艦隊これくしょん 艦娘たちと提督の話   作:しゅーがく

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第39話  予兆

 

 南西諸島北海域制圧作戦から時は流れ、台湾南方に展開していた前線を押し上げる動きをし始めていた。動きといっても、そのような動きをするのなんてたかが知れている。そう。俺たち、横須賀鎮守府の攻勢の準備が完了しつつあったのだ。

その前準備は大掛かりといえば、そうかもしれないというレベルであった。

 南西諸島北海域制圧作戦の前作戦にて、沖縄諸島奪回が叶った。島民たちが本土に避難していたしていないはさておき、沖縄自体は戦線の後退に伴い放棄しなければならなかった状況であったのは確か。そして、今では数多の島で構成させる沖縄諸島を国と軍が『深海棲艦出没につき危険』と詠い、本島やあちこちの島を要塞化してしまうことは……前回の攻勢でも俺の与り知らぬところで起きていたようだ。よく考えれば、沖縄での補給は何度もあったし知らないとは言えないかもしれない。

 それはともかくとして、沖縄諸島と台湾高雄基地への人員移送と物資備蓄が完了したのだ。兵器等は強襲揚陸艦で、それ以外は輸送艦で本土からの輸送を行った。

それぞれに数万人程度の軍人を派遣し、装備は通常兵器一個駐屯地分と、海軍補給用燃料・弾薬・食料の膨大な料の備蓄が保管されることになった。駐屯地防衛用の通常兵器と云っても個人用携帯火器や携帯式誘導弾発射機と弾頭、装甲車。少数だが機甲部隊もある。航空戦力も戦闘機等の固定翼機は無理だが回転翼機を一個飛行隊の異動もしてある。

 今から行うべきこと。少ないわけでは無い。俺の動きから、大本営ではそろそろ西方海域前までの南西諸島海域全域への攻撃が始まることを予測はしていることだろう。新瑞が恐らく陸軍へコンタクトを取って万一の部隊招集を呼びかけているところのはずだ。とは云え、先方は海軍海兵に任せることになるだろうが、あくまでそれは"そういう状況"になった時のための部隊だ。

そのため、俺は大本営に斥候の情報を報告しなければならない。迅速な動きをするために。

更に先の南西諸島北海域制圧作戦では強行偵察艦隊による強行・威力偵察を行った後、作戦行動を起こした。だが、今回は別の方法を取ることにしている。そのために既に該当する艦娘への招集もしてある。彼女らの斥候偵察任務の発令から、数日は派手な動きは出来ない。それに、彼女らの出撃前にやっておかねばならないこともある。

近海への大規模対潜哨戒だ。これまでにも何度も対潜哨戒はあったが、今回は力を入れて行う。それが完了した後、彼女たちに出撃してもらう。その後、状況に合わせて部隊を動かすことになるだろう。

 

「という訳で、現在大規模対潜哨戒が行われている」

 

 俺が立っている場所は鎮守府にある警備棟第1会議室。巨大な会議室の中を隙間なく人が座っている。知っている顔ぶればかりで、知らない人間と云えば、今回の作戦に参加することになっている各軍の部隊長クラスの人間だ。ちなみに敷地に入るに当って、これでもかと身体検査がなされた。この部屋に入ってくる面々は心底うんざりしていたから、相当執念な検査だったんだろう。

 

「未明までの報告では、潜水艦隊の接敵は5回。水上艦隊は1回。それぞれ全て撃沈。戦闘開始から終了までの間はごく短時間。現在も継続中ではあるが、すぐに完了し引き返してくる」

 

 各方面に向いたモニタに海域の哨戒状況を表示する。既に近海の哨戒は何も残っていないのでは無いかというほどまで繰り返し行われている。

 

「先ほど斥候には偵察任務を下し、出撃している。既に航路上の状況は詳細に報告がなされている」

 

 横須賀鎮守府から台湾までの航路が示され、現在斥候が航行しているであろう位置までマーカーが伸びている。まだ1/5も済んでいないが、それでも中部地方に入りかかっている状況だ。

画面が切り替わり、現在この場に招集されている部隊が表示される。海軍からは横須賀鎮守府艦隊司令部、海兵。陸軍からは各駐屯地に派遣済み若しくは今から派遣される部隊。空軍は羽田とその他戦闘機部隊や輸送機部隊が幾つか。

 

「各軍所属部隊は伝達済みの状況を開始」

 

 表示は変わり『起立』と出る。これで説明は終了。一応、ブリーフィングという形を取っているが、基本的には現在の状況説明が主となっていた。横須賀鎮守府所属部隊は基本的に情報が必要十分量がリアルタイムで伝達されている。それ以外の部隊への情報は量が量だけにどうしても書類という形になってしまうが、それを避けるためにこうして面と向かったブリーフィングを行う必要があった。そちらの方が質問等があった際、その場ですぐに聴くことが出来ると思ったからだ。

 

「敬礼ッ!!」

 

 秘書としてこの場にいる姉貴の号令で全員が一斉に敬礼をし、その場は一度ブリーフィング終了という流れに変わる。その後は隣同士や同一部隊間の情報交換の時間や質問等に充てられるようにしてある。モニタにもそのように指示が出ているしな。

手元の資料や作戦書を片付けている間も、皆話に夢中になっていた。今回の攻勢は俺たち横須賀鎮守府単一作戦では無い。各軍が連携して行うものだ。まぁ……うんざりするようなことがあったのだ。

 通常ならば俺たちだけで行うものではあるのだが、これに政治が噛んできている。政府から他の軍と連携した作戦を求められたのだ。真意は俺たちだけが功を挙げるのではなく、共同しての功としたいらしい。

それならば端島との共同作戦の方がやりやすかったのだが、それでは駄目らしく通常兵器の参加が必須だったのだ。という訳で、大本営は三軍から部隊を招集。編成表を俺に丸投げして『作戦立案頼んだ』と言ったのだ。総督からの命令ではあるし、それ以上からの命令も含まれているようにしか感じなかった。

俺主観で考えれば迷惑極まりないんだが、それ以外の視点で考えれば納得も行く。様々な考えが浮かぶのだ。

 そういう経緯からこの作戦が立案された。誰でも思いつくものだ。制海・制空権は俺たちが獲り、陸上への進出はある程度三軍に任せるものだった。台湾の時には、アレだけのことが出来る情報を持っていたが、他国では分からない。一応、タウイタウイには無人ではあるが集積場がある。最後に使ったのは、リランカ島への補給物資を送り届けたっきりだが。

つまり、台湾以外の他国に国家という者が存在しているのか、俺たちは全く知らないのだ。フィリピンは不明。リランカ島も占領軍が入るまでは無人だった。無人ばかりで調査もしていない。カスガダマには上陸していないが、船舶や航空機を確認したという報告も作戦中には受けていない。

なのでここに三軍を使うことにした。大規模な上陸部隊や支援を行うには、いささか装備が不十分で横須賀鎮守府内部で処理しきれいない部分を三軍に丸投げした作戦立案となったのだ。

海軍は上陸・橋頭堡の確保、攻略艦隊の支援。空軍は陸の制空権。陸軍は現地への接触と沖縄駐屯地のより一層警戒を強めた防衛。

 

「質問も綿密に書かれた作戦指示書にて先回りして潰してあるので、特に出てくることはなかったな」

 

「そうですね。既に海軍は連絡を済ませて厳戒態勢に入ったようですし、海兵部隊も陸軍の強襲揚陸艦"天照"や新規建造された海軍保有の強襲揚陸艦に参加部隊搭乗完了。異動準備完了との報告を昨日受けています。護衛はこちらに任せるとのこと。埠頭に集結しつつあります」

 

「空軍は空中投下物資の選定と積込み作業中で、陸軍も那覇では戦車・自走砲で編成された機甲部隊が海岸沿いに展開しているようだな。高射大隊(自走対空砲部隊)が沖縄本島内陸・海岸に満遍なく置かれたようだしな」

 

「沖縄本島の部隊配置図、既に届いています」

 

 俺たちのところでも情報交換は行われていた。姉貴が情報源となり、俺や武下が確認する。俺から各艦娘に、武下から門兵へと連絡が行われる。俺が攻略艦隊や今後出撃が予想される支隊や補給艦隊、救援艦隊に詳細を伝達。武下が場合によって行われる降下部隊や機械化部隊、特殊部隊に詳細を伝達する事になっているのだ。

 全ての整理を終えた俺は、持ってきていた荷物の全てを鞄に入れる。自分の運営する鎮守府内ではあるのだが、執務室からここまではそこそこ時間が掛かる。仕方がない上に、書類とパソコンがあったために仕方のないことだった。

俺がそれならば、ここに来ている将官たちも同じで鞄に書類や各々に発令されている命令書を片付けながら、既にちらほらと帰り始めていた。全員正門前に自動車を置いてきているようで、すぐにでも移動ができるようになっているらしい。そもそも作戦開始前ではあるし、既に動き始めているからだろうけどな。

 

「作戦参加兵力は現段階で数万。妖精含めると6桁を優に超えるな」

 

「ええ」

 

「大本営から総司令部を何処に置くか連絡は入ったか?」

 

 鞄を持ち上げ、既に殆ど将官の捌けた第1会議室を見渡し、隣に立つ姉貴に尋ねる。

 

「横須賀鎮守府艦隊司令部みたいですね。三軍の指揮官は総督と共に大本営から。CPとして機能させるようです。HQはウチです」

 

「判っていたから良い」

 

 既に部屋には横須賀鎮守府の人間しか残っていない。残っていた人たちも片付けを始めており、そろそろ執務室に戻らないといけなかった。

鞄を持った俺はそのまま第1会議室を後にする。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

 国内で報道規制は掛からなかった。というよりも、今回は大本営が大々的に情報を開示していたのだ。名目は『三軍共同の南西諸島進出』。おおよその意味で捉える人ならば、恐らく第二次世界大戦ん・太平洋戦争での大日本帝国軍の攻勢について連想しそうなものでもある。現に俺はそれを想像してしまったからだ。

この戦争は人間対人間ではない。そのために情報を隠す必要もなかったのかも知れない。この報道を聞いた民間人はそれぞれ様々な反応を示したことだろう。国内の状況はぶっちゃけ俺が知るわけも無いので分からないが、よく思わない人間も一定数は居ることくらい分かっている。

ただ。それでもだ。

 

「抗議文?」

 

「はい。大本営からの直通速達便では無いルートから郵送されてきました。宛名が提督宛てでしたので事務棟を通過した時には問題ないと判断されたみたいですが、たまたま中を見てしまいまして」

 

 作戦準備も終わらせ、今は開始までの時間を消費している。現在、作戦行動に出る前に護衛艦隊を付けた強襲揚陸艦群を沖縄に護送中だ。そこに到着次第、端島鎮守府と相談して哨戒網を作る。まだ作戦発動に至っていない状況。

俺は処理しなければならない執務を終わらせて、端島の真田大佐に連絡を取ろうかと思っていた矢先のことの話だ。文書を読んだのは姉貴。丁度秘書艦が書類の提出に出ている時間を狙って来てくれたのだ。

 

「内容は?」

 

「横須賀鎮守府の戦力のみでの目標海域奪還と制圧。危険度が落ちた後、重厚な護衛と共に兵を進めるべきだという内容になりますが、今の答えはおおよそ要約したものになります」

 

「ある程度作戦内容に文句を入れての抗議で、内容から察するに兵が無駄死にするんじゃないかというものなのか?」

 

「おおよそは。ただ、やはり横須賀鎮守府に全作戦遂行の戦力捻出を求めているものです」

 

 それは無理な話だ。今回は少々政治も絡んだ作戦だ。確かに兵を巻き込まない作戦立案も可能だ。だとしても、それで出来ることは限度がある。各国とのコンタクトはどうしても俺たちだけではどうにもならないからだ。それにもし国の機能が失われていたとした時、どうやって俺たちは行動範囲を広げていけば良いのか分からない。無理矢理周辺住民を追い出して基地を建設するわけにもいかない。それは他国への侵略と同じだ。

 どうしたものかと考えはするが、やはり無視を決め込むのが一番良いだろう。下手に返事、何処かに情報を出すと大きな問題に発展しかねない。

取り敢えず、姉貴から抗議文を受け取ることにした。

 

「投函場所は……ぶっちゃけ全国の地名なんて覚えていないから分からないなぁ」

 

「東北です」

 

「あ、そう……。この他に同じような抗議文が届いた時には、内容確認後に回して欲しい」

 

「分かりました。この件は」

 

「皆には言うな。逆鱗に触れる可能性がある」

 

「……3時間で東北は焦土と化しましますね。恐らくは」

 

「あぁ」

 

 内容を最初から確認して行きながらも、出来るだけ早く読んだ俺はすぐに封筒を机に仕舞う。艦娘たちも流石に俺の机の中は見ないだろうという判断だ。これまでも見られてこなかっただろうしな。

 要件が終わった姉貴はこれから大本営に行ってくるとのこと。一応だが、新瑞や憲兵の士官にそれとなく吹聴させておくとのこと。世間話程度にするくらいで済ませるみたいだ。一応、大本営から栃木の憲兵に報告が行くだろうから、事を大きくさせる前に警戒しておくことに越したことは無いからな。

 その後、何事もなかったように提出から戻ってきた秘書艦を迎える。執務室にはこの時既に姉貴は居らず、事務棟に向かったことだろう。

何かあればすぐに反応する艦娘たちだが、どうやら何も感じ取らなかったようだ。秘書艦席にそのまま座りこんだ今日の秘書艦である川内は、頬杖を突いて何か考え始めたようだった。この後も特に何かある訳でもなく、作戦発動までにしなければならない準備を再確認して、川内と共に残っていたことへの取り組みを始めるのだった。

 





 お久しぶりな投稿になります。言い訳はしないです。少々情報整理などを行っていたり、新年度ということもあって、結構バタバタしていました(汗)
他にもしたいこと等あると、どうしても遅れていくものです……。

 今回の内容は必見です。数回ないし十数回と引きずる内容になります故、ある程度は覚えておいた方が良いと思います。
自分も何度も読み返すと思いますが、書き手が補完出来ていないと意味わからないですからねぇ。

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