艦隊これくしょん 艦娘たちと提督の話   作:しゅーがく

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第34話  横須賀と端島の交流 その3

 演習を終えた後、出迎えた埠頭で集合を掛けて行ってみると雰囲気がどんよりとしていた。と言っても、それは演習に参加していた艦娘だけで、その他見学していた艦娘や指揮をしていた真田は集まって相談をしているように見えた。

 演習は立案中だった戦術の導入を行ったものだったが、かなり上手く行ったようだ。とはいえ、実戦したのは精鋭たち。普通の艦娘にも出来なければ実用したところでどうしようもない。今度別の艦娘たちに試して貰おう。

 

「お疲れ様でした」

 

「あぁ、お疲れ様でした、中将。いやはや、私はまだまだですね」

 

 後頭部を掻きながら、真田はそんな事を言ってくる。今回の演習での端島艦隊の評価は良くないのかもしれない。結果からしてそうだ。恐らく、観戦していた艦娘たちの殆どは口を揃えて云うだろう。

 

『ダメダメだった』

 

と。だが、俺はそうは思わない。例えば構築していた陣営。艦隊編成自体が歪であったにも関わらず、かなり硬い防御陣形だったと思う。火線を考慮した密集陣形。分厚い対空砲火が望める一方、航空爆雷撃が入り込まれた時には滅法弱い陣形に見えたが、典型的な陣形を使っていなかった点は俺が学ぶところだった。

こちらの第一次攻撃隊を発見した際、甲板上に出ていた戦闘機を発艦させるのも、英断とはいえないがいい判断だったのでは無いだろうか。第一次攻撃隊の編隊を崩したからだ。立て直すのに少し時間を使った。時間稼ぎとして有用だったと言えよう。ただ、攻撃隊を残したままだったのは良くない。こちらの攻撃で飛行甲板に出ていた艦載機を1機、海中に落としてしまったからだ。

 

「攻撃隊に突っ込ませた迎撃機には少し動揺しましたけどね……」

 

「そうですか」

 

 お互いに演習の評価をしつつ、俺たちは場所の移動を始める。移動先は本部棟にある会議室。普段あまり使っていないところだが、数日間のために清掃を行った場所だ。ここともう1つの部屋を掃除し、滞在期間中はそこに端島から来た真田たちに寝泊まりしてもらうことになっている。

 会議室に到着するや否や、これまでどんよりしていた演習に参加した艦娘たちが口を開き始めた。

ポツポツとだったものが、少しずつ口調が荒くなっていき、仕舞いには怒鳴っているようにも聞こえる。

 

「あんな攻撃、卑怯では無いか!! 艦隊を二分させ、航空隊も別働隊を用意し、更に索敵機は戦闘機と来たものだ!!」

 

「弾着観測射撃をしたところで、あの命中率はおかしいじゃろう!! なんじゃアレは!?」

 

「開始前に艦隊を二分させておいたんじゃないのか!?」

 

 という噛み付き具合の長門、利根、摩耶たち。

 

「缶を狙って出力落とさせるとか、ひどーい!! それで後は好きなだけ殴っちゃってさぁ!!」

 

 時雨と夕立の戦術にハマり、足を止められた島風は頬を膨らませている。

 

「飛行甲板も船体もペンキで染めてくれた上に艦橋まで機銃掃射って何よ!! 帰る時、方向も分からなかったんだからね!!」

 

「私の天山がぁぁ……。衝撃で海没しちゃったんだけどぉ……」

 

 飛龍、それは知らん。それに恐らくだが、あまりに対空砲火が当たらないからとおちょくったのだろう。恐らく赤城航空隊。そんな芸当が出来るのは赤城航空隊くらいだ。

 そんな具合に騒がしい会議室の中、それぞれの参加艦娘たちと俺たちは対面になって座っていた。真田と俺、こちらの参加艦娘は無言のままで6人を見ているだけだ。

それにこの部屋に入ってきている、端島の他の艦娘はちゃんとした総評が行われる前だということで、自分らの見解を話し合っているし、こちらなんて立ったまま寝ている奴だっている。こんな空間で最初に静寂を迎えさせたのは俺だった。

 

「静かに」

 

 今まで騒がしかった端島の演習艦隊やその他の艦娘たちが黙る。

 

「端島演習艦隊の皆が言いたい不満は後で聞く。最初に互いの指揮官から自艦隊への評価を行う」

 

 言い出しっぺの法則だ。俺から始める。

 

「先ず全体評価。空母を有する水上打撃部隊は効果的な包囲殲滅作戦及び航空作戦の完遂はとても価値のあるモノだった。更に艦隊を二分することを犯しながらも、損害を出す事なく成し遂げた事が良かった。ただ、本来ならば戦力を分散させることは愚の骨頂ではあるが、相手の手の内が分かっている、本来ならば知り得ない情報までも持っていた状況下での有用性を確認することが出来た」

 

 作戦立案自体は演習艦隊には関係のないものだったが、それを理解し遂行してくれた能力は評価に値するだろう。

 

「それで、だ。そんな状況下の作戦行動中、敵艦隊への牽制攻撃をCPより司令したのだろう? 赤城」

 

 急に名指しで呼ばれ、赤城がビクンと肩を跳ね上げる。

 

「はい。攻撃隊による航空攻撃中は状況次第では牽制を行えますし、効果もありますから実行しました」

 

「必要以上に機銃掃射をしていたようだが?」

 

「そ、それはぁ……」

 

 人差し指をツンツンしている当たり、調子に乗ってやってしまったというところだろう。溜息を吐き、注意をする。

 

「色々云うとキリが無いが、程々に頼む。本当」

 

「はい……」

 

 気持ちを切り替え、個人評価に移りたいところだが、どうも通常運転過ぎて評価する点が無い。強いて言えば、扶桑と山城の主砲弾直撃率の高さくらいだろうか? 夾叉無しでアレだ。一体なんなんだ?

夕立と時雨の駆逐隊による強襲も、問題なくやり抜いた。敵艦隊は混乱に陥れることが出来たからな。被弾もない。加賀航空隊の練度も赤城航空隊にちゃんとついて行けるようになっているので、かなり上がってきたのだろう。

 

「それぞれ、存分に力を出し切ってくれた。これが横須賀鎮守府艦隊司令部、これが攻略艦隊の力だと知らしめることが出来たのでは無いだろうか。とはいえ、手を抜くな。息を抜くな。演習で満足するな。以上」

 

 横須賀の番は終わりだ。次は端島の番。

 

「全体評価に関して。哨戒行動や報告、艦隊陣形は整っていたと思う。興奮状態になると、報告が荒っぽくなる点は今後すべき課題だ。それに加えても、問題は山のようにある。対空砲火の密度も良くなかったし、指令が出てから行動に移して準備を整えるまでに時間が掛かり過ぎている。アレだけ発砲しても、殆どを外して夾叉数発も問題だ。さらなる訓練が必要だろう」

 

 息を呑み、気合を入れた真田は続ける。

 

「それだけの事を分かって居ながらも、波のように押し寄せる中将の作戦に対応出来なかった私も全くの力不足だった。私共々一層の勉強、努力、訓練が必要だ。君たちは確かに端島では精鋭かもしれない。だが、端島"では"だ。所詮私たちは田舎者。常に前線に立つ中将の横須賀は一味も二味も違うことを痛いほど理解しただろう。一身に砲撃を食らって軍艦色がまっピンクになった長門、摩耶。船体中央に魚雷を何本も同じ場所に当てられた蒼龍。航空爆撃を一身に受けた利根と島風。嬲られて天山を海中投棄してしまった飛龍。最後に、全く迎撃に対応できずに効果的な指令が出せなかった私。帰ったら缶詰だ」

 

 悔しそうな表情をする端島の演習艦隊一同は、真田の言葉に反抗することはなかった。この演習で突きつけられた現実であり、非情に叩き潰された後だからだろう。きっと、端島に帰った後に猛訓練をすることになるだろう。天狗になっていた彼女たちはポッキリとそれを折られてしまったからだ。

 少し気まずい雰囲気になっているが、これからはお互いの指揮官によるお互いの艦隊の評価だろうか。

俺としては既に真田に言われてしまったことばかりだったんだが……此処はどれだけボロボロだったとしても良かったところを探そう。

 

「私の方から端島の演習艦隊に」

 

 暗い表情をしている6人がゆっくりと俺の方に顔を上げた。

 

「私はモニタで貴女方の動きしか見ていなかったので言えることは少ないです。ただただ、聞いていた通信からですが、こちらの第一次攻撃隊が到着した時、飛龍航空隊は発艦中だったらしいですね。こちらの第一次攻撃隊を察知し、装備が完了していたかはさておき燃料を積んでいる艦載機をすぐさま発艦させたのはいい判断だったと思います。それ故に、飛龍は轟沈判定を食らっていく艦隊の中で苛烈な攻撃を耐えることが出来たのではないでしょうか」

 

 そう。甲板上に艦載機がある状態で敵機に襲われることほど、空母が怖がることは他に無い。自分の攻撃力を失うどころか、それが原因で自らにダメージを負うことだってあるのだ。

 

「今のところ以上です」

 

 端島演習艦隊の面々の表情は曇ったままではあったが、顔を下げることなどなかった。

 続いては真田が横須賀演習艦隊への評価を云う番になった。

こちらの6人は特にそわそわすることもなく、至って静かにそこに居る。心を乱すことなく、落ち着いた様子で座っていた。

 

「では私から横須賀の演習艦隊へ」

 

 視線は真田に集中する。

 

「初動から最後まで気の抜けない波状攻撃が実に見事だった。艦隊、航空隊の練度も素晴らしく、非常に参考になった。ありがとう。これ以上は私の勉強不足で評価しきれない」

 

 こうして横須賀と端島の演習は幕を下ろした。この後、すぐに双方の演習艦整備に入り、それぞれ鎮守府内に用意した宿泊部屋や施設の案内をした。

中でも端島の艦娘たちは酒保に心底驚いたようで、やはり俺が横須賀鎮守府に着任した時ほどではないにしろ、端島の酒保は田舎のスーパーマーケット並の大きさしか無いらしい。横須賀鎮守府にある酒保と比べると、端島の酒保は小さく思えたようだ。

真田は横須賀鎮守府内にあるデッドスペースの広大さに心底驚いていたが、それも艦隊運営などに使われていない意味でのデッドスペースだ。それぞれに利用目的や将来的に使うつもりであるスペースなので、そのように説明をする必要があった。特に滑走路跡地などがそうだ。広大な更地を目の前に真田があんぐりしていたのは記憶に残る。

 




 評価の話だけで1話潰すって……。まぁ、そういうこともありますよね(真顔)
 今回の交流の話は書き溜めです。書き溜めて、いつ出そうかと思っていたものをそのままズルズルと……。
しょうがないです。ちょっと内容で考えるところがありましたからね。

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