本当に申し訳ないです。
ということでホウエン編はここで終わりとなります。
それではどぞ。
私の名前はアラキ、研究者の一人である。そんな私は子供の頃から宇宙の魅力に惹かれて、宇宙について調べ調べ調べ尽くして、気がつけばホウエンで唯一の宇宙研究施設、トクサネ宇宙センターで局長として研究に励んでいた。この施設では世界トップクラスの宇宙に関する設備が整っており、宇宙には人工衛星、宇宙ステーションもある。宇宙好きの私としては最高の職であった。
しかし、そんな楽しい日々も続かなかった。なんと、宇宙から隕石が地球の方向へ向かってきているのだ。最初は耳を疑ったがレーダーによる精密な計算によるとほぼ確実に、いや絶対地球に衝突するとのことだ。なんとかしなければと思い、どんな方法を取れば隕石を破壊することができるか色々思考し、演算処理に掛けてみるものの不可能なものばかりだった。
そこに現れたのは流星の民と名乗る者だった。彼女が言うにはあの伝説のポケモン『レックウザ』が遠い昔、隕石から地球を守ったと言う話だ。そんな迷信に近い話、信じるのも難しかったが希望がある以上、それに頼るほか無かった。しかも、その件に関して元ホウエンリーグチャンピオンの『大誤算』に加え、新生チャンピオンとなった『ユウキ』くん、更には以前はグラードンやカイオーガを操ろうとさまざまな悪事を企てて世界を破滅に導こうとしていたが今はその罪の償いとして、様々な場所で建設や工業、農業など幅広く活動している新生マグマ団とアクア団も協力に名乗り出たのだ。流星の民を名乗る少女『ヒナ』はそらのはしらで儀式の準備に取り掛かりレックウザを迎える準備を、大誤算は我々とともに隕石による影響を少しでも抑えられないかと対策を練っている。ユウキくんはレックウザと対峙した時の為に所持ポケモンの強化を、新生マグマ団と新生アクア団は私設応援団を設立、彼らの応援の修練に励んでいる。今の我々には隙が全く無いと言っても過言では無かった。そう、ホウエンは一つになろうとしているのだ。
これならいける!!
私を含め、誰もがそう確信していた。
そして、迎える儀式の日、そらのはしら頂上では大誤算を始めとする、沢山の協力者が集まっていた。ヒナは床に描かれてある紋章のようなものの前で待機しており、その後ろにはユウキくんがボールを持って今か今かとレックウザを待ちわびている。そして、更に後ろにはマグマ団のトップ、マツブサとアクア団のトップアオギリが応援団長として総勢50名の応援団員を率いてユウキの応援をしようとしていた。途中、マツブサが虚ろな目で「カガリが『あ ほ く さ』って吐き捨てて出ていってしまったのが誠に遺憾であった…」と言っていたのが印象に残っている。
「よーし!それじゃパパッと始めちゃうよー!!」
そう言ってヒナは手を合わせ唱え始める。そう、儀式が始まろうとしているのだ。
***
「…………。」
俺はユウキ、先日、大誤算、もといダイゴさんを倒しホウエンのチャンピオンになった男だ。これから隕石を防ぐべく流星の民であるヒナさんのレックウザ召喚の儀式に参加していた。俺に任せられたのはただ一つ、『レックウザ』を捕獲し、レックウザとともに隕石衝突を阻止することだ。周りが一致団結し、この日の為に尽力して来た。
「よーし!それじゃパパッと始めちゃうよー!!」
そしてヒナさんの合図とともに詠唱が始まった。これからレックウザが召喚され、ここに飛んでくる…はずだ。
なんだろう、この胸騒ぎは……。
皆一つになって、以前は敵同士であったアクア団やマグマ団も今は仲間同士応援団とか言う正直必要なさそうなことをしているが協力してくれている。全く隙のない陣形のはずなのに………
なんだろう………ルネシティで確かにレックウザはいた。レックウザとカイオーガが協力し、グラードンを阻止しているのを見た。そして、彼らの目を見たときに思った、いや、思わされてしまった。
『
つまりどういうことかと言うと彼らの目は俺たちのことなんて見えていなかった。何か別の、もっと小さな物しか見ていなかったような、そんな感じがした。ねっとりと何か執着しきっているような、それだけの為にやっているような………あーダメだ、説明しきれないや。そんなこと考えてても仕方ない、今は儀式に集中しないと。
「うーん……」
「どうしましたヒナさん?」
「なんかるんってこないんだよねー、なんでかなー?」
るん?つまりどういうことだ?
「とりあえず詠唱続けてみるよー。」
やばい、なんか本当に嫌な予感しかしない。ヒナさんの予感は大概当たるから本当に嫌なことが起きる気がするのだ。
「うーん………これは……」
「どうしました?」
「レックウザとアクセスできないや、多分眠ってないね。なにか……別のことしてるよ。」
「「「えぇ!?」」」
ま さ か の 別 件
***
「そ、そんな……!」
私はがくりと膝から崩れ落ちた。レックウザを呼ぶことができない、それはつまり、最後の希望が潰えたことになる。こうなってしまった以上迎える結末はただ一つ、世界の滅亡だ。打つ手は打った、皆が一丸となり、できることは全てやった。しかし、すべて無駄だった、結局運命を変えることなど不可能だったのだ。こんな簡単に終わってしまっていいのだろうか……。
「……あー、なるほどねー。だからレックウザ来なかったんだー。これはこれで少しるんって来るかもねー。」
ヒナさんは少し苦笑いを浮かべながら天を仰いだ。何かに気がついたようだが、どうせ結末は変わらない。無駄なことだ。
『プルルルルルルル!!!』
すると、突然ポケットから携帯の着信音が鳴った。助手のアライからだった。
「……どうした?」
『……アラキさん大変です!!今すぐ戻ってきて下さい!!』
「……儀式は失敗した。もうどうしようもないだろう。」
『いいから!!』ブツッ…
いつも冷静なアライがここまで慌てているところを見るとまた一大事らしい。わたしは大急ぎでトクサネ宇宙センターまで戻ることにした。
***
「どうしたアライ!!」
私は観測室の扉を強く押し開けた。そこにはたくさんの研究員とその中心に助手のアライがいた。
「アラキさん!!これを!!」
アライはたくさんある中の一つのレーダーを指差す。そこには驚くべき光景が映っていた。
「なんだ……これは!!?」
二つの巨大なエネルギーがぶつかりあいながらどんどん上昇していっているのだ。
「うーんそうだねー、これはレックウザと………ガブリアスかな?」
「うおっ!?」
突然声が聞こえて振り向くとそこには流星の民であるヒナがいた。
「レックウザだと!?それは本当なのか!?」
「多分間違いないよ。だってレックウザとアクセス出来なかったし。一瞬ipアドレスを間違えたのかなーって思ったんだけど、間違ってなかったし、回線も良好だった。おねーちゃんでも多分出来なかったと思う。……これはあのレックウザ多分………されてるなー。」
「アラキさん!!二つの巨大なエネルギーは大気圏を突破!ぶつかり合いながらそのまま隕石の方へ向かってます!!」
「なに!?今すぐ人工衛星の方のカメラに切り替えるんだ!!」
「はいっ!!」
大気圏を突破したと聞いて急いで人工衛星の方にカメラを切り替えさせた。
そこに映っていたのは楽しそうに笑いながらぶつかり合う人型のガブリアスとレックウザだった。
「隕石との距離、50メートルを切りました!!」
本人らは気づいていないが間違いなく隕石との距離を詰めていっている。しかも、発せられるエネルギーは我々が放とうとしていたミサイルの威力をはるかに超越していたのだ。
「衝突します!!」
ズドオオオオオオオオオオオオオオン!!
耳の鼓膜を突き破るような爆音が響き、カメラの画像が乱れる。
少し経って目を開けるとそこには驚きの光景が映されていた。
「隕石が………なくな……った……!?」
そう、戻った映像を見たのだが、先ほどまであった隕石が消滅していたのだ。
この光景は我々を一つの結論へと至らせた。
「助かったのか……!?助かった!!!助かったぞおおお!!!」
『わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!』
周りの人達も喜び、狂喜乱舞した。そう、助かったのだ。地球はあの2匹のポケモンにより救われたのである。皆喜んでいてそれどころではなかったが、私は一つ異変に気がついた。
レーダーに地球のものとは思えない全く別のエネルギーの跡らしきものを発見したのだ。そのエネルギーの跡を元にそこから辿っていくと何故かは知らないがミナモシティのとあるアパートの一角につながっていた。そして、脅威が去った今、私の研究者魂に再び火がついた瞬間でもあった。
よし、そこに行こう!
私は決意し、すぐにミナモシティに向かう準備にとりかかった。
***
「……ここか。」
エネルギーを辿ったところ最終的にここ、ミナモの古いアパートの一室にたどり着いた。
『ぴんぽーん』
私は恐る恐るインターホンを押した、もしかしたらここに住んでいるのはとんでもないバケモノかもしれない。正直恐怖でいっぱいだった。しかし、1ミリでも好奇心、探究心があるなら別だ。無理をしてでもそれを知る必要がある、と私は思うのだ。
『はーい』
奥から声が聞こえた。……ん?男の声か?
そして、ゆっくりと扉が開いた。
「…えっと、その、どちら様でしょうか?」
出てきたのは見た感じ12.3才くらいの見た目の子供だった。一瞬場所を間違えたのかと思ってしまったが、エネルギーは間違いなくこの部屋から出ている、しかもすごく近い。
「私はトクサネ宇宙センターの局長を務めております、アラキという者です。」
わたしはとりあえず自己紹介をした。怪しまれて扉を閉められては話にならない。
「あっ、はい。で、その宇宙センターのトップが僕に何の用ですかね?」
少年は明らかにこの状況を飲み込めていないようだ。もしかしたら隠しているのかもしれない。それならいっそ……
「単刀直入に言います。アナタ、宇宙から来たポケモンを持ってますよね?」
「え?」
私はいきなり答えを迫ることにした。誤魔化されても困る、そういう時は一気に答えに迫るのが一番なのだ。明らかに彼は困惑している。
その時だった。
「…ッ!?」
突然、背筋も凍る絶対零度のようなそんな時寒気に襲われた。そして、彼の方を見ると彼の後ろに隠れるようにしながらも私のことを今にも殺さんとばかりの殺気を放ちながら私を睨みつけている少女の姿があった。
彼女の容姿は少し特殊で、オレンジ色の髪をしているのだが、そこからオレンジと青色の髪がツインテールのように伸びているのだ。その髪はゆらゆらと不規則にうごめいており、まるで触手のようだった。そして、何よりも驚いたのはこんなに幼いのに放つ殺気が凄まじく、近付けば殺すぞと言っているようだったのだ。
「……さん?……アラキさん?」
彼の呼ぶ声に私はハッと正気に戻った。
「大丈夫ですか?顔色が悪そうですけど。」
「…あ、あぁ、大丈夫だ。」
彼女の殺気が治まることは無いが何とか正気を保っていられた。彼女はこの間も彼の服の裾を掴みながら私を睨みつけていた。
「……そうですね。ここで話すのもアレですし、どうぞ中にお入りくださ………あ、ちょっと待っててくださいね?片してくるんで。」
そう言って彼はまた、中に戻っていった。
***
俺は一旦リビングに戻ることにした。
「いやぁ、やっぱリークされてるよなぁ。」
『……はると?』
デオキシスは心配そうに俺のことを見ていた。
「多分、デオキシスのことが気になったんだろうなあ、宇宙センターから来てるあたり間違いなさそうだ。」
『なんで?』
「やっぱ、宇宙から来たポケモンであるお前のことが気になったんだと思うよ?」
『……やだ…!はるとにならなにされてもいいけど、ほかのやつらにすきにされるのはいやだ…!』
デオキシスは震えながら俺に縋るように抱きついて来た。てか、俺になら何されてもいいのね。
「よっと……、大丈夫だ。絶対お前を守るからな。誰にも渡さないよ。」
デオキシスを抱っこしてあげて優しく頭を撫でてあげた。
『はるとぉ……!』
安心したのか俺の胸に顔を埋めてきた。しかも、ツインテール状になっているオレンジと青の髪が触手のようにして俺の身体に巻きついてきた。
『えへへ……これで、ずっといっしょだね…!』
「お、おう…そうだな。」
とりあえず、手持ちのやつら+αをどうにかしないとね。
「おーい、お前らーとシロナさーん。これからちょっと会合があるから全員俺の部屋にいてください。ちなみにこの大人数を部屋にねじ込むわけだからきっと窮屈に感じるでしょう。はい、嫌ならボールに入っててください。ボールが嫌なら我慢しててください。ちなみに絶対部屋から出てきちゃダメです。出てきたら罰を与えます。」
「マスターからの罰………おしおき……!」ゴクリ
「そこ、嬉しそうな顔するな。因みに罰の内容は一週間の間、お前らをパソコンに預けることだからな、嫌ならちゃんと我慢しているように!わかったな!」
「えっ、じゃあ私は?」
シロナさんがひょこっと顔を出した。
「シロナさんはメシ抜きです。ちなみに期限は俺の気分次第なので。」
「あっ、はい。守ります!」
「よろしい、そんじゃお客さん中に入れるから絶対余計なことするなよ?」
「「「はーい」」」
***
「すみません、お待たせしました。どうぞ中へ。」
五分ほどして彼は戻ってきた。しかし、私はその光景にとても驚かされてしまった。
そう、先程も一緒にいた少女、なんと髪の毛がホンモノの触手のように彼の腰に巻きついていたのだ。そして、彼の後ろに隠れて服の裾を掴んだまま、初めと同じように私のことを睨みつけているのだ。
「そ、その子は……!!」
「ま、まあ、このことも含めて話しますから……、さぁ、どうぞどうぞ。」
私は恐る恐る家の中へ踏み込んで行った。しかし、中は意外と普通でソファにテレビとどこにでもあるような普通のリビングだった。
「どうぞ、こちらにお掛けください。」
彼が案内したのは家族で一緒に食べる時に使うようなそんなダイニングテーブルだった。私は取りあえず席に座った。彼はキッチンの方に歩いて行った。私を睨みつけていた子も彼の服を掴んだまま一緒にキッチンへ向かう。見たところものすごく彼に懐いているようだった。彼に撫でられたりするととても嬉しそうな表情を浮かべて密着するのだ。私は彼女が人間ではないと確信している。レーダーが彼女に沿うように動いているのだ。そして、髪が触手のように自由自在に動いているあたり間違いないだろう。
「粗茶ですがどうぞ。」
彼はそう言ってお茶を差し出した。
「どうも。」
私は一口お茶を啜った。……美味い。というか、奥にある扉の隙間からとんでもない視線を感じるのは気のせいということにしておこう。
***
「で、貴方はこの子を求めて僕の家まで来たんですよね?」
彼はいきなり本題に切り出してきた。
「はい、本来なら今日私はここにいることすらなかったでしょう。」
「と、いいますと?」
「この地球は滅んでいるはずなのです。」
「…………。」
彼は黙り込む。何か知っているようだった。
「隕石がこの地球に衝突して真っ二つ、滅ぶ運命だったはずなのです。私たちも打つ手を打って必死に抗おうとしました。でも、どうにもならなかった、最後の手段として流星の民の儀式のもと、レックウザを呼び出し、隕石を壊す予定でした。しかし、呼びだすことも叶わなかった。……私は諦めていました。」
「研究者である貴方がそんな迷信的なことを信じたんですね。」
うっ………この少年、何気に痛いところを突いてくる。
「もう、それに頼るしか術はなかったんですよ。……話を戻します、その時二つのエネルギーがぶつかり合いながら隕石の方に向かい、そして、隕石を木っ端微塵にしてしまったのです。」
「………。」
少年はすごく深刻そうな表情をして黙り込んでいた。その瞬間彼が何かをしたのは間違いないと確信した。
「……どうしました?」
「いや、その……多分、うちの……ガブリアスがやっちゃったのかなーと……」
彼は苦笑いを浮かべながらそう言った。
「へ?」
「そ、そのー、レックウザとの戦闘に夢中になってて周りが見えてなかったらしいんですよ。気がついたらどかーんって壊してたらしいです。で、この子、『デオキシス』はその隕石の副産物みたいなものです。」
彼の膝の上に座っている少女、その子もやっぱりポケモンだったのだ。しかも私が探し求めていた宇宙から来たポケモンだったのだ!私の好奇心のレベルは最高潮に達しようとしていた。
「……多分アラキさん、この子を研究か何かに使おう!とか考えてると思うんですよね。」
ぎくっ!
「でもね、見たとおりこの子、俺から離れてくれないんですよ。今もこうして俺の膝の上に座ってますけど、実は彼女の
私はハッとなって彼を注視してみると水色と赤色の触手が彼のお腹あたりから腰にかけて巻きついていたのだ。
「トイレやお風呂まで一緒について来ちゃうから、多分アラキさんの研究材料にはなってくれないですよ。仮に強引に連れて行ったとして、損をするのはあなた方になるかと思います。」
「……ッ!……といいますと?」
「多分、トクサネ宇宙センター消えますよ?そして、また俺のところに戻ってきます。」
その一言で一気に私の背筋が凍るように震えた。デオキシスに関しては諦めるしかないと思わされてしまった。その時点で私の負けなのだろう。
「……そうですね。彼女は貴方にとても懐いているようだ。宇宙から来たとはいえポケモン、貴方から離すなんて無理な話ですよね。」
彼も微笑み、
「わかってもらえて嬉しい限りです。」
***
「そういえばなんでお宅のガブリアスとあのレックウザは戦ってたんですか?」
すると、彼は目をそらし
「……知らないです。」
「……そ、そうですか…。」
なにか話せないような事情があるのは目に見えてわかった。でも、ここで無理やり聞き出すのもやっぱり最低だt「ただいまー!!」……えっ?
「あっ、やべ。」
玄関の方から二人ほど家に入ってきたようだ。
「いやあ、やっぱ強いっすねヤヨイさん最近自分が負けることの方が多くなって来ましたよ!」
「そんなことないよ!殆ど互角だったし、
……は?レックウザ?
今レックウザって言ったよね?
なんでいるの?
え?
なんで???
そして、バッと彼の方を見ると、彼は明後日の方向を向いてただの呼吸と化した口笛を吹いていた。顔が青ざめているあたり何かありそうな様子だった。
「な、なんでレックウザがここに来たんですかね…?」
「あっ、えーっとぉ…」
「そんなの決まってるじゃないすか!!」
そう言ってレックウザは彼の右腕に抱きついて言った。
「この人は私の『 お と う さ ん 』だからっすよ、娘がお義父さんのところに帰ってくるのは当たり前でしょう?」
「えっ!?」
「ちょw」
「義理だけどねー。」
ガブリアスも彼の左腕に抱きついて頬ずりをしていた。表情はかなり緩くなっており、気持ち良さそうだ。
「んぅ……♡戦うのもいいけどやっぱりお父さんと居るのが一番だよねー、お父さんの匂い大好き…///」
「私もッスよぉ…///」
***
「コホン……、今までのことは全部忘れてください。」
「えっ?」
「忘れてください。」
「いや、その……」
「忘れろ。」
「アッハイ。」
とりあえず整理すると、彼、ハルト君はなんと既にレックウザを捕まえていたのだ。しかも、レックウザの方からボールに入ってきたというのだ。事情はよくわからないがすごく懐かれているのは目に見えてわかる。
「………。」ギュウウウウウ……!
「待ってデオキシス、痛い痛い痛い痛い!」
ムスッとした表情をしたデオキシスが彼の胸に強く抱きついているのだ。妬いているのだとしたら中々可愛いと思った。
「ふぅ、とりあえずありがとうございました。わざわざ話に応じてくださって。話を聞けただけでもいい経験になりました。」
「……そうですか、なら良かったです。また、良ければお話しましょう。」
私は玄関で軽く挨拶をし、ミナモシティを後にした。
さてさて、宇宙にはまだまだ知らないことがいっぱいあるようだ。その未知の神秘について考えるとワクワクしてくるものだ。よし、また研究を再開しよう。
***
「………よし、帰ったな。」
俺は挨拶をして出て行ったのを確認した。
「おーい、もう出てきていいぞー。」
バタン!!!ドタドタドタ!!!
ドアが強く押し開けられた音、そして、騒がしくこちらの方に来る足音………俺は自然と警戒態勢に移行する……。
「マスター!!」
「ハルト……!!」
「ハルトさん…!!」
「ご主人様!!」
正面からはメア、左右はカイオーガとグラードンに固められ、後ろからはとてつもない柔らかさとともにアオイから抱きしめられた。
「なっ!?お前らどうしたいきなり!?」
「そりゃあ、マスターの成分を補給するためですよ。」
メアがさも当然かのように答える。てか、なんだよ、俺の成分って。
「……ハルトに定期的にぎゅーってして成分を補給しないと、苦しくておかしくなってしまいそうになるの。」
と顔を埋めるカイオーガ。
「そ、その、なんだか最近ずっとハルトさんのことばかり考えてるように……その、なっちゃって……えへへ///」
頰を赤らめてニヤつきながら腕に抱きつくグラードン。
「普段は自重してあげてるんだから今回くらいはいいですよね?ご主人様♪」
むにゅりとマシュマロのように形を変える双丘を俺の背中に押し付けて抱きつくアオイ。
四方から完全に押さえられ、女の子特有の甘いクラクラするような匂いに包まれたまま、リビングへと連れていかれたのだった。
***
ミナモシティ砂浜付近にて
「さて、帰ったらとりあえずレックウザの話でも聞かせてやるかな。」
私は帰るためにエアームドを出そうとした瞬間だった。
「ちょっと待つっす。」
後ろから女性の声が聞こえ、呼び止められたのだと気づいた私は振り向いた。
「なに……か……ね………」
私は目を見開いた。
「レ、レックウザ……!、」
そこにいたのは、さっきまで彼の家にいたはずのレックウザだった。にこやかな笑みを浮かべてはいるが瞳は暗かった。それが余計に私の恐怖を駆り立てる。
「いやぁ、ちょっと忠告をしておこうと思いましてね。」
「ち、忠告…?」
「さっきのお義父さんと話してた内容に関しては口外は禁止ってことです。」
「ッ!!」
釘を刺されてしまった。デオキシスやレックウザのことに関しては素晴らしい研究材料でもあり、いい話題でもあると思っていたのだが、本人直々に忠告されるとは……!
「もし、これを破ることがあったら……
「な………!?」
消し飛ばす。彼女は間違いなくそう言った。彼女の瞳はまっすぐと私を射抜く、冗談なんかじゃない、そう確信した、いや、確信させられてしまったのだ。
「で、でも!!あなた一人じゃホ、ホウエンを消すなんて、そんな……!そんなことができるはずない!!」
そう、レックウザ一匹になにができるというのか、全てを海に沈めようとしたカイオーガや水を枯らして全て陸に変えてしまうグラードンならあり得るのかもしれないが。
「……おい、私を一体誰だと思ってんだ?」
レックウザから凄まじい殺気が放たれる、思わず意識が飛んでしまいうになった。
「あの隕石を壊したんだぞ?その力を使えばホウエンを更地にすることくらいわけないさ。いや、あんな石っころ、ヤヨイさんなら小指で受け止めてしまうだろうがな。……それに。」
「
…………は?
今なにを言ったのか一瞬わからなかった。
グラードンもカイオーガも彼のモノ……だ……と…?
「あの時カイオーガと協力してグラードンを止めたのもそうだ。お前らニンゲンはホウエンを守るために戦ってくれたとか勝手に思い込んでいるようだが……………そんなわけないだろ。あの時、ひでりの所為でお義父さんは倒れていたんだ。このままこの状態が続けば死んでしまうかもしれない………そう思ったからグラードンを止めた。……それだけだ。別にお義父さんの故郷はシンオウだからホウエンが消えても問題はないはずだ………いや、あのアパートが無くなったら悲しむかもしれない……移動させればいいか。」
「何故だ……!何故あんななんの変哲もない普通の人間にそこまで執着するんだ…!?」
そう、伝説とも呼ばれるポケモンがなんであんなどこにでもいるような人間、しかも子供に尽くせるのか。全く理解ができなかったのだ。
「
そう力強く言い放ったレックウザの光のない黄色い瞳には彼の姿しか映していないように見えた。
***
あれから更に月日は流れ、気づけばもう半年も経っていた。
「……シロナさんっていつ帰るんですか?もう居候して半年過ぎましたけど。」
そう、旅行という名目のもと、ホウエンに来たはずなのに既に半年以上経ってしまっているのだ。ちなみにシロナさんの携帯の着信履歴を覗いたことがあるのだが、なんとポケモンリーグの方から100件を超えるほどの電話がかかってきていた。
「最近チャンピオンなんてどうでもよくなって来てるのよね。こうして貴方と一緒にいる、それだけで幸せなの。」
「……じゃあ僕がシンオウに帰ったら貴女もリーグに戻ってくれますかね?」
「もちろんよ。私はあなたについて行くから。」
そう、いい加減ほとぼりも冷めている頃だろうし、ちょっとホウエンでも怪しい雰囲気になってきてるからとっとと出て行った方がいい気がしたのだ。
「よし、シンオウに帰るか!(唐突)」
「はい!」
「うん!」
「はーい!」
「かしこまりました!」
「…わかった…!」
「はいっす!」
「は、はい!」
…うーん、返事の数か2倍くらいになってる気がするんだが……。
「えっ、
デオキシスは責任持って育てて上げないといけないから連れてくとして流石にホウエンの伝説のポケモンを連れて行くのは気がひける部分もあるんだが…。
「……?ついてくるのおかしい?」
3人とも心底疑問そうな表情で首をかしげていた。
「わ、わたしはもう、ハルトさんの、そ、その
光のない怯えるような瞳は間違いなく俺に向けられていた。しかも三人ともからだ。
「……ハルトのいない世界なんて考えられない。」
「ハルトさんとヤヨイさんさえいれば、私は他がどうなろうと関係ないっすから……。」
「……はぁ、わかったよ。おまえらもシンオウについて来なさい。」
「「「やったあ!!!」」」
なんでこんなに彼女らを執着させてしまったのか正直よくわからないが、責任は取らなければならない、だから連れて行くことにした………ってことにしておこう。てか、そうだよね???
こうして俺はたくさんの仲間を引き連れ、一年ぶりにシンオウに帰ることとなったのであった。
なんかヒガナって子があんまり気に入らなかった(個人差あり)から一文字抜いてみたらなんか某音ゲのキャラになりました。
ちなみにこれだけなのでクロスオーバータグはつけません。予め言っておきます。
因みに次回投稿まで期間空くと思うので気長にお待ちください()