その後私は決心した。この試合の後、彼にほんとうの想いを伝えよう、と。

 

 

 

しかし、彼はいなくなった。会場の照明が落ちたと同時にどこかへ消えてしまったのだ。そのあと、私は死に物狂いで彼を探し回った。彼がミオに住んでいるのは知っているが、家までは知らなかった。ミオシティに一月以上篭ったが、彼が現れる様子は一向になかった。彼に電話をしてもメールをしても一向に返事が帰ってこないのだ。ここまで音信不通だとふと思ってしまう。

 

 

「なんで……ハルト…くん……いや……!」

 

 

彼はもうこの世にはいないのではないか、と。そう考えた瞬間目から涙が溢れ出た。この世界で唯一私を見てくれた。彼は、彼だけは私と同じ次元、いや、もしかしたらその先の次元にいるのかもしれない。それでもよかった。彼は灰色だった世界に色をくれた。彼が居るだけで私の見る世界は全く違った。彼と一緒に居ることができるならどんなこともするつもりだった。

 

 

そして半年が経ち、遂に私は彼の居場所を突き止めることに成功したのだ。居ても立っても居られなくなった私は気づけば船に乗り、ミナモシティへと向かっていた。

 

 

 

 

 

こうして私は半年ぶりに彼と再会した。

半年の間でまた成長して男らしくなった彼を見たとき思わず涙が溢れそうになった。そして、今はこうやって彼の隣で寝ている。こうしていることがどれだけ幸せなことか実感させられた。ハルトくんのことが大好きな彼のポケモンたちもいるが、所詮、ポケモンの戯言だ。ポケモン風情が人間にかなうわけがないのだ。彼のためにこの恵まれた身体があると考えると嬉しくて仕方がない。彼になら私の全てを差し出せる。

 

 

「ふふっ、ハルトくん……♡」

 

 

彼の腕を抱きしめ、最高の幸せを感じながら意識を落としていった。

 

 

***

 

 

「……眠れねえ。」

 

 

 

 

(……まともに寝られる日はないのか…!?)

 

 

両方から柔らかい感触を感じ、冷や汗をダラダラ流しながら必死に寝ようとする俺だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




この駄文は添い寝シーンで成り立っているのだ。

ps.2018.4/25 文章を一部訂正

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