D.C.Street.Runners.~ダ・カーポ~ストリートランナーズ   作:ケンゴ

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Act.2 黒のGTO② -出現-

「そういやさ、黒色のGTOの話知ってるか?」

 

 初音オートの昼休み。ケンタ、純一、ことりの3人が、いつものように集まって昼食をとっていた最中、純一がふとそんな話題を口にした。

 

「黒色のGTO? うーん、聞いた事ないなぁ」

 

 ことりがそう言うと、純一が話を進める。 

 

「なんか手当たり次第に、初音山を走ってる連中にバトル吹っかけてるみたいなんだよ」

「ほぅ。それで?」

 

 何かを思い浮かべた表情でケンタが相槌を打つ。恐らく昨晩出会ったGTOを思い浮かべているのであろう。

 

「俺も少し前から音夢から話を聞いてたんだけど、あんまりマナーが良くないみたいでな。バトル意思の無い車や、あまつさえ一般車まで煽り倒す奴みたいなんだよ」

「うわー。あんまり会いたくないね」

「だな。迷惑な事この上ない」

 

 何も知らないことりは若干引き、ケンタはことりの言葉に同意する。確かにあまり会いたくない部類の輩である。

 

「それでさ。昨日の夜ケンタと眞子が帰った後、音夢を待ってたらそのGTOを駐車場で見たんだよ。それでそのGTOのドライバーが『この峠で最速の奴は誰だ?』って大声で叫んでさ」

「へぇ、えらく挑発的な奴だな。初音山の制圧でも狙ってんのか?」

「口振りからするとそんな感じがするねー」

 

 ケンタとことりが小さく笑う。2人ともまったく相手にしていない顔であるはあるが。

 

「そしたら駐車場にいた何人かが、初音オートの車が速いってそいつに言ったんだよ。だからちょっと気を付けたほうが良いなと思ったんだ」

 

 初音オートの車、というのは恐らく初音オートのステッカーを貼った車ということだろう。

 

「なるほどな。だから昨日、眞子に絡んできたのか」

 

 ケンタが納得した顔をする。初音オートで作業した車――特に彼らの身内の車――には何処かしらに初音オートのステッカーが貼っており、あのGTOは眞子が運転していた萌のインプに貼ってあったステッカーを見つけたのだろう。

 

「え? ケンタ君、そのGTOに会ったの?」

「ああ、たぶん純一がGTOを見た直後だろうな。こっちが減速して進路譲ってんのにずっとパッシング続けてたな。最後は路肩に車止めてやり過ごしたけど」

「やっぱ噂通りの走りなんだな。何にせよ、ちょっと気を付けたほうが良いかもしれないな」

 

 純一がそう言ってパンを頬張り、この話題は終了となった。

 

「さて、昼休みもそろそろ終了だね」

「昼からも頑張って仕事しろよ」

 

 時計を見ながら、ことりとケンタが純一にそう言った――。

 

 

 

「お疲れー」

 

 営業終了時間となった初音オートのスタッフ達が帰り支度を始める。

 

「おーい、2人ともこのあと暇か?」

 

 そんな中、純一がケンタとことりに声をかけてくる。

 

「特に用事はねぇけど、何だ?」

「一緒に初音山行かないか?」

 

 そう言って愛車のキーを見せる純一。

 

「黒いGTOを見に行くってか? “ミスターかったるい”のお前にしては珍しいな」

「実は音夢と眞子が山に向かってるらしくてな」

 

 純一が携帯のメールを見せる。

 

「でもでも、どんな人なのかは気になるよねー」

「ことりも意外と野次馬根性あるよな」

 

 純一は素で突っ込む。とは言え2人に断る理由も無いのでそれを承諾。3人は駐車場へと向かっていく。

 

「そういえばケンタ君は、噂のGTOを見たんだよね。どんな車だったの?」

「デカいリアスポ付いてたから、最終型のGTOだろうな。純一が話してた通り、ルール無用というかマナーが欠落してるというか……まぁ走ってる途中には絶対に会いたくないな」

「でも初音山最速の人とバトルしたがってるんだよね。ということは走りのほうは相当なんじゃないのかな?」

「どうだろうな。あんまり大きいこと言う輩に限って自信過剰なのが多いからなぁ」

 

 暫くして純一の愛車の前へと到着。3人は車へと乗り込むと、初音山へと向かって行った――。

 

 

 

――同時刻、初音山頂上駐車場。

 

「今夜の話聞いてるか?」

「聞いてる聞いてる。あのGTOと初音オートが走るんだろ?」

「そうそう、しかも代表の大城が走るらしいぜ」

「マジで? MR-SとGTOなんて勝負になんねーだろ」

 

 今夜の初音山には、普段よりも多くの走り屋が集っている。彼らの間には『黒いGTOと初音オートがバトルする』という噂が飛び交っており、今夜集まった走り屋はギャラリーしに来た者が大半だ。

 

「何時の間にこんな話題になってたの?」

「うーん、噂ってのは広まるのは早いからね」

 

 駐車場の隅に止まっている白いエボ6の傍で、眞子と音夢が遠巻きに走り屋たちを見ている。音夢のエボ6にも初音オートのステッカーは貼ってあるが、隅のほうに停車しているので目立つことはない。

 

「こーゆー時に車があったら、さっさとあたしがバトルして噂を無くしてやるんだけど」

 

 自分の車が無いことを嘆く眞子。現在、彼女の愛車は初音オートに預けており足回りの調整中である。本当は既に作業済みで直ぐにでも引き渡せる状態なのだが、噂になっているGTOの件が一段落するまではケンタの計らいによって納車待ちとなっている。

 

「まぁまぁ。いま兄さんから仕事終わってこっちに向かってるって言うメール来たし、もう暫くしたら来ると思うよ」

 

 眞子に携帯を見せてそう言う音夢。

 

「でも本当にケンタが走るのかしら? 昨晩そのGTOを見たばっかりだって言うのに」

「あくまでも噂だからねぇ。初音オートの車ってなれば、必然的にケンタ君のMR-Sになるだろうし……」

「どういう基準で言ったか知らないけど、初音オートに出入りしてるあたし達からしたら迷惑な話よね」

 

 自分の車がまだ納車されない理由を作った噂のGTOに対し、眞子はご立腹の様子だ。まだ姉のインプレッサを引っ張り出してこないだけマシと言えばマシなのだろうが。

 

「とりあえず、兄さんたちが来るまで待とうよ」

 

音夢がそう言い、彼女たちは駐車場の方を見つめた。

 

 

――数分後。

 

「おー、いっぱいギャラリーが出てるな」

 

 初音山を登り切り、駐車場へと入ってくる黒色の車――ランサーEvo.3。純一の愛車であるその車のリアシートに身を沈めているケンタが、駐車場に立っている数多の人々を見て呟いた。

 

「珍しいね、こんなに集まってるなんて」

 

 ケンタの声に反応したのは、助手席に座ることり。

 

「普段はもう少し静かなのにな」

 

 運転する純一も、今宵の初音山に出てきているギャラリーの数に驚く。普段からこの初音山を走る3人だが、ここまで初音山に人が集まっているのは、あまり見たことがなかった。

 

「えっと、音夢の車は……。お、居た居た」

 

 駐車場の隅の方に停車している、妹の車を見つける純一。そのままそちらの方へと車を移動させ、隣に停車させた。

 

「あ、兄さん」

「よう。眞子も一緒か」

 

 音夢の隣にいる眞子に言葉を向ける純一。

 

「こんばんわ、音夢さん。水越さん」

「白河さんも来たんだ」

 

 助手席から降りてきたことりに、挨拶を交わす眞子。

 

「黒色のGTOに興味があるのは純一だけじゃ無いってか」

「え? ケンタが何で居るのよ!?」

 

 眞子が驚く。音夢も驚いた表情を見せており、ケンタは少し表情をムッとさせた。 

 

「なんだよ、まるで来ちゃダメだったみたいじゃねぇか」

「いや、アンタ今日、噂の黒いGTOとバトルするんでしょ?」

「はぁ? 何言ってんだよ?」

 

 ケンタは眉をしかめる。

 

「でも走り屋中で噂が飛び交ってますよ? 初音オート代表が黒いGTOと一緒に走るって……」

「誰だよ、そんなアホみたいなデマ流した奴は。そんなもんオレは知らん」

 

 きっぱり否定するケンタ。やはりただ単に噂話だけだったようだ。

 

「なんだ、やっぱりただの噂かぁ。心配して損しちゃった」

「大体、なんでオレがあんなヤツとバトルしなきゃなんねーんだよ」

「それもそうか」

 

 眞子が苦笑する。風見学園時代からつるむことが多かった、この場にいる5人。皆それぞれ、各人の性格は把握しているつもりだ。

 

「で、例の黒いGTOは来てるのか?」

「まだ姿は見てないわ。ま、この様子だとすぐ来るんじゃない?」

 

 眞子がそう言った、その瞬間。駐車場入り口から、走り屋たちのざわめきが聞こえてきた。

 

「どうやら、目当ての車が来たみたいだな」

 

 ケンタがそう言うと、彼ら5人は駐車場入り口の方へと向かっていった――。

 

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