守りたいもの   作:行方不明者X

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※キャラ崩壊注意

※支離滅裂です


16.True(真実)

【Lily】

 

部屋の中に入ると、狭い小部屋の中にぽつんと、装置があるのが見えた。フリスクを追い越してスロットの色を確認すると、鈍く光る緑色が見えた。

 

「お、あったあった。フリスク、緑色みたいだよ」

「ほんと? じゃあ、嵌めちゃおっか」

 

後ろのフリスクに声をかけると、持っていたメモを床に置き、フリスクは此方にやってくる。そして携帯を取り出してキーチェーンに取り付けられている緑色の鍵を外して、穴に嵌め込んだ。カチ、という音を立てて鍵は穴に嵌まり、作動し始めた。

 

「これでよし、あとはさっきの青い装置だね」

「そうだね。さっさと行こうか」

 

そう言いながら操作を終えたフリスクと部屋を出ようとした、その瞬間、

 

ふっと、懐中電灯の光が消える。

 

「…………えっ、嘘でしょ」

 

目の前で起きた現象が信じられなかった私は、思わずボタンを連続して押して、点け直そうと試みる。が、現実は無情で、カチカチと虚しい音を立てるだけで、懐中電灯の光が灯ることはなかった。

 

「えー………マジかよ、そんなに残量無かったのかさっきの電池」

「………つかなくなっちゃった?」

「うん、もうダメみたい」

 

心許ない光だったとはいえ、確かに明るかった光が消えてしまったからか、フリスクが不安そうに腕にしがみついてくる。その頭を撫で、出来るだけ優しい声を心掛けて声をかける。

 

「………大丈夫だよ、多分もうここには驚かしてくるモンスターはいないさ。まぁ、居たとしても私が何とかするからさ、進もうよ。ね?」

「………………うん」

「よし、いい子だ。じゃあ、行こうか」

 

頷いてくれたフリスクの片手をしっかりと握り、腕に引っ付かせたまま薄暗い研究所の中を進んでいく。なるべく足元に気を配り、無いとは思うがそれでもバタフライエフェクトが起こって襲ってくるモンスターがいる場合を考えて直ぐに対応出来るように周囲への警戒は怠らずに、フリスクの歩みに合わせてゆっくり進む。それでも確実に進んでいき、セーブポイントの光の前までやってきた。

 

「あ、セーブ……」

 

暗闇の中でも尚明るく光るその決意に、フリスクは私から離れて近寄っていく。セーブを行うらしいな、と判断し、その場で待機する。

 

「………お待たせ、行こう」

「あぁ」

 

少しすると、空中で手を彷徨わせていたフリスクが光の前から戻ってきた。そして、また先程と同じように私の手を繋ぎ、腕にしがみつく。可愛いなぁと思いながらまた歩幅を合わせて歩き、花の部屋へと足を踏み入れる。また、花の匂いが鼻を擽った。

 

「…………」

 

歩きながら、植木鉢に一本一本植わっている無数の金の花々を見る。

………これで、あの子は………

頭に浮かびかかった考えを振り払い、先を進むと、直ぐに青い装置があった部屋に辿り着いた。

 

「………ここでちょっと、待っててね」

「うん、分かったよ」

 

フリスクはまた腕から離れ、装置へと歩んでいく。部屋の入り口でフリスクが鍵を外そうとして鳴る小さい金属音を聞きながら、フリスクが鍵を装置に嵌めるのを待つ。

 

カチ

 

という音が小さく響いて耳に届き、装置が作動したのだと悟った。

 

「終わったよ」

「お疲れ様。じゃあ、これであの部屋に入れるね」

「そうだね。……戻ろっか」

 

戻ってきたフリスクと手を繋ぎながら短く会話をし、また歩き始める。無言で道を進むその時間が、私には酷く短く感じられた。

 

「あ、光ってる」

「ほんとだ、開くかな」

「多分ね」

 

大きな扉があった部屋まで戻ってくると、最初は赤いランプしか光っていなかった扉のランプが、四つは全て点灯していた。その状態の扉に近付くと、先程まで全く動く気配も無かったのが嘘のように、シュッという音を立てて、横に開いた。その先は、ぽっかりと闇が口を開けていた。

 

「………開いたな。さ、行こうか」

「…………うん」

 

フリスクと短くやり取りをして、中に入る。

 

「………? あれ、ここって、エレベーター……?」

 

薄暗い廊下を進んでいくと、不意に明るい部屋に出る。どうやらこの部屋だけは非常灯が作動しているらしく、いやに明るかった。自分の目が暗いところに慣れていた所為もあるんだろう。その部屋を見渡したフリスクが、不思議そうにそう呟く。

 

「みたいだね。動かないみたいだけど」

「だよね」

 

壁にあったスイッチを押してみても、カチカチという音が鳴るだけで何の反応もない。

 

「まぁ、帰りはこのエレベーターに乗っていけば帰れると思うよ」

「そっか。……ねぇ、行こうよ」

 

私の言葉に頷くと、フリスクはしがみついている腕を引っ張り、先を急かしてくる。

 

「そうだね、行こうか」

 

先を急ぐフリスクに頷き、また順路に従って一本道を進む。エレベーターを出て少しすると、また廊下に出た。

 

「あ、パネルだ」

「え? ………あぁ、そうだね」

 

薄暗い中で目敏く壁にパネルがあることに気付いたらしいフリスクの声に吊られて壁を見ると、ぼんやりとだが黒く四角い何かが浮かび上がる。思っていたよりかなり見辛い。本当に電池がちゃんと新しいやつか確認してくるべきだった。

 

「………あれ、表示されないね」

 

いつもは一歩離れた距離でも反応するパネルが作動しないことに驚いたのか、フリスクがそう声を溢した。

 

「あー……多分、この廊下の電源は主電源が担ってるんじゃないかな?」

「あぁ、成る程。だからかぁ」

 

私が首を傾げるフリスクに自分の解釈を伝えてみれば、フリスクは納得したように頷く。

 

「じゃあ、きっと彼処のパネルも見れないね」

「そうだね」

 

奥にあるのであろうパネルを指差しながら言うフリスクの言葉に頷き、パネルに近付いて、触れる。触れた指を動かせば、指に埃がついた。

………これが、この研究所最後のパネルか。

 

「……お姉ちゃん?」

「あ、ごめん。行こうか」

 

私の突然の行動を疑問に思ったらしいフリスクの不思議そうな声で我に返る。何をしてんだか、と自分に呆れながら、足を進め、廊下を進んでいく。そして、廊下の最奥で口を開けていた部屋の中に、入り込んだ。

 

「…………あれかな?」

「だろうね」

 

部屋に入ると、そこそこ広い空間に出る。色々なパイプやら機械やらがある中で、奥に鎮座する一番大きい機械を見る。……あれが、ここでの最後のギミックだ。

足を動かし、電源装置へと近付いていく。数歩動かせば、すぐにその装置の前へとやってこれた。

 

「これを、押せば………」

 

私の腕に絡ませていた腕をほどき、フリスクは私より先に装置の前に立つ。そして、ボタンを押すために手をゆらりと動かした。

 

ガチン

 

何かが作動する、音がした。

 

 

 

それと同時に、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どちゃり。

 

 

 

 

 

 

 

ずるずる、ずるずる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

質量のある何かが、落ちて、引き摺られる音がした。

 

 

 

「!!」

 

 

 

瞬時に振り返れば、暗闇の中で蠢きながら此方へと近付いてくる、白いモノが見えた。

 

 

 

 

ずりずり ずり、ずり ずる ずるずる

 

 

 

 

不規則な速度で近付いてくるそれを、直ぐにアマルガメイツであると判断する。

 

 

 

 

「ひっ……!」

 

 

 

 

後ろで、アマルガメイツが此方に近付いてくることに気が付いたらしいフリスクが、怯えた声を出した。

フリスクを背中に隠し、出来るだけ近付いてくるアマルガメイツと距離を取ろうとするが、後ろに逃げ道は無い事を思い出し、思わず舌打ちをする。

 

 

 

 

 

―――――――ねぇ

 

 

 

 

おなかすいたよ

 

 

 

 

ごはん ごはん

 

 

 

 

ねぇ ねぇ

 

 

 

 

 

何故か、ねだられているような声が聞こえた。とても幻聴とは思えないそれは、目の前のアマルガメイツから発されていると気付く。

 

 

 

 

 

「………私は餌じゃねーぞ」

 

 

 

 

 

そう返しながら、アマルガメイツを睨み付ける。

 

 

 

 

 

 

―――――――おなかすいた おなかすいた

 

 

 

 

 

 

それでも、ソイツらは亡者のようにゆらゆらと揺らめきながらただ空腹を訴えてくる。

 

 

 

 

 

 

「お姉ちゃん………ッ」

 

 

 

 

 

震える手で、フリスクは私の手を掴んでくる。

 

 

繋がった手をちらりと見て、そして目の前に迫ってきたアマルガメイツを見て、私は覚悟を決め直す。

 

 

そして、此処で一度も使わなかったポケットのナイフに、手を伸ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと! 待って!!!」

 

 

 

 

 

不意に、大きな声が響く。

 

 

 

突如響いたその声に、反射的に体が跳ねる。

 

 

 

ピタリとアマルガメイツの動きが止まり、後ろを振り返った。

 

 

 

それに乗じて、先を見ると、そこには―――………

 

―――――――――――――――――――――

【Alphys】

 

 

「………Alphys?」

 

 

走ってきたうえに、慣れない大声を出したからか、喉が少し痛い。私の先程の大声に驚いて目を見開き、私を見る大きい方の人。その目線から逃げ出したくなるのを堪え、私は彼女達を襲おうとしていたAmalgamatesに駆け出し、近寄る。

 

 

「いま君たちにご飯持ってくるから、ね!?」

 

 

早口で彼らにそう言えば、彼らは機嫌を良くしたのか、笑顔を浮かべて彼女達から離れていった。

 

 

「…………」

「…………」

「…………」

 

 

彼らが去ると、安全になったのを察したのか、小さい方の人が大きい方の人の背中から出てくる。

気まずい沈黙がその場に流れた。

 

………って、これじゃダメじゃない!

 

そう自分を叱咤して、私は顔を上げて警戒を解いた彼女達を見る。

 

「………ごめんなさいね。あの子達時間通りにご飯を食べられないとおねだりが激しいの。きっと、あなたたちの持ってるポテチに反応しちゃったのね、ええと……」

「……いや、助かったよAlphys。もう少し君が来るのが遅かったら、私達どうなってたか……ありがとう」

 

私が何とかそれだけ言うと、大きい方の人は浮かべていた無表情を崩して、小さく微笑んだ。その笑顔に、無性に嬉しくなった。

間に合って良かったと、心の底から思えた。

 

「い、いいのよ! 何も大したことはしてないわ!」

「えぇ、そうかな? 普通はあんなきついこと言われた相手なんて助けないと思うけどね」

 

そう言って、大きい方の人は、はは、と笑う。

 

「………とにかく! 電源が落ちちゃったから、私はそれを戻しに来たんです!」

 

その顔が見たくなくて、私は話を本題に無理矢理逸らした。

 

「でもどうやらあなたが先に来てくれたみたいですね」

 

逸らしそうになる目線をどうにか逸らさないように、彼女達を見つめて、話を続ける。

 

「多分、あなたにはすごく面倒をかけてしまったかも……」

「うん、結構大変だった」

 

大きい方の人は、私の言葉に迷わず頷いた。

 

「やっぱり、そうですよね………で、でもあなたが助けに来てくれてとても嬉しいわ!」

「……そう」

 

一瞬、またいつものように落ち込んでしまいそうになる。それを振り払って私が声を大きくして話を続ければ、二人は目を丸くして私を見る。

 

「………それで、私達は真実を知りにきたんだけど、話してくれるんだよね?」

 

その言葉に、思わず体が跳ねる。

 

「……えぇ、話すわ」

「………そう、じゃあ、お願い」

 

覚悟を決めて頷いた私を見て、そのまま黙り込んだ二人に、私は自分の思いを打ち明ける。

ここまで真実を知りに、追いかけてきてくれた人達に。

 

「言った通り、私は怖かった……もう戻れないかもしれないって………あ、でも、それは全然あの子達の所為じゃないんです!」

 

私が大きな声でそう言えば、彼女達はじっと私を見て口を噤む。

どうやら、私の話を聞いてくれるらしい。

勝手だけれど、そう判断して、私は自分の思いを言葉にする。

 

「私が心配していたのは、自分が恐ろしさのあまり……真実を言えなかったり………ここから逃げ出したり、あるいは……卑怯なことをしちゃうかもって」

 

私は言葉を続けようとする。

でも、そこで一瞬、私は自分が言おうとしている事を本当に彼女達に伝えていいのか、戸惑ってしまう。

 

 

これ以上嫌われてしまわないか。

 

 

これ以上離れていってしまわないか。

 

 

そんな思いばかりが、頭を過る。

 

「……ああ………私………」

 

 

 

……けど。

 

 

 

 

「ちゃんとあなたに打ち明けなきゃ」

 

 

 

 

他でもないこの人達に、『真実を話す』と、覚悟を決めたんだ。

 

 

 

 

そう思い直して、言葉を続ける。

 

 

「………多分ご存知の通り、王様はソウルの本質を研究するように私に尋ねたの」

 

 

ソウルが痛いほど跳ねる。

 

 

震える唇で、何とか言葉を捻り出す。

 

 

「研究の中で私は、〈決意〉と呼ばれるエネルギーを抽出した」

 

 

癖で逸らしてしまった視線を、もう一度上げて、しっかりと彼女達を見る。

 

 

「それを瀕死のモンスターに注入し、死後もソウルを存続させようとした。……でも、実験は失敗した」

 

 

そこまで言って、自分の脳裏に浮かぶのは、あの日のこと。

 

 

「見ての通り、モンスターの身体は人間と違ってとっても不安定……」

 

 

自分が犯してしまった、罪。

 

 

「純度の高い〈決意〉は、物理的問題を引き起こして」

 

 

集めたモンスター達が、苦悶の表情を浮かべて、どろどろに溶けていって、

 

 

「彼らの身体はみるみる溶け始め、元の形を保てなくなってしまった。あっという間に、全ての被験者が一斉に溶け合って……」

 

 

そして、

 

 

「この有様よ」

 

 

自分でも思ったより、冷たい声が出て驚く。

やっぱりまだ、自分をあんまり好きになれていないみたいね。

 

 

「皆を見て、私思ったの………」

 

 

昔の自分が取った行動に、今でも腹が立つ。

 

 

私は罪から目を背けて、

 

 

「こんなこと皆の家族に言えないって」

 

 

糾弾されることから、逃げようと、したんだから。

 

 

「誰にも言えない」

 

 

でも、それでも、その時はそれしか私には無かったのと、誰に言うでもない言い訳を考えてしまう自分に呆れてしまう。

 

 

「誰が何と私に尋ねてこようとも」

 

 

自分が、嫌になる。

 

 

「私はあまりにも恐ろしくて仕事が手に付かなくなった、そう……私がしてきたことは、全て取り返しのつかない失敗ばかりだったんです」

 

 

―――………でも。

 

 

「………でも」

 

 

それでも。

 

 

「たった今、私はさっぱり心を入れ替えたわ」

 

 

そんな嫌な自分を変えたいから。

 

 

「皆に私がしてきたこと全てを話そうと思っているの」

 

 

少しでも、『自分』を好きになりたいから。

 

 

「………簡単なことではないでしょうね。正直になって……自分を信じるのは……」

 

 

分かりきったことを口に出して、思わず目を床に落としてしまう。

………実際、今でもやっぱり怖い。

今まで散々無視してきた遺族のモンスターに、なんて言われるのか。そして、今の私は、『王室直属科学者』という立場にいるからこそ成り立っているものなのに、その科学者が、とんでもない失敗を、罪を抱えていることが皆に知られたら、皆に何て言われてしまうのか。そればかりが頭の中を支配して、動けなくなってしまう。

 

 

「今までよりずっと足掻かなきゃいけない」

 

 

ただでさえ、今もあんまり自分が信じられないんだもの。

 

 

「それに台無しにしてしまうこともあるでしょう」

 

 

………でも、そんな私を、

 

 

「でもね、心の中には、私の背中を後押ししてくれる友達がいるから……」

 

 

助けてくれる、友人達がいる。

 

 

「だから一人でいるよりずっと楽に立ち直れる筈だって、分かってるの」

 

 

だから、

 

 

「ありがとう」

 

 

色んな意味を込めて、私は二人に頭を下げる。

 

 

こんな所まで来てくれてありがとう。

真実を知りに来てくれてありがとう。

 

 

そして、『私』に踏み出す勇気をくれて、ありがとう。

 

 

そこで、ずるずるという音が聞こえる。頭を上げて周りを見ると、そこには彼らがいた。

……どうやら、待たせ過ぎちゃったみたいね。

 

 

「……さぁ、行きましょう、みんな。もう皆の家に、帰る時間ですよ」

 

 

そう彼らに言って、私はその場から歩き出す。

 

 

「…………ねぇ、Alphys」

 

 

そこで、後ろから中性的な声が聞こえた。

どくりと、ソウルが跳ねる。

 

 

「………なに、かしら」

 

 

呼び掛けに応えて、足を止めて振り返る。見れば、大きい方の人が、私をじっと見つめていた。

 

 

「…………『他人』に許されたからといって、『自分』に赦される訳じゃないんだよ」

 

 

ぽつりと、大きい方の人は、言う。

 

 

「犯してしまった罪からは、絶対に逃げられないんだ。抱いてしまった罪悪感は、自分の心の中に深く深く根を下ろして、もう二度と消えてはくれない。いつまでもいつまでも追いかけてくる。もう君は知ってると思うけどね、それは、とても辛いんだよ」

「………何を、言って……」

 

 

まるで自分がそうであるように、大きい方の人は言う。

 

 

「………だから」

 

 

そこで、大きい方の人は、にっこりと笑った。

 

 

画面越しに見ていた、私には一生向けられないと思っていた、その笑顔を浮かべた。

 

 

「いつか君が、その罪を乗り越えて、受け入れて生きていけるようになるのを、祈ってるよ」

 

 

その一言が、胸に染み渡る。

 

 

じわりと広がったその言葉に、思わず泣きそうになる。

 

 

「………ねぇ!」

 

 

視界がぼやけてくるのを瞬きして誤魔化して、私は彼女に声をかける。

 

 

「私、あなたたちに酷いことを言って、騙すようなことをたくさんしてしまったわ」

 

 

勇気を出して、私は彼女に言いたかったことを言う。

 

 

「だから、きっと嫌われてると思うし、資格なんてないとは思うの。……でも!」

 

 

これが、『私』を好きになる為の一歩になると思ったから。

 

 

「きっと、ずっと先になってしまうかもしれないわ、けど………!」

 

 

私の本心を、言う。

 

 

「私が自分を好きになれたら、その時は……友達になって、くれないかしら……?」

 

 

尻すぼみになってしまったが、私が彼女達を見つけた時からずっと抱いていた願いを、ちゃんと言い切った。

 

 

もし、彼女達がこの申し出を断ったとしても、別に構わない。でも、言ってはおきたかった。

 

 

ちらりと、彼女達を伺い見る。

 

 

少し驚いたような顔をしていた彼女達は、お互いの顔を見合わせると、少し笑って、私を見る。

 

 

「あぁ、もちろん」

 

 

そして、優しい笑顔で、頷いてくれた。


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