Fate/Septem peccata mortalia 作:幽鬼兎
「マイマスター、あれは何でしょう?」
「ん? あぁ、ケーキって食べ物だな」
市街地を散歩する流斗とバーサーカー。バーサーカーにとって、周囲のものは珍しいらしく先程から質問三昧である。どうやら、この竜少女が存在した時代や場所はかなり古いのだろう。
流斗が搬送された事件後、流斗は自分で血を吐いてその場に倒れこんだことを知り、身体の検査を行うことにしたが異常は見当たらず、入院となった。だが、バーサーカーがサーヴァントとして正式に認められた途端、内蔵などに損傷があった箇所が治り、医師にも驚愕の出来事を見せてしまった。
「ふむ……ケーキ。美味しいのですか、マスター?」
「気になるなら買うぞ? 親がそこそこの金持ちだから金には困ってないし。すみません、このショートケーキ1つとモンブラン1つ」
バーサーカーが気になっていたのだろうショートケーキと、ちゃっかり自分のも買う流斗。箱に入ったケーキを受け取ると近くの公園の椅子にて休憩がてら、聖杯戦争について教えてもらうことにした。
「つまり、他のマスターを倒せば勝ちなんだな。それぞれサーヴァントがいて、クラスや罪が別れていると」
「その通りです、マスター。そして私はバーサーカー。基本的ならば、私のクラスは全てに有利であり不利であるのですが……はむっ・・・美味、しいっ」
話の途中に我慢しきれなくなったバーサーカーがショートケーキを一口。白髪のツインテールが逆立つほど美味しさを表現していた。
「それは何より。それで、有利であり不利であるのがバーサーカーでいいのか?」
「……驚きました。普通ならこの回答に疑問を持つべきなのですが」
「そうか? じゃんけんのあいこみたいなものだろ」
「……訂正します。取り合えず本来ならそうなのですか、私は関係ありません。全てにおいて有利に立つ。マスターはそれを目の当たりにしたはずですよ」
そう言って、続きのショートケーキを口運ぶバーサーカー。目の当たりにした……流斗が見たことといえば、ドラゴンの角、尻尾、後は____________治癒した自分。
まさかとは思うが、それだけのことではないだろう。確かにもし治癒が有利不利を覆すのなら、不老不死のサーヴァントがいれば無双することになる。しかし、悪魔でも治癒だ。バーサーカーが一撃で消されない道理はない。
「……ま、何はともあれ期待してる。頑張ろうな、バーサー____________カー……?」
名前を呼ぼうとした刹那、一つの銃声が鳴り響き、それは流斗の心臓を貫く。
犯罪に巻き込まれたか? 違うマスターか? この聖杯戦争は人目を気にするとバーサーカーは言っていた。なら、前者か?
「結界ですか。マスター、少しお時間を。敵襲です」
「……あぁ。って、あれ? 俺、確かに撃たれたはず……だよな」
また傷が癒えてる。あのときは気づかなかったが驚くべき治癒速度だ。それをわかっていてバーサーカーは心配すらしなかったのだろうか。取り合えず……と、バーサーカーが結界といった紫の壁に歩き、手を触れる。少し電磁波が来る程度だが、押せど押せど動く気配はない。
「バーサーカー、これ壊せるか?」
「不可能ではありませんが、私は魔術慣例にのみ長けていないので時間がかかります。敵のマスターを仕止めるのが先決かと」
「わかった。誰だ?! 姿を現せっ!」
流斗の問いかけに、トリガーを引く音だけが聴こえる。どうやら現す気は無いらしく、何故かわからないがあの銃は弾数が一発らしい。
「気配が全く感じません……アサシンのクラスでしょうか」
「残念だが、それは違うぞ。バーサーカーよ」
流斗に問いかけたのだろうバーサーカーの背後から聞き覚えのない声と共にバーサーカーの胸を何かが貫く。
「かはっ……いつの、まに……」
「弾け飛べ、
刺されたのだろう傷口から風が巻き起こり、バーサーカーを被い包むような風が天高く舞い上がる。戦場には既にバーサーカーを吹き飛ばした戦士と流斗しか残っていなかった。
胸元の空いた少し大胆なインナーに現代風のフードパーカー。腰には両方に大きな空間のある穴がついた少し大きなベルトが装着されており、そこに見えぬ何かを納める。髪は紫色のロングヘア。顔立ちからは人を殺すような容姿には見えないほど美しい……が、今はどうだっていい。
「貴様がバーサーカーのマスターか。不意討ちとなったが、奴はもう消えたぞ。この戦争を放棄することを進めるが、どうだろう?」
「答えはノーですよね、マイマスター」
声と声が重なり、流斗が答える暇も無くバーサーカーが相手を蹴り凪ぎ払う……が、即座に反応していたのか、相手も見えぬ何かでガードする。
(あいつ……確かに何かをベルトにしまってたはずなのに、何時の間に抜いたんだ……?!)
「マスター、少しお下がりください。斬れ目からして相手はセイバー、三騎手クラスですっ!」
「お、おう。負けるなよ、バーサーカー」
そう言って、結界ギリギリまで走って避難する流斗。これだけ距離を取っていれば、あのセイバーが襲ってきてもバーサーカーが背後から攻撃することが出来る。距離が長い程、隙が大きいと睨んだのだろう。
「驚いた。確かに身体を吹き飛ばしたと思ったのだが。甦る能力か、ギリギリで避けたのか。どちらにせよ、厄介な相手だな」
「此方もお言葉を返しましょう。貴女のクラスはセイバーですよね? セイバーにしては、潜伏スキルが異常だと感じたのですが」
「ふっ、私の本職はランサーだ。獲物を狩るときに敵にバレてしまっては元もこも無いだろう?」
両者、挑発混じりの言葉を交わす。見えぬ剣を構えるセイバーと両手を竜の荒々しい爪へと変化させるバーサーカー。見たところ、どちらも近距離戦闘を得意としているらしく、じりじりと距離を積めていく。
それも数秒後____________バーサーカーは、セイバーの頭蓋を一瞬にして大地へと沈めた。
「ぐっ……やるではないか。竜娘っ!」
沈められた身体を一気に起こし、先程の風を纏った何かが周囲の大地ごと吹き飛ばす。巻き込まれたバーサーカーだったが、即座に翼を生み出して天へと回避。しかし、そんな隙を見逃すことなくセイバーがバーサーカーへと迫っていく。向かい来る剣を爪で鍔迫り合いまで持ち込み、バーサーカーは流斗へ目線を送る。
「バーサーカーっ!」
(やはり周囲に敵マスターの気配はない。なら、襲撃を気にせず……!)
「ふっ、油断したな? 終わりだ、バーサーカー」
不意の言葉と共に鍔迫り合いを弾き一足先、落下していくセイバー。その刹那、謎の光の一閃がバーサーカーの右身体全般を消し去った。
「ぐっ……ぁあ……!」
「バーサーカーッ?! くっ、うぉおおおおお____________っ!!!」
「サーヴァントに突っ込んでくるとは愚かな。まぁ、都合がいい。死ね、バーサーカーのマスターよ」
気がつけば走り出していたこの足を恨む。
何故、飛び出した? 俺に何が出来る? これではバーサーカーがまともに戦える訳がないのに何故だ。先程契約したばかりの、友と呼べる存在ですらないはずなんだ。なのに……!
「バーサーカァァァアアッ!!!!!」
セイバーの剣が流斗の胴体に十字を刻む。一瞬にしてのこの早業。痛みなどすぐ来るはずもなく、血が吹き出ると同時に身体がどんどん熱くなる。
死ぬ……と実感できることを流斗が意識し始めたとき、その刹那____________
「『
神々しい白き光と闇の光が交わり、それが弾けた瞬間にセイバーの目の前にいたはずの流斗が消える。何が起こったのか理解できないセイバーは周囲の気配を賢明に探そうとするも、光の一閃が無数に出現するだけで気配は既にない。
「これは……バーサーカーの宝具か。気配すら悟らせない速度……第三宇宙速度を超越するとは、それに先程の宝具名、『
「……っ! マスター、ここは引きましょう。あのセイバーは只者ではありません」
セイバーに聴こえない程度で流斗へと告げる。バーサーカーの宝具によるものなのか、高速で動くバーサーカーに捕まれている流斗は外部の影響を受けておらず、風景がまるで早送りの映像のように流れているだけであった。
「バーサーカーがそう言うならそうしよう。俺はまだまだ初心者でしかないからな」
「……ありがとうございます。では、もう少し速度を上げて結界を貫きますのでご了承ください」
只でさえ速い高速移動を越え、結界に向かって槍のように突き進む。魔術には長けてないと言っていたのだが、今はそれどころではないというバーサーカーの表情。元から無理矢理壊すことは出来たのだろうが……恐らくは宝具を使いたくなかったのだろう。
「衝突します。マスター、歯を食いしばっ____________」
「置き土産だ。受け取れバーサーカー____________『
圧倒的な魔力の上昇に気づくことが遅かった。バーサーカーが振り返る頃には既に巨大な光の一閃が空を隠し、大地を抉りながら迫り来ている。
(これは避けられない! 貫いたとしても追い付かれる!)
「バーサーカーッ! 貫かずに結界をよじ登れっ!」
「っ! イエス、マイマスターッ!」
流斗の指示により、バーサーカーは速度に急ブレーキをかけて壁を縦に蹴りあげる。回避した光の一閃は結界に直撃し、そのまま貫いて平行線に凪ぎ払われる。当たっていれば重症……いや、恐らく死亡しただろう。
「ほぅ……我が剣技を交わすか」
「よし、結界に穴が開いた! バーサーカーっ!」
「はい。では、セイバー……決着はまた次の機会に。正々堂々と戦えれば幸いですね? お互いに」
そうわざとらしくセイバーに言葉を残して、一瞬にしてその場から去る。一人残ったセイバーは見えぬ剣を鞘に納めて周囲の結界を消し去るように手を払う。
「ふむ……やはり真実が邪魔して風は払われぬか。まぁ、
「ほほ、いらぬよ。勝てるのであろう? セイバー」
セイバーのマスターだろう声がセイバーに訪ねる。少し歳よりに近い声でハキハキとしているいい声なのだが、セイバーは不快そうな顔で返答する。
「無論だ、マスターよ。我は空腹だ、豪華な食事を望むぞ」
「ほっほっほ、よかろう。帰還せよ、セイバー」
「さて……お互いにバレてはいかぬ処遇者同士、面白い戦いになりそうだな____________