せっかくモードレッドに憑依したんだから遠坂凛ちゃん助けちゃおうぜ!   作:主(ぬし)

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書きたいから書いてみました。


2話

‡凛ちゃんサイド‡

 

「ふふ、似合ってるわよ、アーチャー」

「うう、違和感しかないです」

 

無様な召喚と思わぬ英霊との出会いの夜が明けて、今朝。

私が素直な感想半分からかい半分といった口調で送った称賛に、何とも言えない苦い表情を浮かべて姿見に映る自身を眺めるモードレッド、もといアーチャー。彼女が着ているのは、綺礼が誕生日プレゼントとして毎年送ってくる清楚な洋服だ。比翼仕立ての純白のブラウス、腰の大きなリボンと背面の編み上げデザインが特徴の真っ赤なスカート、黒タイツに茶色のレースアップショートブーツ。控えめにもアーチャーの容姿によくマッチしていると思う。スカートについては、最初に群青色のバージョンを着せてみたのだけど、蒼というのがアーチャーの印象にまったくそぐわなかったので何年か前に貰った燃えるような赤色のものをチョイスしたのだ。これがアーチャーにピッタリだった。我が遠坂家も代々赤色を好んでいたし、私も赤色は好きだ。運命的な調和を感じて嬉しく思う。

 

「うん、うん。やっぱり私の目は間違ってなかったわね。私ってばコーディネートのセンスもなかなかいいんじゃないかしら。捨てずに取っておいて正解だったわね」

 

綺礼の奴は、嫌がらせのように絶妙に私に似合わないデザインのものをわざわざ選び抜いて、しかもその同じデザインを成長に合わせてオーダーメイドで毎年サイズも調整して送りつけてきてくるという始末。その念の入れようがもう気持ち悪さマックスなのだけど、物に罪はないので捨てようにも捨てられず、私の衣装棚を年々圧迫して困っていた。

 

「ま、そういうわけで余り物で悪いけど、質がいいことは保証するわよ」

「それはどうも……」

「なによ、嬉しくなさそうね」

 

そう言ってマシュマロのような頬をつんと突っつくと、アーチャーの頭上でアホ毛がへにょんと項垂れる。

 

「だって、霊体化すれば服なんて着なくてもいいんですよ?普通はそうするんじゃないんですか?そうすれば学校でも常にくっついていられるんですよ?」

「あら、まだ納得してないわけ?」

 

胸の前で腕を組んでしかめっ面を浮かべる私を見て、「わかりましたよぉ」と諦めて説得を放棄するアーチャー。もっと背筋をピンと伸ばして強気そうに肩肘を張っていた方がよさそうなのに、なんとも気弱な英霊だ。でも段々とその胡乱げなジト目も違和感がなくなって可愛げを感じるようにもなってきた。

 

「凛、そろそろ登校の時間ですよ」

「あらホントね。じゃ、行きましょうか。行きすがらに今後の方針やらなんやらを説明するわ」

「はぁい。あ、ハンカチとティッシュは持っていますか?」

「アンタは私のオカンか。鞄に入れて持ってるわよ」

「その鞄は?」

 

その言葉に、私は振り返ることもせずに黙したままテーブルに置きっぱなしだった学生鞄を手に取って、また歩みを再開した。すぐ後ろで微かにクスクスとした含み笑いが聴こえて、私は思わずムスッと頬を膨らませた。とんだ意趣返しをされてしまった。隙を見せてしまった自分のうっかり癖がにくい。

 

地理的な気候ゆえか、冬木市の朝はまあまあ寒い。私は目覚めの良い早起きタイプで寒さにも強い方なので苦ではないのだけど、世の大多数の人々はそうではないらしく、シンと糸が張るように冷えた空気を湛える歩道はまだ閑散としてひとけもない。そんな通りを金髪美少女を従えた私は学校に向かって登校していた。

 

「さて。今朝も言ったけど、今のところは様子見に徹するのよ、アーチャー。私は魔術協会から正式にこの聖杯戦争の管理者の任を与えられているの。だから、自分から真っ昼間にドンパチ始めるわけにはいかないってわけ」

「魔術協会の方針として”魔術の存在を隠匿すること”がある、ということでしたね」

「そういうこと」

「でも、わざわざ戦争中に学校に登校しなくてもいいのでは?危ないですよ」

「ご覧のとおり今さら付け加えるまでもないけど、私は“非の打ちどころのない完璧な優等生”であるからして、欠席なんてするわけにはいかないのよ」

「凛」

「なによ」

「家の鍵を落としましたよ。どうぞ」

 

私は黙したまま後ろ手で鍵を受け取ると、やはり黙したまま鞄の内ポケットにぐいと押し込む。二度と落ちるんじゃないわよと鍵に言いつけると、コホンと咳払いを一つ落としてメンタルリセット。

 

「私は“非の打ちどころのない完璧な優等生”であるからして!」

「は、はい!わかってます!」

 

メンタルリセット……メンタルリセットよ凛……。

 

ビクビクと震える背後の金髪小動物に「調子乗るんじゃないわよ」という意思を込めた視線で釘を差し、ガクガクと頷くのを確認すると私は歩みを再開する。

 

「……これは戦争なのよ。誰がどこで見ているかわからない。だから、普段と違った行動をしたらすぐに怪しまれる」

「だから普段通り登校すると?」

「逆よ、アーチャー。あからさまに普段と違うことをするの」

「なるほど。だからオレをあえて霊体化させないわけですか」

 

意味ありげな私のセリフにすぐに納得を返すアーチャー。打てば響くような反応と理解に私は顔に出さないまでも少しだけ驚く。

 

「明らかにサーヴァントらしい人物を引き連れて学校に登校してきた者を見れば、必ず驚いてなにかしらアクションを起こす陣営が現れる。凛はそれらの誘き出しを狙っているわけですね」

 

さすがアーサー王伝説に登場する名高い英霊。ハムスターのような印象ながら愚鈍ではない。将として戦場を駆け抜けた才気は本物らしい。

 

「そういうこと。でもさすがに同じ教室にいるわけにはいかないから、アンタは図書館で張り込んでいて。私の教室と図書館はグラウンドを挟んでちょうど真向かいだから、警戒にはピッタリだわ。学校へ入るために教師には軽い催眠魔術をかけておくわ」

「わかりました。でも、やはりそれでは凛が危ないのでは?一人で囮になっているようなものです」

「あら、心配してくれるのはありがたいけど、自分の身はある程度護れるわ。むしろ私はアンタのほうが心配よ」

 

「ちゃんと戦えるんでしょうね」と尋ねようとして、ヒュンと風を切り裂く鋭い刃音に遮られた。横目でそちらを見やると同時に、ど真ん中で輪切りにされた標識のポールがカランと甲高い音を立てて道路に転がった。ポールは一回転、二回転と地面を転がるたびに金太郎飴のように断面をさらしながら分裂していき、最後には原型を留めないバラバラの金属片となって散逸した。コンマ秒のあいだに一体何回斬ったのか。目にも留まらぬ剣閃だった。

 

「……やるじゃない」

 

一瞬だけ姿を現した宝具魔剣クラレントを背後の空間に収納して、アーチャーがふっと不敵に笑う。

 

「昨晩、部屋の片付けをした後にいくらか振り回してみました。この身体のコントロールは万全です。大丈夫、必ず凛を護ってみせますよ」

 

そう言って自信満々にニヤリと鋭い犬歯を見せつけてくる。なぜだか、それこそが本来のアーチャーであるような気さえした。普段とのギャップに思わずゾクリと背筋を震えさせるほどの魅力を感じたのは内緒だ。




実験的に、書きたいシーンだけを書いていくスタイルにしようかと。それでもよければお付き合いをば。
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