天使がなくしたもの   作:かず21

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今回も短いです。

やっぱり、小説って難しいですね。

では、どうぞ。


笑える理由

 力を込めていたはずの腕がミシ、と嫌な音を立てた。次いで、体内から低い破裂音が響き、背中からドカバキュゴキッと派手な粉砕音が聞こえる。

 それでも――

「あ、赤奈さんっ!」

 それでも、天使は無事だった。かすり傷一つない体はすぐさま赤奈を抱き起こす。

 ぼやける視界で天使の安否を確認すると赤奈は満足そうに微笑んだ。

 そんな赤奈に天使はひどく困惑した顔で喚く。

「なんで……どうして笑っていられるんですか!? どうして、あなたにひどいことをした私を助けたの!? おかしいよ。なんで、こんな……」

 天使は涙ながらに問いた。

 赤奈は喉から逆流してきた赤い液体を吐くと折れた腕をどうにか動かし、天使を抱き寄せた。そのまま肩にうずくまる。

 暖かい体温や激しく鼓動する心臓を抱き寄せながらも、天使の左耳に吐息混じりの言葉を生む。

「君を助けたのは正義感や道徳的なものじゃないよ。ものすっごく個人的な理由だ」

 その弱々しい声は耳元で囁かないと聞こえない小さな音だった。

「君の、泣き顔が、死んだ妹と似ていた……だから、助けたくなった」

「そんな理由で……アナタは命を捨てたって言うんですか?」

「ハハ、笑っちゃうだろ? あと、君に謝らないといけないね」

 ごめんなさい、と掠れ声が風に乗って耳に届いた。

「妹が帰ってきた、と錯覚した僕の心の弱さをごまかすために君を怒鳴りつけちゃったんだ」

 天使には分からないかもしれない。

 妹とかぶせ、手を差し伸べ、あまつさえ命を投げ出したこと愚行に。でも、それでもいい。大切なのは天使の安否だけだ。今はそれだけでいい。

「僕は、自他共に認めるシスコンだからね。それに、君だって本当は誰も傷つけたくなかっただろう? だから、僕を――ううっ!」

 苦しそうに呻き、青白い顔を歪ませた。

「もういい喋らないで! 体がもう……」

 赤奈は5年前からドクターストップがかかるくらい体を弱めている。

 そんな彼が一連の激しい運動に加え――なぜか倒れてないが――重傷を負っているのは、相当危険な状態なのだ。

 けれども、赤奈は聞き分け悪く、言葉を続ける。

「だから、僕を信じてくれ。誰も傷つけないで、君を救うと約束する。僕が君の記憶を取り戻、す」

 言い終えると同時に、赤奈は意識を手放した。

 

 後ろに倒れていく赤奈の体を慌てて支え直し、そのまま天使は耳を胸に当てた。

 頼りげのない胸板から弱々しい鼓動が聞こえる。どうやら、辛うじて息はしているようだ。

 しかし、もう長くは持たないだろう。どうにかして傷を癒さなければならない。

 無茶がたったのか、酷使していた右肩も血の華を広げ、赤い花弁を散らしてる。このような容態ではいくら医者に見せても手遅れだろう。

「いや、死なないで。おねがいですから!」

 羽を折られ落下する時に一度この命を諦めた。

 私利私欲のために善良な人間の命を奪おうとした自分にはふさわしい結末だと受け入れたのだ。

しかし、結果はどうだろう? 目の前の男の子はあれほど自分の命を第一にしていたのに最後には己の命を投げ出し、身を挺して自分を救ってくれた。だから、今度はこっちが彼を助ける番だ。絶対に死なせたくない。

 こうしている間にも、赤奈の体が重く、冷たくなっていくのが分かった。どうあっても助からない。

しかし、ひとつだけ助かる方法がある。手軽で効果的な、それでもって羞恥の手段が彼女の手札にあった。

 迷っている暇はない。今は1秒を争う。

赤奈をそっと自分の膝に寝かせ、静かに語りかける。

「私は自分すら信じることができない天使です。でも、君を救う、と言ってくれた赤奈さんを私は信じたい。だから、今からする無礼を許してください」

 そう告げると赤奈を覗き込むように顔を近づける。

 そして――

 

――互いの唇を重ねた

 

 唇を離す。

 カアアアと頬に熱が篭るのが分かった。

気恥ずかしい天使はバラ色の頬を抑えて、その場にうずくまる。

(うぅ。顔が、熱い。でも、これで……)

 天使の真意を知る者は今は彼女だけだ。

 

 




はい、おつかれさまでした。

先週も言っていたのですが、ストックがやばいw

ただ今格闘中なんで、来週はどうなるかわかりません。

一応、日曜の6時になったらチェックしてくれるとありがたいです。

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