D.C.Street.Runners.~ダ・カーポ~ストリートランナーズ 作:ケンゴ
高速区間の終わりを告げる右の高速コーナーを抜けた2台は、初音山では勝負ポイントと呼び声の高い、低速の連続ヘアピン区間へと突入していく。
(ここから暫く低速ヘアピンが続く区間だ。今あの34Rは恐らくアテーサ機能をカットしたFR状態……トラクションを稼いだコーナー立ち上がり重視の走り方はせず、コーナリングその物で勝負を仕掛けてくるハズ)
バックミラーに映る34Rの姿を見ながら、ケンタはコーナーへの進入ラインを選択する。
MR-Sはアウト側ラインに乗せ、一気にフルブレーキング。同時にステアリングも進行方向である右方向へと一気に切り込み、車体は素早くテールスライド状態へ移行していく。
(コーナーへの進入速度を重視したブレーキングからのドリフト旋回。いわゆるカミカゼ走法ってヤツだが、スピンモードまでが速い
松山は前を走るMR-Sの動きを見て心の中で素直に称賛しながら、似たような車の振り回し方をしていた知人の顔が脳裏に浮かび、思わず苦笑してしまう。
しかしそんな彼の運転する34Rも、他人の事をとやかく言える様な車体の動きをしておらず、山頂でPC画面を覗き込む人間の度肝を抜いた挙句に呆れさせていたのだが。
「今の見たかよ!?」
「ああ、2台ともハンパねぇドリフトだぜ!」
「前を走ってるのって初音オートのMR-Sだったけど、あんなにケツ流してるの初めて見たよ!」
「それに後ろの青い34Rも相当レベル高いぜ。あの初音オートのMR-Sの動きにピッタリと追従してたしな!」
「あんなの見せられたら痺れちまって仕方ねぇぜ!」
2台のバトルは最早ドリフトコンテストと呼んでも差し支えが無いような状態まで発展しており、たまたまコース脇で見物していたギャラリーたちは興奮を隠せなかった。
「本当に2人ともよくやるわねぇ。あれだけ旋回時にリアを振り回してたらトラクションなんて殆ど稼げないハズなのに、コーナー脱出時にはちゃんと車体を加速させてるんだから」
「あの速度でコーナーに進入していったら普通は失速しちゃうよねー」
「まぁ厳密に言うとバトル開始時と比較すればコーナリング時の平均速度は落ちてるでしょうけど、見た目からはそれを感じさせない走りね」
相変わらず風景が横滑りで流れていくPC画面を覗き込みながら、萌と楓花は呆れながらも2台の走りを称賛する。
萌の指摘通り、バトル開始時と比べると明らかに車体が横を向いた時間が多くなった上にコーナリング速度も落ちている2台だが、そんなことはお構いなしと言わんばかりにドリフト状態でコーナーを駆けて行く。
「スピードなんて二の次三の次――あくまで
「ああ。普段走っているステージは違えど、あの2人は間違いなく同じ領域に棲んでいる走り屋だ」
「お互いに同じ様なドライブをする相手と出会えたことで
「同感だな、ホントあの2人が羨ましいぜ」
ことりと純一も、PC画面を覗き込みながら凄まじい走りを繰り返す2人を讃える感想を零すのであった。
低速の連続ヘアピン区間を走行する黄色と青色の2台のマシン。
先行するMR-Sは小さく軽い車体を活かし、自由自在にテールスライドを起こしてコーナーをドリフト状態で駆け抜けていく。
(この区間でココまで車を振り回して走るのは久しぶりだな)
何処か懐かしい感覚に陥りながらもケンタは冷静に、横滑りを続けるマシンをコントロールする。
しかし、後ろから信じられない速さで追従して来る34Rから意識を外すことはしない。
(低速ヘアピンだってのにお構い無しにこっちの動きに合わせてきている……あり得えねぇだろマジで)
こちらがテールスライドを始めれば向こうも同じタイミングでテールスライドを始め、こちらがリアを振り返せば向こうも同じくリアを振り返す。
まるで鏡写しかの様な、普通の感覚であればもはや狂気と呼んでも差し支えない車体の動き方だが、34Rの姿勢が破綻する様子は全く見えなかった。
ここまでされれば並みの走り屋であれば既に戦意を喪失している状況だろうが、ケンタは心の奥底から込み上げてくる喜びの感情を抑えきれずに忍び笑いをこぼす。
「くくっ……本当に最高だぜ!」
そんな言葉と同時にMR-Sのドライビングスタイルが更に鋭くなったのを、後ろから追いかける34Rの車内から松山は確認した。
(また一つ走りのギアを上げたか。公道である以上安全マージンを削っていくコトはあんまり褒められたモンじゃねぇが――個人的にはそーゆーの嫌いじゃねぇぜ)
MR-Sの走りに応えるかのように、松山もまた更に攻め込んだドライブへとスタイルを変更させる。
地元でもない人間が狂気とも呼べるペースで、MR-Sに追従していく姿は見る者に強烈なインパクトを与える物だった。
(この領域まで踏み込めるヤツはそう多くはない、見事だ)
初音山ではない別のステージではあるが、長年走り続け培ってきた経験と感覚。それらを持って、前を走る黄色いMR-Sとドライバーに改めて敬意を表す。
だからこそ同じ領域に立つ者として、中途半端な走りはせずに真摯に向かい合う。
「見せてもらうぜ……そっちの
2台のマシンは更にテンションを高めて、初音山のコースを駆け抜けていく。
久しぶりに更新