D.C.Street.Runners.~ダ・カーポ~ストリートランナーズ   作:ケンゴ

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Act.6 同型車① -インプレッサ-

「お?」

 

 山頂の駐車場で音夢と語り合っていたケンタが、駐車場の入り口から入ってきた車に気が付く。台数は3台であり、そのどれもが彼には見覚えがある。

 

「あの黄色(バナナ色)のインテグラは美春か。それに眞子の22Bと純一のエボ3まで……どうなってんだ?」

 

 美春のインテグラはまだしも、さっき下って行ったばかりの眞子と純一が、美春の車と一緒に駐車場に入ってきたのには違和感を覚えた。あの2台が初音山を往復したにしては時間が早すぎる。

 違和感はケンタだけではなく音夢も感じたようで、きょとんとした顔でこちらへ近づいてくる3台の車を見る。

 

「こんばんわですっ、音夢先輩、ケンタ先輩っ」

 

 2人の近くに駐車したインテグラから、美春が元気一杯な声と共に降りてくる。そして、そのまま音夢に抱きついた。

 

「よう、相変わらずバナナの匂いが充満した車だな」

 

 苦笑しながらケンタがそう言う。インテグラのドアが開いた瞬間、あたりにバナナの香りが流れ出したからだ。芳香剤だと思うが何処で売っているのだろうか。少なくとも初音オートでは取り扱っていない。

 

「バナナミンは体に良いんですよっ」

「わかった、わかった」

 

 ケンタがバナナの凄さを力説してくる美春を宥めていると、眞子の22Bと純一のエボ3も近くに停車し、車内からドライバーそれぞれが降り立つ。

 

「やっぱり水越先輩と朝倉先輩だったんですねー」

「こんばんわ、天枷さん」

「眞子がいきなりスピンターンかましたからな」

 

 美春に挨拶する2人。とっても、純一は眞子に対する苦言であるが。

 

「まぁ大方予想通りってとこだな」

 

 嘆息しながら眞子を見るケンタ。眞子はケンタの視線に気づいたのか、バツの悪そうな顔をする。

 

「まー別に良いけどよ。それよりなんで美春のインテグラにくっ付いて、お前ら2人が居るんだよ?」

「言っただろ、いきなり眞子の奴がスピンターンしたって」

「それだけで状況を把握できると思ってんのか」

 

 ケンタがジト目で見ると、純一はかったるいと言いながらも、先程の説明を行う。

 

「あー。そういうことな」

 

 所々で美春の解説も織り交ぜながらの説明を聞いたケンタは、あっさりと納得した。

 

「しかし、そのインプレッサも結構やるな。暫定的なコピュータセッティングだったとは言え、美春のインテRターボを突っつきまわせるなんてよ」

 

 美春のインテグラに搭載されるコンピュータセッティングを行った――Engineerring.Amakase(ER天枷)のレベルの高さを知っているケンタは舌を巻く。彼の愛車もER天枷が手掛けた――正確にはそれをベースにしてケンタがアレンジを施した――物だから。

 

「是非ともお目にかかりたいもんだね――ん?」

「あの車……」

 

 駐車場へ入ってくる1台の車に、ケンタと美春が気付いた。白いボディカラーと大きなリアウイングが特徴的な車が、ゆっくりとこちらへと向かってくる。

 

「あのインプレッサよ」

 

 眞子が近づいてくる車――白色のGC8型インプレッサを見て、ケンタに耳打ちする。やがてそのインプレッサは彼らの対面の駐車スペースに停車し、車内からドライバーの男性が降りてきた。

 

「さっきはどうも。そのインテグラ相当えぐい改造――って、よく見りゃインタークーラー設置してんじゃねーか。おいおい、ターボ仕様かよ。そりゃ速い訳だ」

 

 インプレッサのドライバーが、挨拶をそこそこにインテグラの前に居る美春にそう言った。その声色に敵意は無く、随分と穏やかなものだ。

 

「パワーってどんだけ出てんの?」

「え? えーと、300馬力弱位だと思いますけど……」

 

 急に話を振られた美春は、戸惑いながらも自分のマシンスペックを公表する。

 

「おいおいマジかよ……。よく峠道でFFシャーシの300馬力を踏めるなー。車もそうだが、ドライバーのレベルも高いな」

「あ、ありがとうございます……?」

 

 語尾が上がる美春。さっきまでバトルしていたとは思えないほど、ドライバーの表情は穏やかで友好的だ。ケンタを除く4人が少し呆気に取られていると、ケンタがインプレッサのドライバーに声をかける。

 

「そっちのインプレッサも、随分と綺麗な車じゃないか」

 

 目の前に止まるインプレッサを見て、ケンタは感心した。ホイールはおろか車高すらもノーマル。エンジンサウンドから察して、恐らくマフラーやエンジン関係も何一つパーツを変えていないのだろう。

 

「そっちは車屋さんか?」

「ああ」

 

 ドライバー男性の含みのある質問の意味を理解し、それを肯定するケンタ。

 

「その()の車は、少なくともマフラー辺りは変えられてるからな」

「確かに。特にこうゆう所を走ってる奴なら尚更ってか?」

 

 忍び笑いをしながらケンタを見る男性。2人は何処か波長が合ったのだろうか、お互いに不敵な笑みを浮かべる。

 

「地元さんに向けて言うのは失礼だが、こんな辺鄙(へんぴ)な場所にも腕の良い車屋が有るんだな」

「そりゃどうも」

「是非とも手合わせを願いたいもんだ」

 

 男性はケンタ達の後ろに並んだ車を見て、バトルの挑戦状とも取れる言葉を投げる。

 

「残念だが、ここにオレの車はねぇよ」

「なんと。そりゃ残念だ」

「それなら、私が相手をしてあげるわ。車はそこのインプレッサ22Bよ」

 

 大げさに肩をすくめる男性に、眞子が声をかける。眞子が示した車種を聞き、男性は顔色を少し変えた。

 

「良いねぇ。22Bなんてレアな車と走れる機会なんてそうそう無いからな」

 

 男性は眞子の方を向いて口元をニヤつかせる。自信があるのか、それとも単純に嬉しいのか。どちらにせよ、これでお互いにバトル承諾となる。

 

「バトル方式は?」

「横並びスタートのダウンヒル1本勝負でどうかしら。ゴールは麓の駐車場よ」

「了解。――っと、自己紹介がまだだったな。俺は宮沢 和樹(みやざわ かずき)だ、よろしく」

 

 男性――宮沢がそう言うと、眞子を始めとするその場に居る全員も、宮沢に自己紹介を行う。

 

「そんじゃあ、早速始めるとすっか」

「そうね。誰かカウントお願い」

 

 宮沢と眞子が各々のインプレッサに乗り込み、車を駐車場から移動させてスタートラインに着けた。

 

 

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