だけど。確かに優しさは存在して、それは美しく可愛らしいものだった。
超常は混乱を呼び、混乱は悲劇を産む。悲劇は繰り返され、虚構と絶望を呼び出した。
けれど。超常は同時に憧れを呼び、憧れは理想となった。理想は気高く、真実と希望を写し出す。
これは、ポケモンが現実に現れた世界のお話。
この間小さな男の子に、トレーナーの一人として質問された。
『どうすればあなたの様にバトルが強くなれますか?』
その場では『ポケモンと仲良くなることだよ』と答えてしまったが、それが今でも
本当にそれで強くなれるのか。
本当にそれが答えなのか。
分からない。
だから答えを知る為に、まずはポケモンの歴史を調べてみた。
ポケットモンスター、略してポケモン。
今なお世界を闊歩する超常の存在。
あれらは良き隣人ではあるが、大半の人間にとっては脅威である。我々の自業自得ではあるが。
その昔、ポケモンとはゲームであった。
ゲームの中でポケモンたちを育成し、戦わせ、綺麗な世界を見ていたのだ。
そして、突如現実に現れた。
理由は未だに分からない。様々な噂があったが、どれも現実味が無い。……ゲームの存在が現実になった時点で、現実味などあって無いようなものだが。
さて、ゲームが現実となった時、それを受け入れきれた人は少数だった。
受け入れる事が出来なかったそれなりの人たちは皆狂い、精神病院で寝る事となった。
受け入れる事が出来た人の内、現実をゲームと見た人たちはそれぞれ悲惨な末路を辿った。
例をあげよう。
その人はポケモンのゲームをやりこんでいた(誤解を恐れずに過去の言葉で言うと)廃人であった。
彼は、現実に現れたポケモンを数値の羅列としか見れなかった。
そして、その頃はまだポケモンたちを捕まえる方法が確立していなかったが故に、反撃にあった。
少し経ち、ポケモンたちを安全に確保する手段であるモンスターボールが発明された。
大怪我を負っていたが生きていた彼は、退院と同時にポケモンの乱獲を始めた。
彼がまず集めたのはメタモン。変身を得意とするポケモンだ。彼は見つけ次第モンスターボールを投げつけ、捕まえた。
メタモンを大量に集めた彼は、その中でも最強のメタモンを選別した。
選別に外れたメタモンたちは捨てられた。
次に彼は(無謀な事に)フカマルを乱獲しようとした。
フカマルはポケモンの中でも最高峰であるドラゴンタイプであり、更に進化を二回もする。そして進化形である親のガブリアスや兄弟のガバイドと共にライオンさながらの家庭を作る。
案の定彼は返り討ちにあい、左腕と両足を切断されるほどの大怪我を負った。
そして助けを求める為に町へと戻り。
かつて捨てた、百を越えるメタモンたちに飲み込まれた。
他のある人は、ポケモンの生態を利用した。
卵だ。ポケモンたちはほ乳類であろうと卵を産むのだ。
乱獲の代わりに、ポケモンに卵を大量に産ませ、その中から選別を始めたのだ。
そこまではまだポケモンたちの許容範囲内だった。
が、彼には愛が足りなかった。……ここから先はわざわざ綴るまでも無いだろう。
この様な例が相継いだ。
逆に、ポケモンたちと仲良くなる人もいた。
そのほとんどが、ポケモンたちが現れた時に子供だった。僕もその中の一人だ。
僕たちは、無邪気に素直にポケモンたちと向き合った。
犬や猫のように一つの命として扱った。
今現在でもポケモンたちが戦争に利用されないのは、ポケモンたちと心を通わせた者たちが拒むからだ。
各国の軍部は口八丁手八丁でポケモンたちを軍事利用しようとしたが、子供たちは良識ある大人たちが守り、大人となった僕らは友達を傷付けたくないと断っている。
そもそも、ポケモンたちを利用出来る訳が無いのだ。
ポケモンは戦闘機より速く飛び、潜水艦よりも深く潜り、地を揺らし草木を操り水を吹き出し電気を自在に―――失礼。
とにかく、仮にポケモンが戦争するとしたら地球がいくつあっても足りないだろう。ポケモンにとって大地などいつでも壊せるのだから。
さて。
とはいえゲームでのポケモンの名残はある。
ポケモンバトルだ。
(自分で言うのもなんだが)僕のような元気な男の子たちがゲームの真似事をしようとしたのが始まりだ。
ポケモンとトレーナーは一体となって、技をぶつけあった。
政府はゴルフ場を幾つか潰すことでそこをポケモンバトル用の場所とした。
かなり悪く言われる政府としては、珍しく賢明な判断だった。ポケモンバトルは余りにも周りへの影響が大きいのである。
僕も、小さな頃間違って町中を停電させてしまった時は顔を真っ青にした。
そんなポケモンバトルは、今ではオリンピックと同等の世界大会にまでなっている。
ここまでが僕が調べた、ポケモンの簡単な歴史だ。
そしてポケモンバトルに必要なもの。
それはポケモン自身の実力もあるが、他にもポケモンのトレーナーへの信頼、トレーナー自身の知識、バトルへの執着などがある。
幸いにも常識があった廃人たちは、ここぞとばかりにトレーナーたちへの助言を始めた。たまにヒートアップしすぎて警察沙汰になりかけるときもあるが、基本は好い人たちだ。
ただし、ゲームでの知識が現実で活用されるとは限らなかった。
まず、現実はゲームほど科学が発展しておらず、ゲーム内では存在したもろもろの道具が揃わなかった。
そしてレベルという概念はあるものの、それを確認する術など無いのだ。
僕は、別にチャンピオンでは無い。それでもバトルするからには勝ちたいと思う。僕を信じてくれているエルレイドの為に。
だからまとめると、勝つには心技体(勝ちたいという気持ちやポケモンとの信頼関係・ポケモンの実力とトレーナーの知恵・それらを支える健康な体)が必要なんだろう。
それらが揃えば、自然と勝ちは増える。
僕としては、これからトレーナーになりたいという君たちには心技体の『心』を育てて欲しい。気持ちは大事だし、ポケモンとの正しい信頼関係は気持ちいいものだから。