今の内に少しでも多く、投稿しようと思います。
今回のタイトルは最初「高みと深みを目指して」だったのですが、「なんのこっちゃ」ってなると思ったので力と謎も加えさせていただきました。
また、話の中で遊騎と真理の過去に関する場面がありますが、原作とは真理の口調と遊騎の呼び方などが変わっています。というより、原作でも後の話と見比べたら口調も呼び方も変わってたので後の話の方に合わせた感じです。
それでは、どうぞ。
「うおおおお!」
空は黒に染まり、月と星が世界を照らす。時刻はすっかり夜となっていた。人も動物も徐々に静かな眠りにつく頃である中、都市部から少し離れた場所にある森では夜には不似合いな叫びが木霊した。
「はあっ!」
そこにいたのは大神。彼は左手に『青い炎』を灯し、周囲にある木々を次々と焼き切っていく。よく見ると、彼の背後には何十本という木の幹が残っていた。いつから、どれだけの動きをしてきたのだろう。彼が体中にしていた包帯は解け始め、塞がろうとしていた傷口からは血がにじみ出ていた。
「くそ……まだだ……。こんな炎じゃ、まだ
肩で息をしながら、それでも強い意志をその眼に秘めながら大神は延々と目の前に広がる木々を見る。感じていた。こんなんじゃ、まだ足りない。『捜シ者』を斃すにはまったくと言っていいほど。だが、それを悲観している時間すら惜しい。『捜シ者』を斃すため……彼は再び『青い炎』を灯して周囲の木々を焼き切った……はずだった。
「ッ!? なんだ!? 燃えない……!?」
一本、最後に焼き切ろうとした木に触れた瞬間、奇妙な感触が左手から伝わった。木というには柔らかすぎるものであり、なにより不思議だったのは『青い炎』が触れたというのに燃えないということだった。そこまで自分の異能が弱っているのか、それともロストの前兆なのか……。様々な考えが浮かんだが、それらはすぐに否定された。他ならぬ、その燃えなかった“モノ”によって。
「あちちっ! ダメだよ、大神君。そんなに燃やしたら火傷しちゃうよ~」
「せ、生徒会長!?」
聞き間違えようのないその声、そして忘れられるはずがないその姿。そこにいたのは生徒会室で会った時と同様、『にゃんまる』の着ぐるみを着た生徒会長だった。ならば彼が燃えなかったことには納得がいく。彼は桜と同じ、異能が効かない珍種。異能である『青い炎』で燃えないのは当然である。
会長は体中をパンパンと叩き、体についていた炭を叩き落としながら大神に声をかける。
「まったく、やっぱり一人で修業してたんだね。『捜シ者』にボコられて動くのも難しいくらいの大怪我をしてるのに無茶するよ。あんなに『捜シ者』にボコられたのにサ!」
「……その言い回しはワザとやってると思っていいんだよな……!?」
少し、どころかかなり棘がある会長の言い回しに大神は怒りを露わにする。今すぐにでも亡き者にしてやろうと考えたが、大神は小さく息を吐くと落ち着きを取り戻し、静かに会長に告げた。
「……まあいい。あんたには関係の無いことだ。さっさと帰ってくれ」
「いかにも、そうはいかないよ」
「なに?」
さっさと会長を帰らせ、修行を続けようとした大神。だが、会長はそれを否定する。わけがわからない大神に対し、会長は移動を始めながら言葉を続ける。
「今の修業を続けたところで強くはなれないよ。こんなの、イジケ虫が地団太踏んでるのと同じだからね。それこそ『捜シ者』を斃すどころか、桜小路君だって護れない」
「ッ……!」
遠慮も何もなく、確信を突いた発言をする会長。大神も心のどこかでそれを感じていたのか、言い返せずに言葉が詰まった。だが、それでもやるしかなかった。思いつく限りの方法で強くなるしかなかった。そう思ったからこそ、彼はここで修業していたのだから。
移動して、今まで大神が焼き切ってきた木々を背にして立つ会長。大神は彼に向かって再び突き放す言葉をかけた。
「あんたには、関係ないと……」
「……
しかし、会長はその言葉を無視して一本の刀を取り出した。柄の形が『にゃんまる』という奇妙な刀だったが、会長は静かにその刀を腰に添えて構えた。そして……
──チンッ
「……!?」
一瞬のうちに刀を少し抜き、また一瞬で鞘に納める。瞬間、大神の体を一筋の風が通り抜けていった。ただ刀を抜いて納めただけでは起こるはずが無いほどの風。そして、次の瞬間……
──ズゥゥゥンッ!
「な……!?」
何かが倒れるような音が響き渡る。大神はすぐに音の出所である背後を振り向く。すると、そこには信じられない光景が広がっていた。
「こ、これは……」
大神の背後にあった木々が何本も見事に切り倒されていた。それも、まるで扇形に広がるように。それだけ広範囲の攻撃があったということだ。そして、その攻撃をした人物は一人しかいない。さらに、大神はこの技を知っていた。忘れるはずもない、自分が何度も受けた技だからだった。
「あんた……なぜ
あの時、遊騎邸で『捜シ者』と対峙した時に嫌というほど受けたあの謎の技。ただ刀を納めただけで無数の斬撃を受け、太刀筋も何も読めない攻撃。会長がしたのはそれと同じだった。
「ま。ちょっと飲もうか、大神君。大丈夫、ジュースだから」
「…………」
目の前のことに驚く大神に対し、会長は平然と座り込んで一本のビンを取り出す。今までなら、「ふざけるな」とでも言って一蹴していた。しかし、会長の今の技を見て、それもできなくなっていた。大神も感じていた。この人……会長は強くなる術を知っている、と。
一方、それと同じ頃。桜たちも驚きの事実に直面していた。
「ちょ、ちょっと待てヨ! 今の桜ちゃんの話からすると、その
桜がこっそりと持ち帰っていた
その昔、まだ桜が子どもの頃に桜はこの墓場で『捜シ者』に会い、桜自身の手からカードキーを手渡したというものだった。
しかし、当の桜はというと……
「す、すまぬ。これ以上はなにも思い出せないのだ。『捜シ者』は今と同じ姿だし、どうにも記憶が曖昧で定かではないのだ」
「ワー! イライラする!」
「……そうイライラしても始まらないだろ」
「そーやで。子どもの頃の記憶なんてそんなもんやし」
どうにも記憶がまだ曖昧なものらしく、確信を持てないようだった。わかりそうでわからないという現状に刻は苛立つが、優と遊騎は「仕方ない」といったような感じで話を進めた。
「とりあえず、情報を整理するぞ。つまりのこのカードキーは最初、桜小路の物で、ある時とある理由で桜小路は『捜シ者』にそれを渡した。その後、何かしらの経緯があってキーは“エデン”の物になり、人見さんがキーを奪って『コード:ブレイカー』を抜けた。そして、人見さんの手から桜小路に渡って、『子犬』がそれを隠していて、今では『捜シ者』も“エデン”もとり返そうとしている、ってとこか。どうにも謎が多いな」
「メンドクセー! メンドクセーよ! イライラするー!」
「よんばんは細かいなぁ。とにかく大事なもんっちゅーことでえーやん」
優は改めてカードキーがどういった物か情報を整理する。しかし、整理したところでわからない部分が浮き出てくるだけで、解決には繋がりそうにない。遊騎の言う通り、今は「大事なもの」という認識をするので精一杯だ。
「……すまぬ、みんな。だが、これ以上は本当になにも思い出せぬのだ」
「『にゃんまる』、気にすることあらへんで。わからんかったら調べればえーんやし」
「遊騎の言う通りだ。それに、記憶なんて何がきっかけで思い出すかわからないからな。刻も、今は細かいことは置いといていいだろ?」
「……あー、ウルセーな。『コード:07』如きがオレに指図すんじゃねーヨ。大体、言われるまでもねー。とりあえず、わかりそうなことから解決すればいーんダロ」
大事なことを思い出せず、迷惑をかけたことを謝罪する桜。しかし、『コード:ブレイカー』たちは誰一人としてそれを気にする者はおらず、目の前のことから順に解決していくことになった。
「しっかし、どーすっかな。カードキーは複雑すぎるからオレの『磁力』じゃ探索できねーしヨ」
「そうなのか……。やはり異能を使っても難しいことはあるのだな」
「ま、異能も万能じゃないからネ」
まずどうするかを考え始めた四人だったが、最初にやったような『磁力』を用いての探索は不可能と早々に刻からギブアップが出た。現時点でそれが最も手っ取り早い方法だとされたが、不可能ではどうしようもない。刻たちは考えを巡らせるが、どうにもいい案は出てこない。一方、遊騎は人見のメッセージとともに入っていたオモチャのアヒルを弄っていた。
「オイ、遊騎。遊んでないでお前も少しは考えろヨ」
「なあなあ、よんばん」
「あ? なんだよ」
「なんか開いたで」
「ハア!?」
突拍子の無いことを言う遊騎の周りに刻たちは一斉に集まった。見ると、アヒルの胴部分でパックリと開いていた。さらに、中には機械のような物があり、よく見ると脇にはゼンマイが仕掛けてあった。
「……開いた状態で横から見るとパッ◯マンだな」
「オッサンみてーなこと言ってんじゃねーヨ。こりゃオルゴールだな。人見のヤツ、オルゴールの曲に何かヒントを隠したってことか」
優の思わず出た呟きにツッコむと、刻はアヒルがオルゴールだと見抜いた。そこから流れるであろう曲にヒントがあると考え、刻はアヒルを閉じてからゼンマイを回し、改めて開けて曲を流した。
「よっし、スタート」
「…………」
「…………」
──シーン
「アレ?」
まったくの無音だった。ゼンマイはしっかりと回っているが、音はまったくと言っていいほど出ていない。刻は首を傾げた。
「壊れてんのか、コレ?」
とてもじゃないが、最新式とは言えない代物だ。すでに壊れているのかもしれない、と刻は考えアヒルを閉じようとした。すると……
「……壊れてへん」
「あ?」
「遊騎……?」
遊騎がボソリと刻の言葉を否定した。見ると、彼は両耳に手を添えて耳を澄ませている。これは明らかに何かを
「音はちゃんとしとるわ……。ただ、よんばんたちは聞こえなくてもしゃーない。これは人の聴覚で聞き取れる音の領域を超えた高周波……オレの異能『音』でしてか聞き取れん音やし」
「ワン!」
「おお、『子犬』も聞こえておるのか? ……そうか、人間には聞こえない高周波の音というと犬笛のような物だからな」
「……なるほど。刻が『磁力』でこの場所を突き止め、遊騎が『音』で次のヒントを知る、か。人見さんらしいな」
『音』でしか聞き取れない高周波。それがオルゴールから出ていた音の正体だった。遊騎は耳を澄ませて高周波の音に意識を集中させる。その姿を見て、優は人見の思惑を察し、一人で笑みを浮かべていた。そして、ようやく曲が終わったらしく遊騎は両耳から手を離した。それを確認すると、刻は遊騎に声をかけて内容を確認しようとした。
「遊騎、何の曲だったんだヨ。……おい、遊騎!」
「ツー、トントントン、トントン。ツー、ツー、トン、ツー……」
「なんだよ、ソレ! 曲でもなんでもねーじゃねーカ!」
しかし、遊騎の口から出たのはとても曲とは思えない「ツー」と「トン」という音の不規則な羅列。まったくもって意味がわからない時は思いっきりツッコむが、優は何かを感じていた。
「……いや、これはまさか──」
「せや、ななばん。これ、曲やないねん。これは……
『モールス信号』や」
「『モールス信号』……暗号などでたまに使われたりするものだな。ドラマで見たことがあるぞ」
モールス符号と呼ばれるものを用いた信号である『モールス信号』。オルゴールから出ていた謎の音の正体はそれだと言い当てた遊騎。さらに……
「内容は住所を表しとる。多分、そこにカードキーが使える何かがあるはずや」
遊騎は内容の解読も済ませていた。つまり、人見は遊騎が『音』でオルゴールを聞くだけでなく、そこから出る『モールス信号』まで解読できることまで計算していたということだ。とてもじゃないが、彼らのことを深く知っていないとできない芸当だ。
「マジかよ……。ホントにこんなアヒルがヒントだったのかヨ……」
「うむ……しかし、遊騎君は本当にすごいな。『モールス信号』まで解読できるのだから」
「…………」
「……遊騎?」
アヒルを含め、実は人見の悪戯だと心のどこかで感じていた刻。まさか本当にアヒルがヒントだとは思ってなかったらしく、アヒルを見つめてただただ驚いていた。桜は『モールス信号』を解読した遊騎に感心していたが、当の遊騎は急に黙り込んでしまった。優が心配して声をかけるが、反応は無い。
その時、遊騎の中にあったのは過去の記憶。忘れるはずもない、はっきりと残った記憶。忌まわしくもありながら、大切な記憶だった。
「寄るな、『音』の化け物!」
「お前が喋ると物が壊れるんだ! だから一生、喋るな!」
「公害だ! どっか行っちゃえ!」
「…………」
自分の中にある他人には無い強い力。それを制御する力も術もわからず、苦しんだ日々。周囲からは非難の的になり、誰とも関わることが許されない孤独な日々。言い返すこともしない。言い返すどころか、自分が口を開けばまた何かが傷つく。そうすれば余計に一人になる。彼は子どもながら、それを強く感じていた。
「……遊騎、大丈夫か?」
「…………」
──コクン
そんな中、自分を心配する少年の言葉に無言で頷く。彼は、数少ない特別だった。自分のことを恐れもせず、対等に接してくれる唯一の存在だった。
「そっか、遊騎は強いね。じゃあ、遊騎にはとっておきを教えるよ」
「……?」
「話さなくても伝わるすごい言葉だ。ぼくたちだけの秘密だよ──」
笑顔で接し、笑顔で自分が知らないことを教えてくれる。彼は……遊騎の
「……真理が教えてくれたんや。話さなくても伝わる言葉、『モールス信号』……」
「え……?」
誰かを思うように、静かに、そしてどこか悲しげに呟く遊騎。その姿に、桜たちは言葉を失う。遊騎は顔を伏せたまま、真っ直ぐ歩き出す。今、自分がすべきことをするために。
「住所のとこ、はよ行こうや」
遊騎が『音』を使い、『モールス信号』を解読して知ったある住所。桜たちは、ようやくその住所まで辿り着くことができた。そして、そこにあった建物を見て、言葉を失っていた。
「……ココ、なのかヨ?」
「そのはず……なのだが」
「だが、これは……」
言葉を失い、ただ呆然と立ち尽くす四人。それほど、目の前にある建物は予想の斜め上をいっていた。そこにあった建物は大きく、そして薄暗く、とてつもない歴史を感じさせる……
「ボロ家やし」
とてもボロボロで古びた木造の建物だった。
「人見ィィィィィ! また騙しやがったな、あのヤロー! どう考えても、こんなボロ家にカードキーなんてハイテクが関係あるワケねーダロ!」
今、刻の目の前には人見が悪びれもせずに欠伸をしている姿でも映っているのだろう。再び人見に対しての怒りを露わにしていた。優もこればっかりには何も言えず、どうするかと悩んでいた。すると、再び遊騎が気付いた。
「なあ、見てみい。この表札。『渋谷』って書いてあるで」
「ハア!? そんなわけ──」
遊騎の発言に刻は怒りを露わにしたまま反応し、遊騎が指差した表札とやらを見た。内心、遊騎の勘違いだろうと考えていた刻。どんな文句を言ってやろうかと考えていた……のだが。
「『渋谷荘』……って『渋谷』!? どーゆーことだヨ!?」
彼の視線の先にある少し斜めになっている表札。そこには確かにはっきりと『渋谷荘』と書かれていたのだった。
「『渋谷荘』ってことはアパートみたいなものか。そして、おそらく『渋谷』っていうのはこのアパートの管理人か何か……ってところか」
「なるほど、カードキーの『渋谷』とは地名ではなく人名だったのか」
「マ、マジで……!? マジでこんなボロ家にこのカードキーが関係してるってのかヨ……!」
徐々に明らかになっていく真実に、納得する者もいれば納得できない者もいた。すると、そんな彼らに近づく一つの人影。それは四人の姿を発見すると、何食わぬ顔で声をかける。
「おや、みんな一緒でどうしたんだい?」
「え……?」
声をかけられ、四人は一斉に声の方を向く。そして、そこにいた人物を見て、さらに驚くことになってしまった。
「か、会長!?」
「いかにも、いかにも」
そこにいたのは、食材が入った買い物袋を持ちエプロンをつけた会長だった。彼は相変わらずの『にゃんまる』姿のまま、何食わぬ顔で四人に挨拶した。
「ア、アンタ……こんなところで何やってんだヨ……」
「私は夕飯に食べる鍋の材料の買い出しから帰ってきたところだよ」
「では、会長のご自宅はこの近くにあるのですか?」
「ん? 近くも何も、ここが私の家だよ?」
「ハア!?」
平然と続く会話の中で、さらに続く驚き。ここで会長と会うだけでも驚いたというのに、あろうことか彼は『渋谷荘』が自宅だと話し始めた。
「ま、待てよ……。ってことは、アンタが『渋谷』さん!?」
「いかにも、私は『渋谷』だが? あれ、まだ言ってなかったっけ」
「ハアァァァァァ!?」
あまりにも連続で意外すぎる真実に、刻は声を大にして驚く。カードキーが関係しているのがボロボロのアパートで、そこは会長の家であり、さらに会長は「渋谷さん」だという。もう何が何だかわからなくなってきてもおかしくない。
「いやいやいや! あり得ねー! だって、この
「ああ、あの二人ね。いかにも、みんなヤンチャな悪ガキだったよ」
「ハ、ハア? あんた、何言って……」
どういうことかわからなくなり、刻が情報を整理しようとすると会長は懐かしむように頷いた。何を懐かしがっているかはわからないが、明らかにそれは人見と『捜シ者』という人物を懐かしんでいた。刻が呆けていると、会長はゆっくりと歩きだし、『渋谷荘』の扉を開いた。
「懐かしいなぁ……。人見も、そして『捜シ者』も……以前、ここで暮らしていたことがあるんだよ」
「……う、嘘ダロ!?」
「人見さんと『捜シ者』が、ここで……!?」
「そ、それはどういうことですか!? 渋谷会長殿!」
会長の口から出た言葉に、今度は優と桜も反応を示す。かつて人見と『捜シ者』が会長と共に暮らしていた、そこからは「会長が何者なのか」という疑問も当然のことながら生まれるが、それよりも注目すべきは「人見と『捜シ者』が」というところだ。人見は『コード:ブレイカー』であり、『捜シ者』は“エデン”と敵対する者。つまり、二人は敵同士のはずなのだ。それが同じ家で暮らしていたなどあり得ないことだ。
刻たちはそれを問い詰めようとしたが、突然、ある人物の姿が視界に入った。
「って、アレ…………お、大神!?」
「…………」
扉が開いた『渋谷荘』。玄関口であるそこには、大神の姿があった。今まで完全に別行動をしていた彼がいることは不思議だったが、大神は彼らに構うことなく動き出した。
──スゥ…………
大神は静かにその場に膝を突いた。無意識ではなく、明らかに自分の意志で。そして……
「……し、師匠。お、お帰りなさいま、せ……」
会長に向かって頭を下げる大神。その時の表情と声から、かなり不満だということがわかる。しかし、彼はやらなければならなかった。なぜなら……
「いかにも、大神君は今日からここで私と一緒に暮らすことになったんだ」
『はあ!?』
今度ばかりは全員が声を揃えて驚いた。今までの話の流れや今日の出来事を考えても、彼らの中では大神が会長に弟子入りするという形にはどうしたって持って行けなかった。
しかし、会長はさも当然のように「うん、うん」と頷きながら話を続けた。
「これは基本の礼儀作法だけど……まあ、点数は65点ってところかな」
「オイオイ! 何を言って──!」
平然と大神の作法に点数をつける会長に対し、刻は大声を張り上げて説明を求める。すると、会長は静かに真実を告げた。
「大神君はかつての人見や『捜シ者』と同じく、私に弟子入りして最強の異能者になるための修業を始めることになったんだよ」
こうして、刻たちの理解が追い付かぬまま、彼らが知らないところで決まっていた……大神の渋谷会長への弟子入りが告げられた。
CODE:NOTE
Page:28 日和
『捜シ者』を守護する『Re-CODE』の一角を務める若い少女。制服のような服装にリボンで結ったツインテール、「YO」や「MON」などと語尾の言葉がローマ字なのが特徴。異能の名称は不明だが、触れた物を溶かす膜を操ることができる。新宿では警察官や残っていた人々を一人残らず殲滅させたり、新宿中を穴だらけにした。
人を殺すことに罪悪感等はまったく感じておらず、そのことを問われても「大切に殺している」と言って反省する気は皆無。
※作者の主観による簡略化
何気に一番、怖いタイプかもしれない……