悪夢の少女と   作:ヤマシロ=サン

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2ヶ月も間を開けてしまい誠に申し訳ないです。
ちょっとヴァンガードの方に浮気してました。

今回R-15ちょっと超えそうなので注意です。


第22話 帰還

「ただいまー」

 

俺は玄関の扉をゆっくりと開けた。

そう、およそ一年ぶりに我が家へ帰って来たのだ。

 

「おかえりなさい。」

 

そして、奥から出て来たのは懐かしく、見覚えのある顔、そう、母さんだ。

 

「ハルト……大きくなったわね……」

 

「うん、確かに背は伸びたかな…、ちょうど成長期なのかもしれないね。」

 

 

「向こうでポケモン捕まえたりしたの?」

 

 

「……ッ!」

 

 

ギクリ

 

 

「う、うん、まぁ、ぼちぼちかなぁ……あっはははは……」

 

「捕まえてるのね、それじゃあ見せてちょうだい?」

 

 

ギクッ!!

 

 

「そ、そうだなぁ……」

 

 

やっぱり見せないといけないですよねー!!さてさてどうしたものか、流石にグラードンやカイオーガを見せたら度肝抜かしてしまいそうだし……ここは無難にコイツかな……。

 

 

「出てこい!アオイ!」

 

 

俺はボールを宙へ投げた。ボールが開き、中から出て来たのは真っ白な身体に水色の眉から伸びた髪、そして金色の綺麗な尾びれを持つ、正真正銘の()()()()()姿()()()()()()()だった。その堂々としていて、それでも美しい佇まい、人の姿でも、ポケモンの姿でも魅了される、いつくしみポケモンとしても名に恥じないそんな彼女の主としてここまで誇らしく思えたことはないだろう。

 

「まぁ……!ミロカロスを生で見るのは初めてだけどやっぱり綺麗なのね…!」

 

母さんも思わず目を見開いた。

 

「うん、そうd、いだだだだだだだだ!!!待って待って、痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!巻きつかないで死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ!!」

 

そう、いくらポケモンの姿をしていようと中身はあのアオイなのだ。当然過剰なボデイタッチもしてくる。しかし、人の姿をしている時よりかは遥かにタチが悪い。頬ずりしてくるところまではいい、まだ可愛らしくて許せる、しかしそれ以外の全ての行動が完全にヤバいのだ。まず、とんでもない力で俺の体に巻きついているところだ。てか、もう完全に殺しにかかってるよね?人の姿をしているときは抱きつかれてもせいぜい胸の柔らかい感触で理性が飛びそうになるだけで済むのだが、ポケモンの姿だと意識どころかこの世から飛ばされてしまいそうになる。つまり、命が危うくなるのだ。

 

「あら、その子すごくハルトに懐いてるのね、ふふっ♪」

 

「あの、死にそうなので助けてください。」

 

すると、突然目の前が光で包まれ、眩しさで思わず目をつむった。すると、さっきまでの締め付けられるような苦しい感覚はなくなり、その代わり、とっても身に覚えのあるあの柔らかい感覚が何故か俺の顔にあった。

 

「むぐっ!?むぐぐぐ……ッ!!?」

 

「あんっ……♡ご主人様の吐息が………♡」

 

てかなんで人の姿に戻ってんだよ。ポケモンの姿でいろと指示したはずなんだが?

 

「アオイ、私のマスターになにしてんですか。」

 

すかさすメアが止めに入った。

 

「ご主人様は私を選んだんですよ、ハズレはとっとと戻ってください。」

 

「別にお母様とはもう知り合ってるから私はハズレって訳じゃないです。やり過ぎだって言ってんですよ。マスターに巻きつくなんて、殺す気ですか?」

 

「だから、途中でヒトの形になったじゃないですか。」

 

「マスターと約束したでしょ、ポケモンの姿でいるって。それにその憎たらしい脂肪の塊をマスターに押し当てるのをやめろ。」

 

「あのときご主人様に救われた瞬間からこの身体はご主人様のモノなんです。必死に努力を積み重ね、今のこの姿、『ミロカロス』になったのも、料理を勉強しご主人様のお口に合うような料理を作れるようになったのも、家事を全てこなせるように頑張ったのも全てご主人様のため。ご主人様にならこの身体をどんな風にされても構わない、ご主人様が一つになりたいと申せば、喜んでこの身体を捧げるつもりですから。」

 

「そんなの私も同じですよ。マスターになら何されてもいいです。」

 

「お前ら、聞いててこっちが恥ずかしくなるからそろそろやめてくれないかな?」

 

「ハルト、そのミロカロスってもしかして人型なの?」

 

「ん、あぁ、そうだよ。なんか進化させたらヒトの形になってた。」

 

 

「やっぱり、ミロカロスなのね……ヒトの形をしてても美しいわ。」

 

「お母様にも褒めていただけるなんて、嬉しい限りです。」

 

「で、そのメイド服はなに?ハルトの趣味なの?」

 

「んなわけあるかい。アオイが勝手に着てたんだよ。」

 

前世には一応都市部に行けばメイド喫茶なるものがあったらしいがあいにくど田舎に住んでた俺には縁遠いものだった。だから断じてメイドに興味はない!

 

「私はご主人様に命を助けてもらいました。だから、私はご主人様に一生お仕えすると決意したのです。」

 

「まぁ、ミロカロスに進化したのは間違いなくお前の努力の成果だけどな、俺は何もしてないさ。」

 

「ご主人様が私の生きる理由になってくれました。だから、頑張れたんです。ここまで成長出来たんです。今もこうしてご主人様のそばにいることができる、それだけで十分幸せなんです。全てご主人様のおかげですよ。」

 

アオイはそっと俺の肩に寄り添ってきた。そして、耳元で囁く。

 

「……だから、いつでも私を襲っていいんですよ?その為の私の身体なのですから♡」

 

「おいやめろ。」

 

わざと胸が変形するように俺の腕に押し付けてくるアオイ。本当にシャレにならんからやめてほしい。

 

「むー、私だってマスターの為に胸が大きくなるように頑張ったんですからねっ!」

 

メアも負けじと反対側から抱きついてくる。別にアオイが極端なだけであってメアも人並みにはあるんだからな?

 

 

『はると……?』

 

突然脳内に語りかけてくるような幼い声、彼女だ。

 

振り向くと、むすっと頰を膨らませたデオキシスがいた。いつのまにボールから出てきたんだよこの子……。そして何を思ったのか、背後から抱きついてきたのだ。背が低いので腰あたりになるのだが、それでも柔らかい感触は免れない。

 

『わたしだって……まけないから。』

 

いやいやいや!そんな対抗心いらないから!!

 

「あら、この子は?小さくて可愛いわね……!」

 

「んぅ…///」

 

母さんがデオキシスを抱きかかえて優しく撫でている。てか、母さんにならいいのね。

 

「デオキシスって言うんだ、宇宙から来たポケモンらしいよ。」

 

『……?わたしははるとのこどもだよ?』

 

デオキシスが不思議そうに首を傾げている。

 

「へぇ、この子もポケモンなのね。あなたの周りって変わったポケモンが多いわよねぇ。みんな人型だし。」

 

ははは、実はレックウザやカイオーガ達もいるだなんて口が裂けても言えねえや。

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

あの後は久し振りに家族で夕飯を食べた。結局、我慢できなかったレックウザやカイオーガたちが出てきちゃってどうなることかと思ったが、母さんや父さんはあまりポケモンに詳しくなかったことが幸いして、あまり騒動にはならずにすんだ。そして、気づけばもう寝る時間になっており、俺は一年ぶりの自分の部屋で寝ることにした。船での長旅で疲れたのを察してくれたのか、俺のポケモン達はみんなボールの中に戻ってくれた。久しぶりに俺は、ひとりで寝ることができたのだ。

 

 

 

 

 

「………んぁ……。」

 

何故か目が覚めた。部屋は真っ暗でまだ夜は明けていないようだ。起きてしまった原因は不明かと思ったが、とてつもない尿意が俺を襲った。眠気で半分ぼーっとしながらも早足でトイレに向かった。

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「ふぃー……スッキリした。ふぁぁ……さて、寝ますかね。」

 

用を足してスッキリした俺は部屋に戻り、扉を開けた瞬間だった。

 

 

 

「………すぅーーー……んん……はると……、はるとぉ……!」

 

 

さっきまでトイレに行っていて誰もいないはずの俺のベッドの上で誰かが俺の枕に顔を埋めていたのだ。

 

 

「……誰だ?」

 

部屋が暗くて顔がよく見えない、でも、どこか聞き覚えのある声だった。

 

「……ハルト?」

 

その影は俺に気づいて振り向いた、黄金の瞳に水色の髪、灰色のパーカー、間違いない、『彼女』だ。

 

 

「ソラ……なのか?」

 

俺が驚いたのはソラが酷くやつれていたことだった。目元に隈ができており、一年前に別れたときよりもかなり痩せているように見えたのだ。

 

 

「ハルト……?本当にハルトなの……!?」

 

「ほ、本物って………?ソラ一体何があったんだ…?」

 

「はると……ッ!!本物だ……!本物のハルトの匂いだぁ……!」

 

ソラは俺の胸に顔を埋める。その力はさっきまでの弱々しさとは違い、力強いものだった。

 

「お前、そんなにやつれて………、この一年何があったんだ?」

 

ソラは虚ろな目をして言った。

 

 

「……地獄だった。」

 

 

「え?」

 

 

「一年前、ボクはああやってハルトと離れることを受け入れたはずだった。……でも、ボクが思っている以上にボクの身体は正直だったみたいなんだ。」

 

ソラは再びハルトを抱きしめ、顔を俺の胸に押し付けた。そして、深く空気を吸い上げた。

 

「はぁ………♡ハルトの匂い……一度嗅ぐだけでボクの身体が快楽で満たされていくのがわかるよ……♡」

 

ソラは頰を赤らめ蕩けた表情をしていた。

 

「…ボクはハルトがホウエンに行ってしまった後、リッシ湖にいたんだ。約束もしてたしね。最初のうちはどうもなかったんだよ。守護者として悪い者は追い払って、ポケモンたちを守ってた。……でもね、ある程度日にちが経つとすぐにおかしくなり始めたんだ。だんだん無意識にハルトのことを考え始めたんだ。……たしかに考え始めたとは言ってもどうもなかった時もハルトのことは考えていたさ、でもね、違うんだ。頭の片隅に置いてたハルトのこと、それが段々と大きくなってきて気づけばいつでもハルトのことが頭に浮かんでしまうんだ。思い浮かべるたびに『ハルトに会いたい』って思っちゃうんだよ。3日も経った頃には湖と守護どころではなくなっていたんだ。何も考えられない…ハルトのことしか考えられなくなってたんだ。それからかな……、だんだん感覚も変になり始めたんだよ。何を食べても美味しくない、いやそもそも食欲が湧かないと言った方が正しいかな、空腹感も無いんだ。でもハルトのことを考えるだけで身体は疼くんだ。いくら慰めても全然収まらないし、どんどん強くなるばかりさ。……半年くらいかな、ハルトが居なくなって半年くらい経ったころだ、とうとうボクはハルトの幻覚が見えるようになってしまったんだ。最初はそれに気づかなくて飛びついたんだ。でも、すり抜けちゃう、何をしようとしてもハルトの幻覚が現れるんだ。ボクはそれにすがるように何度も捕まえようとした、抱きしめようとした、触ろうとしたんだ。……そんな当てのない地獄のような日々が一年も続いたんだよ?」

 

ソラは自嘲するように苦笑いを浮かべたがその表情はどこか暗く、寂しそうだった。

 

「………そして、今日ハルトが帰って来てくれた。第六感ってやつなのかな?今朝なんとなく、なんとなくだけどハルトが帰ってきたってことにボクの身体が反応したみたいなんだ。最初はこの感覚の正体がわからなかったよ、ほとんど動かないくらいまでボクの身体は衰弱してるはずなのにうずうずして、動かそうとしてるんだもん。気付けばボクはミオシティにいたんだ。どうやって移動したかはわからない。意識が戻った頃には夜だったし、もしかしたら這いずるようにして来たのかもしれないね。」

 

ソラはくすっと軽く笑った。俺はそれを見て少し不気味に感じてしまった。

 

「まず、ハルトの匂いが濃くなってたんだ。ハルトがホウエンに行ってから何回もミオを訪れてたんだけど、日に日に匂いが薄くなって行ってたし、洗濯されて匂いが消えた時は絶望したね。ハルトの匂いで家にいるのはわかったよ、夜中だったし、二階の窓から入ったんだけど、ボクがハルトの部屋に入った瞬間、急に頭がくらっとして身体の力が抜けちゃったんだ。飛んでたんだけど体に力が入らないからハルトのベッドの上に落ちちゃったんだけど、そのときはもっとすごかったよ、急に頭の中が真っ白になっちゃってさ、意識が飛びそうになったんだ。…………そう、イっちゃったんだよね、えへへ……♡」

 

 

 

「ハルトの周りにもハルトのことが好きなポケモンが沢山いるから独占しようだなんて思わない。でも、ハルトの側に居させてほしいんだ。」

 

ソラの抱きつく力は強まっていく。

 

「ボク…………この一年で間違いなくハルトがいないと生きていけない身体になっちゃった。ごめん、約束守れそうにないや。リッシ湖を護らないといけないのに……。」

 

虚ろな目でこちらを見てくる。ほおは真っ赤で息が荒かった。

 

「だからさ…、ハル……んぁッ!?………ひ……ぁ……ッ♡……ぁあ……ん……ッ……♡」

 

「ソラ!?」

 

突然ソラの身体がガクガクと痙攣しだしたかと思ったら、力が抜けたように俺の体に寄りかかる。ソラの顔は真っ赤で熱を帯びていた。

 

「はぁ……はぁ……、ごめ……ん……はると……♡……ぼく、また………イっ……ちゃ………

 

 

そのままソラは流石に寝息をたて始めた。どうやら眠ってしまったようだ。

 

「……まさか、ここまでとは思わなかったな……。」

 

 

俺は驚きを隠せずにいた。ソラがこの一年だけでここまで変わり果ててしまっていたことに、俺の思っていた状態をはるかに超えて来ていたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

「ん……んん?」

 

 

眩しい光が俺の意識を覚醒させる。

 

 

「もう朝か……。」

 

 

いつのまにか寝ていたらしく、気づけばもう朝になっていた。

 

 

「おはようございますマスター。」

 

 

体を起こすとそこにいたのはメアだった。

 

 

「……あぁ、おはようメア。」

 

「朝ごはん出来てますよ!下に降りましょう!」

 

「おっけ。すぐ降りるよ。」

 

階段を下り、リビングに出るとアオイが朝食をテーブルに並べてい

た。

 

「おはようアオイ。」

 

「おはようございますご主人様♪今日はご主人様が好きなベーコンエッグにしましたよ♪」

 

焼き加減や半熟の卵の状態……たしかに俺好みだ。好きだなんて言った記憶ないけど。

 

「おはようハルト。」

 

すると、ソラも俺のところにやってくる。昨日のような状態ではなく、幾分か調子も良さそうだった。

 

「おはようソラ。」

 

「あの………、昨夜はごめんね。変だったでしょ?」

 

「いいよ、別に気にしてないから。一年も離れてた俺が悪いんだし。」

 

そこまで末期症状がひどいとは思いもしてなかったが、それら全て含めて俺が悪いと思ってる。早く帰るべきだったな。

 

 

『ぴんぽーん』

 

すると、家のインターホンが鳴った。

 

 

「ん?なんだろこんな朝っぱらから……、郵便か?」

 

 

俺は急ぎ足で玄関に向かい、扉を開ける。

 

 

「はーい。」

 

 

「おはようハルトくん。」

 

 

「は?」

 

 

そこにいたのはシロナさんだった。あれ、帰ったんじゃないの?

 

 

「なんで朝っぱらから来たんですか、てか家帰ったんじゃないの?」

 

「あぁ…、今はちょっとミオの図書館の部屋を借りてるのよ。」

 

そっか……、考古学の方にも興味あるって言ってたしな。だから、住み込みで調べ物してるのか、納得。

 

「なるほど、で、なんで俺の家来たんですか?」

 

「え?理由がなかったら来ちゃダメなの?」

 

シロナさんは首をかしげる。

 

「……いや、そんなことないですけど。」

 

「なら、毎日来るわね♪」

 

「……あんま目立たないようにしてくださいよ?もうしばらくはホウエンに逃亡なんてしたくないんで。」

 

「わかってるわよ。ハルトくんと毎日会うためにミオに住み込んでるんだし♪

 

 

「ん?」

 

 

「なんでもないわ♪」

 

 

シロナさんは嬉しそうに微笑みながら俺の家に入って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「はぁ……、はぁ……。」

 

 

 

ボクはおぼつかない足取りでなんとかトイレまでやって来て、個室に入り鍵を閉めた後、へなへなと地面にへたり込む。

 

 

「……身体が……熱いよ……。」

 

 

 

そう、ハルトがリビングに入ってきたときから身体が熱くて仕方ないのだ。

 

 

昨晩でハルトに会えて満たされたと思っていたのに、全然そんなことなかった。なんとかハルトがいる間は平静を装ったが、ハルトの匂いがボクを発情させてしまっているのはすぐにわかった。少しでも気をぬくとハルトのことを襲ってしまいそうになったくらいだ。

 

 

「……んっ♡」

 

 

下着の不快感から濡れてしまっているのがわかる。

 

 

 

「また、履き替えないと………、でも、その前に……。」

 

 

 

ボクはこの熱い身体をなんとかするためにそこに手を伸ばした。

 

 

 

 

 

 

 




みんな末期を望みすぎw(twitterのアンケートより)

あ、ヴァンガードの方もよろしくね☆

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