艦隊これくしょん 艦娘たちと提督の話   作:しゅーがく

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※冒頭は提督視点ですが、途中から別視点に変更されます。

※注意 閑話です。


第42話  ネアオリンポス作戦 閑話『バタン島 その1』

 

 バシー海峡制圧の報が入ったのは、比叡が艦隊撃破を知らせてから半日が経った頃だった。隅々まで調べ、海中に潜む潜水艦の有無も確認。上空からの綿密な航空偵察をした結果、これくらい時間が掛かってしまったとのこと。

想定以上に時間が掛かってしまったらしく、比叡から作戦遅延に関する問い合わせがあったが『気にするな。予定通りだ』と送り返している。サバサバしている癖に、こういうところは真面目になってしまうのが比叡なのだ。人となりは分かっていたので、俺としても怒るようなことは全く無かった。

バシー海峡制圧が完了したことにより、HQも騒がしくなっていた。バシー海峡南方に位置するバタネス周辺まで到達した比叡らが航空偵察を敢行、結果深海棲艦の存在は確認出来なかった為に、高雄にて待機中だった陸海軍部隊が動き出す。

 

『作戦企画紙に基づき、我々は高雄基地を出発しバタネスに向かいます』

 

「あぁ。頼む」

 

『予定通り、強襲揚陸艦1隻と海軍最新鋭巡洋艦4隻の護衛にて向かいます。道中、横須賀鎮守府艦隊司令部所属 バシー海峡制圧艦隊と合流し、揚陸が完了次第設営を開始します』

 

「数時間、バタネスにはバシー海峡制圧艦隊を残す。その間に設営を終わらせ、最低限の防衛体勢を整えろ」

 

『了解しました。では』

 

 今交信していたのは、高雄で待機中の陸軍第二方面軍から抽出された陸軍師団だ。任務はバタネスに向かい、バタン諸島の本島であるバタン島に揚陸すること。師団を上陸後、海岸線で防衛体勢を整えた後、島内陸に調査に向かう。現状、一時的な上陸であることになっているが、場合によっては物資の集積地になる予定。

ちなみに強襲揚陸艦の護衛に付く最新鋭巡洋艦とは『かさばね型護衛巡洋艦』のことだ。対空・対艦兵装を運用することを想定されて建造されている。ただ、現状は対艦兵装はただのお飾りだった為、作戦発動前の改装で対艦兵装は対空兵装に全て取り替えられていた。

 陸軍との交信の後は、海軍との交信だ。同じく台湾高雄に停泊しているかさばね型護衛巡洋艦の一個艦隊は強襲揚陸艦の護衛に就くため、出航の準備を行っていた。

 

『提督。準備は完了しています』

 

「結構。これよりバタネスに向かう強襲揚陸艦護衛の任に就いてくれ。道中、我ら比叡が率いるバシー海峡制圧艦隊と合流、そのままバタン島まで向かえ。その後の命令は比叡から受け取るように」

 

『了解しました』

 

 海軍ということもあり、更に母港は横須賀軍港。横須賀鎮守府近くにある海軍の保有する軍港所属のため、俺たちとは基地内の門兵ほどではないにしても、それなりに仲良くしている。艦娘たちも特に気にすることなく接しているようで、あちらも敬意を払ってらしい。

らしいというのも、俺は直接知らないからだ。短距離航海の時、すれ違う時には挨拶をちゃんとする間柄とのこと。あちらは、手すきの者が甲板に出て帽を振り、艦娘も甲板で大きく手を振るんだとか。遠征艦隊と仲が良いとのことで、時々艦隊司令や艦長、その他指揮官クラスの者が陣形等の質問を手紙で送ってくる。受け取った俺が何のことだか分からない時、たまたま秘書艦だった龍田が教えてくれたのだ。艦娘と一部海軍は最近、こういう間柄だということに。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

 日本皇国三軍合同の『ネアオリンポス』作戦。本作戦に参加した私は日本皇国陸軍第二方面軍第六師団第二○連隊第三中隊所属の小隊長だ。50人の隊員を任され、今回初となる深海棲艦に対する大規模反攻作戦に従事する。

私の所属する師団は海軍横須賀鎮守府艦隊司令部を頂点とする作戦総司令部の立案した作戦、『ネアオリンポス』作戦の初段階に投入された。横須賀軍港から海軍の強襲揚陸艦に乗り込み、横須賀鎮守府所属の艦娘に護衛されて台湾に租借した港湾施設に向かい、そこで作戦開始を受けている。今は目前に迫ったバタン島に向けて水陸両用装甲車で揚陸する命令を受けるのを待っているところだった。

 

「小隊長!! いよいよですね!!」

 

「あぁ……。いよいよだ」

 

 上官は何も言わなかったが、"いよいよ"なのだ。自分らの手で深海棲艦を倒すことが出来なくとも、それの支援をする。それがひいては自分たちの力で深海棲艦に一矢報いることが出来る。今までは海軍、横須賀鎮守府の青年将校と艦娘が独り担ってきたことを共に担ぐことが出来るのだ。

国内の治安維持と訓練ばかりに明け暮れた陸軍はもう、そこには居ない。やっと、やっと家族や国民を背にして戦うことが出来るのだ。

 強襲揚陸艦の格納庫にサイレンが鳴り響き、同時に海水が流れ込んできた。これが満たされればハッチが開き、水陸両用装甲車は海へと繰り出す。

本作戦に於いて初の陸軍部隊の活動が開始されるのだ。

 

「CPより出撃命令は既に下っています。海に飛び込みますよ」

 

「頼む」

 

 次々と格納庫から車両が海へと入っていく。波に飲まれながらも、体勢を崩さずにバタン島へと向かっていく。

私は車内に居るので外の状況は何一つとして知らないが、車内の揺れは陸上を走るそれとは全く違ったものだ。大きく振り幅の大きい揺れが胃を刺激し、内容物を吐き出そうと身体が反応する。だがそれに必死に抵抗し、手に持つ小銃を支えにこの後の事を考える。

上陸を果たした後、私の小隊は分隊に別れて上陸地点の確保を行う。その後、中隊が集まり、中隊長の指揮の元でバタン島の海岸から内陸へと歩を進める予定になっていた。

 

「各分隊は予定通り上陸地点を確保しろッ!! 車内に残した物資は後でも降ろせるッ!! 最低限の装備だッ!!」

 

「「「応ッ!!」」」

 

 ハッチから駆け出し、浜を内陸に向かって駆ける。分かってはいたがやはり暑い。迷彩服が肌に張り付き、動脈が流れている部分が自分でも分かるくらいに発熱している。

両手には3.5kgの小銃、身体には予備弾倉数本と破砕手榴弾、煙幕弾。バックパックにはそれ以外にも携帯食料が幾つかと、物資が入っている。総重量40kgはある。

 小隊が浜を走り抜け、背の低い草が生い茂っている辺りまで到達する。少し息の上がった兵たちが集まり、簡易的な報告をしていく。

現状、特に問題はないそうだ。至って普通の海岸。漂着物は人工物のものが多く、中には明らかに鋼鉄で出来た板なんかもあるらしい。そして肉が腐り落ちた遺体が何体も。恐らく漂着したものだと云うが、真意は専門家でなければ分からないとのこと。中には日本語で書かれたものも落ちているらしい。

 

「周辺を探索した分隊から報告です。周囲には漂着物多。劣化が激しく判別不能。我々以外の人間の姿は見えません」

 

「報告ご苦労。小隊は現在地にとどまり、周囲に目を光らせろ。私は中隊長の元に向かう」

 

「了解」

 

 自分の率いる第一分隊の半数を連れ、私は現在地を移動。中隊長が上陸している地点までの200mを移動し始める。距離にしてはそこまで離れていない。ただ、目につく物は多かった。

やはり塩と風で劣化した人工物が多く、人の気配は全く無い。台湾を出る前に伝え聞いた話では、横須賀鎮守府所属の艦が数隻、総司令部の特命を受けて一度出撃していたらしい。目的地は台湾高雄沖。そこまで離れていないところで停泊したんだとか。戦場で何かイレギュラーが起きているのかもしれないが、私たちのところまで報告が来ないということは知らなくても良いことなのだろう。

 数分歩くと同じ服装の集団を発見。中隊長の小隊だ。

既に他の小隊長も到着しているようで、最後は私たちのところだったらしい。

 

「お待たせしました」

 

「良い。第一から順に報告を聞いていたところだ。君の第四小隊は今からだが、報告してくれるか?」

 

「はッ。上陸後、周辺に短距離偵察を行いましたが、人っ子一人見つかりません。周辺には漂着物が多く、人の遺体と思われるものもありました」

 

「結構。やはり全ての小隊の報告は同じ……か」

 

 中隊長は被っていた鉄鉢(戦闘用ヘルメット)を浜に置き、結っていた長い黒髪を下ろす。今どき珍しくもない女性兵士、士官が私たちの上司だ。私の小隊にも女性兵士は何人も居る。全体的に見ても女性兵士は多く存在している。

 それは置いておいて、今後の方針を決めなければならない。

中隊長曰く『上陸後すぐには人を見ることはないということは分かっていた。その件は師団長からブリーフィングの報告が下りてきている。海岸線の状況も。今回から当面の行動は、上陸地点であるバタン島北部ボルダービーチから南下。バスコ空港まで向かうこと。それまでの間に強襲揚陸艦から物資を下ろし、仮設基地設営と小さいながらも通信基地を用意することだ。

 

「他の上陸した部隊はヴァヤン・ローリング・ヒルに向かっている。先行中の偵察大隊が上陸直後にそちらに向かった。本格的な仮設基地はそちらに置く。通信設備も浜に上げた後、ローリング・ヒルの確保の知らせがあった後、我々で運送することになっている」

 

 地図は頭に叩き込んである。なので地名を言われてもすぐにどこのことだか判別出来た。

 

「我々第二○連隊はここで物資の荷降ろし、集積を行う。既に舟艇が到着している。すぐに作業に取りかかれ」

 

「「「了解」」」

 

「周辺見張りの隊を置くことを忘れるな」

 

「「「はッ」」」

 

 私たちが乗ってきた水陸両用装甲車ではなく、次に浜に到着するのは舟艇。浜に乗り上げることの出来る船だ。甲板上には様々な物資が積まれており、武器弾薬は勿論、食料、日用品、嗜好品もあった。大きいものだと車両なんかもある。トラックや軽装甲機動車が降ろされていく。中には装輪装甲車もあり、連隊が装備しているもの全てを持ってきたようだ。

浜に上げた物資を集め、その後、トラックに積み込んで連隊指揮所に向かう。浜にある指揮所だが、一番西に置かれており、その地点を偵察大隊が先に確保していたところに上陸したみたいだ。

全員の移動を済ませ、連隊が集合したのは、上陸から3時間後。かなりの短時間で出来たことだろう。

 連隊指揮所が置かれた場所から、連隊は移動を開始。トラックに物資を満載し、兵は運転手以外は徒歩で移動。目的地はヴァヤン・ローリング・ヒル。偵察大隊が先行した仮設基地設営ポイントだ。

道中、偵察大隊の兵が数名茂みや木の上に隠れており、各所で報告をしていた。私の中隊の配置は前方だったので、その存在を中央に居る連隊長の連隊本部に報告をし、兵がそこへと向かう。

 

連中(偵察大隊)、隠れ方が本気過ぎませんか?」

 

「それもそうだろう。実戦ではあるし、ここフィリピンも連絡を途絶えて数十年は経っているらしいからな。国交がない以上、戦闘が起こりうるという想定をしておくのが当然だろう」

 

「軍事協定が存在したことは知っていますが、それも過去のものですもんね。とはいえ、横須賀がタウイタウイを使ったことがあるという話は聞きますから何とも判断しかねます」

 

 隣を歩く兵士が云うのも同意だ。未確認の情報ではあるが、横須賀鎮守府の艦隊が一度、フィリピン南西部に位置するタウイタウイに泊地を用意したことがあるというものだ。現地政府の許可を取った取ってないは不明だが、確実にそういう話があるのだ。

 

「何にせよ、そろそろ転がる丘に到着するだろうな。車両が見える」

 

 約1kmの道のりを1時間程掛けて歩き、目的地の丘に到着する。既に偵察大隊は仮設基地の設営(と言っても、テントの用意をしているだけ)を始めている。後から到着した第二○連隊も物資を下ろし始め、仮設基地設営を始めるのだった。

テントを立て、物資を山積みにしてビニールシートを被せる。途中、周りに有刺鉄線や木の杭を立てて、エリアを明確に。車両を種類ごとに均等に並べ、司令部、兵舎、医務に分けていく。全ての設営が終わったのは、日が落ちてからだ。

このタイミングで、周囲の偵察や立哨の持ち回りは既に決まっており、該当部隊は既に兵士を出している。私の小隊はまだまだ先なので気にする必要はないが、その代りに司令部へと出頭していた。

夕食後に各小隊長以上の指揮官は司令部に集合するように言われたのだ。

 

「全員、集合しました」

 

「ご苦労。全員楽な姿勢をしたまえ」

 

 連隊長。第二○連隊は歩兵中心の軽装甲部隊だ。戦車なんて物は保有してなければ、偵察大隊以外は全て歩兵大隊。少し離れたところにも他の連隊がこのように拠点を作っているとのこと。明日の朝、師団長が到着するらしい。一番最初に上陸した我々第二○連隊はいわば斥候部隊なのだ。

 

「現在第二○、二二連隊がバタン島に上陸している。第二二連隊はこの丘より東、中村埋葬地(Nakamura Burial Grounds)付近に仮設基地を作っている」

 

 地図が正面に置かれたボードに張り出され、分かりやすく赤いマグネットで印をしてある。

 

「明日、師団長と共にボルダービーチに残りの第四四連隊、第六戦車大隊、第六高射大隊が到着する。これらと共に師団長の指揮の元、バスコ空港に向かう。目的は皆も知っているだろうが、沖縄・台湾からの日本皇国空軍の航空部隊や横須賀鎮守府艦隊司令部所属の艦載機が降り立つための滑走路が必要だからだ」

 

 赤いペンで各連隊と師団長らの後発部隊がどのようなルートで動くかがおおよそ書かれていく。

 

「道中、集落等に入る可能性が高い。現地民が居た場合は銃口を向けることはしてくれるな。政治的交渉を我々に行う力はない。日本皇国政府及び横須賀鎮守府艦隊司令部に面倒を掛けさせる訳には行かない。部下にもそう厳命しておけ」

 

「「「「「「はッ!!」」」」」」

 

「バスコ空港に到着した後、今後の命令を師団長から下される。それ以降は大隊、中隊、小隊でバタン島内に散らばり、調査等を行ってもらうことになるだろう」

 

 そこまでは中隊長からも聞いている。これ以降、どのような言葉を聞くことになるかは分からない。

 

「今日は各隊へ戻り、休め。明日からは忙しくなる」

 

「「「「「「はッ!!」」」」」」

 

 あまり長くはない話だったが、期待していた以上の情報は聞けなかった。ただ、バタン島に散らばることになるとは、思いもしなかったことではあるが。

私は司令部から出ると、中隊のテントへと向かった。空を見上げると真っ暗だが、いつもなら見ることの出来ない星がある。綺麗な空だ。

 





 大規模作戦ですので、視点を変えたところも書かせて頂きました。箸休めみたいなものです。
名前も出ない、所属のみしか分からない人の話ではありますけどね……。
今回を通して留意していただきたいのは、大規模作戦中(※今回に限るかは分からない)はこのようなことが各地で起きているということです。
描写不足な気がしなくもないですけどね(汗)

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