守りたいもの   作:行方不明者X

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Neutral Ending:Epilogue

――――――――――……とある夏の終わり。

 

 

『登ってはいけない』と人々の間で言われ続けているEbott山の山頂に、美しく紅く輝く夕焼けに照らされて佇む人影が、二つ。

 

 

夕陽に照らされるその人影は、その服装を見れば、一見大怪我を背負った少年たちの様にさえ見える。

 

 

だが、不思議なことに、彼女達自身に傷はない。

 

 

…………片方には、包帯と無数の傷痕が垣間見えるが。

 

 

「本当に出られちゃったよ。弾かれるかと思ったのに」

 

 

誰に言うでもなく、大きい人影が夕陽を眩しそうに見ながら呟く。

 

 

「そうだね。本当に良かった」

 

 

その言葉に、同じく夕陽を見ながら心の底から安堵したような声で、小さい人影は返す。そのまま暫く、彼女達は黙って夕陽を眺める。

 

 

片方は計画を抱え。

 

 

片方は次は必ず、()()この夕陽をもう一度見る決意を胸に。

 

 

「………帰ろうか。帰ったら院長からの説教だからね、覚悟しときなよ? 私は今回庇ってあげないからね?」

「うわ……うん、反省します」

 

 

少ししてから、彼女達はじゃれあい、助け合いながら、その山を下山していく。

 

 

それぞれの思いを、重く引き摺って。

 

――――――――――――――――――――

 

 

キィ

 

 

美しい満月の輝く深夜だった。

 

 

窓から差し込む幻想的な満月の光で満たされている部屋の扉を開けて、黒い髪の少女が入る。

 

 

ここは、この一見少年にも見える少女の部屋。

 

 

パタン、と静かに扉が閉じられ、扉についている鍵がかけられる。

 

 

彼女は慣れた動作で部屋の隅の机の前に移動し、音を立てないように備え付けの椅子を動かし、机下の空間に潜り込む。そして、脆くなっていた壁の一部を利用して作った秘密の空間の入口を塞ぐ壁を剥がし、中の虚の中に入れておいたモノを取り出す。

 

 

這い出てきた彼女の手に握られるそれが、月明かりに照らされて光を反射する。

 

 

それは、一年半前、彼女と、その妹が冒険した際にとある女性から譲り受けた携帯だった。

 

 

彼女は机に寄り掛かり、慣れた手付きでそれを操作する。

 

 

その手が、ピタリ、と止まった。

 

 

「…………『留守番電話 二件』……」

 

 

彼女が覗き込む画面には、そう通知が表示されていた。

 

 

彼女の顔が、歓喜に、そして少し泣き出しそうに歪む。

 

 

その表示がされるのを、彼女は待っていた。

 

 

ツー………ツー………

 

 

震える手で、彼女はその留守電を再生し、耳に宛がう。

 

 

ツー………プツッ

 

 

そして、月明かりが雲で隠された闇の中で、留守電が再生され始める。

 

 

『………よお』

「……やぁ」

 

 

聞き慣れた声が、彼女の耳に届く。

 

 

『誰かいるか……? まぁ……ちょっと言いたいことがあってな。お前さんは雪だるまを本当に喜ばせたんだな』

 

 

その言葉で、彼女の脳裏に喋る雪だるまが思い浮かぶ。そして、その雪だるまから、一部をもらったことも。確か、その破片は、今は彼女の妹が持っている筈だ。

 

 

『……それと言いたいことは他にもあるんだ』

 

 

寧ろそっちが本題だろう、と彼女は心の中で思う。そして、その内容に、耳を澄ませた。

 

 

『…………それで………久しぶりだな』

「うん、そうだね。何にせよ、一年半ぶりだもの」

 

 

出られなかったけれど、と彼女は言外に付け足す。

 

 

『こっちの近況報告をすると、女王が戻ってきたんだ。んで、今はこの地下世界を治めている』

 

 

しんと、静まり返った闇の中、留守番電話の声だけが彼女の耳に入る。

 

 

『そして新たにある方針を立てた………「ここに落ちてきた人間は敵としてではなく……友達として接しなさい」、ってな』

 

 

『女王』として返り咲いた女性の性格を思い出し、あの人らしい、と彼女は思う。

 

 

『何にせよ、多分それが一番なんだろうな』

 

 

首だけを動かし、彼女は小さく同意する。

 

 

『王が集めたソウルは……どうやらどっかにいっちまったようだ。で、あー、あの計画は当分の間は実行できなくなったわけだ』

 

 

彼女は自然に還ったのだろうなと見当をつける。そして、彼の言う『当分』とは、気が遠くなるほどの年月なのだろうと、何となく察する。

 

 

『だがどれだけ皆が王の事でひどく心を痛めても……』

 

 

そこで、声の調子が、少しだけ変わる。

 

 

『……そしてどれだけ俺達の自由への道が険しいものであろうとも……』

 

 

何処か諦感してしまったような声で、声は言う。

 

 

『女王は俺達が希望を手放さないように最善を尽くしている』

 

 

そこで、声は言い淀む。

 

 

『で、その、まぁ………』

 

 

少ししてから、声が続く。

 

 

『………こっちだって諦めない、だから……お前さんも諦めるなよ、いいな? どれだけ時間がかかるか解ったもんじゃないが……いつかはここから出てみせるのさ』

「………君に言われると、ちょっとあれだな。『おまゆう』感があるな」

 

 

ぽつりと、彼女は返答しない声に対してそう溢した。

 

 

『SANS!!! 誰と話してるんだ???』

 

 

不意に、彼女の耳に、また懐かしい声が届いた。

 

 

『いや、誰ともだ』

 

 

いや誤魔化し方雑だな、と始まった電話越しの彼らのコントに、彼女は口には出さずに突っ込む。

 

 

『なに!?? ダレトモ!? そのダレトモってやつと俺様も話していいか???』

 

 

電話越しで行われる会話に彼女は耳を傾け続ける。

 

 

『ああ、好きなだけ話しな』

 

 

その言葉の直後、携帯の受け渡しをしているのか、少し間が開く。

 

 

『あれ、待てよ??? この番号は俺様も覚えてるぞ!!!』

 

 

嬉しそうな声が、彼女の耳に大音量で響く。

 

 

『よく聞け、人間! 俺様、グレートなPAPYRUS様は今……王国騎士団の団長なのだ!』

「………うん、知ってるよ」

 

 

彼女は、大音量の声量に嫌な顔せず声の主に返す。

 

 

『俺様が夢見てきたことそのものだ……違うのは、戦わずにお花に水やりをするだけだって事だな。そういう非常にビミョーな変化はある』

 

 

自分が思い描いていた騎士団長像と違ったらしく、声がほんの少しだけ落胆したものになる。

 

 

『そして、俺様たちはALPHYS博士の手伝いもしてるんだ!』

 

 

彼女は何も言わず、耳を傾ける。

 

 

『彼女は俺様たちがここから出る方法を探してくれている。UNDYNEも手伝ってるんだぞ! けど、正直、UNDYNEの手伝い方っていうのは……なんていうかな……爆発が付き物というか』

 

 

それ逆に邪魔してないだろうか、と彼女は思う。

 

 

『けどまぁ、ALPHYSもUNDYNEが居ると楽しそうだけどな』

「はは、恋のパワーって凄いなぁ」

 

 

思わず、彼女の口からそう溢れ出た。

 

 

『ああっと?!』

 

 

そこで、ゴッという鈍い音が電話越しに伝わる。

 

 

『おい! 今何してるんだ、ヒヨッ子!? ンガアアアアア!!』

 

 

そして間もないうちに、ゴリゴリという音とともに、豪快な女性らしい声が聞こえる。

 

 

『電話をグリグリするのはやめてください』

 

 

先程喋っていた声が、敬語で女性の声に懇願する。彼女の脳裏に簡単にその様子が思い浮かんだ。

 

 

『おい、どっちが上司か忘れたのかぁ!?』

『俺様。』

『………あっ……そうか、そうだな!』

 

 

先程の声と一瞬本気で忘れていたらしい女性の声で行われるコントにくすりと笑い、彼女は耳を傾ける。

 

 

『あたしは王国騎士団の団長を辞めたんだ』

「うん、だよね」

 

 

本来ならば目が溢れ落ちるぐらい驚くであろう出来事を、彼女は頷き一つで受け流す。

 

 

『まぁ実はな、あたし達はもうこれ以上戦うことはないだろうから……王国騎士団はすっかり解散したんだ。今では、ああ、団員は一人しかいない』

 

 

電話越しの話に、耳を傾け続ける。

 

 

『でも彼はモノスゲー有能なんだぞ』

『ああ!! そうだな!!! こっちに来い!!!』

『スケルトンをつつきまわすのはやめてください』

 

 

電話越しの彼らのじゃれあいが流れる。彼女はそれを、懐かしく感じていた。

 

 

『とにかく、あたしは今Alphysの研究所の助手として働いている………この掃き溜めから抜け出す方法を必ず見つけるんだ!!!』

 

 

声の主らしい決意に満ちた一言を聞いて、彼女はまた笑う。

 

 

『それとな、あたしは女王が新しく作った学校の体育の教師になったんだ。ベンチプレスで子供七人を持ち上げられるんだぞ!? すごいだろ?』

「凄いを通り越してやばいな」

 

 

そこで、ふっと会話が途切れる。

 

 

『………………なぁ。ASGORE王に起こった事については、残念だったな』

 

 

声の調子が落ち、静かな声で言われたその言葉に、彼女の肩がピクリと跳ねた。

 

 

『お前はただお前のやるべき事をしただけだ。お前の所為じゃない、絶対に……』

 

 

此方を元気付けようとする声が、湿っていく。そして、遂にぐず、という鼻を啜る音が彼女の耳に聞こえた。

 

 

『………ああ、ちくしょう。あの方が居なくなって寂しいんだ』

 

 

電話越しの声が、震えている。もう一度、鼻を啜る音が聞こえる。

 

 

『……ええいしっかりしろ、Undyne! くよくよするな!』

 

 

パシン、と軽く何かを叩く音が電話越しに響く。きっと声の主が、己の頬を叩いたのだろう。

 

 

『えっと、後はAlphysがどうしてるかだな』

「うん」

 

 

変わっていく話題に彼女は頷く。

 

 

『まぁ、あいつは今まで通りだ。前より少しこもりがちになった気もするがな。すごく気がかりなことがあるみたいなんだが……だけどあいつなら乗り越えられる! あたしがあいつの傍で支えてやるんだ!!』

「………どうかな。案外人って変われないよ? まぁ、でも君が傍にいるなら、彼女も……」

 

 

電話越しの声に、彼女はそう返した。

 

 

『それが友達ってもんだろう?』

「………うん、それもそうだね」

 

 

電話越しに告げられたその一言に、彼女は頷く。

 

 

『…………なあ。今お前が何処に居るかは知らんが……ここよりマシな場所だといいな』

 

 

不意に言われたその言葉に、彼女は目を見開いた。

 

 

『お前がそこへ行く為に払った代償は大きい……』

 

 

彼女は、耳を澄ませる。

 

 

『だから、どこにいるとしても………お前は幸せになろうとしなくちゃいけないんだ、いいな!? あたしたちの為に!』

「……はは、ありがとう。心配しなくても、そのつもりだよ」

 

 

電話越しに、彼女は少し笑って返す。

 

 

『苦しんだ甲斐があったと分かれば気も晴れるというものだ』

 

 

そこで、声の調子が上がる。

 

 

『あたし達がついてる! みんなそうだ! 女王だって!』

 

 

会話がぷつっと、唐突に途切れる。

 

 

おーーい!! ちょっと待ってろ!!』

 

 

そこで、声が少し遠くなる。

 

 

TORIEL! TORIEL! ちょっと電話で……?

 

 

優しい女性の声のようなものがもっと遠くから彼女の耳に聞こえた。

 

 

『…………おや、今は手が回せないってさ』

 

 

少し残念そうに声の主は言う。

 

 

『でももし彼女が誰と話してるか知ったら……』

『電話を握ったまま数時間は離さないだろうな』

 

 

弟の方の言葉を、兄の方が引き継ぐ。

 

 

『俺様達の「慈悲」で彼女の長電話から「救った」のだな!!』

 

 

ガタガタと、何かが擦れるような音がする。

 

 

『だがいつでも電話しろよ、いいな!? 彼女も喜ぶぞ!!』

 

 

豪快な女性の声が、そう言った。が。

 

 

『あ、しくった。こいつの電池もうすぐ切れちまうぜ』

 

 

電話越しに言われたその言葉に、賑やかなブーイングが飛んだのが聞こえる。

 

 

『んじゃ、名残はつきないけどよ、でも……』

 

 

一瞬言葉が区切られ、続けられる。

 

 

『また会おうぜ、いいな、ダチ公?』

 

『今はさよならだ!』

 

『じゃあな、ガキんちょ!』

 

 

―――――………ガチャン……

 

 

それぞれの別れの言葉を最後に、留守番電話は途切れる。

 

 

名残惜しそうに彼女は携帯を耳から離し、少しの間見つめる。

そして、もう一つの留守番電話の再生を始め、耳に宛がった。

 

 

ツー………ツー………プツッ

 

 

『……あー、よお。さっきぶりだな』

 

 

暫くして、先程も聞いた声が再生される。

 

 

『今どっちが出てるのかは分からないが……もし、今電話に出ているお前さんがチビッ子なら、lilyに代わってくれ。ちょっと、大事なメッセージがあるんだ。今から一分待つ。その間に代わってくれ』

 

 

宣言通り、そのまま暫くの間沈黙が続く。

そして、きっかり一分後、その声はまた口を開いた。

 

 

『代わったな? それじゃあ、改めて………よぉ、Lily』

「やぁ、Sans」

 

伝言越しの共犯者に、彼女は返事を返す。

 

 

『お前が言っていた通り、「電話をかけなくちゃいけない」っていう思い(強迫観念)に従って、電話をかけたぞ。結局かけるのに一年半もかかっちまったが………これで、トリガーはもう引いたんだよな?』

 

 

伝言の問いには答えず、彼女はただ黙っている。

 

 

『………計画では、こっから先俺に出来ることは無くて、あとは、お前が全部上手くやるっていう話だったな』

 

 

呟かれたその言葉に、彼女は何も返さない。

 

 

『………正直な話、俺はまだその計画がいまいち信用できねぇよ』

 

 

共犯者は少し間を開け、彼女にそう告げる。

 

 

()()()()()。そして()()()()()()()()()()()()。そんなに上手く、事がいくはずがない。そんな計画、危なすぎてとても実行出来るもんじゃねぇよ。

………本来ならば、な』

 

 

だが、と共犯者は言葉を続ける。

 

 

『この世界が続いていくには、俺達モンスターが本当に太陽の下で生きていくためには、お前が妹を守るためには、その狂ってるとしか言えないその計画以外に、方法は無いんだろうな』

 

 

そこで、また沈黙が流れた。

 

 

『………なぁ、Lily。本当に、その計画しか最善策は無かったのか……?』

 

 

そして、彼女に問いかける言葉が、流れた。

 

 

『………これはお前は知らないと思うから教えとくがな。お前が与えた影響は、結構凄まじいもんだぜ?』

 

 

そこで、一瞬言葉が区切られる。

 

 

『まずTorielは今までのタイムラインじゃ沈みがちな女王だったのが、「いつかまた会えるわ」って言ってせっせと仕事に励んでる。

 

Papyrusはパスタが食べられるもんをたまにだが出すようになった。その「たまに」はお前にPapyrusが怪我させた時に妹の方と作ったときのことを思い出して作ってる。その時の顔が、どんだけ寂しそうな顔してるのか分かるか?

 

次に、Undyneだ。アイツは猪突猛進だったのが、一度立ち止まって「本当にこれが正しいのか」を考えるようになった。お前に凄い剣幕で怒鳴られたのが忘れられねぇんだってよ。

 

その次にAlphys。アイツはTorielとは逆にもっとこもりがちになって、沈みがちになった。お前の言葉が、胸の罪悪感をもっと助長させてるみたいだぜ?

 

Mettatonもだ。お前に返された鍵を使って、従兄弟やShyrenと和解して、今じゃ音楽番組まで持ってるんだ。

 

………どうだ、ざっとあげただけで、お前の言葉で従来のタイムラインから変わったやつがこんなにいるんだぞ』

 

 

勿論俺だってそうだ、と、伝言は続ける。

 

 

『一番変わったのは、お前の妹だ。

 

俺が見てきたタイムラインでは、『Frisk』はお前の妹みたいに、一見子供っぽくて、大人っぽいような人間じゃなかった。高々十歳の子供じゃ有り得ない程、大人に近すぎる。………こんなに差が生まれているのは、それは一概に、お前の影響を近くで受け続けているからだろうと、俺は思うぜ』

 

 

だから、と伝言が言葉を続けようとした瞬間に、

 

 

プツッ

 

 

彼女は、伝言を切ってしまう。

 

 

「…………やれやれ、何を言っているんだか」

 

 

そして、暗闇の中で彼女は顔を歪める。

 

 

「これ以外に策が無いのかって……あるにはあるけど、それは最悪過ぎる方法だからこの道をひた走ってるのに」

 

 

誰に言うでもなく、彼女は闇に言う。

 

 

「『これ以外に道はないのか』。あぁ、『無い』とも。少なくとも、私の頭ではこれしか浮かばなかった。とっくにそれを私は理解してるのに、何で今更引き留めようとしてんだろうなぁ、Sansは。………まぁ、十中八九、同じ上の立場にいる人として私を憐れに思ったからだろうけどさ」

 

 

そこで、長い間かかっていた雲が切れ、月明かりが再び部屋に差し込んだ。

 

 

「………そんな憐れみなんて、されちゃいけないし、いらないのに」

 

 

月明かりに照らされて、彼女の顔が、浮かび上がる。

 

 

その顔は、

 

 

「―――――――もうとっくに、私の持ちうる全てを使ってあの子を守り抜く決意は、固まっているのにね」

 

 

誰よりも美しく、

 

 

「―――そして、何より」

 

 

そして誰よりも、狂気に満ちた、

 

 

 

「……―――――あの子が笑って未来を生きていくためなら、私自身はどうなったっていいのにね」

 

 

 

笑顔だった。

 

 

「―――――――まぁ、それはいいや。今朝のFriskが何か挙動不審だったし、きっともうすぐ世界は巻き戻るんだろう。あの発言は無かったことになるんだろうから、聞かなかったことにしよう」

 

 

クスクスと、机に寄りかかったまま、彼女は笑って瞼を閉じる。

 

 

「………――――――」

 

 

何かを呟いて、彼女は口を閉ざした。

 

 

辺りに静寂が満ちる。

 

 

部屋に掛けてある時計は、二十三時五十九分を指している。

 

 

その時計の秒針が進む音に、耳を澄ます。

 

 

カチ カチ カチ カチ カチ カチ……………

 

 

そして。

 

 

 

カ チ ン

 

 

その長針が『十二』にぴったり重なったとき。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女の意識は、ブツリと途切れた。


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