Fate/Septem peccata mortalia   作:幽鬼兎

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刺客の嵐

少し不思議な感覚に見回れる。

いい具合に温かく、もっちりとした気持ちのよい感触だ。何時まででもここで眠っていたい……と、思えたがそうでもなさそうだ。

 

 

(殺せ。人間を、全てを)

「……承りました。創造者(マスター)、絶対悪の名に懸けて全てを消滅させ____________ ました(・・・)

 

 

なんだこれ……あの白髪のツインテールって、バーサーカーか? それと、なんだあの黒い煙は……!

 

 

(流石であるな、だがまだ残っているようだ)

「私の刹那の一閃を回避した者達でしょう。強者です、創造者」

(そうか……ならば、いけ。全てを滅ぼすのだ)

「イエス、創造者。最後の試練だ、人類。どうか____________死んでくれ」

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

「スター……マ、スター……マスター……!」

「ん……バーサーカー? 夢か今のは」

 

 

変な夢から目覚めた流斗は、バーサーカーの太ももで目を覚ます。ズキンズキンと頭が唸るように痛い。心地のよい感覚と同時に起こる頭痛は、意味のわからない空間に閉じ込められた感覚だ。

 

 

「いてて……ここは、俺の部屋か。よく家がわかったな」

「マスターの鞄を帰りに回収しました。その中に拠点の場所が書かれた物がありましたので、周囲の者に聞いて見つけました」

「そうか、ありがとうなバーサーカー。今の時間は……9時か。そういや、何日寝てたんだ?」

「1日も経ってません。今日は土曜日です」

 

 

バーサーカーにそう言われて、少し安堵の溜め息を吹き出す。昨日、無断欠席をしたのだ。毎度毎度、遅刻している流斗に遅刻はかなり痛いのだ。確かに今は聖杯戦争という謎の出来事に巻き込まれているが、なんだかんだで卒業も大事なのだ。

 

 

「それじゃ、朝食の準備でも____________」

 

 

流斗が立ち上がった瞬間、ピンポーン……とチャイムが鳴り響く。こんな朝早くから誰かが流斗の家に出向くことなど過去に一度もなかった。当たり前だ。親はおらず、住んでいるのは一軒家ではない。更にはこの時間、流斗はほとんど学校だ。つまり____________。

 

 

「バーサーカー、警戒を頼む」

「頭が切れるマスターですね。了承しました」

 

 

相手は敵の確率が高い。

そう思いながら、ゆっくりとドアを引いて相手の顔を……。

 

 

「はいはーい、流斗くんお久しぶりー……って、なんで閉めちゃうの?!」

 

 

見た瞬間ドアを閉め、ドンドンと鳴り響く音に呆れた溜め息をする。バーサーカーは見たことがない相手に首を傾げ、疑問を投げつける。

 

 

「マスター、あの金髪の少女はいったい?」

「あぁ……俺の幼馴染み『小鳥遊(たかなし) 瑠璃(るり)』だ。昨日休んだだけで、お見舞いかよ……過保護すぎるだろ?! 瑠璃!」

「心配してくれる幼馴染み超可愛いー! なんて言われなくても嬉しくないもん! アーケーテー!」

「言ってねぇからな?! 素直に帰る幼馴染みの方がまだ可愛いわっ!」

 

 

ついに泣きながらドアをノックしまくる幼馴染みに対抗する気もうせ、仕方なくドアを引いて黒髪ロングの幼馴染みを玄関にダイブさせる。どれだけ強くノックしてるんだよ……。バーサーカーは気をきかして消えてくれている。この前に教えてもらった霊体化というやつだろう。そんなことを知るよしもない瑠璃は何やら部屋の匂いをスンスンと嗅ぎ回っている。

 

 

「……美少女の匂い……! それに獣……竜?」

 

 

マジかこいつ。

 

 

「流斗くん!? ドラゴンの、しかも飛びっきり可愛い白髪ツインテールの匂いがするよ?!」

「それどんな匂いだよ……」

 

 

まさかとは思うが、霊体化したバーサーカーが見えているのではないだろうか。そう思い自分も見渡して見るが、流斗には何も見えないし匂わない。

 

 

(マスター、私……匂いますでしょうか?)

「悪い、多分冗談……であってほしいわ」

「流斗くん、誰と喋って____________」

 

 

ピンポーン。

 

 

「昨日ぶりだな、バーサーカーのマスターよ」

「……………………っ?!?!?!」

(マスター、今すぐに外へっ!)

「出口一つの家なんです、無理だろ?!」

 

 

緊急事態だが、何故か突っ込んでしまう流斗の目の前には昨日の公園で激戦を繰り広げたサーヴァント、セイバーが不適な微笑みを浮かべながら髪を弄っていた。

 

 

「心配するな、バー……いや、我が友よ。此度は戦の時ではない」

「……は? と、友?」

 

 

そう言えば、セイバーの服装が普通のパーカーだ。昨夜の武装に近い物は一切なく、あるのは不適に笑う顔のみだ。そんなセイバーは口ずさむように流斗の耳元へ近づき……

 

 

「気をきかせてやっているのだが、不服か? なんなら、ここで決着をつけても構わんぞ」

「……流斗、雨堤 流斗だ」

「ふふっ、では私はそうだな。『ルウ子』とでも名乗っておくとしよう」

 

 

名前的に友達というよりか、従姉みたいだが気にしないでおこう。瑠璃に流斗にルウ子……何かの縁みたいだなこれ。

 

 

「では、邪魔をするぞ? 流斗よ」

 

 

仕方なくしてセイバーを自宅へ招き入れる。

通り過ぎ様にセイバーは瑠璃へ目を移すが、一例だけして部屋の中へ進んでいった。どうやら本当に奇襲混じりの事をしにきたわけではなさそうだ。

 

 

(マスター、警戒を怠らないようお願いします。私も何時でも仕留める準備をしておきますので)

「……あぁ。二人とも今、お茶入れるから寛いでいてくれー」

「ふむ、流斗も年頃なのだな……『巨乳大集合っ?! いいえ、俺はロリコンです!』とは。恐れ入ったぞ」

「よし、お茶入れた! だからそれをしまおうか?!」

 

 

朝から和菓子など正に合わないが、おもてなしできる物がこれしかなかった。と言わんばかりの菓子折々をテーブルに、流斗、瑠璃、ルウ子は見つめ合う。会話が弾む気配がしない。てゆうか、本当に何をしに来たんだこいつら……。

 

 

「あ、あの、ルウ子さんっ!」

「うん? 瑠璃だったか。なんだ?」

「流斗くんとは、どんなご関係ですか?!」

「関係って、ただの友達……」

「ふむ、己と己の全てをぶつけ合った仲だな」

 

 

……物凄く誤解を招きそうだ。

 

 

「どどど、何処まで……いってますか……?」

 

 

だろうな。

 

 

「私のアプローチを見切り、見事に逃げおった。私を傷つけておきながらな……まぁ、まだ決着はついていないがの」

「ア、アプローチ……傷つける……決着……!」

 

 

そろそろ止めないと収集がつかなくなる。

流斗は食べかけの和菓子を置き、セイバーを睨んでこう言った。

 

 

「遊び行かないか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「るーうーとーくーーーんっ!!!!」

 

 

大にぎわいにもジェットコースターの機械音にも負けない声が空から聴こえる。どうやら楽しんでいるようで何よりだ。

 

流斗が誘った場所は言うまでもなく遊園地。

人目も多く、瑠璃を乗り物に乗せておけば問題は起きないだろうという安心感から選んだ場所だ。

 

バーサーカーも流斗の持っていた昔の服を来て、隣でアイスクリームを食べている。因みにバーサーカーは、ルウ子さんの妹設定だ。名前は『シロ』。白いからだという。

 

 

「……んで、何のようだ? セイバーさん」

「ふむ、アイスクリームというのは旨いな。今度、マスターに届けてやろう……ふふっ、そう睨むな。マスターの命だ、今日はバーサーカーのマスターを守れとさ」

「俺を……守____________」

 

 

異変に気づくのが遅すぎた。

巨大で複雑な機械が擦り合う音。崩れ落ちる鉄屑。既に空は紫に染まっており、それは結界なのだとすぐに理解できる。何故、目に入るまで何も感じなかったのか……セイバーやバーサーカーでさえ感知できずにいた。

 

 

「バーサーカー、セイバーッ!」

「はい、マスターッ!」

「ふむ、助太刀しよう」

 

 

既に人払いも済んでいる空間だ。ジェットコースターが崩れ落ちようが被害はないはず。なのに……なのに、何故お前がいる?! そう心の中で叫びながら、セイバーとバーサーカーが止めたジェットコースターの中から瑠璃を連れ出す。

 

 

「まさか……瑠璃もなのか」

「それは違うな、バーサーカーのマスターよ。此度の聖杯戦争は確かに一般人まで参加はできるが、参加した人間は等しく魔力の器を与えられるはずだ。この女にそんな魔力はない」

「それじゃ、どうして……」

「ふむ、それはこの事態を仕掛けた本人共に聞いてみようではないか」

 

 

壊れたジェットコースターの天辺で座り込む2つの人影。太陽の光が背にあり、よくわからないが男女のようだ。そしてこの事態を仕掛けた本人達……つまり、マスターとサーヴァント。

 

 

「す、全ての……一般人、は避難……させ、ました」

「ありがとう、キャスター。さて、人目があれば襲われないとでも思ったのかな? バーサーカーコンビにセイバーコンビさん」

 

 

そう言って天辺から跳躍し、流斗達の目の前に現れる二人。キャスターと呼ばれていたサーヴァントは、赤と黒の髪に黒い魔女帽子に長いローブ。典型的な魔法使いの格好をした10歳くらいのいたいけな少女で、マスターの方は如何にもスポーツ万能のような格好のタンクトップ姿の男性である。年は流斗より少し上だろう。

 

 

「ふむ、そういうことだバーサーカーのマスターよ。この際だ、口上に乗るのが一興と思えるが?」

「同意だ。ただし、しっかりとマスターは守ってくれよ____________バーサーカー、戦闘体制を保っててくれ」

(マスター、一度の戦闘経験で指示に迷いがなくなってますね。これは気持ちの問題などではなく、センス……死を乗り越えるセンスですか)

「バーサーカー?」

「申し訳ありません。承りました、マスター」

 

 

瑠璃が後ろにいる以上、戦闘においては防御に徹する他ない。相手はキャスター……バーサーカーから教えてもらった知識だと、キャスターは簡単に言って魔法使いだ。攻守に優れ、アシストもできる……が、それは後方での戦闘方法だ。つまりこの場合攻撃するのは絞られる。

 

 

「キャスター、支援を! 魔力解放、高速移動術式展開」

「きた、バーサーカーッ!」

 

 

突撃してきたキャスターのマスターに向かって大地を蹴りあげるバーサーカー。真正面に到達するや否や、右手を竜の腕に変換し、その豪腕なる一振りは大気を揺るがした……が。

 

 

「……これは…!」

 

 

振るったはずの暴風が消され、謎のバリアを纏ったキャスターのマスターがバーサーカーを蹴り飛ばす。それもただの蹴りではない。大地を砕く威力。炎を足に纏い、爆発するようなブーストを纏った一撃だった。

 

 

「ぐ……申し訳ありません、マスター。油断しました」

「俺もだよ。あれがキャスターの魔術。魔術には詠唱が付き物ってアニメならやってたんだけど、詠唱はなし。それにバーサーカーのをも凌ぐバリアと強化魔術か」

「あのマスターも中々です。宝具を使っていない私とはいえ、速さで上回ろうとするとは」

「その言い種だとまだまだいけそうだな?」

「無論。いきますっ!」

 

 

先程より速度を上げたスピードで一気に敵の背後の位置へと移動するバーサーカー。セイバーも「ほぅ?」と少し絶賛したように聴こえるほど……てか、こいつ何やってんだ。援護は……

 

 

「援護を期待しているならやめておけ、バーサーカーのマスター。私の主(仮)は気絶中。そんな中、一寸の隙も見せられるものか? よもや、サーヴァント不在の貴様を狙わないことを感謝するべきではないか?」

 

 

ないようです。

 

 

「キャスター、フェイズ2だ」

「ろ、ろじゃー……です」

 

 

バーサーカーとの鍔迫り合いを弾き、翻す翼で天を舞うバーサーカーへキャスターの砲撃魔術が命中。煙にまかれ、落下しようとするバーサーカーだったが即座に翼を大きく羽ばたかせて滞空する。

 

 

「また私の速度に……!」

「俺達の前じゃ強さなんて関係無いのさ。古今東西、魔法ってのは皮肉なもんでね。魔術と仮定されない魔術を越えた魔術を魔法と呼んだ……常識はずれ故に省かれた特殊的なものなんだよ。お前ならわかるんじゃないか? バーサーカー。真名こそわからないが、その大いなる翼に大河を切り裂く腕。有名な所でファフニールやこの地に関してのヤマタノオロチのような類いなら理解できるだろうよ」

「残念ながら、私は魔術慣例には疎いのです。それに私は竜であり、竜の類いではありませんので」

 

 

その大いなる翼を翻して加速していくバーサーカーが目指すのは、キャスターの方向。星のように落下するスピードでキャスターの迎撃魔法を回路の一線の如く回避していく。そして目の前に到達したバーサーカーは大河を切り裂く腕を大きく上げ、その頭蓋を壊すかの如く振り下ろしたが、手応えが全くもってない。

 

 

「……っ!?」

「甘いな、バーサーカー。キャスターが援護のみだとでも思ったのかな?」

 

 

そう背後から話しかけられるバーサーカーだが、反撃しようにも体が動かない。キャスターの仕業なのか、周囲に姿や気配はなくあるのはキャスターのマスターのみだ。

 

 

「お前がキャスターを狙うのを待ってた。これで俺達の任務は終了した訳だが……キャスター、あと何分持つ?」

「は、はぃ……6分……かと」

「優秀だ。おい、依頼者! 捕まえたぞ」

 

 

キャスターのマスターが叫んだと数秒後に、バーサーカーの危機を察した流斗とセイバーと瑠璃が駆けつけ、その現状を目にする。そこには銀色と水色の鎖で繋がれたバーサーカーと、先程のキャスターグループ。そして……謎の白一色のドレス少女とサングラスの男性が此方を待っていた。

 

 

「おう、バーサーカーのマスターと……セイバーだが、そっちのやつはマスターじゃねぇな」

「バーサーカーッ!? お前ら共闘してたのか……!」

「あぁ、キャスターのマスターとは顔馴染みでな。さて……俺は『佐切(さぎり)(おきな)』。そしてこっちのドレス少女がサーヴァント『ライダー』。真名は『シンデレラ』だ。よろしくぅ」

 

 

突然の自己紹介に、キャスターグループ以外が度肝を抜かれた顔になる。いつも冷静だったバーサーカーやセイバーでさえ、「阿呆なのか?」と今にでも言いたい感じの表情だ。

 

そして更に追撃をするよう……。

 

 

「僕は『霧宮(きりみや) 学矢《がくや》』。そして『キャスター』だ。真名は『ハーメルン』」

「……どういうつもりだ。貴様ら、真名がバレてはならぬことを知らぬ輩ではなかろうて」

 

 

キャスターとライダーの自己紹介を得て、流石に苛立ちを覚えたセイバーが威嚇するように問う。勘にさわるなどではない……ただただ見下された。真名を証したのだ。貴様達はどうする? 名乗らないのか? と。

 

だが、その思考させ停止させるだろう一言がライダーのマスター『佐切 翁』より放たれた。

 

 

「協定を組まないか?」

 

 

その言葉はこの戦争を大きく動かした。

 

 

 

 

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