201番道路
「やべー、早く帰らねえと日が沈んじまうよ!!」
夕方で空が赤くなっていたので、少し急ぎ足で帰っていた。
「暗くなっても大丈夫ですよ!!私、夜でも見えるんで!!」
「いや、そーゆー問題じゃねえだろ!!早く帰らねえと母さんに怒られるんだよ!!」
あの神様のお怒りに触れたら外に閉め出されてしまう。それだけは嫌だ。
「あ、それなら急がないとですね!!」
メアも納得したらしく急いで帰ろうとする。その時だった。
『ドンッ!!!!』
走っていると誰かにぶつかった。あ、なんか心当たりがあるぞ?この展開。
「なんだってんだよォォーーーッ!!」
うん、この展開知ってるわ。
ぶつかって目の前に倒れてるのは金髪でオレンジ色の縞模様の少年.........あれ?なんかちっちゃくね?
「おっ、お前!!急に出て来やがって!!罰金100万円だからな!!」
このテンプレのセリフを聞く限り本物らしいんだけど......もしかして俺より年下?
「あれ、お前って今何歳だ?」
「お前じゃないーーーっ!!俺にはジュンって名前があんだぞーーッ!!」
知ってる。
「はいはい、ジュンって今何歳だ?」
「俺は8歳だ!!2年後にはポケモンリーグの頂点に立ってる男だ!!」
ふーん、二つ下か。←現在10歳。
「お前ー!!さっきから見下すような目で見てるけど、まず言うことがあるだろーーーッ!!」
ジュンは腕をブンブン振りながら言ってくる。
「ふふふ......さっきから黙って聞いてれば、なんですかその言い草は。」
「お前、何を...むぐぉ!?」
「はっ!?」
気づけばメアがジュンの顔面を掴んで持ち上げていた。メアの目にはハイライトが無い。うん、めちゃくちゃ怒ってるよ。
「先に言うことって、先に言うことがあるのは貴方の方ですよねぇ...!!」
「いぶぁい!!いふぁい、ふふぃふぁふぇん!!ほふふぁふぁふっふぁっふぁぁぁ!!」
「んー?何言ってるかわからないですねー?」
おそらくジュンは謝罪の言葉を述べているのだろう、メアは不吉な笑みを浮かべながら掴む力を強めていく。
「はいはい、すとーっぷ。」
「むぎゃん!?」
俺は再びメアの頭にチョップを食らわせた。それと同時にジュンも開放された。
「し、死ぬかと思った...!」
「ごめんなー、ぶつかった俺も悪かったよ。だから今日は早く帰りな。」
俺はジュンの頭を撫でて上げる。
「うっ、うるせぇーーーッ!!」
ジュンはめちゃ涙目でこちらを睨んでいる。
「おっ、お、お前にゃんか、お前なんか、大嫌いだーーーーッ!!うわあああああああああああああん!!!」
ジュンは泣きながら走り去って行った。8歳とは思えない精神年齢の低さである。(推定精神年齢:4才)
しかも、噛んでるところが地味に可愛かった。旅に出て会った時は虐めてやろう。
「さて、ほら、帰るぞメア。」
頭を抑えてうずくまっているメアを起こす。
「ま、ましゅたぁ...、さっきより強くないですか...?」
「気のせいだろ。はら、暗くなる前に帰るぞ。」
俺は手を差し伸べる。
「おぶってください。」
「無理だ。今はお前の方が若干背が高いんだ。俺の成長期を信じて待つことだな。」
「むー、絶対背伸ばしてくださいよ〜?」
メアは若干しかめっ面で立ち上がる。
「善処する。」
「なら期待して待ってますねマスター♪」
そして、マサゴタウンを抜け、コトブキシティになんとか戻って来たのだが、一つ問題が発生した。
「どうやってミオに帰ろう......。」
そう、今朝桟橋を自分たちが壊してしまったため、帰る手段が無くなってしまったのだ。
そうこうしてるうちに日も沈んできて辺りが暗くなり始める。
「と、とりあえず!桟橋のところまで行って見ましょう!!もしかしたら直ってるかもしれませんよ!!」
しかし。
「......直ってねぇ。」
ヤバい。マジでヤバいことになった。このままじゃ怒られるどころか家に帰ることもできない。
「どうしよう。」
桟橋の壊れた部分を眺めていると。
「あら、こんなところで何をしているの?」
「はい?」
後ろから声が聞こえたので振り返るとそこには長い金髪で黒いスーツを纏った女性の人がいた。メアが目を見開いて驚いていた。どうして驚いているんだ......ってあれ?この人シロナさんじゃね?最近ポケモンリーグチャンピオンになった超有名人のはずなのに俺のテンションは上がることもなければ下がることもなくいたって普通だった。
「あれ、シロナさんですよね?どうしてこんなところにいるんですか?」
ヤバい、馴れ馴れしく話してしまった。気まずい雰囲気になってしまう。
「あら、貴方は普通に話してくれるのね。」
あれ?思ってた展開と違う。
「何だかチャンピオンになってから周りの人たちの目線が変わったみたいなのよね。チャンピオンになって嬉しいこともあったけど、こういう面では少し困ってるのよ。」
へぇ、チャンピオンになって困ることってあるんだな。
「そうなんですか。って言っても俺が少し変わってるだけかもしれないですよ?」
「ふふ、そうかもね。」
......否定して欲しかった。
「話戻すけどこんなところで何をしているの?」
「はい、実は俺ってミオに住んでるんですけど、何故か桟橋が壊れていまして、帰れないんですよ。」
「あら、そうなの?だったら向こう岸まで送って行ってあげましょうか?」
「まじすか!?ありがとうございます!!」
「後ね、私からもお願いがあるんだけどいいかしら?」
「はい、何でしょうか?」
「友達になってくれないかしら?」
うん、友達に......って、え?
「すみません、聞き間違いかもしれないんでもう一度いいですか?」
「友達になってくれないかしら?」
うん、聞き間違いではなかった。
「一応聞きますけどどうしてですか?」
「そうね、普通に話してくれるのが貴方が初めてだったから...かしら?ここで縁を終わらせてしまうのも嫌だったから。ってことで、はい、これ私の携帯番号とアドレスよ。何かあったら連絡してちょうだい。」
シロナさんに番号とメアドが書かれたメモを渡された。
「あ、はい。」
色々と驚きすぎて返事が単調になってしまった。そのあと、俺の家の電話番号を教えてあげた。(強制)
「それじゃ、向こう岸まで送ってあげるわ。ミカルゲ出ておいで!!」
「おんみょ〜ん。」
おっ、シロナさんのミカルゲか。ミカルゲをこの目で見るのは初めてだなあ。ん?.........シロナさんのミカルゲ......技......あっ(察し)
「ミカルゲ、サイコキネシスよ。」
「おんみょ〜ん。」
ミカルゲはサイコキネシスを俺たち二人に使った。
「これで......あら?」
俺は宙に浮いているがメアが浮いていない、というよりサイコキネシスが効いていない。うん、知ってた。ポケモン知識のある人ならどうしてこうなったかわかるよね?
「あー、やっぱり効かないですよねー。」
メアが苦笑いしながら言った。
「私ってあくタイプなんでサイコキネシス効かないんですよね。」
「えっ?あくタイプって......あなたポケモンなの!?」
「はい、ダークライっていうポケモンなんですけど。」
「おんみょ〜ん。」
「あなたも私のガブリアスと同じ......擬人化できるポケモンなのね...!」
シロナさんが驚いているが、少し嬉しそうだった。
「擬人化できるっていうより私の場合は常時擬人化なんですよ。元の姿に戻れないっていうか......元の姿がない?っていうことなんですかねー?」
「そ、そう。それなら、どうやって向こう岸まで運びましょうか......?」
そう、俺は向こう岸に着いたが、メアがまだコトブキシティのほうにいる。モンスターボールも持ってないしどうすべきか...。
「あ、私ならこのくらいなら飛び越えられるので大丈夫ですよ。」
すると、メアは助走をして桟橋にむかって走り出した。
「よっ!!!」
10メートルくらいあるのにそれを軽々と飛び越えてきた。
「おぉー、って...ん!?」
「まぁすたぁぁぁぁぁぁぁ!!」
俺はあることに気づいた。メアがこのまま行けば俺に直撃すr...
「ぐぼぁ!?」
飛び越えて着陸と同時に俺に抱きついて来た。俺は支えきれずそのまま後ろに倒れた。
「マスター♪」
仰向けに倒れた俺にメアは抱きついている。
「大丈夫ーー!?」
シロナさんの声が向こう岸から聞こえて来た?
「あ、はーい!!大丈夫でーす!!シロナさんありがとうございましたー!!」
メアが代わりに返事を返した。俺は胸が圧迫されて上手く喋ることができない。
「げほげっほ!飛びついてくるなよ!!めちゃくちゃ痛かっただけど。」
「これは事故です(キッパリ)」
メアが俺の上に座ったまま、清々しい表情をしている。うん、明らかに狙ってたよね、そんな顔してるけど確信犯だよね。
向こう岸を見るとシロナさんは既にいなかった。
ポケットに入れてたメモを取り出して思った。
「俺...とんでもない人と出会ってしまったかもしれない。つか、なんでコトブキシティにいたんだよ。この辺って特に何もないだろ。」
考えても仕方ない。そう結論づけて帰ることにした。
「ほら、早くどいてくれ。帰るぞー。」
「はーい。」
メアは素直にどいてくれた。
既に日が沈んで暗くなっていて、親に怒られるのは確定となってしまった。でも、何故か、俺は清々しい気分だった。意味がわからない。でも、清々しい気分だった。
そんな気分で俺たちはミオシティの方へ足を進めたのであった。
203番道路では。
「ふふ、まさか擬人化ポケモンに会えるなんてね。ここまで来た甲斐があったわ。ね?ガブちゃん?」
「はあ、そうですね。あと、ガブちゃんって呼ぶのやめてください。僕一応雄なんで恥ずかしいですよ。」
「ふふ、それにあの子も中々おもしろかったしね......あ。」
「どうしました?」
「名前聞くの忘れた。」
「はぁ、シロナさんってどこか抜けてるところがありますよね。」
「うっ、うるさいわね。だったら、今からあの子の家に電話してやるわよ。」
シロナはポケットから携帯を取り出してハルトの家に電話をかけようとする。
「それだけはやめてください。」
月の光が照らす203番道路では、ガブちゃん......げふん、ガブリアスのツッコミが冴え渡っていたのだった。
「ガブちゃん言うな。」
あっ、はい。