せっかくモードレッドに憑依したんだから遠坂凛ちゃん助けちゃおうぜ! 作:主(ぬし)
「煮え滾れ、星の怒りよ!『
『クラレント』の最大攻撃形態が火を吹いた。疑似的な増幅レンズとなった刀身から放雷に酷似した禍々しい烈光が迸り、電圧にして3億ボルト、熱にして実に3万度に達する超高温の魔力熱線が明確な指向性を持って解き放たれた。
「□□……ッ!!」
対するバーサーカーは、このとき初めて己が回避不可能な状態に誘導されたことを悟った。攻撃のための腕部の回復を優先したために脚部靭帯の修復を後回しにした数秒前の判断ミスを痛感して表情を憎々しげに歪め、それでも歴戦の彼は己の宝具の耐久力への絶対の自信を失わなかった。咄嗟の判断で腰を落とすと足の底全体で大地を踏みしめて防御の態勢をとり、敢えて『クラレント』を真正面から受け止める選択をした。
着弾───。バーサーカーのシルエットが文字通り消滅した。大気そのものが爆ぜたかのような衝撃が世界を根底から揺さぶった。影さえ存在できないほどの凄まじい閃光と鼓膜を貫く轟音がソニックブームに乗って同心円状に吹き荒れる。爆風が広大な外人墓地を瓦礫と土砂で埋め尽くし、反射的に目を窄める。小さなキノコ雲が曇天に向かって立ち昇り、大気中にバリバリと音を立てて静電気が満ちる。
原作のモードレッドのせいで誤解されがちだが、本来、『
『
(令呪によって流し込む魔力を増大させ、さらにそれを倍加させれば、その威力は───)
焼け焦げた土と肉の臭気が辺り一面に立ち込める。つむじ風が吹いて墨汁のような黒煙が立ち退き、バーサーカーの姿を露わにすると、彼が受けたダメージの過大さがはっきりと見て取れた。
「……□□、□……!?」
想定以上の威力にバーサーカーが身をよじらせて激しく苦悶する。巨大なすり鉢状のクレーターの中心で、彼は四肢をもぎ取られ、残された胴体を赤黒く炭化させ、骨と内臓を無残に晒していた。
(大、なり!)
先ほどの一撃は『エクスカリバー』並みの攻撃力を伴っていたに違いない。真名解放時の『エクスカリバー』がバーサーカーの宝具のストックを幾つ削られるのかについては明言されていないものの、イリヤスフィールの台詞によると“大半は削り取れる”とされている。その足元にでも匹敵する威力を発揮できたのであれば、少なくとも4から5回分の命のストックを削り落とせたと想定できる。
つまり、
「……□□ッッ□□───ッッッ!!!!!」
“次は油断しないぞ”。
憤怒の咆哮が地響きのように大地を揺らした。岩石のように雄々しい肉体が全魔力を総動員して急回復していく。射殺さんばかりにこちらを睨むバーサーカーの双眼が「二度目はない。覚悟しろ」と伝えてくる。それはそうだろう。狂化していてもなお戦闘スキルが衰えない一等級の大英雄だ。もう微塵とて油断などしないに違いない。
「すまないな、オレは前座だ」
もう“次”はない。
背中を炙る
「父上!今です!」
「『
凛々しい声が鞭の如く世界を断つ。不可視の風の結界『
「──
刹那、黄金の奔流が世界を薙ぎ払った。一気に解き放たれた圧倒的なエネルギーが光の帯となり、直線上のすべてを塵すら残さず消滅させ、行く手を阻む空間そのものを焼き尽くしていく。それは単なる魔力の放出ではない。星の輝きそのものを結晶化させた“光の巨剣”だ。全世界、全時代の騎士たちの希望と理想の象徴が振り下ろされる光景に胸が熱くなり、思わず目が潤む。
光の柱が膨れ上がる。2度目の───本物の───聖剣がバーサーカーを飲み込んだ。
地平線まで貫くような凄まじい衝撃だった。大地には谷のような深く巨大な傷跡が刻まれ、そこを吹き抜ける暴風が何もかもを掻き消した。例えバーサーカーが最後の最期にあらん限りの絶叫を残したとしても、この世の誰の耳にも届かなかったに違いない。
(さすが『エクスカリバー』……!)
着地後にあらためて大破壊の痕跡を目にして、震え上がる。モードレッドの記憶として知っていたはずなのに、いざ実物を前にすると畏怖と畏敬の念が震えとなって足先から頭頂までを駆け上がる。踏み締めた地面の感触がさっきまでとまったく異なっていた。パリパリと鋭く乾燥した硬質音がする。真っ赤に焼かれた土が急激に冷却されたことで微細な硝子と化しているのだ。増幅された『クラレント』ですらここまでの大破壊には至らなかった。
墓地の暗闇を引き裂く光が収まり、再び夜が帳を下ろすことを許される。あとに残されたのは、約束された勝利を前にして静かに佇む騎士王の姿のみだ。振り返ったオレに、父上が力強い頷きを返す。それを見て、オレもようやく確信を得られた。
オレたちは、バーサーカーを───大英雄ヘラクレスを倒しきったのだ。
ダブル聖剣スラッシュ……とまではいきませんでした。でもずっと描きたかった戦闘シーンを描けて、満足です。