守りたいもの   作:行方不明者X

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※大 変 お 待 た せ い た し ま し た

※支離滅裂です

※メタトンアンチが発動します


97.メタトンEX戦

【Lily】

 

Mettaton EX makes his premiere(MettatonEXのプレミア公演だ)!

 

アナウンスにハッとして目を瞬かせると、先程の今にも泣き出しそうな顔をしたメタトンは直ぐに消えていった。今までのボスモンスター全員に起きているこの現象も転生特典か何かなのだろうかと考えながら、一応辺りを見渡しておく。白黒ではあるが、天井や大きな丸型に切り抜かれた床に幾つもあるスポットライト、ショーらしい(あんま行ったことないから偏見だとは思うけど)BGMを垂れ流す大きめのスピーカーが端に設置されていたりするのを見て、ここはどうやらステージの上らしいという事を理解する。そして、撮影用であるだろうドローンが浮かぶ空中に表示された大きなグラフと『視聴率』と書かれた文字を見て、こんな風になっていたのかと思った。

……というか思ったけどBGM若干メタトン(EXの方)のテーマの『Death by Glamour』に似てんな。まさかこんな所でもう二度と聞くことは無いだろうなと思ってた前世で聴いた曲のアレンジ(?)が聞けるとは思わなかった。いや今は頗る煩いうえに邪魔でしかないんだけどさ。

そんな事を思いながら見渡すのを辞めてまたメタトンに向き直ると、彼は決めポーズか何なのか、ゲームだった時も見た謎のポーズを繰り返していた。ゲームだった時もだったけど見てるとちょっと腹が立つ。

 

「ねぇ、お姉ちゃん」

「ん?」

 

ふと、フリスクが話しかけてくる。顔を見てみれば、フリスクは不安そうな顔をしていた。

 

「………メタトン、殺しちゃうの?」

 

フリスクはたった一言そう言って、私の服の袖を掴んだ。

 

「……フリスクがどうしたいかによる」

 

私が一言簡潔にそう言えば、フリスクは目を伏せ、少ししてから、顔を上げて私を真っ直ぐ見据えた。

 

「やだ、殺したくない。この地下には、あの人が多分必要だと思うから。あと、出来れば友達になりたい」

「ん、わかったよ。その代わり、フリスクはフリスクに出来る精一杯をしてね」

「! うん」

 

フリスクの意思を確認し、私は改めてメタトンを見る。さて、これで『殺す』という選択肢は無くなった。どうするかな。

 

*METTATON EX-ATK 47 DEF 47

His weak point is his heat-shaped core(弱点は彼のハートのコアだ).

 

『ライト! カメラ! アクション!』

 

フリスクが『ACT』を押したことによってアナウンスが流れ、思わずメタトンの下腹部辺りにある白いハートを見る。ダメージが通るって事は……一応ソウルってことになるのか? あれでもメタトンは元々ゴースト一族だったから攻撃無効の筈じゃ、あ、でも確かあの(Genocide)ルートじゃマッドダミー君が怒りのあまりダミー人形と同化して肉体を得たんだっけ。じゃあ今のメタトンは機械と同化してるとして考えて、あれがやっぱりソウル、もしくはその代用品ってことでいいのか。

 

「僕の美しさに見惚れてるのかいダーリン、なら遠慮無く殺しちゃうよ?!」

 

そう考えているとメタトンは一言そう言って長い脚を動かして私達に近付き、連続キックを叩き込んでくる。二人で左右に避け、私にヘイトが向かうことを狙って横からナイフを当てないように少し振る。するとメタトンはすかさず私の方を向き、脚で私のナイフを持つ右腕を狙ってくる。その脚の追撃を素早く腕を引いて後ろに避け、メタトンと距離を取ってフリスクの傍に戻る。

 

「ハッ、見惚れる? なわけねーだろ、自意識過剰も大概にしろよ。私が見惚れるのは今のところその子ただ一人だっての」

 

そして鼻で嗤い、私は笑みを浮かべた。

 

*Mettaton.

 

メタトンの攻撃が終わり、私達にターンが回る。フリスクがキョロキョロと周りを見て、そして少し考えてから、私の服の裾を引っ張った。

 

「何?」

「…………ちょっと考えたんだけど。あそこに視聴率って、あるじゃない?」

 

そう言って、フリスクは空中に浮かぶグラフを指し示す。

 

「うん、そうだね。それで?」

「……あの視聴率が一杯になれば、メタトンが満足して、和解できるようになるんじゃないかなって、思ったんだけど……どう?」

 

フリスクから話された案に少し驚く。『Player』がいるとはいえ、もうそこまで辿り着いたんだなと思いながら、私は少し考えるような素振りをする。

 

「………そうだね。メタトンにはスターとしての誇りがあるようだし、それを利用しない手は無い。もしかしたら、和解できるかも。でも、本当にそれでいいんだね?」

「うん」

 

間髪入れずに頷かれ、私はほっとした。良かった、殺すとか言い出さなくて。

 

「……分かった。フリスクの意思を尊重する。やれるだけやってみよう」

「! うん!」

 

作戦会議を終え、フリスクが『ACT』を押し、メタトンを見据えてキリッとした顔をする。そして、それはドラマチックなポーズを取った。

 

You posed dramatically(あなたはドラマチックにポーズを取った).

The audience nods(観客は頷いている).

 

メタトンはフリスクの突然の行動に一瞬面食らったのか目を丸くして止まったが、少ししてからメタトンが笑い出した。

 

「ははは! いいねダーリン、君ってば最高だよ!」

 

そして、ニヤリとメタトンは笑みを深めた。

 

『ドラマ! ロマンス! 血飛沫!』

「血飛沫はいらんわ」

 

メタトンにそう返し、私はメタトンが呼び寄せたらしい小型メタトンにナイフを構える。すると、フリスクが私の前に出た。

 

「!? フリスク、なにして」

 

ぎょっとした私の前に立ったフリスクは迫ってくる小型メタトンと共に飛んでくる爆弾をエネルギー弾で狙い撃ち、爆発させて諸とも吹き飛ばす。爆発で壊れた小型の残骸が爆風に乗って頬を切ったが、私は構わずフリスクを見た。

 

「……へへ、やっとお姉ちゃんを守れた。やった」

 

何してんだと叱ってやろうとした言葉が、誇らしげな笑顔で振り返ったフリスクのその一言で勢いを無くして吐き出せなくなる。喉まで出かかって行きどころの無くなった言葉を飲み込んでから、私はフリスクの頭を撫でる。

 

「………色々言いたいことはあるけど、ありがとね、助かった」

「ううん、どういたしまして!」

 

そんな会話をしてから、またメタトンを見据える。

 

*Mettaton.

 

視聴者を楽しませる為か、何度もポーズを取るのを繰り返すメタトンを見てから、フリスクは『ACT』を押し、ビシッと指差した。

 

You say you aren't going to get his at ALL(あなたは全ての攻撃を避けると言い切った).

 

「全部回避してみせるって? 大胆だね、ダーリン!」

 

メタトンに向けて大見得を切ったフリスクに、メタトンは笑顔でそう言った。

 

「………はははっ、よく言った。それじゃあ私は、お前にこの子に傷一つつけさせないことを此処に誓ってやるよ!」

 

今度は私がフリスクの前に立ち、そう宣言する。

 

「……いいのかい、そんな大見得切って」

 

一瞬目を丸くしたメタトンがそう言った。

 

「大見得? はは、違うさ。今までやってきたことを繰り返すだけだっつの」

 

*|Ratings gradually increase during Mettaton's turn《Mettatonのターン中でも視聴率が徐々に上がるようになった》.

 

そう言い切った途端、後ろからバシンと結構強めに叩かれる。

 

「いって!」

 

叩かれた方を見れば、フリスクが滅茶苦茶不満そうな顔をしていた。ごめんて。

 

『僕というアイドルを皆が求めてる!』

 

そう言ってメタトンはまた蹴りを繰り出してくる。ナイフと手を駆使して受け流していると、不意に腕が振られて箱を叩きつけられそうになる。咄嗟に左手で庇おうとした瞬間、フリスクが少し横に擦れ、箱を狙い、撃った。飛び出したエネルギー弾は見事箱を破壊する。それを見てメタトンは苛立った様に顔を歪めてからまた蹴り技に切り換え、脚を振るった。腹に向かって出された脚を横に流してから掴んで抱えて固定し、メタトンが反撃を行う前に離してバランスが崩れた所を腹のソウルの形をした部分に向かって踵で思いっきり蹴りを入れた。

 

ゴッ

 

「うっ」

 

硬い物を踏みつけた感覚を足裏に覚える。流石に簡単にダメージを通させてはくれないかと思いながら、蹴りの勢いでよろめきながら距離を取ったメタトンの腹を見る。傷は一つも見当たらず、やはり硬い硝子――――防弾硝子辺りの特殊な何かに守られているらしいと推測する。

 

「……ははっ、やってくれるじゃないか」

 

新品のボディーを足蹴にされたことに腹が立ったのか、苛立ったような声でメタトンはそう言って私を真っ直ぐ睨み付ける。怖じ気付いてしまわないよう、その目線に笑顔を返した。

 

*Mettaton.

 

ターンが此方に回った瞬間、フリスクが『ACT』を押して、ターンを進める。そして、私よりも一歩前に出て、ドローンの一体に向かって指を突き付けた。何をするつもりなのか察した私は、すぐにフリスクを庇えるように構えておく。

 

You turned and scoff at the audience(あなたは振り返って観客を嘲笑った).

*|They're rooting for your destruction this turn《このターンの間観客はあなたが倒されることを期待している》!

 

『カメラに向かって笑って!』

 

そう言いながらフリスクに向かって腕を振り回すメタトンとフリスクの間に割り込み、ナイフをブラフで振る。ナイフにメタトンが反応した隙を縫ってフリスクがまたエネルギー弾を発射し、腕と後ろに構えていたミニメタトン達を撃ち落とす。傷付けば視聴率上がったのに勿体無いことしたなと思いながら、フリスクをいつでも庇いに行けるように構え続けておく。

 

Smell like Mettaton(Mettatonの匂いがする).

 

流れたアナウンスに思わずどんなだよと心の中で突っ込みつつ、嗅いでみる。華やかな香りの中に、何となく油の匂いが混ざった匂いがした。あんまりいい香りではない。

ピッという音がして、ターンが回った。

 

*You posed dramatically.

*The audience nods.

 

またフリスクがアナウンスに合わせてポーズを取る。昔まだ父さん達が生きてた時に友達からダンスを習っていたからか、結構決まっている。

 

『おっと、ここで抜き打ちテストの時間だ! キーボードを用意してくれるかな……』

「キーボードォ? 無いぞそんなもん」

『今回のお題はエッセイ!』

「聞けよ」

 

そう言った瞬間、フリスクの目の前にまたミニメタトンが現れ、手の中にキーボードを落としていった。あ、支給するんだと思いながら、フリスクが戸惑いながらタイピングするのを見つめる。何処に繋がってんだと思っていると、空中に文字が浮かび上がる。ぎょっとして見ていると、文字は変換される前にぐちゃぐちゃに白色で塗り潰されて見えなくなった。『Player』が関わっているからか、と考え、ただ待っておく。

 

『―――――――』

「…………え?」

 

メタトンが口を開いた瞬間、その声がザーッという大音量の雑音で掻き消された。その大きさに思わず耳を押さえてしまう。その次にはメタトンは喋り終わると、その雑音はすっと収まった。

………『Player』に関わる事は悉く規制されると踏んではいたけど、まさか、キャラクター、それもボスにあたるキャラクターの台詞にも規制がかかるとは。

予想していなかった事態が訪れ、一瞬焦る。

確かこのタイピングは『Player』が打ち込んだ内容によってメタトンの台詞が変わる。それが『Player』に関係すると『判断された』のか。………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一 体 だ れ に ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お姉ちゃん?」

 

Mettaton is saving your essay for future use(Mettatonは今後の為にエッセイを保存している).

 

「ん、あぁ…………何でもない」

 

近付いてきていたフリスクの声がけとアナウンスにハッとする。いけない、またか。頭を振り、思考を切り換える。取り敢えずアナウンスにどんな場面で使うんだよ、と思いながら、私の挙動不審をきょとんとした顔で見ていたメタトンを見る。

 

「すまない、少し眠くてね。ボーッとしちゃったよ。さて、ショーを続けようか」

 

ヘイトを集めるために暗に『このショーがつまらない』という意味の皮肉を込めながらナイフの切っ先をメタトンに向ける。皮肉に気付いたらしいメタトンは一瞬顔を怒りに染め、そして視聴者を気にしてポーズを取り続けていく。

ピッという音がして、ターンが回った。

 

*You posed dramatically.

 

また前に出てポーズを取ったフリスクの決めポーズは、父さん達がまだ死ぬ前に友達からダンスをちょこちょこ習っていたからか、中々様になっていた。それに習い、私もポーズを取っておこうと思い付く。取り敢えずリュックから先程入手したテロガンハットを出して被り、くいっと鍔をもって学帽のように下げ、ポケットに片手を突っ込んでから、ビシッとメタトンに対して指を突き付けた。

 

「テメーは、俺が裁く!」

「お姉ちゃん!?」

 

学帽って時点でまぁわかる人なら分かるであろうポーズを取る。一応事前に漫画を読んでいたフリスクが誰のポーズなのか察したのか、目を見開いて信じられないようなものを見る目線を寄越した。うん、此処でするポーズじゃないのは分かってるんだ。でもやりたかったしここらでそろそろふざけとかないとまたキレそうになるんだ。許せ。というかテロガンハットならあれだな、某銃は剣より(以下略)とナンバーワンよりナンバーツーで有名なメギャンの人にすれば良かったかな。まぁいっか。

 

*The audience nods.

 

『君のエッセイは本当に心が籠っていたね。それじゃあ僕のハートも見てもらおうか』

「は?」

 

何を言っているんだコイツは、と思いながらポーズを解除しメタトンを見ていると、腹の部分が開き、中からハート型のソウルが飛び出してくる。そして辺りに電撃を撒き散らし始めた。

 

「! フリスク!」

「オッケー!」

 

回避してからフリスクに一言声を掛けると、察してくれたのかフリスクは携帯を構え、ハートに向かって弾を打ち出していく。

 

「あれに弾を当てたら電撃が来るみたい、気を付けて!」

「わかった!」

 

フリスクからの忠告を受け取ってから、妨害しようとやってくるミニメタトン達を相手取る。電撃の中近付いてきたところをナイフの柄を当てて落とし、それを繰り返す。

 

「うっ、ぐ」

 

そんな中、気が緩んでいたのか、ハートから出された電撃を回避していた際、最後のミニメタトンに気付けず、ハート型の弾幕が腕を掠る。それに気を取られて足を止めた内に、電撃の追撃を喰らってしまった。体に痺れが残る中最後のミニメタトンを落として思いっきり踏み潰す。案外ミニメタトンの耐久力はメタトンに比べて低いらしく、グシャッという音を立てて潰れた。潰せるのが分かったのはいいけど、いちいち潰してたら切りがないなとぼんやり思った。

 

*Mettaton.

 

「お姉ちゃん!」

 

電撃が当たるのを見ていたらしいフリスクが心配そうな声をあげる。

 

「大丈夫。すまん、気を取られちゃった」

 

あはは、と軽く笑って誤魔化し、メタトンを見据える。メタトンはダンスを披露し、ひらひらとステージの上を移動していた。

ピッという音がして、ターンが回る。

 

*You say you aren't going to get his at ALL.

*Ratings gradually increase during Mettaton's turn.

 

一歩前に出たフリスクがまたメタトンに指を突き付けて宣言すると、そうアナウンスが流れた。

 

『まだまだ、ウォーミングアップだよ!』

 

そうメタトンが言った瞬間、ミニメタトン達がまた現れる。フリスクが弾を撃ち、それでも撃ち漏らしてこっちに来たものを私が叩き落としていく。

 

*Mettaton.

 

ターンが回り、此方のターンになる。フリスクが『ACT』を押し、ターンを回す。

 

*You posed dramatically.

*The audience nods.

 

またポーズを取ったフリスクを横目に、メタトンを見据える。

 

『それじゃあダンスフロアでの君を見せてもらおう!』

 

は? と思った瞬間、天井からミラーボールのようなものが降りてくる。そのミラーボールに反射した光が、青色だった。

 

「!」

 

私とフリスクを回転しだしたミラーボールが青い光で照らす。この世界における『青』は止まっていないといけない法則を当て嵌め、動きを止める。二つ三つ青い光をやり過ごすと、今度は白い光が迫ってくる。

 

「まず、」

「えいっ!」

 

『まずい』と言おうとした瞬間、フリスクが何を思ったのかミラーボールをエネルギー弾で撃った。弾がミラーボールに直撃すると、青と白の光の順番が反転した。『Player』が正解を選んだことに驚きながら、取り敢えずやり過ごしていく。

 

「ナイス!」

「へへ」

 

一言簡潔にそう言葉を交わして、メタトンの動向を探る。

 

*Mettaton.

 

ふと、空中の視聴率を見る。表示された数字は五千を少し越えたぐらいを指していた。メタトンを『MERCY』する為に必要な数字は攻撃で手足欠損で一万、五体満足で一万二千だった筈。『Player』がどう行動するかにもよるが……どっちを選ぶだろう?

フリスクが『ACT』を押して、ターンが進む。

 

*You posed dramatically.

*The audience nods.

 

『このペースについてこれるかな!?』

 

またポーズを取ったフリスクがまた回転しだしたミラーボールを見定め、エネルギー弾を撃った。先程よりもずっと早いミラーボールの速度の中を落ち着いて撃っていく姿に、私も若干安堵を覚えた。度胸もあった方がいいものね。

 

*Mettaton.

 

ターンが回り、またメタトンがダンスをし始める。フリスクが『ACT』を押し、ターンを進めた。

 

*You posed dramatically.

*The audience nods.

 

『ライト! カメラ! 爆弾!』

 

メタトンがそう言った瞬間箱に縄で縛り付けられた爆弾が上から降り注ぎ始める。それを見たフリスクが携帯を構え、弾を撃ち出していく。爆弾に弾が当たった瞬間、少し間を置いてからビームのような物が一直線に此方に飛んできた。ぎょっとしながら左右に別れて回避し、フリスクはそのまま冷静に爆弾処理を続けていく。やだ、うちの妹ってば鋼メンタル。

 

*Mettaton.

 

ターンが回る。フリスクがポーズを取ってターンを回す。

 

『盛り上がってきたね!』

 

メタトンの言葉にちらっと視聴率に視線をやると、六千を越えていた。早いなと思いながら、落下速度を速めた爆弾を冷静に解除していくフリスクを見守る。何も出来ないのが歯痒い。

 

「ほら、僕の事を忘れちゃダメだよ!」

「!」

 

爆弾を粗方処理し終わったタイミングでフリスクに攻撃を仕掛けようとしたメタトンに一気に近付いてナイフを持った右腕を横薙ぎに大きく振るう。

 

「そう来るだろうと思ってたよ、大きいダーリン!」

「なっ」

 

一歩下がって攻撃を回避したメタトンの角が上がった口から溢れた言葉に『まずい』と感じた時には、横っ腹に激しい痛みが走り、そのまま横っ飛びに吹き飛ばされる。

 

「が、はっ……ぐ」

「お姉ちゃん!」

 

少しの浮遊感の後床に叩き付けられ、上手く息が吸えず、呼吸が乱れる。明滅する視界で頭を振って、何とか体勢を立て直して立ち上がる。ズキズキと痛みを訴える横腹と片足を軸にして立っているメタトンの体勢から見て、蹴られたらしいと察する。

 

「さっきからダーリンに攻撃すれば、必ず自分にヘイトが行く様に動くんだもん。僕がそれぐらい気付かないと思った?」

 

にっこりと、愉悦を含んだ笑顔でメタトンが笑う。

 

「つまりは、ダーリンを人質に取ってしまえば、君は下手に動けないってことだよね?」

「きゃっ」

「!!!!」

 

私を気遣ってか此方に来ようとしたフリスクの目の前に、メタトンは畳んでいたもう片方の脚を振り下ろす。その場で尻餅をついて回避したフリスクにメタトンは向き直り、手ヲ伸ばそうトスる。

 

「ひっ」

「!!!!! さわンなぁぁぁぁぁ!!!!」

 

力一杯床を蹴って全速力でメタトンに近付き、ナイフの柄を横腹に叩き込む。そのままの勢いでメタトンの高いヒールを狙った足払いを入れ、重心が横に擦れた所で思いっきり全身の体重を掛けたタックルでメタトンを薙ぎ倒す。

 

「いっ……」

 

その隙にフリスクの手を握って立ち上がらせ、メタトンから距離を取る。

 

「…………あははッ、『手負いの獣は恐ろしい』って言うのは本当みたいだね。普通突っ込んでくるかい、この状況で」

 

ガタガタという機械音を立てながらメタトンは立ち上がり、私を睨みながらそう言った。蹴られた片腹と自分よりも硬い物を蹴った負担で痛む足に力を入れ、私はメタトンに笑い返しておく。

 

「ははは、『窮鼠猫を噛む』って言う諺もあるからなぁ」

 

*Mettaton.

 

私がそう言えば、メタトンは苛立った様に一回地面を強く踏み、ターンを回してダンスを再開した。

 

「大丈夫……?」

「ん、今はまだへーき。それよりもとっとと終わらせちゃおう、こんなショー」

「………うん」

 

蹴られた横腹を見て、フリスクが泣きそうな顔で見上げてくる。その頭を撫で、私はフリスクの手を『ACT』に誘導する。

 

*You posed dramatically.

*The audience nods.

 

『労働基準法は守らないとね、休憩の時間だよ!』

「労基とかあんの……?」

 

ポーズを取ったフリスクに待ったをかけ、メタトンはそう言った。無きゃまずいよなと思った所で、ふと自分は会っていないモンスターを思い出す。そう言えばバーガーパンツってあだ名のモンスターが働いてたよな……? いや、これ以上はやめておこう、うん。

 

*Mettaton.

 

暫しの休憩タイムを挟んだメタトンは、ショーが盛り上がっていくに連れて、ダンスのスピードとキレを上げていく。機械の体って結構重い筈なのに良くあんな動きが出来るなと酷くなってきた横腹辺りの痛みに耐えながら思う。これもしかして骨逝ったか? え、治るのか、これ……

 

*You posed dramatically.

*The audience nods.

 

『僕たちの関係、冷めきっちゃったね、ダーリン……』

「……あぁ?」

 

突然妙な事を言い出したメタトンに、思いっきり低い声をあげておく。

 

『もう一度、「心の触れ合い」をしないかい?』

「……! お姉ちゃん、下がってて! これはぼくの番だ!」

 

フリスクがそう言って前に出るや否や、メタトンの腹の部分が開き、盾代わりであろう箱に囲まれたソウルが飛び出してきた。それを見た瞬間フリスクは携帯を構え、先程とは比べ物にならないほどの速撃ちでソウルの盾を剥がし、ダメージを与えていく。抵抗するように放たれた電撃を痛みが走る体を動かして出来る限り最小限の動きで避けていく。それを繰り返していくうちに、ソウルがメタトンの体に引っ込もうとする。その時だった。

 

バチバチバチッ

 

音を立てて、メタトンの肩――――正確に言うならば、腕の付け根部分から火花が上がった。

 

「!?」

 

驚いてメタトンを注視していると、

 

ガシャンッ

 

という音を響かせながら、メタトンの両腕がステージに落ちた。

 

「………えっ??」

 

そこまで、余裕そうにしていた顔が、突如として落ちた腕を見て歪む。その顔は、動揺と恐怖が混ざったような、そんな顔をしていた。

 

*Mettaton.

 

十中八九『動揺』はあの体の脆さと落ちた腕に対して、そして『恐怖』は……自らが死んでしまうかもしれないという本能的な拒絶からだろうか。そんな事を考えながら、視聴率を見る。表示された数字は、七千ちょっと。腕が削れたから……あと、凡そ三千。いけるか……?

 

*You posed dramatically.

*The audience nods.

 

フリスクがポーズを取るのを横目で見てから、私はメタトンを注視する。

 

『う……腕が? こ………こんな魅力的な脚があるのに、腕なんて必要ないさ!』

 

今更恐怖感が出てきたのか、メタトンの声が少し震えていた。ゴーストだった時は無縁だった死の感覚が近付いてきているのが、恐ろしいんだろうなと思いながら、腕が無い所為で上手くバランスが取れずによろよろと立ち上がるメタトンの目を見る。さらりと右目にかかっていた前髪が揺れ、右目が見えた。

 

『それでも勝つのは僕さ!』

「いいや、私達さ」

 

腕を失ってもなお、その機械の眼には、希望があった。また降り注ぐ爆弾を解除しようと携帯を構えたフリスクが、何かに気付いたように目を見開き、慌ててエネルギー弾の照準を巻き付いている箱の方に移す。そのまま箱を撃ち続けていると、突如としてフリスクが撃たずに床に落ちた爆弾が浮かび上がる。そして先程降ってきた軌道を再現して天井に戻っていく。その攻撃を見て、メタトン戦であった巻き戻し攻撃かとやっと気付いた。

 

「!」

 

フリスクが避けきれなかった箱をナイフを突き立てて壊し、そのまま踏み潰す。箱風情がフリスクに触んな。

 

*Mettaton.

 

ターンが回っても、やはりバランスが取れないのか、少しよろめきながらもメタトンは視聴者を喜ばせる為にダンスを続ける。その姿は、逆に痛々しかった。

 

*You posed dramatically.

*The audience nods.

 

『おいで……!』

 

そうメタトンが言った瞬間、またあの攻撃が始まる。フリスクは箱だけを狙い撃ち、この後安全に避けられるようにしていく。フリスク、エイム力ヤバいな。

フリスクの力によって安全に爆弾を避け続け、今度はダメージを受けずにやり過ごした。

 

*Mettaton.

 

ターンが此方に回り、メタトンがまたダンスを始める。ふらふらとしながら踊る姿は、今にも倒れてしまいそうな危うさがあった。

 

*You posed dramatically.

*The audience nods.

 

『ショーは……続けないとね!』

 

フリスクがターンを進めると、メタトンはそう言った。次に、また爆弾と箱が降ってくる。フリスクに射撃を任せ、私は右腕でナイフを振るい、近付くまで来た箱をぶっ壊していく。

 

*Mettaton.

 

視聴率を見る。表示された数字は、八千五百とちょっと。あと、少し。

 

*You posed dramatically.

*The audience nods.

 

『ド……ドラマ! ア……アクション!』

 

先程よりも揺れる体で、それでも意思は消さないまま、メタトンはショーを続ける。フリスクが撃った箱の残骸がステージに降り注ぐ中、立ち続けるメタトンを見て、ふと思う。

もしかしてコイツは、今『此処(ステージ)』に、『スターとしてのプライド』だけで立っているのかと。

 

*Mettaton.

 

私のただの考察だが、彼の性格を考えるに、そうなのではないだろうか。

何となく、彼に対する思いが変わる。

……やっぱり、凄いな。この地下世界のモンスター達は。プライドや夢―――『想い』だけで、ここまで戦えるのか。

 

*You posed dramatically.

*The audience nods.

 

『ラ……ライト…… カ……カメラ……』

 

戦い始めた時とは全く異なる弱々しい声で、メタトンは続ける。そして、切れたように、チッ、と舌打ちをして、私達を睨みつけた。

 

『もう充分だろ! 君は本当に人類の破滅を望んでいるのか!? ……それともそんなに自分に自信があるのかい?』

 

前言撤回。私も人のこと言えないけどコイツ身勝手すぎる。

やれやれと言うように肩を竦めてやれば、それと同時にまた箱に巻き付けられた爆弾が降ってくる。また重りが追加されたのか、かなりの速さで落ちてくるそれを、フリスクは難なく撃ち抜く。またビームが発生したが、それさえもひょいひょいと避けていく。私も体を動かし、何とか避け続ける。

 

*Mettaton.

 

ターンが回る。視聴率は九千百。

 

*You posed dramatically.

*The audience nods.

 

『ははッ、感動的だね!』

「いや、バカじゃないのかお前。滅亡を望むって、そんな訳ないじゃん。私やこの子の家族同然な人達だっているんだ、そんな物は望んでないよ」

 

内心呆れながら、我ながらばっさりと、メタトンの言葉にそう返した。

 

「なら、どうして抵抗するんだ!!」

「は? 生きていたいからに決まってるじゃん。何言ってんの?」

 

至極当然な事を述べれば、メタトンは押し黙る。

 

「というかね。友達でもない『他人』であるお前に、どうして命をくれてやらなきゃいけないのさ。そんな都合のいい話は無いぜ」

「………うるさい!!!!」

 

そう言い切ってやれば、メタトンは激昂し、私に対する憎悪を露にし、睨み付ける。恨まれる謂れは無いんだけどなぁ。

 

『そうさ、ダーリン! 生き残るのは僕か君か、どちらか一人だけ!』

 

 

そんなことは無いと思うけど。

などと思っていると、メタトンは言葉を続ける。

 

『……だけど君だってもう勝負の行方は分かってるだろう?』

「あぁ、勿論だ」

 

だって、こっちには『Player(カミサマ)』が居るんだから。

私は痛みが走る体を動かし、ナイフを構える。

 

『しっかり目に焼き付けておくんだ、人類のスターの実力を!!』

 

カメラ越しに見ているモンスター達に語りかけるように、メタトンは大声でそう言った。すると、メタトンの腹部から、爆弾付きのソウルが飛び出してきた。

 

「!!」

「おっと。君の相手は私だ」

 

携帯を構えたフリスクに向かって脚を振り上げて突っ込もうとしたメタトンの前に立つ。……いや、違うか。目の前にいるコイツはただのボディーだ。目に覇気がない。

 

「フリスク、そっちは任せた! 私はコイツ何とかする!」

「オッケーお姉ちゃん! 任せて!」

 

フリスクの返答を聞いてから、私は改めてボディーの方に向き直った。

……一つだけ仮説を建てると。メタトンは元々ゴーストだ。だが今私の目の前に居るボディーに乗り移って、元々ソウルだけだった存在としての形からソウル本来の形――まぁ、ハートに形が固定された筈だ。まぁ暴論ではあるけど、これが適用されたなら、メタトンの本体は今フリスクが対峙しているソウルがメタトンの本体ってことになる。それでもコイツが動いてるってことは……遠隔操作が効くのか、それとも自動操縦機能が盛り込まれてんのか……どちらにせよ腹立つこと限りないな。

そう仮説を建てながら、私はボディーに向かって笑顔を作った。

 

「ほらかかってこいよ、この木偶人形」

「………」

 

私の挑発にも応じず、無言で連続蹴りを繰り出してくるメタトンボディーに一抹の不気味さを感じながら、蹴りを当たらないようにいなし、受け流していく。

 

「絶対にここは、通してやらない」

「…………」

 

そう言って、睨み合うこと、少しの間。

 

ヒュッ

 

私の横を何かが通り抜ける。そしてそれは、メタトンのボディーの腹部に、すっぽり収まった。

 

バチバチバチッ!!!

 

その瞬間、激しい音を立てて、メタトンの体の足の付け根から、火花が上がった。そして、

 

ガシャンッ!!!!

 

メタトンの脚が、取れた。

 

…………!!! 『MERCY』条件(視聴率)!!!

ばっと、私は焦りながら空中に表示されているグラフと、『視聴率』の数字を見る。

 

 

 

その数字は、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

寸での所で、一万を越えていた。


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