僕らは中学生。
明日から修学旅行。
友人と共に話しながら、情報の共有を行う。
色々と鞄にモノを入れて行く。
「ん?」
<どうした?>
「なんでもないっすよ」
僕は手に当たった、不思議な棒を手に取る。
こんなものあったっけと思った。
まあいいか、肩たたきくらいにはなるだろうとおもって、鞄に入れる。
まあ、まさか、あんなことになるとは思わなかったね。
楽しみな沖縄。
沖縄へはしゃいで行って、姫百合の塔やら鎮魂の広場へいき、黙祷。
そのあとはガマと呼ばれる地中にあいた穴、防空壕のようなものへ案内される。
姫百合の塔でも、変な冷や汗を掻いたが、更に嫌な感覚を覚える。
そして、遂に・・・。
「っ!」
チュンッ
「つっ!?」
僕は一体何が起きたのかわからなかった。
ガマから見える空は、赤黒く灰色に染まっている。
後ろからは、女性や子供の泣き声。
目の前には、軍人のような人達。
そして手元にはずっしりと重い、土と血に汚れた銃剣。
足元には、人・人・・・人。
「ひいっ!?」
「山本!ここでひるむな!外に叩きだすぞごらあ!」
「す、すいません!」
僕は他の軍人よりも、派手な勲章を付けている人に怒鳴られる。
僕は地上近くに頭を出して、やったこともないのに慣れた手つきで銃の射撃を行う。
外には、僕等とは違う容貌の人達。
あれが教科書にあった米軍だ。
ということは、これは沖縄防衛戦?
僕はこの状況で混乱できなかった。上官がいうとおり、目の前の敵めがけて撃てばいいんだから。
そんな中、僕はふと空を見る。
その直後、黒い粒が一つ飛んできた。
その粒?は穴の中へ飛んでいった。
嫌な予感がして後方へ走り出す。
「山本!ここで粘らねば、ここで殺す!」
僕は無視して、奥へいく。
その粒。いや、石?が転がってた。
でも僕は奥に広がる景色が、脳裏や瞳に焼き付いた。
やせ細った女のひと、死んでいるかのような子供に・・・。
これが現実なのか?
僕は胃の奥から、湧き上がってくる物がのどまでくる。
でも、僕はこれを抑えて、近くにある死体をこの石の所に置く。
なんでこんなことをしたのかわからない。
でもこうしないといけないと思ったから。
ようつべで、こんな訓練があったとおもう。
刹那、置いた死体が跳ね上がるのと同時に、臓物を背中か腹から爆発させて吹き飛ばした。
その赤黒い物体が、ボクにかかったり周囲に飛び散った。
この光景をみて、ついに地面に吐く。
ことはできなかった。
それは肩周辺に、激痛が走ったからだ。
「っ!ああああ!!!!」
左肩を抑えて、のたうち回る!
「山本お!離れるなっつったよなあ!」
「うあああっ!!」
「気が振れたとして、お前をここで懲罰する!」
終わりなのか・・・。
「長官!ただでさえ、仲間がいないのにそれはあんまりです!」
「だまれ!不穏分子は取り除かなくては、我々の士気にかかわる!」
「彼は手榴弾を仲間の死体でかぶせ、被害をなくしたのです!
これを手柄とし、戦前に復帰させては?」
「ちっ、いいだろう。肉壁にしてやる!」
眼をうすら開ける中、誰かの制止の聲が聞こえる。
そして、誰かが近づいてくる。
「大丈夫ですか?はい、これ。なんくるないさ」
非現実的な言葉を紡がれる中、肩の熱い灼熱のような痛みが引く。
僕はのたうち回って、身が赤黒く染まっていることに気づかないまま、あの指揮官に殺されないために前線へ赴く。
僕は何も気を配れなかった。
死への恐怖が、再び襲ってきてるんだから。
徐々に銃の弾が無くなってきている頃には、銃の扱いが良くなっている事に気づく。
一人一弾。
死体を漁って、弾丸を手に入れ制圧を開始する。
投げ入れられる手榴弾や向かってくる弾幕は、仲間や死んでしまった女子供を肉壁とすることで防ぐことができた。
そこに道理や道徳はない。後方に控える、守りべき国民を守ることこそが、最大の任務。
だからこそ、夢中になった。最大の敵は、空にあることを・・・失念していた。
最後はあっけなかった。
上空から戦闘機の機銃掃射を受けて、僕は気絶。
眼を覚ませば、皆死んでいてがまも肉がくすぶる悪臭と油臭い煙を上空にを放ちながら、内部は完全に火の海だった。
僕は米兵に掴まれていて・・・拷問されると思ったので懐にあった短刀で、首を掻っ切った。
「っ!?」
目の前がぐらつく。足に力が無くて、そのまま尻もちをつく。
「お、おいおい。ここはすべりやすいから、足元に気を付ける様にって言われたばかりだろ?」
「え、あ、え?」
眼前には、平和な皆の顔。
先程のは夢だったのか?
いや違う。地獄さながらの死地を歩んだ僕は、あれは夢ではないと悟る。
どういう経緯なのかわからないが、それでも僕は・・・生きている事を実感する。
「えーとさらに、ここだ。この場所が、一番の苛烈を極めた場所だ」
僕ら全員が、首を回す。皆はなんとなくでみるが、僕は急激な動悸と吐き気に襲われる。
「うっ、ぐっ・・・」
なんとか吐き気は抑え、気力で持ちこたえる。
あの死臭、燻り、惨禍と惨劇・・・。
脳裏と記憶に刻み込まれた地獄。
「かはっ、はあ、はあ・・・」
となりの生徒には、白い眼でみられるけど・・・。
間違いない。あそこだ。
僕が戦った場所だ・・・。
「ここには、子供や女のひとが多くいて、一番の防衛所だったんだ。
だからこそ、士気が高かったらしくて、米軍が最も多くの兵員を投入したと言っている。
まさかの航空機をださせて、機銃掃射をしないといけないくらいには強かったと言われている。
この事により、米軍が沖縄の琉球人を殲滅せず捕縛し、捕虜とする道に進んだと後に
この戦闘に加わった指揮官が云っていた。
私も殺されそうになったが、最後は縄で捕縛・投降をされた身だ」
僕は戦術的に与えた被害が、歴史に名を残している事に驚いた。
ここら辺にある歴史資料館に後に行った。
そこでは、僕が宿っていた山本さんの衣服が残っていた。
更に、まだ当時の弾薬が詰まったままの当時の銃剣もあった。
「この人が米兵を三桁単位で撃破した人物。山本 隆一 さんだ。
彼はこの島で、琉球の歴史をその身だけで学び、後に戦闘の時に軍服を貸してもらい、
銃剣も死んでしまった日本兵のものを拝借したとのこと。
しかも、唯一後の戦術訓練となった、手榴弾の防衛術の初期思想の一人となっている」
書いている事は、一時がま周辺に米兵が死屍累々としていて、日本兵や琉球人の肉体には手榴弾の破裂痕があったという。
また平押しの従軍を一時中断して、制圧されていないがまに全戦力を差し向けたことも描かれている。
一事日本側にも、反撃や優勢の時があり、電撃的に琉球は陥落しなかったことも記されている。
日本の船坂にも勝る英雄の一人として、祀られている。
理由は最後の死が射殺でなく自害で、その際に奪った手榴弾も共に爆発させて周辺の米兵を30人程度死傷させたとのこと。
僕はトイレに行って、泣いた。
何故かわからない。でも、泣いた。
そして、僕を射撃した指揮官や僕を始末しようとすることに陳言した兵士、そして耳元で聞こえたあの人に会いたいと思った。
<…>
僕は皆が資料館から出て行くとき、何か聲が聞こえたような気がした。
僕は振り返る。でも、空調の音しか聞こえなかった。
「入江君、皆待ってるよ!」
「あ、委員長。ごめん、今行くよ」
僕はバスに乗り込んだ。
次に行くのは、坊の岬。
<…武運長久を祈る…>
―名:入江 雄太 年:13 性:男 称号:防衛の要/防衛において補正+1
―能力:治癒/傷が徐々に治る。
狙撃+5/遠距離武器による狙撃補正。+1狙撃が即死効果付与+3中火器による狙撃可+5狙撃補正が全ての攻撃に乗る。
今日は眩しいくらいの快晴。
今は修学旅行の真っ最中。皆が皆、その今を享受している。
その生徒の中の一人の僕も、その一員であるわけだけれど・・・。
「うぅ・・・気持ち悪・・・」
昨日の戦場の事が、脳裏に焼き付くのと共に、悪夢として僕を痛めつけた。
結構きつくて、まさか今日の体調に起因するとは思いもしなかった。
それでも、僕は自分の肉体を叱咤して、確実に起床できるようにした。
まあ、ちゃんと起き上がれたことは重畳だった。
この後のことが重要。
朝食はまあ普通なんだけど、この後の訪れる場所。
嫌な予感しかしなかったけど、まあ予想通りだった。
「今日は大和が沈んだ場所へ向かいます。そう、あの戦艦大和!」
「「わー!」」
男子は暢気にはしゃぐ。女子にはその盛り上がりは解せなかったようで、きょとんとしている。
まあ観光ではなくて、修学旅行だから学びに行くのは当然の帰結というわけで。
「っ!?」
今寒気がした。
ああ、結局くるのか。来ちゃうのか・・・。
現在いるのは、船にのって大和が沈んだと言われるところだ。
「大丈夫?船酔い?」
「だいじょうぶだよ、委員長」
委員長。男女いるけど、女のほうが僕の隣にいる。
そこは重要じゃない。理由は普通に、監視。
体調がすぐれないのに、休まずに来ている為万一の為に委員長に面倒を見させているのだ。
普通ならば、先生がみるのだがそこまで良い人間じゃない。
委員長に対してのみ、すまないという感情が強い。
あの委員長も、自分の班の友人の方を見ている。
まあ当然だわな。
そう思って目を閉じた。
バガァアアン!!
「どわっ!?」
「射手!上空二時方向、45度!」
「へ、あ」
「中村ぁあ!」
「はいっ、はいっ!」
突然の事に驚きながら、自然に殻が動いて目の前にある灰色の長い筒を動かして射撃する。
僕は縦軸に、仲間の射手は横軸に合わせる。
装填も仲間に任せる。
ガンッガンッチュインッドガァァアアン!!
眼前の空は灰色に染まり、紅蓮の火炎が左右から登っている事を感じるまで時間がかかる。
僕は知らない筈の対空砲を扱い、上空にいる敵戦闘機を撃破する。
「まずい、雷撃機!」
「おとせええええ!!」
「0時、二時、10時からそれぞれ8機!」
僕は照準を覗かなくても、弾丸の煙による航跡で大体の距離を掴む。
レバーを握り海を見て、大体の距離感を掴む。
一番近いのは、0時の雷撃部隊。
一応上空を見て、爆撃を警戒してから射撃する。
この射撃の時、変な感覚が僕を襲った。
左・・・10時方向の雷撃機?とにかく、その雷撃機を真っ先に10発使って撃破する。
この変な感覚だが、この10時方向の敵を撃破した後他の雷撃機を見ると撃破か雷撃していた。
魚雷は全て外れていた。
僕はこの変な感覚を信じる事にした。
最悪、即座に死ぬことはないだろうと思ったから。
ただ、僕はすぐにこの場をすぐに、仲間に告げてこの場を任せるようにした。
実力主義が功を成したのか、指示を受けてくれた。
直ぐに艦内を走って、高角砲の所にきた。
「全然あたってないぞ!」
「うぐううう!」
その場にいる仲間にどやされている、射撃手を見つけては発言する。
「下に居る指揮者に、この場の射撃を一定時間任せられた中村です」
「そんな報告は・・・おいっ!」
「お、おい、あんちゃん、此処は俺達の仕事、っ!?」
僕はこの少年の代わりに照準を合わせて、彼の出鱈目な射撃を敵機に合わせた。
これにより撃破で来た。基本的に縦軸はあっているが横軸があっていない。
仲間とこの射撃で、10時方向の雷撃と三時方向の爆撃機を叩き落とせた。
<1200より、ある程度の軽食を配る。順番に食事に着き、戦闘を継続せよ>
この報告で、嫌な予感が艦首の方から来たので、右舷の高角砲に来た。
途中で燃えてくすんでいる将校の勲章があったので、もぎ取っておいた。
今現在、アドレナリンがあふれ出ているから、死者の死臭なんて肉が焦げたくらいにしか思えない。
「中村大尉である、この機銃の照準をかりるぞ。君は射撃をしてくれればいい!」
「え、(こんな大尉いたっけ)は、はい!」
「装填、装填完了!」
X、Y軸調整完了。
更にX軸の回転上限を無理やり伸ばす。
「ふんっ!」
バキッという音が聞こえて、水平が0度なら60度までが120度までかいてんするようになった。
ただ、60から-30度までは、歯車の関係で楽だ。
しかし60から120までは、歯車の軸ずれでおこなったので超重い。
それでも馬鹿力によって、なんとかなってる。
弾丸は他の故障したところからもってくればいい。
「な、なあ、あんた」
「俺を否定するのは、この勲章を授けた陛下、日の元を侮辱することになるが?」
どうみても理屈だけど、少し動揺したのでありにする。
あと主砲が仕事してない。これをどうにかするのが先決・・・なわけがない。
日本のおかげで、戦艦主義が変化したから戦闘機を投入してくるだろう。
ならば、これが尽きるまで撃破してやる。
それに・・・山本が戦っているんだ。
ここで撃破してやれば、戦艦や軽巡、残った漁船で琉球の人を救助できるだろう。
戦闘していると、補給の人が来た。
さつま芋と生理食塩水を飲食する。
この間でも、飛行機が来ているので左右弦、下の対空砲と上の高角砲をつかってどうにかしている。
そして、突然艦内が揺れる。
この轟音の三連続。いや、無視して現場へ赴く。
今でも爆撃、雷撃が来ている。
なんとかふせぐようにしよう。
あれから何時間か経過した。
僕は仲間に云って、計算させていた。おもに、撃破敵機を。
500機位が空母の限界保持と聞いて、今現在400位。
さらにいうと、爆弾や機銃掃射・急降下爆撃があったが、エンジンや人間への直接狙撃でなんとかできていた。
ただそれでも、超遠方からの運任せの雷撃は食らっていた。
夜中は旭日国旗で包んだ焼死体等を海へ投げ込んで、永遠の別れを告げる事を行う。
これだけでなく、射撃を行う人を集めて偏差射撃に関する事を伝える。
操舵の事はわからないからこそ、根本を見返して得た情報や経験談を仲間と共有し
少しでも被害を抑えようとした。
模型を使用した実弾を用いない射撃演習や実際の対空砲の射線、重力による銃弾の落下…。
これらを直感的に考慮して発砲できるように、一定の時刻まで説明した。
眠たい人を優先的に教え、さっさと寝かす。
まだ戦友の死に直面して泣いている人にも、次の死者をださない訓練ということで優先して教えている。
こういう痛みを知っている人ほど、恐ろしいものはない。
僕らの悲壮の一日は、緩やかに過ぎて行った。
そして、朝焼け寸前には目が覚めていた。
起床すると、簡易な食事を取らせてくれる。
便所は終わらせておく。
糞尿を垂れ流すのは、他の人達だ。
だが僕が担当している所は、交代でいっていたのでそんなやつらはいなかった。
夜が明ける前、ある人が僕のところに来た。
それは主砲を扱う人だ。
「俺に主砲を?」
「ああ。左右弦上下対空、高角砲の指揮者は君で配下にも信頼されているということで、君に任せたい」
「構いませんが、次の作戦は?」
「沖縄戦の長期化により、多くの燃料を入れることができた。
よって、沖縄へいき鹿児島へ戻るくらいのことはできる」
つまりの所、沖縄での仲間や国民を回収して引き上げるとのことだ。
夜間に軽巡らによる応急処置は完了した。
更に陣形や巡航もどこへ行くのかも終わったとのこと。
戦場の混乱だと、異例の昇進もあるようだ。
実際、僕の大尉は、特例として少佐へと昇進された。
「数多の航空機の撃破は、まことに喜ばしい。精進せよ」
「はっ!祖国のために、精進します」
これらは朝焼けの時に起きた。
其処から俺は、この集合から抜け出し朝に来る敵機来襲を知らせる。
「少佐!?」
「中村さーん!敵機は全ての方向・・・」
僕は対空砲を使って、左舷の敵を撃破する。
勿論、違和感のする奴だけ。右舷も立ち向かって撃破する。
しかし、衝撃が後方からする。
それは敵機の超上空からの精密爆撃だ。
装甲や砲が丸ごと吹き飛ばされる。
黒い物体や頭の無い物体が、色々吹き飛ばされているが戦場であるがゆえ、絶対に無駄な事は考えない。
僕はすぐに、主砲へ行き甲板要員の撤収がされている事を確認して、艦橋の許可なく嫌な感覚の方向へ射撃する。
「射撃指揮所の許可なく発砲するな!」
連絡管からの怒号が響くが、これを無視する。
嫌な気配や違和感を放つ物体へ向かって、主砲三連砲を一発ずつ偏差射撃を敢行する。
「射撃指揮所から怒号が飛んできましたが?」
違和感へ向かって射撃している最中、射撃に関する取締を行う人に聴いてみる。
「上へ進言しても聞かないからな。全て俺の責任でいい。
祖国が少しでも、敵にかみつければ本望なり」
「…わかりました。やってみます」
戦闘機に関してだが、ほとんど来ていない。
理由は分からないが、違和感の中に空母または基地があってそれを破壊したものだと信じたい。
また、この船が大型戦艦の大和という事も、夜の内に聴いた。
だから有効射程は40キロ。この射程内の違和感は全て撃滅したと思う。
さて…米軍の基地が近くにあるのか、徐々に戦闘機が多くなってきた。
潜水艦?潜望鏡を視認すればそこから、数メートル下に本体はあるのでそれを見越した射撃をすればいけた。
実際射撃して、水中爆発を起こしていた。
戦闘機撃破効率は、三式弾だったり講習や演習のおかげで比較的少ない弾丸で撃破できている。
更に雷撃機の特攻も出始めていて、爆撃機の急降下爆撃も増えてきている。
それでも高角砲の射角越えをいくつか作ったおかげで、ほとんどを撃滅している。
原因のほとんどが大和の煙突の煙っていう・・・。
足の遅い輪形陣のおかげで、残存勢力の軽巡に連れられてきた漁船や客船と合流できた。
「我々は沖縄近海に来た。これより、沖縄の南方に周り、しんがりとして身命を賭す。
これより殿部隊と救助部隊に分かれ、臣民を確実に救助する。
臣民を救えるのは、我々軍人だけだ。総員奮起せよ!」
「「「おおおお!!!」」」
戦艦全体が揺れた気がした。
今の大和と護衛の軽巡・駆逐で、南方へ周回し殿となる。
そして援軍としてきた残存勢力で、琉球人を救済するという手筈になっている。
0900時、昼飯を食えないかもということで、飯を食っておく。
この後、近くの軍港から飛んでくる、ABCD連合の戦闘機と戦艦の戦火と坩堝に突入した。
感傷に浸る事なんてないほどだった。
対空砲・高角砲は、周囲からくる物量に耐えられずほとんどが行動不可になっていった。
更に仲間もどんどんやられた。
急降下爆撃によるホールインワンだけは避けていた。
また本土からは、結構な数の戦闘機が参戦した。
特攻機は少なからずいて、最新鋭戦闘機のF4Fだったけか、そいつに食われてもいた。
だから違和感を強く発する爆撃と艦爆を撃破したら、対空砲でF4Fを撃破していた。
隙間を縫っては、主砲で戦艦の後方を撃ち抜き、副砲で艦橋を破壊した。
撃沈させたものは全くなかったはず。
また水上に落ちた敵兵は、駆逐艦が余すことなく始末した。
救助すれば、それは敵戦力となってしまうというよりも、余裕がなかった。
無限に湧いて出てくる敵を潰すのが優先。
「無線は傍受されているから使うな!」
「こら、参謀に向かってなんて口の、ぐあっ!?」
船体が揺れた時、それは潜水艦・軽巡・駆逐の飽和魚雷攻撃だと知った時、終わり・・・なわけがない。
寧ろ窒素の気泡でわかる射線のおかげで、副砲または主砲で撃破した。
主砲の回転は非常に遅いので、艦首を撃ちたい方向に向けてもらう事が多かった。
艦首から艦尾まで全ての射撃は、基本的に射撃指揮所が指示をする。
しかし僕が船体に開いた穴から、周囲を見て分析した方が早かったりする。
まあキャパが足りない時は、射撃指揮所の云う通りに撃破したと言っていいかな。
結果を云えば、この作戦は成功。
このまま大和を鹿児島に送り届ける事ができた。
沖縄は占領。この数日後、日本軍の無条件降伏と終戦となる。
作戦終了後についてだ。
奇跡的に、全ては中破から大破で航行可能という状態だった。
何故これで、自沈しなかったのかというのは、客船に乗り切れなかった臣民を載せに乗せているからだった。
機動力はガタ落ち。それでも、鹿児島まで到着した。
矢矧だけは種子島で限界がきて、そこから漁船での移動となった。
矢矧は燃料切れもあるようだ。そこで浮き砲台として機能すると、参謀と艦長が報告しているのを聴いている。
この報告は、全て傍受されているという事前提で矢文だそうだ。
石油はからっけつ。
これにより、全ての戦艦は行動不能ということで、防空防衛の役割を果たして終戦を迎えた。
「中村少佐。立てますか?」
「ああ、ありがとう…」
そして、僕の事なんだけど・・・。
爆弾の炸裂で、左目を焼失。大半を火傷したり骨折だったり。
全身が痛くて、気が狂いそうだった。
それでも、死にはしなかった。
なにせ、戦闘中だが、僕に大和を頼むという船員皆の想いから、死ぬ気にはなれなかったからだ。
「中村っ、俺はもうだめだ。大和を頼む!」
「少佐…死にたくないです…でも、少佐なら…」
「中村ぁッ!お前、命令違反するなと云っただろうが!
お前の欠員は、全軍の士気に影響すると、口酸っぱく…!」
「ワッパ!お前は生きろ!わしら老いぼれは、未来が少ない!
若者は、この惨劇を後世に伝えろ!」
「おっちゃん、なんでないてるの?はい、ぼくのおかし、あげる!」
皆、死んだわけではないけれど、こんな痛み・・・なんとかしてやるって思った。
そして…僕の意識は途絶えた。
――
「っ!?」
僕はよろめく。
そして、誰かに当たってしまう。
「きゃっ」
「え、あ、ごめんっ」
懐かしい潮の香と共に、肌に柔らかい感触。
「気を付けてよ・・・ねっ!?」
「ご、ごめん、悪気はないんだ」
僕は状況を読み込めなかった。
えーと、あ、そっか。
修学旅行中で、気分が悪くて委員長が隣に居たんだった。
よろめいた時に、委員長にあたってそのまま押し倒してた。
狭い船だったりするし、病人は後ろの方で待機だったおかげで他の生徒には聞こえていない。
というか、何で僕らが乗る船だけ漁船なんだろ。
皆は観光船なんだよね。
絶対ずるいわ。
艦首の方で、なんか喋ってるけど聞こえない。
そして僕は、あの戦闘の事を振り返る。
だけど、硝煙の臭い、死臭等いろんな臭いを思い出して、吐き気を催した。
「うっ、ぐっ・・・」
「ちょ、ちょっと・・・」
あの痛みも思い出せるし、皆の応援と死んだ敵の怨嗟が聞こえる。
あぁ・・・朝、栄養ドリンクだけ飲んでよかった。
僕は委員長をどかせて、艦尾から吐瀉する。
既に消化しているからか、胃液と血だけだす。
喉と胃が、非常に痛い。頭痛もひどい。
「ぐっ、あがっ・・・」
「せ、せんせっ!」
「入江!すみませんが、生徒の一人が体調をくずしまして…」
「わかりました。沖縄に帰るよりも近いあの離島へいきましょう。
あそこも、人が住んでますので、沖縄と同等の処置を受けられます」
僕は意識が朦朧とする中、誰かの腕に支えられていた。
委員長じゃない。先生でもない。
誰だろう。
「中村ぁぁぁああ!!キサマ、またこの島に入れおって!
軍事機密があると、あれほど…!」
「まあまあ、米田さん。私に免じて許してください」
「ったく。馬の骨だと分かっておれば、妹を嫁がせなかったのにな!」
「ははは、すみません」
なんだろう、にぎやかな声が聞こえる。
「関係者のみって聞いてましたが、これがあの・・・」
「戦艦大和を住居にするって、聞いた事ねえよ!」
「云ったら守秘義務違反となるのか・・・いわんとこ。まあ、戦艦ミュージアムにいってきたってことで」
僕はとある硝煙の臭いを嗅ぐ。
朦朧とした意識がハッと覚めて、体が自然と動く。
「おっと、起きたね」
「あ、中村さん…?」
僕は目の前にいる憑依していた人がいる。
白髪のおじいさんで、腕を後ろにして背をのばしてその場に佇んでいる。
それとお怒りの上官の人は、つるっぱげだけど威圧感がすごいのが分かる。
「やあ、私は中村 順次郎といいます」
挨拶を軽く済ませたら、僕と委員長だけを連れてとある場所に連れてきた。
「て、何で委員長も?」
「はぁ…誰のおかげで、歩けていると思ってるの?」
「すんません、ありがとう」
「世話が焼けるわ…」
委員長のご厚意に甘えながら、中村さんの説明を聞く。
勿論、地下に揚げられている戦艦大和を望みながらだけど。
「地下は湿度気温共に一定だから、保存は楽だ。
更に後世の為に、アナログによる練習艦にしている」
「…そこで、中村さん。なんで僕らだけ、ここに?」
「ついでだよ?」
僕の失調が、ここで成果を出した。
さらにいうと、委員長がそばで看病をしてくれた。
凄くありがたい。ということで、一緒に授業を受けた。
それで説明だ。
なんと、山本さんによるガマ塹壕化遅滞作戦によって、この沖縄撤退戦がうまくいったことになっている。
あの後、隠れ入渠施設がある場所に、戦艦を隠してスクラップを回避しながら、
後の海上自衛隊へ引き渡しを行い戦後半世紀に国家への情報公開。
これを稼働状態にできたまま、秘密裏に記念艦にしている。
米国にばれなかったのは、ひとえに離島を切り取って作った入渠施設のおかげだということだ。
勿論最小限の人間にしか、情報が渡されていないというのも要因と云える。
さて、あの撤退により、琉球人の殲滅は免れた。
ただ核実験に晒される艦艇が増えたり、外交摩擦が増えたりしたので必ずしも最良だったとはいえない。
それでもよかったのは、残った艦艇を北海道にまわしたり、先述の外交摩擦で日本とドイツの有用性を
アメリカやイギリスがすぐに見出したことだ。
おかげで弱小農耕国家から、防衛術をもつ民主資本主義国家になれた。
冷戦の加熱や中国が露西亜についた瞬間から、自由主義の防衛網が強くなったのは周知の事実。
中村さんは、兵役を解除されてそのあと会社を立ち上げて、色々お金儲けをしたようだ。
冷蔵庫関連だった筈…。
そして、中東の石油資源を源泉からその周辺の土地をお買い上げになったとのこと。
その後の地下資源による利益で、大和の修復修理を行う事で現代まで大和に関する技術が維持されていた。
更に利益でこの離島を買ったので、大和も国家の知らない内に中村さんがお買い上げになったのだ。
大和の事をばらしてからは、国内が外国からも色々言われているようで…遂には、
”自家用の船だ!”と豪語して石油タンカーの護衛に使う始末。
他にも元大和艦長から、大和の返還に関する話もあったが国から公式で島の領土・領空・領海・排他的経済水域等、全てを購入している為不可能という弁解をしている。
今現在はアメリカのGHQという戦後処理の輩から逃げ延びた技術屋や当時の大和戦艦乗員とその後継者たち、
琉球人による管理をされている。
そして先程の言葉どおり、パルス等でサージ電流によるダメージで機械系統が終わった時の為のアナログ練習艦になっている。
レーダーなんてないし、粗悪なレッド暗号の通信機・無線が多く、ほとんどが手動。
艦内は無線でなく、管による音の反響でやり取りをするので電気に関する物はない。
PCで制御されたエンジンでなく、完全なボイラーエンジン。
いろんな意味で内外から愛されているとここに締めくくっておこう。
「こんなものかな?」
「「ありがとうございました」」
中村さんは終始笑って話していた。
苦しい事辛い事はあったけれど、当時の囮作戦付近はあまり覚えていないらしい。
だから飄々としていると、米田さんに怒られまくってあの時の事を云われまくっているんだとか。
「憑き物が取れたかのように、飄々とするな!キサマは護国の要だと、何度も何度も…!」
「あの時の鬼神っぷりが嘘のようです」
あの時ははっちゃけすぎたなぁ。
でも結果よければいいかな?
皆が皆必死に生きた結果だと思えば、なんてことはない…と思う。
この後委員長に支えられて、地上に戻る。
僕は食事制限の中、胃や体に優しい食事をとる。
皆はちゃんとした沖縄料理や外国料理の日本流パクリを馳走されてた。
あまりいいなぁとは思わない。
オニヒトデの和え物ってなんだよ…。
委員長は此処でも甲斐性を発揮して、僕の隣で食事をとってた。
言っちゃ悪いが、委員長は美人に入る人物なので陰口は徐々に増えていたりする。
上官・指揮官・参謀・艦長等からの重圧、ふかひれを見てサメが人肉の味を覚えて敵味方関係なく食する惨劇を思い出して、トイレで再度吐血しました。
吐瀉じゃなくて過敏性食道炎です。
「あ~死ぬかも」
「はっ、そのまま死ねよ」
「こらっ、そういうこと言わない!」
目の前のゴーヤチャンプルを食べまくってる彼が、僕に対してもっともな事をいう。
委員長は責任感なのか、素の甲斐性なのか…かばってくれる。
凄く肩身が狭い。
だけど体温低下、免疫力低下、ストレス性の病気等で顔面蒼白な男がこんなことをいうのは、究極の贅沢だと思う。
ほしがりません、健康になるまでは。
この後の宿や美ら海水族館、学校までの帰参までずっと委員長がそばにいた。
更に云うと、あの過去戻りは全く発生していない。
宿はひどいと思ったが、歩くのもやっとなので何もできないと判断された。
実際、いろんな物欲が発生しない。
ある種の植物人間だ。
「ほんとうにごめん、彼氏がいたならもっとごめん」
「そう思うなら、元気になって学校に来てよね」
「たくましいなぁ」
「男なら、もっとしゃんとしなさい」
「僕のお母さんと同じこというよ…」
「皆同じこと思ってると思うよ」
「さいで…」
美ら海水族館にある砂浜での会話。
僕は滑稽烏骨鶏だ。
ばからしい位になさけない。
終わって、それからいろんなところに行って、飛行機に乗る。
地力で立って荷物を持てる位には回復した。
「ちょ、委員長。もう一人で行けるって」
「だめ。また無茶して倒れたらどうするの?」
委員長が僕の荷物の三分の一を奪う。
本当にたくましいなぁ。
「委員長、ほんとにいい嫁さんになれると思うよ…」
「はいはい、いう事はそれだけ?」
「順応早いなぁ…」
「お互いに弱みを握っているからこその行動だから、勘違いしない様に」
「解ってるよ…」
弱み?休んでいるときの委員長の寝言とか、他愛の無いもの。
僕は死に直面して、更に健康になった事からの子孫残しの本能とかが出てひどい事になったとか。
分かっていても、抑えきれなかったよ。
この後、普通に帰って最後まで心配されて、先生からも親に説明をしたあと病院にいって精神安定剤をもらって、普通に自宅待機になった。
―名:入江 雄太 年:13 性:男 称号:護国の誇り/防衛において補正+3
―能力:治癒+2/傷が徐々に治る。+1血液の基準値回復速度上昇
回復/体力が徐々に回復。
狙撃+10/遠距離武器による狙撃補正。+1狙撃が即死効果付与+3中火器による狙撃可+5全攻撃狙撃補正。
/+10全中遠距離中大火器狙撃補正
カリスマ+5/+1兵士+3下士官+5尉官 雰囲気で配下にする。
たたき上げ/補正無。能力が現実・全憑依に付与。
快復/細菌や寄生による病気が一定時間で治る。
背水の陣/追いつめられるほど強くなる。
―本能:予知/悪い結果を呼ぶモノを殺気として雰囲気を醸し出す。
衰弱/現実に戻ってきたとき、大きく弱体化する。
「最近の調子はどうかね?」
「まだちょっと足がすくむかな?」
今僕は父親と共に、埋め立てられた公園の跡地を犬を連れて散歩している。
修学旅行後、自宅謹慎と称した療養期間を設けられた。
おかげで体力が結構回復してきてる。
だけど精神的に崩壊を続けている。
理由の一つとして、委員長が誰に聴いたのか自宅にまで提出物を届けに来た。
「何で、知ってるんだよ…」
「同じ部活の子に、入江君を知っている女の子から聞いたんだよ」
「じゃあ、その子に持っていかせりゃいいじゃん」
「脱臼した時、服を着替えられたのはだれの御蔭なのかなー?」
「手元に地図があるくせに、方向を間違えてイルカショーに遅れそうになったのを
取り持ったのは誰のおかげかな?」
お互いに自尊心があるので、退けないんだよなぁ。
無駄な対抗心をやっていたけど、精神力がガリガリ削れたのでこっちから折れる事にした。
「まあ、百歩譲って、色々と諦めるよ。それで中身はなんだい?」
「うん、中身はね……」
いつも通りの課題と報告書だ。
連絡網だったり、いろんなものがある。
うわぁ、修学旅行の感想もあるよ。
かったるいけど、やるしかないのが社会人への道だ。
「じゃ、また、いつか」
「もう元気なんでしょ?来週には来てよね」
「解ってるって。てか、これ以上休んでたら、鈍るわ」
「当然。じゃあね!」
「ああ、また学校で!」
と回想をしたところで、現在に思考を戻す。
父親との他愛のない話、政治についての話は非常に頭を解せる話題だった。
後日、僕は自転車に乗って、快晴の中史跡巡りをした。
何故こんな事をしたのかというと、僕の能力というか過去戻り・憑依の発生条件をしりたいからだ。
ガマ・坊の岬…。
どれも戦場でなく、痕跡であった。
僕が死んだのは、ガマの外。意識が切れたのは、鹿児島の軍港。
更に云うと坊の岬は、大和ではない外国の戦艦が大量に沈んでいるアイアンボトムサウンドになっている。
基本的に主砲によるエンジンや艦橋貫通による沈没なので、大体がきれいに沈んでいる。
故にダイバースポットになっている。
まあ戦争の遺品は、魚たちの漁礁になっているからいいや。
それはどうでもいいとして、今現在佐藤継信の屋島側の墓に来ている。
もう一種類牟礼にあるけど、こっちが比較的行きやすい事でこっちにした。
まあ、坂が滅茶苦茶きついけどな!
来る途中で救急車を横目に来た。
老人ホームで容体が急変したんだろうな。
さーて、めまい来るかな?
あーこっちじゃないか。
僕は残念な気持ちと安堵の気持ちでいっぱいになった。
もう一方に行くのが面倒なのと、吐瀉で英雄を汚す事がなくてよかったと思う。
僕はついでに周辺を見渡したり、墓の周囲をまわってみる。
というか墓石の後ろを見る。
「ふむふむ、『佐藤三郎兵衛継信という者が、讃岐の国屋島の磯で、主に代わって』…ん?」
次の文字を読む事ができない。
目が霞む。あれ、これは。
「いだああああ!?」
肩が焼けるように熱い!
その瞬間、怒りと共に記憶が湧き出てきた。
僕は後ろのめりになっていたが、脚に力を入れ乗馬し弓をしっかりと握り、肩掛けしてある矢筒から矢を取り
違和感を放つ目前の存在に射撃した。
相手の喉笛に一直線に刺さった。
次に襲い来る弾丸より遅い矢を握り取っては撃ち返していく。
「私の前に居る者は目にも見よ!佐藤継信が、冥途の土産として貴様らを懲罰していく!」
この言葉、自然と出てくる。
また後ろでなんやらざわめいている。
足場が馬であるため、安定性があまりないが大和よりもましだ!
背中が熱く、力が徐々に抜けていく感覚に陥る。
だが一矢でも報いて、面目を立ててやる。
「源氏である将軍を射殺すのであれば、この佐藤継信を殺さねば道はない!覚悟せよ!」
夥しい矢の雨を捌いて、叩き折ったり逆に拿捕して射撃していく。
徐々に矢が少なくなってきたが、僕だけが撃つ。
最終的に、戦が終わった。このころには、全身の感覚がなくなっていた。
見渡すと周囲には矢に討たれた軍馬や兵士ばかり。
僕もいたるところに矢が刺さっている。血は出ていないのか?
とにかく戦争が落ち着いたから、後方に戻ろうと思う。
何事もなく撤退した皆についていって、源義経がいると思われる場所に帰参する。
ああ、足元には射抜かれ落馬した射手や軍馬がたくさんあった。
しかし矢のおかげで、それほどえげつないのはいなかった。
それでも吐き気は抑える。
理由。
それは…近代戦争であれば、吹き飛ばされたむごい四肢(死)体と吹き飛ぶ血が多かった。
だが古来の戦争だと、痛みや恨みで血塗られた形相の面が面と向かって見えるからだ。
ヘッドショットや頭を吹き飛ばされた場合が多い戦場だと、いつの間にか死んでいるからか惚けたり
あっけらかんとした顔が多かった。
勿論戦時なので、形相がすごいのがあった。
それでも生前という感じで、それほどじゃない。
こっちだと苦しみによる悪鬼羅刹の如くの形相で、非常に胸糞悪い。
更に銃では味わえない、射て死ぬまでの人間の恨む人相・目つきが自分を貫く。
戦争だと分かっている。
それでも非常に胸糞悪い。守るべき家族とか色々あったろう。
もしこれが、近接になれば…三日三晩吐瀉との生活になるだろう。
後方に戻った時には、目の前は霞んでいた。
凄く体が辛かったが、少しでも気を抜くと痛みで逝きそうになる。
まあ熱すぎてなんともいえんがな。
すると眼下に誰かが近寄ってくる。
そして、もう感覚もないが右手を誰かが握ってくる。
「この世に思い置くことはないか」
若干若い聲。分からないが、遺言だろう。
ならば言ってやろう!
「別に何事も思い置くべきことはない。しかし、主君が世の中で栄達するのを見ずに死ぬことが心に懸かることです。
武士は、敵の矢に当たって死ぬことは元より期するところです。
なかでも、源平の合戦に奥州の佐藤三郎兵衛継信という者が、讃岐の国屋島の磯で、
主に代わって出血性ショック死で討たれたなどと、末代までの物語に語られることこそ、今生の面目・冥途の思い出です」
そういうと、肉体の力が抜けて、非常に気楽になった。
そこで痛みもなく、意識が途切れた。
…
「容体が急変した!回せ!輸血だ輸血!」
「脈拍が急激に安定していきます!」
「麻酔を弱めろ!後は体を温めるだけだ!」
「雄太!しっかりしろ!眠ってる場合じゃねえぞ、こらあ!!」
なんだろう、なんだか体が焼けるように痛い。
頭はガンガン痛いし、四肢に感覚がない。
外気温が低いのか、骨に響く。他にも何やら振動がすごい。
更に云うと、誰かの聲が聞こえる。
耳に劈く音の往復が聞こえる。
「交差点に侵入します!注意してください!」
「くっそ、常備している輸血パックが足りねえ!」
「不整脈が整理されていきます!」
「凝固剤で、血栓を作りました。ですが、急激な体温低下もあり、非常にまずいですね」
「雄太!ここで終わったら許さねぇかんな!」
うぅ、なんだろう。非常に気分が悪い。
心臓の鼓動がうるさいし、血液の循環が気持ち悪い。
寒い。けれども熱い。
途端、意識が薄く……
「っ!」
僕は目を覚ます。
その瞬間襲い来る、痛み痛み痛み。
「ぐあああっ!!!」
「麻酔だ、麻酔!鎮痛剤じゃ無理だ!」
「は、はい!」
麻酔!?
と驚いている瞬間、なんだか浮遊感が出てくるのと同時に、痛みが少し引いた。
「よし、これでなんとかなるか」
「ここ……どこ……」
上手くしゃべられない。
舌どころでなく、顎等全てが麻痺していて中々難しい。
それに気を抜くと、このまま眠ってしまう程の快楽が来ている。
僕は気をしっかりと持って、質疑を投げつける。
「ここは赤十字病院です。入江さんのご友人である谷田さんが、佐藤継信の墓に背を預け多くの矢に刺されながら
倒れているのを発見しました」
どういうことだよ。
訳わからん。谷田君が助けてくれたのは、凄くありがたい。
だけど、矢だらけって、どういうことだ?
「また警察官による科学捜査が行われていますが、矢の正体が不明であり残りの指紋を調べているようです」
僕はその話を聞いて、なんとなく脳内の整理がついてくる。
きっと直接人の墓に行ったからなんだと思う。
まだ二か所しか行っていないけれど、きっと有名な戦場だったり大規模・複数人と関係している場所へ行けば、
普通にその戦場の誰かに憑依してしまうんだろう。
でも今回は有名で、なおかつその人個人という事。
更に僕の憑依の最後は、矢だらけ。
死んでいないのは、最後の良心か憑依の条件にあるのではないかと思う。
何で僕がこんな目に合わなければならないのか分からない。
それでも生きている事が、最大の救いだよ。
でも、皆に迷惑をかけているんだから、元凶には灸を据えないといけない。
本当に、今すぐにでも殺したい。
そう思った時、ノックが聞こえて誰かが入ってくる。
その入ってきた人が、主治医の隣に移動して言い放つ。
「科学捜査の結果、全ての矢に付着している親指から小指までの指紋がある人物はいませんでした。しかし、類似する人物はいました」
「誰ですか?」
「今日の昼過ぎに発見された源義経・頼朝・弁慶のミイラの指紋と一致し、
他にも京都や大阪に住んでいる藤原氏や近親血縁の者に、ある種のパターンと一致しています。
関係者は9万人とされています。
この関係者は、入江様に刺さっていた40本の矢にある指紋や血液から、導き出されました。
更にあまり関連性をつなげたくはありませんが、何者かが史跡への鍵かけを問うた連続殺人の可能性があります。
この佐藤継信は源義経を守り、騎馬上で矢だらけになりながら鬼神のような矢の嵐を放った偉丈夫であると
伝えられています。
この人物になぞられ、弁慶・長宗我部・高松藩藩主は暗殺含め矢達磨の逸話があります。
更にこの時代にない『出血性ショック死』という言葉が伝えられています。
この事を考慮しながら、オカルトでいいますと過去戻りした可能性があります。
しかし今まで閑静で、近くで農業をしていたおばあさんが全く気付かないこともあり、この可能性は低いです。
むしろありえないとのことで、引き下げられました」
聞いていたら、ありえないというかありえるというか。
凄い事を云い始めたよ。
現実性がないと主治医は笑ったけれど、可能性は零でないという警官はいたって真面目だ。
僕は麻酔の中で、その話を聞いているが上がってくる報告が、徐々に世間を騒乱させるんじゃないかと思った。
実を云うと、佐藤継信はあのあと息はあったという。
しかしもう助からないという事で、将軍である源義経全員で矢による一斉攻撃をしたという。
まあ他者に殺されるよりましということだ。
そこからが面白く…いや僕にとっては面白くないんだけど、文献情報にある佐藤継信の矢の刺さりようは僕が発見された時と同じという事が分かった。
僕が退院する頃には、この事は事件性がないということで取り下げられた。
また僕は全力で両親に伝えない様に云った。
谷田君は僕の事を知っているから、僕が興味を持ちそうな事をでっちあげて泊まる事を伝えてくれていた。
入院時期は二日。主治医は驚愕していたけど、僕は気にしていない。
だって、入院期間が短いという事は、その分借金が減るってことだから。
僕は今回の騒動の隠蔽を行うように頼んで、医療費は借金にするようにいった。
谷田君も加わって御願いを敢行したら、医療費を僕自身の借金とすることを決めてくれた。
支払い金額は、8万程。最初は50万程だったけど、矢の資料的価値により藤原氏に買い取られたので、
その分差し引かれた。
保険証?忘れたから、差し引きないのさ。
矢は血液が付着したまま、いろんな所で展示されることになった。
それと事件の隠蔽はできなかったが、ミイラの方に惹かれた御蔭でなんとかなった。
数日で風化したので、両親が僕の怪我の事を知る事はないだろう。
あ、主治医の方と関わった警官の名刺は貰いました。
「ただいま、源平の研究嵌ったよ」
「泊まるなら泊まるっていいなさい!」
「ご、ごめんなさい」
こっぴとく叱られて、日常に戻れた。
怪我は刺し傷ばかりなので、縫う事で塞いだ。
この怪我の痕跡は、数週間後にはまっさらになるから大丈夫さ。
まあ、この経過週間も、濃い一日が加わるんだけど。
―名:入江 雄太 年:13 性:男 称号:護国の鬼/防衛において補正+5
―能力:治癒+5/傷が漸減。+5傷類痕跡含み治癒。擦り傷・切り傷・裂傷・刺し傷・火傷等。
回復+1/体力が徐々に回復。回復速度5%
狙撃+10/遠距離武器による狙撃補正。+1狙撃が即死効果付与+3中火器による狙撃可+5全攻撃狙撃補正。 /+10全中遠距離中大火器狙撃補正
カリスマ+5/+1兵士+3下士官+5尉官 雰囲気で配下にする。
たたき上げ/今までの現実・憑依経験が、今後の現実・憑依に付与される。
快復/細菌や寄生による病気が一定時間で治る。
背水の陣+1/追いつめられるほど強くなる。
慰安+3/精神を回復。発狂と諦めを防ぐ。
―本能:予知/悪い結果を呼ぶモノを殺気として雰囲気を醸し出す。
衰弱/現実に戻ってきたとき、大きく弱体化する。
……
「ねえ、私が云った事覚えてる?」
「ごめんなさい」
「……次も無茶するんでしょ」
今現在、委員長に叱られています。
土日を挟んで、月曜日に学校に行った時、早急に捕獲された。
「すっごく心配したんだからね!」
「知ってるしわかってる」
「絶対わかってない!」
「ほらほら、授業始まるよ」
僕は委員長の会話を切り上げて、教室へ赴く。
この話は昼休みに行われる事になった。
ただ昼休みまでが長かった。
理由は今朝のニュースが起因のようだ。
これにより、今日の歴史・理科・数学・体育が長くなることとなった。
僕は一週間分の遅れを取り戻す為、一生懸命に知識を頭に叩き込んだ。
歴史。第二次世界大戦の兵士についての話やそのほか工兵の仕事・砲兵の効率性とか色々学んだ。
勿論、戦後の日本などの状況を学ぶ。全て先生が集めた地元の話で作られたもので、
教科書でうやむやにされて飛ばされる戦争の話が血みどろの国家防衛のものと知らされる。
僕は憑依の関係上それは知っているんだけど、どうせ誰も信じないしどうでもいい。
理科。先生がもともと危険人物なので、今まで適当に聴いていたものを真摯に学ぼうと思わなかった。
でも僕の身の上の危険性から、学ぶのは有用性があるとして学ぶことにした。
そんな姿勢で学ぶ最初の時間。
「今日は蛇等の危険生物を誘うフェロモンの作り方だ。さあ、先生がキチガイなら、殺せる道具を作れ!
さあ、行くぞ!」
三分クッキングで、いろんな蛇を興奮状態にさせるフェロモンを作り出した。
わ、訳わからん。ニシキヘビ・マムシ・アナコンダ・ウミヘビ全てを興奮状態にした。
「よっしゃ、ダイナマイトで殺人未遂にした先生を殺せ!!」
「「うおおお!!」」
警察に言わないで、復讐をしようとするモルモットたち。
僕もそうだけど、彼は僕の教科書にするんだから、殺さないでよ?
まあ予想通り、先生が持つ箒で剣道・銃剣道・槍術・薙刀術をされて全ての蛇が撃沈する。
先生は白衣を整え、絶望する生徒を見下す。
まあ先生じゃないくらいの弩外道だけど、色々教えてくれる危ない知識は天下一品だ。
「それではみなさん、片付けをしましょうか」
数学。三角定規の90・60・30それぞれが生きる、いろんな攻めをするSの達人。
更に180°定規は、前半身で平等の受けができる。
そして背中合わせとなり、四角と重なり合った三角定規に包囲された360°定規を攻めるのは垂唾もの!
と、圧倒的妄想センスを持つ先生が、弾道に関する授業をしてくれた。
801に染まるピンクの脳を持つ先生が、意外な事を提言して喋ってくれる。
銃が攻め、銃弾が受けかと思ったら受けた愛情をバイにして、恋悩む女の子(的)のHeart(まんなか)を撃ち抜く!
弾道計算をして、効率か愛の両立を持って偏差射撃する。
重力や大気粘性を考慮しないといけない。
強かな抱擁を通過して、私の愛の目標とするのは狙い撃つあの子のみ!
と先生は顔を紅潮させ、30センチ定規を入れる包から半分出して黒板を指す。
黒板には白や紅・黄・青・緑のチョークで描かれた、精密な計算式と結果が描いてある。
若く瑞々しい25歳は、若者の眼には痛い位の露出や動きをして、次の教科書のページへいく。
因数分解の方式!ああ、ルートに押しつぶされて悶える4が可愛いわ!
どこにも因数分解がないんですが。
先生は今日も恒例のはだけをして、帰っていった。
そんな先生を見ていたら、委員長から消しゴムをぶつけられた。
なんでだよ。
体育。此処の先生は、戦後に生き残った人だから軍人気風じゃなくて、軍人だ。
只元軍曹だったらしく、今でも鬼軍曹として畏れられている。
普段であれば、そんなにって感じだ。
今日は男女共同作戦で、男は銃剣・女は薙刀をやると謂う。
更に此れを主にして、最後之拾分は分かれて好きな事をやらせるというもの。
「二等兵諸君。此れより、一等兵への昇進試験が有る。
其れに受かるには、銃剣・薙刀若しくは竹槍を習得しある程度を超える事である。
良いか、一等兵になるのは当然の事である。昇進にうかれ、浮足立ち足元を掬われないように精進せよ」
此処等は優しい口調だが、訓練に入る事になると非常にきついものになる。
「この私が直々に教えたものを、踏みにじるとは貴様良い度胸だ。此の俺と戦え。
キサマのゴミ虫具合を見てやる。おら、野郎と女郎共、惚けて無いで腕を動かせ!
手前等では、盾にも成らん!肉団子に成りたくなければ、さっさと腕を磨くんだな!」
色々ぶっ飛んでる。
此之御蔭で、此の学校周辺には日章旗が翻っているし、新聞は殆ど漢字で右読みだ。
まあ致し方無い事だらう。
自衛隊も真っ青な訓練を拾分行って、其処から参拾分間普通の訓練をして、残り10分は好きな事を遣らせて貰える。
最初の訓練は非常にきつい。
それでも、拾分経過すれば合格なんて甘い事はない。
きちんと課された目標を達成しなければ、開放なんてありえない。
地獄だが、一週間に二回しかない。
後3回あるが、残り二回は普通の学生がやるべき体育で残り一回は保険の授業をやる。
この保健じゃない。保険だ。実際は保健/保険。
保健では人の心理や性教育を学ぶ。恋愛についても、馬鹿にしないで面と向かって行い同性愛を無くすようにしている。
少なくとも恋を知ってもらう事を目的としている。
これによって、学校内カップルが増え今後の人生に関わる事となっている。
本命の保険は、社会保険でなくサバイバルや受け身・少林寺拳法・合気道・柔道・空手等を学ぶ授業である。
つまり命の保険を学ぶ事。
おかげで、皆五日間のサバイバルができるようになりました。
サバイバル自体、入学していきなり行うものである。
新入社員として会社に入ると、基本的に寺社や他社による心身鍛え上げの期間に入る。
その応用をいきなりやるのだ。
脱退すると、厳しい軍事訓練を課されるようになる。
更に情報自体も完全に断たれるので、反乱しようにもできない。
ミッションをクリアすれば、食糧と水を貰えるのでサバイバルってわけでもない。
しかしクリアできなければ、火打ち石等で発火させ蛇を焼いて食わなければならない。
蛇の捕獲や発火方法等、いろんなことを学んだりする。
蒸留方法も必要に応じて行うし、猪の血抜きや屠畜も行う。
寄生虫の殺し方も学ぶし、怪我の治し方も学ぶ。
これ等を全て、まだ寒い中で行うのだ。
僕は早々に逸れて、蛇・猪・鯉・フナ・鮎・狸・猿・鹿等を屠畜して10日遭難したんだよなぁ。
嫌な予感がして、御菓子・焼肉のたれとか持ってきていたからよかったものの・・・。
後に野に降りてしまって、ぼろぼろになり片手に蛇を持ってしゃぶっている僕の姿を見たおばあさんが警察を呼んで、そのあと少年保護収容所に預けられてしまったことがある。
結局学校側に問題があったとして、ある程度の範囲内でミッション制度に変化した。
こんな事になってしまったが、逆に今までどうやって生き延びたのか、警察・マスコミ・消防の方々に聞かれた。
警察官には、ある程度まで同じ場所で過ごしていたが、強風で目印が変化し分からなくなったので下山と説明。
マスコミには、努力して山を降りたと説明。
消防には、嫌な予感を信じて調味料を多く持っていき、湧水を汲み毒草を盛って生物を殺し肉だけ剥いで焼いて食って生存、と説明した。
まあ、僕のどうでもいい過去は放っておこう。
これ等が終わったら、早速給食だ!
実は保険や体育があるクラスの給食は、その日に限って量が1.2倍される。
なんだかんだで、昼休み。
委員長に捕獲され、人があまり来ない新館の外階段に連れてこられる。
「それで、結局。来れなかったのはどういう了見なの?」
「いや、ただ単にインフルエンザにかかっちゃってさ」
「……」
じっと体を見られる。
僕は別に動じない。そこから、何か見つけられるわけでもないし。
「右肩」
「ん?」
「いつも癖の様にストレッチをしているのに、今日はしてないんだね。
そんなに肩が痛いの?」
「まあ、筋肉痛だよ」
「嘘は言わない」
そう云って委員長は、肩に触れてくる。
そこはもともと矢や銃弾、破片とか色々あった場所だからあんまり触らないでって、あああっ!
「ほら、やっぱり。ウソツキ」
「はいはい、そういう憶測いいから。
どうせまた誰かが見てるから、変な事で目くじらを立ててほしくないだけだよ」
半分本当。いやぁ、危なかった。触られた瞬間、嫌な感触が体中を駆け巡った。
悪寒というか、鳥肌が立つというか。
痛くないのに、痛みが広がる感じで嫌悪感が半端でない。
「ねえ、一体何があったの?」
「いやいや、別に何もないから」
「ふーん。じゃあ、沖縄の修学旅行時、私を襲った事先生に教えちゃうよ?」
「別に構わないよ。だけど、僕也に無実無根と共に、名誉毀損で訴えるけど」
「・・・」
「はいはい、本当に何もないから。さあ、教室に戻ろう」
委員長が何かを云った気がした。
「修学旅行に行ったし、もう史跡に行かないみたいだから、もう大丈夫ね。
じゃあ、これで私の役目は終わり。今から、ただのクラスメイトね」
「元々クラスメイトだろ?」
「そ、そうよね。うん、御免、何か色々」
「あー、もっと休んでく?」
「そうする」
僕は核心を隠し、委員長と話す事にした。
色々あったんだろうから、メンタルケアと称して色んなお話を展開した。
これで少しでもいいから、精神的に慰安してほしい。
「あ、今日、午後授業ないんだった」
「そういえば、そろそろ年初のテストだっけ。その試験の準備って聞いてる」
とまあ、こういう事なので、少し話を長引かせた。
ただ途中、色々姿勢を変えていったけど。
何せ石造りだから、尻が痛くなる。立ち上がったりして、楽になる様に姿勢を作る。
「そういや、修学旅行で友達できた?」
「っ!」
あ、あれ?なんで一瞬びくっとした?
「え、う、うん。で、できた・・・よ。うん……」
「あ、ごめん。僕のせいですね」
「あのね、聞いてくれるかな?」
一瞬で暗い雰囲気になったからどうにかしようとしたとき、委員長から何かの許可申請を貰う。
何かわからなかったが、黙って聞いておこう。
「うん」
「私ね。友達、いないんだ」
「え、じゃあ、話してた人とかは?」
「私自身、あれは友達じゃなくて、知り合いだから……」
「あー。うん、それはよくわかる」
実を云うと、委員長の班員は全てスカートを下着見えるかのところまで折るような不良ばかり。
だから友達ができるはずがない。
というか、前の学校からの友達いないのか?
「あれ、でも、前の小学校からの友人は?」
「私これでも性徴が早いから、思春期を迎えた男子の人気に、他の女子が」
「わかったわかった、もう言わんで宜しいよ」
僕は再度委員長を確認すると、納得する。
この瞬間まで、性欲なんてからっけつも等しかったので、委員長はただのおせっかいさんと見ていた。
だから他人の細かい所なんて見てなかった。
とにかく、委員長が独りなのが判明。
こりゃ精神的にあかんな。
「委員長!」
「はいっ!?」
僕は肩を触られたのを根に持って、両肩を握り顔を寸前まで持っていく。
驚いたのか目を大きく開く。
「友達になろう、今すぐに!」
「え、いいの?」
「応。というか、こうやって話す自体友達がやることなんだけどねー」
「あ、うん、ありがと。でも、君の…あ、えと・・・」
あー、うん。さすがに自己紹介なんてあまり聞いてないよねー。
実を云うと、委員長の名前しらないんだわ。
「僕は入江 雄太。委員長も教えてよ」
「えっ!?えと…」
「しーりたーいなー。僕の名前の由来は、”男”!だからさー。
委員長の女の子!って感じの名前、教えてよー」
「い、いきなりちゃらいっ」
ちゃんと俗語は知っているんだね。
普通にすごいなー。委員長は模範生徒だから、身持ちが良さそう。
ちゃんと友達になって、委員長に恥じをかかせないようにしないとな。
「私の名前は、伊角 美衣奈っていうんだけど、えっと」
「何戸惑ってんの?普通に可愛い名前じゃん」
「っ! あ、えと、ありがと……私、キラキラネームだって思ってたから……」
「へー。じゃあ、僕は美衣奈って呼ぼうかな?」
「え、だめ」
あー、この渋りはさすがに世間的に恥だと思っているのだろうか。
性だったり思いっきりやりすぎな奴は、本当に終わっているが委員長のはまだ普通じゃん。
「なんで?」
「だって、恥ずかしいし」
「そうかな。それくらい普通の名前だし、むしろ委員長しかいないんじゃないの?美衣奈って名前。
僕は唯一っていうの良いと思うから、美衣奈って呼ぶよ」
「な、何で唯一」
「入江は世間に何万人もいるし、雄太もありきたりだから」
僕は笑顔で話す。
皮肉ってわけでないが、当然当たり前の事。
別に悲しくもないが、唯一って格好いいし。
「…じゃあ、私も雄太って呼ぶ。だって、私が知ってる雄太は雄太だけだから」
何気にうれしい事を云ってくれるね。
じゃあ僕も、気づいた事を云ってみようか。
「っなんだ、えと、ありがとう。それと、やっと美衣奈の笑顔を視れたよ」
「?」
「僕が見てきたのは、面倒そうな気怠げな表情とか楽しいの裏腹なものばかり。
だから、ちゃんと笑顔を視れたのは、これが初めてだよ」
「今まで笑ってるつもりだったんだけど?」
「営業スマイルを見せられてもなぁ。でも、今の美衣奈の笑顔は、表情が見える可愛い笑顔だよ」
べた褒めの言い合いかな?
とにかく、終わらせようか。
「とにかく、愚かで不細工な馬鹿な坩堝を終わらせられたし、これからよろしく美衣奈」
「うん。宜しく、雄太」
握手する事に成功しました。
やっとこの学校で初めての友人ができたー!!
だってさ、此処に来たら早急に10日間彷徨って生き残った変態だぜ?
こんな奴についてくるか?
それに当時の新聞社でない地方情報誌では、僕の発見時の姿が悪鬼羅刹の如くって言われてんだ。
もうね、これね、泣くしかないんだよ。
いや、泣かなかったけど。
そうだね、この時の姿は中々のものだよ。
姿は血濡れ破れた制服・裸足・サヌカイト槍・さびた斧・鉞・屠畜し血抜き中の鹿肉塊7個・木の葉の防寒具・学校指定鞄等。
酷いね、これは。
この後二人で帰る事を確約した。
ただ僕は自転車で、美衣奈はあるきだった。
住んでいる場所は、学校から北西の場所にあるという。
自転車に二人乗りなんて違反行為はできない。
だから右側を歩いて、普通に帰宅することになる。
美衣奈を一番右。次に僕が来て、左側に自転車を置く。
これで通行の壁を作る事ができた。
護身の為と云えばいいかな。
「お、委員長。そんな病弱野郎と付き合わず、俺達と付き合おうぜ!」
「「え」」
帰宅しようと美衣奈と共に、駐輪場に行ったら前方に茶髪の少年たちがでてくる。
割り込みというより、役者の舞台登場のような感じで凄かった。
茶髪の少年達は、ワックスか何かで頭髪を固めているみたいだ。
その為アイドル並の容姿と相乗して、結構な格好いい……のかわからないけど凄い人物になってた。
僕が固まっていると少年の一人が、美衣奈の腕を引っ張って行こうとしていた。
「ちょ、ちょっと!?」
僕はその声と振り返って、困惑の色を示す美衣奈を見てはっとする。
直ぐに連れ去られそうになる美衣奈を追いかけて、そのまま方腕で抱き寄せる。
流石にもう片方の腕を引っ張ると痛そうだったからやめた。
「んだよ、モブはすっこんでろ」
「そーそー。そんな自分を整えられない馬鹿とは違うんだよ!」
意外にも連れ去る手が離れてびっくりしたけど、美衣奈を厄介事から開放できたのはよかった。
でもなんか喚く彼らに、少しだけ苛つく。
美衣奈の心を無視したその行動と人の気持ちを考えられない卑下する物言い。
灸を行動でなく、釘を言葉で据える様にしようと思った。
僕はそんな思いが強かったのか、更に美衣奈を強く抱き寄せる。
「色々言ってる事悪いけど…美衣奈は、オレの者(友人)になったから!そこんとこ宜しく!」
「なっ……!物(女)だとっ!?」
僕は今までの事件の事が抜けて居なくて、物欲等が戻って来ていない。
だけど感情はある。
此処で何故いきなり出て来たかわからない冗長する少年らを、確実に諌める為強くに出た。
これで収まってくれるといいんだけど。
あれ、周囲の皆がなんか色々喧噪を捲し立ててる。
「オレのモノだって!」
「モブが恰好つけてんじゃないわよ!」
「ガリが云っても説得力ねぇぞ!イケメンに限るわー!」
批判批評が無駄に多いような?
「でもよ、今美衣奈っつったな」
「嘘だろ!?あんな奴に、堕とされるなんてよ!」
僕は皆が云っている間、自転車を施錠から開放して美衣奈と共に正門から出て行く。
そんなに友人がいない僕に驚くほどなのかな?
確かに僕は栄養失調とかでやせ細ってる。
それでも友人はいてもいいでしょうに……。
なんか解せないなー。
「帰ろうよ」
「う、うん!でも意外だなぁ」
「なんで?」
「だって、草食系気弱だと思ってた雄太が、あんなに大胆だなんて思ってもみなかった」
美衣奈ははにかみを見せる。
突然出現して、よくわからない事をされたのに元気に笑顔を見せてくる。
やっぱり委員長は凄いと思った。
「そりゃぁ、美衣奈は大切な人だからね!」
唯一の僕のクラスの友人なんだから、当然じゃないか!
他のクラスにも、谷田君や笠本さん・ゲンさん・タパ君・皇がいる。
だけど基本的に、LINEや電話・遊ぶ時以外は会わないよ。
「っ ゆ、雄太。家で一緒にテスト勉強しない?」
「いいの?」
「ん。来てほしい」
「じゃあ、お邪魔しようかな」
委員長は少し視線をずらして、僕にそう云った。
もみあげ付近から流れている頭髪を指に絡めて弄っている姿は、
普段の委員長と違う感じがして凄く可愛かった。
この後、歴史以外の勉強でスパルタなテストの予習をやらされた。
滅茶苦茶きつかったとだけ記しておこう。
舟坂サバイバルとか高野五十六暗殺教室とか、続きがあった。
でも、委員長とは友達になったこれくらいが、見納めかなと思ってここでやめました。