「アイドル嫌いの俺」の妹がアイドルになりました。 作:黒須レイク
卯月が目指しているアイドルについて興味をもって調べてみたことがある。
そして思ったことそれは、
「アイドルって何が楽しいんだ?」
これである。もちろん卯月が目指しているのだからきっと良いものなのだろう。しかし俺からするとただかわいい服を着て踊っているだけのようにも見える。しかもよくよく調べてみると現在日本はアイドル戦国時代らしくとても競争が激しいらしい。そんな不安定な世界に卯月を放り込んで大丈夫なのか三日三晩悩んだが卯月に満足できるまで挑戦させてみることにした。
「お兄ちゃん?」
卯月が心配そうに俺をのぞき込んでいた。ふと意識が飛んでいたようだ。
「大丈夫だよ。ところでそのアイドルになれたっていうのはどういうことなんだ?」
「うん。えーっとね。」
卯月はカバンから資料を渡してくれた。
どうやらこの資料は養成所に送られてきていたらしく、この前卯月が受けた346プロダクションのオーディションの補欠合格に卯月が選らばれたというものだった。
「よかったじゃないか!しかもあの346プロだろ。」
346プロは大企業346グループの子会社である。
かなりの大きい会社であるため設備もかなり整っていることだろう。
その中でもアイドル部門は比較的新しくできたらしく、高垣楓、城ケ崎美嘉などのアイドルが流行っているとこの前テレビで特集されていた。
「はいっ、これで私の夢も叶いました!」
「こらこら、アイドルになっただけで卯月の夢は終わりなのか?」
「えへへ、そうでした。これからもトップアイドル目指して島村卯月頑張ります。ぶい!」
両手でピースを作って笑顔になっている卯月を見てやっぱり俺の妹はかわいいなと思う。
そして、あっママにも伝えてきますね。といなくなる卯月の後姿を見ながら俺は
「彼女にトップアイドルになってもらいたい。」
心からそう思った。
次の日、卯月に
「今日、養成所にプロデューサーさんが来るみたいなんですけど、お兄ちゃん一緒に来てもらえませんか?」とお願いされたのでもちろんノータイムでうんとうなずき、久しぶりに養成所に顔を出すことになった。
電車に乗り養成所へと向かう。到着し中に入ると先生がいたので軽く挨拶をする。
「お久しぶりです。先生。」
「あらっ、島村君久しぶりね。卯月ちゃんもこんにちは。いつぶりかしら」
「一年ぶりくらいですかね。もう少し前のようにも感じますけど。」
中学校の頃はよく卯月を送り迎えしていたので顔見知りだった先生と少し話してから、奥に進み応接間のようなところでプロデューサーが来るのを待つことにした。
卯月と楽しそうに話をしていると急に卯月が固まった。
「おにいちゃん、あの人…」
卯月が恐る恐る指をさした先にはスーツを着た不愛想な大柄の男が立っていた。
「なっ、誰なんだあんた。」
明らかに不審がっている俺と卯月を見てその男は首に手を回して
「私は346プロダクションのプロデューサーです。」
と言った。今確かに346プロのプロデューサーと。
「「えっ、プロデューサーさん?」」
俺と卯月は全く同じ反応だった。
俺たち二人が落ち着いたところで
プロデューサーさんは話し始めた。
「驚かせてしまって申し訳ありません」
いや、驚いたっていうよりちょっと怖かったよ。と内心思いつつ。
「こちらこそ変に警戒しちゃってすみませんでした。あっ、自分は島村卯月の兄の春花です。」
と述べると、プロデューサーさんは何故か納得したようなそぶりをみせ
「なるほど」
と返した。
そこからプロデューサーさんと詳しい事務所所属の説明などをしてもらい。
「説明は以上です。何かご質問はありますか」
「あのっ!一つ質問いいですか?」
卯月が質問するようだ。
「はい、なんですか島村さん。」
「私のオーディションの合格理由は何ですか?」
プロデューサーさんはまっすぐ卯月の目を見て
「笑顔です。」
と答えた。
「えっ、笑顔?」
「はい、笑顔です。説明不足でしょうか?」
「いえ、笑顔だけは自信があります!ぶい!」
めっちゃ説明不足だろ。と思いつつも卯月の笑顔は俺も大好きだし、話を聞いててただ不器用なだけの人って感じもするのでまあよしとするか。
「ところで、私からも一ついいでしょうか?」
「はい!なんでも聞いてください。」
「では、質問なのですがお兄さんの笑顔について島村さんはどう思われますか?」
「えっ?俺っ?」
「お兄ちゃんの笑顔ですか?うーん?」
卯月は一瞬こっちをみてから
「私はお兄ちゃんの笑顔にいつも自信をもらったり励まされたりしてます。私がここまで頑張れたのもそのおかげだと思ってますしすごく大好きです。」
「卯月…」
そういわれるとめちゃくちゃうれしいな。
「なるほど。ではお兄さん、春花さんにも質問なのですが。」
「はい。いいですよ。」
今度は俺が卯月の笑顔について話すんだな、まかしとけ。
プロデューサーさんは名刺を取り出し、
「アイドルに興味はありませんか?」
そう、俺に訪ねてきた。