※支離滅裂です
【Lily】
先程のベッドルームにまで戻ってきて、右に曲がってセーブポイントを通り越して、また奥に進む。部屋から戻ってくる合間にフリスクから返してもらった懐中電灯で先を照らし、警戒し続ける。
「お、パネルあったよ」
「本当?」
道の先で曲がり角から何かが出てきやしないか警戒しながら索敵をすると、左側にパネルを見つけた。辺りに何もいないことを確認してからパネルに近付くと、ピッという音を立てて内容が表示される。
『報告書15
この研究は行き止まりにぶつかってしまったようだ……
しかし、少なくともハッピーエンドにはなったのだろうか……?
私はソウルと器をアズゴア王に送り届けた。
そして被験者の家族を呼び寄せ、被験者は皆生きていると伝えた。
明日には皆、家族の元に帰ることができるよ:)』
「…………皆、帰ることが出来たんだ」
その内容を読んで、フリスクはそう呟いた。
「みたいだね。でも多分……」
「言わなくてもいいよ。……多分、これだけでは終わらなかったんだろうね」
私がそう言葉を返そうとすると、フリスクは私の言葉を遮った。
「じゃなきゃ、アルフィスは最初から『真実を言う』だなんて言わないもん」
『これだけでは終わらない、終わるはずがない』
そう察していたらしいフリスクは、目を見開く私に決意に満ちた表情でそう言った。
「あぁ、嫌な予感がするなぁ」
「……当たらないと良いけどね」
フリスクに対して白々しい言葉を投げ掛け、次のパネルの前に進む。
内容は、短かった。
『報告書16
そんな まさか いけない』
「………これだけみたいだ」
酷く短い、心無しか緊迫感を滲ませるその内容を見て、ゲーム通りの緊急事態が起こったらしいと察する。
「………やっぱり、研究で何かが起きたみたいだね」
フリスクも何かが起きたと察したらしく、悲しそうな顔でパネルを見つめる。
「だね。今までの報告書の内容から考えると、十中八九甦ったモンスター達に何かが起こったんだろうね」
「お姉ちゃんもそう思う……?」
「うん」
フリスクの言葉に頷くと、だよね、とフリスクは一言言って顔を伏せた。
「……………ねぇ、お姉ちゃん。ぼく、いま、一番嫌な想像しちゃったかもしれないんだけど」
「……ん?」
暫くそのまま顔を伏せていたフリスクが、突然顔を上げ、不安そうな目を私に向ける。
嫌な予感がした。
「…………今まで出会ったここのモンスターって……〈決意〉の研究の為に連れて来られたモンスターがどうにかなっちゃった姿だったりしないよね……?」
フリスクの口からその言葉が飛び出て、体が硬直する。
――――……賢い子供の勘とは、本当に恐ろしいモノだ。まさか、真実の大部分に気付いてしまうなんて。
該当する内容の報告書を見るまでは知ってほしくなかった事実に勘づいてしまったフリスクは、不安そうな顔で此方を見ている。
「…………そうかもね」
その言葉に、私は白々しい返答しか返せなかった。
「ところでどうする、どっち行く? このまま奥に進むか、ちょっと戻ってあっちいくかなんだけど」
「! ………んー……そうだなぁ」
話を強引に逸らし、ゲームだった時の右の道に進むか左の道に進むかを問うと、フリスクは目を見開いてから、悩んだ様子を見せる。そして、左側を見た。
「先に奥に行きたいな」
「分かった、じゃあ行こうか」
パネルの前から離れ、先に進んでいく。少しすると、右側の壁に部屋の入口がぽっかりと口を開けていた。そう言えばここにも鍵があるんだったかと思い出し、ちょっとげんなりする。
「あ、部屋……お姉ちゃん、先にこっち進もうよ」
「……うん、いいよ」
確かここ私が一番ビビった所じゃなかったっけと思いながら、フリスクの提案に頷き、フリスクを先頭に部屋の中に踏み込む。
「………え」
部屋の中は一本道になっていた。
その突き当たりに、照らされるくすんだ桃色の布が見えた。
ゆらゆら、ゆらゆらと、緩慢な動きで揺らめいている。
「ひっ」
『布越しに何か居る』という事実を理解したらしいフリスクが、小さく悲鳴を上げた。布越しに見える影が本来危険なモノではないと知っている筈の私も、自然と身構えていた。
「お、お姉ちゃん、彼処に、なんか……!」
「あぁ、居るな。………どうする、私が調べてこようか?」
怯えて抱き付いてくるフリスクの背中を撫で、落ち着かせながら一応問う。流石にこんなに怯えているフリスクに取りに行かせる訳にもいかない。
……そういえば、ここはフリスクが歩くのが遅くなる場所だった筈。それは『フリスク』が怖いと感じているからだとかいう考察がどっかにあったな。
「…………………いや、ぼくがいく」
暫くの沈黙の後、フリスクは小さな声でそう言った。
「………本当に? 怖いなら私が……」
「ぼくがいきたいの。ううん、ぼくが行かなくちゃ。そこまでお姉ちゃんにやってもらうつもりはないよ」
『Player』の意志に影響されているからか、それとも本当に自分自身を奮い立たせたのか少々判断しにくいが、フリスクはそう言って私から離れ、震える足で恐る恐る布へと近付いていく。
コツ
コツ
コツ
コツ
「はっ、はっ、はっ…………」
一歩一歩、進めば進む程、フリスクの吐息が早くなっていく。
コツ
コツ
コツ
コツ
コツ
コツ
コツン
やはり怖いのか、ガタガタと震えながらもフリスクは布へと手を伸ばし、そして。
シャッ
勢い良く、一気に横にスライドさせた。
そこには。
何も、居なかった。
「…………あ、れ?」
襲われる、と身構えていたらしいフリスクが、顔を上げてよく見ても、何かがいる様子は無かった。その様子に、安堵する。何も無くて、良かった。
「……………?」
体の震えを止め、フリスクは何かを小さく呟いて首を傾げた。そして、ふと風呂の中を見て、そして中に手を突っ込んだ。そして、振り返って帰ってくる。
「大丈夫だった? なんかあったの?」
「鍵があったよ!」
何事もなく帰って来たフリスクに問うと、フリスクは握っていた手を開いて、鍵を見せてくれる。それを懐中電灯で照らすと、鈍く緑色に光を反射した。
「ほんとだ、鍵だ。緑色……は見掛けてないな。無くして使えないといけないからキーチェーンに引っ掛けときな」
「そうする」
フリスクは私の言葉に頷き、携帯を取り出して付属のチェーンに鍵を取り付ける。黄色の鍵と擦れ、チャリ、という音が小さく鳴る。
「それじゃあ戻ろうか」
「うん」
戻ってきたフリスクの手を引いて部屋から出る。右に曲がり、足元を照らしながら奥を目指す。何もない静かな廊下を進むと、開けた空間に出た。
「………なんだ、あれ」
目に飛び込んで来たのは、大きな装置、のようなモノ。
「……装置、かな……?」
「多分」
後ろのフリスクにもそれは見えていたらしく、短いやり取りをして、懐中電灯で照らしながらよくそれを観察する。山羊の頭蓋にも似た形のそれは、よく見れば埃が積もっている。かなり長い間使われていないことが容易に分かった。
そこで、
ぷつん
「あっ」
「えっ」
何の前触れもなく、唐突に懐中電灯の光が消えた。
「おいおい、嘘だろ………ここで電池切れとか勘弁してくれよ本当に」
「そ、そんな………電池、もう一つ、あるんだよね?」
「………ある筈だけど、ちょっと待って」
その場にリュックを下ろし、中を漁る。確かポーチの中に一個忍ばせておいたと思ったんだが………
中からポーチを探り当てて、中を見る。
「…………お、あったあった」
暗くて見辛い中言った通り一本電池を見つけ、取り出して懐中電灯の電池入れを開けて交換する。蓋を閉めると、光が灯った。
「あー……また古いやつだったみたいだ、ごめん」
「いや、点くだけマシだよ、大丈夫」
どうやら古い電池を持ってきてしまったらしく、少し心許ない光が懐中電灯から出ている。新品かちゃんと確認してくれば良かったと後悔しつつ、ポーチをしまってリュックを背負う。
「よし、電池問題は解決したし、そこにセーブポイントがあるからセーブしてくるよ」
「ん、分かっ………!!?」
そう言って、
だってそのセーブポイントは、
「フリスク、待て、そのセーブポイントはッ」
「へ?」
私の声掛けも一瞬遅く、フリスクはセーブポイントに触れてしまう。
その瞬間。
――――――――――本物のセーブポイントであればただその場に静止しているだけの光が、ぐるりと、回った。
いや、『振り返った』と言った方が、きっと正しいのだろう。
「…………え」
驚くフリスクに向かって、その光は、
本来、見える筈のない笑顔に、ぞっと背筋が泡立った。
その瞬間、光を模していたそれは肥大化し、ヒトガタのような形を取る。
恐怖で動けないのか動かなくなったフリスクに駆け寄って掴み、その場を離脱しようとした瞬間、世界が白黒に切り替わった。
※紹介するとか言っといて紹介していなかった支援絵があったのでここで紹介させていただきます。黒狼天狗様本当に申し訳ありませんでした。
【挿絵表示】
黒狼天狗様からいただいた修正版です。フリスクが笑ってる……! 可愛い………
本当は下弦ちゃん様からいただいた支援絵も紹介したいのですが、許可を取り忘れるという大失態を犯した為延期させていただきます。お許し下さい。
これからも本作品をよろしくお願いいたします。