※支離滅裂ですが、最後までお付き合いいただけると幸いです
【Frisk】
ゴッ、と、鈍い音が聞こえた。
「お姉ちゃん!!」
その音がした目の前の状況を見てたまらず、ぼくの口から悲鳴のような言葉が飛び出した。さっきの攻撃で飛んできた瓦礫からお姉ちゃんがぼくを助けて当たって、倒れてしまった。
「お姉ちゃん!! しっかりして、お姉ちゃん!!」
声をかけるけど、お姉ちゃんは目を覚まさず、まるで眠ってしまったように動かなかった。
【だから言ったじゃないか、Chara! 僕の忠告に背くからこうなるんだ!!!!】
目の前で、Asrielが笑っている。
【……で、君はこれを食らっても、僕の邪魔をするのかい……?】
笑うのを止めたAsrielが、面倒臭そうにぼくを見た。
【ふーん……君は本当に特別みたいだね】
馬鹿にするようにそう言って、Asrielは肩を竦める。
【でも調子に乗るなよ。今まで僕は、真の力の一部も使ってないんだからね!】
その言葉に、思わず身体が固くなった。嘘でしょ、と言いたくなった。
――――でも。
倒れてしまったお姉ちゃんを見る。
―――――………それでも、戦わなくちゃ。
お姉ちゃんを守るために。
皆を取り戻すために。
皆で地上に―――出るために。
ぼくが―――ここで折れる訳にはいかない。
ぼくは、立ち上がる。
ニヤニヤと笑うAsrielを見て、心を奮い立たせた。
そして、ぼくは。
ぼくの大切なものを守るために、決意を抱いた。
「絶対に屈してやるもんか!!」
そうAsrielに言えば、Asrielは笑うのを止めた。
【…………ふーん。君、それでも倒れないんだ。Charaが倒れれば自然と君も屈すると思ってたのに】
そして目を閉じて、何かを考えるように間を開けた後、目を開いた。
【それなら………君の決意が何処まで耐えられるか見せてみろ!!!】
その言葉を吐き捨てると、Asrielの身体が光り出す。咄嗟に目を閉じて、次に目を開けると。
真っ暗な空間に、虹色の翼を広げた大きな存在が立ち塞がっていた。
その姿はまるで、天使様のようだった。
【さぁ、その決意で僕を倒してみせろ、人間!!】
*
Asrielがぼくを見下ろし、叫ぶ。
ぼくが表示された四つの選択肢の『ACT』を選んで動こうとすると。
「………!!? なんで!!?」
身体が、まるで石になってしまったように動けなくなってしまった。
*
【ほら、どうしたの!!? 僕に何かしてみせろよ!!!】
Asrielの声が響く。何とか動かせる目だけを動かして見れば、Asrielはニヤニヤと笑っていた。
――――Asrielに、動きを止められている。
直ぐにそう気付いた。
―――――――それでも、ぼくは。
【…………何、その目。気に食わないなぁ】
目線だけでもAsrielを睨み、決意を抱き続ける。それを見てか、Asrielは腹立たしそうにぼくに向かって吐き捨てた。
【まぁいいや。君さえ殺せば、Charaは僕のものだ】
Asrielは自分に納得させるようにそう言うと、またニヤリと笑った。
【Ura ha ha ha………僕の本当の力を見ろ!!!】
Asrielが手袋を嵌めたような手を振り上げると同時に、その手から流れ星が出て、ぼくに向かって飛んでくる。動かせるようになった身体を使って、ぼくは避ける。流れ星はぼくだけを狙って、飛んでくるはず。そう思って出来るだけお姉ちゃんから離れて避けようとする。
――――でも。やっぱりそう簡単にはいかなくて。
ゴッ
「あ、ぐ………」
ぼくの身体に、流れ星が当たる。
パキリ、と何か大切なものが、割れた音が響いた。ぼくのソウルが、割れた音だ。
身体が衝撃で、投げ出される。
痛みが走る。
視界が、閉ざされていく。
『Frisk』
―――脳裏に、大切な人の笑顔が浮かぶ。
身体を無理矢理動かす。
まだ、動ける。ぼくはこんなところで死ねない。
お姉ちゃんを、皆を守るって、決意したんだから!!!
*ASRIEL blocks the way!
【……君、まだ立ち上がるの……?】
ぼくを見て、Asrielが唖然とした様子でぼくを見る。
【でも、それも直に終わる】
それでも直ぐに、ニヤリと笑った。
【感じるよ……君が死ぬ度に、またこの世界を手放していくのを。君が死ぬ度に、また少し友達に忘れられていくのを】
Asrielは、ぼくを指を差して笑う。
【君はここで死ぬのさ、誰も君を覚えていない世界で……】
その指が振り上げられて、先からまた星が飛んでくる。容赦なくぼくを殺しに飛んでくるそれを避けて、避けて、避け続けた。
【Ura ha ha ha……… どうした、君の決意はそんなものなのかい!!?】
Asrielの笑い声が響く、その時だった。
「……………Fri、sk…………」
聞き覚えのある声がぼくの耳に届いたのは。
――――――――――――――――――――
【Lily】
目を覚ましたのは、真っ暗な闇の中。
「………あ……?」
ぼんやりと歪む視界を何度か瞬いて開け、投げ出されているナイフを持つ右手を見る。どうやら自分は倒れていたらしい。身体を起こそうと、動かそうとする。
その瞬間、叫びだしたくなる程の激痛が身体に走った。
「づぅッ」
何とか歯を食い縛り、叫び出すのを耐える。
…………痛みでぼやけていた頭がはっきりとした。こんな痛みを負うのは、あの攻撃しかない。痛みで記憶が吹っ飛んだのか、記憶が無いがどうやらあの攻撃を諸に食らったらしい。左手に持っていた筈の私がゴミ捨て場で拾ったナイフがない。どっかに吹っ飛んだか。
そんな中
キラキラと、光る何かが視界を過る。
星が降ったと、直感的に思った。
反射的に顔を上げる。その動きと共に痛みが全身を駆け抜けるが、どうでも良かった。
顔を上げた先には、見覚えのある小さな背中と、歪み切った天使の姿。
【あははははは!! どうしたの、君の決意はそんなものなの!!?】
虹色に輝く大きな翼を揺らし、大きな両手から星を降らせながら、文字通り『死の天使』となった彼はフリスクに嗤う。
私の目の前に立つ小さな背中は―――フリスクはそんな言葉を聞いても尚、ボロボロになったまま、その場に立ち続けていた。
――――まだ戦い続けている
そう理解するのに時間はいらなかった。
「……………ふり、すく……」
痛みを耐えて、
私は妹の名前を呼ぶ。
「! お姉ちゃん!!」
我ながら酷く掠れた声で言ったそれは、どうやらフリスクには届いたらしい。フリスクは流星をその身に受けながらも、此方に振り返ろうとして―――……何かに制限されたように、ビタリと動きを止めた。
「………ッ」
*
どうやらフリスクはターンが回る毎にカミサマによって動きを止められているらしく、悔しそうに顔を歪めて目線だけ此方に向けた。
【あぁ、Chara! 起きたんだね!】
カミサマが、歪な姿で笑う。その笑顔に腹が立ちながらも、何とか身体を動かして、立とうとする。
そこで、気付いた。
先程まで痛みを伴いはするが動いていた身体が、ピクリとも動かない。
声も、出てこない。
私も動きを封じられたのだと、直ぐに分かった。
【あぁ、ごめんね、Chara! コイツを殺したら直ぐに治してあげるから、そこで見ててね!!】
それでも目線だけ動かしてカミサマを睨めば、何を勘違いしたのか的外れな言葉が返ってきた。
*Can't move your body.
私がカミサマに対する言い様の無い怒りを募らせる傍ら、フリスクは動きを封じられても尚まだ抵抗を続け、カミサマに向き直る。
【まだ、持ちこたえているのかい……?】
カミサマはそれに気付くと、私から目線を動かして面倒臭そうにフリスクを見る。
【まぁいいさ。君だってもう少しで全て忘れるんだ。来世でも精々そうやって足掻き続けろ!】
カミサマがそう嗤いながら言うと、両手を振り上げフリスクに向かって星を飛ばす。その星を、フリスクは何発か華奢な身体に受けながらも、避けて、立ち続けている。
悲鳴が口をついて出て来そうで、無理矢理押し留められる。
*The whole world is ending.
十数発程星が流れると、ターンがフリスクへと回った。フリスクは『ACT』を押して、抵抗を続ける。
*Can't move your body.
【アハハハハハ………まだ!?】
その抵抗を、カミサマは無駄だと嘲笑う。
【ほら……君の決意がどんなに役立つか見せてみろよ!!】
カミサマは手を振り上げ、フリスクにさらに攻撃を加えていく。小さな背中が、また傷付いていく。
目を逸らしたくても逸らせない。
――――………とても、歯痒い。
自分の手で守りたいものの一つも守れないのが、歯痒くてたまらない。
*The whole world is ending.
星の雨が降り止むと、フリスクは膝をついていたが、よろよろと立ち上がって、震える手で『ACT』に手を伸ばした。
*Can't move your body.
*
だがそれを無意味だと断じるように、アナウンスが流れる。
とうとう身体の限界がきてしまったのか、フリスクはまた膝をついてしまう。
*
それでもフリスクは、目の前に表示される『ACT』に触れ、もがき続けた。
*Nothing happened.
でも、何も起こらない。
その姿が見ていられなくて、何かを叫ぼうと口を動かそうとして、動かない。
【アハハハハハハ!!! さっきまでの威勢はどうした、人間!!? もう終わりかい!!?】
そんなフリスクを嘲笑って、カミサマは高笑いを空間に響かせる。
今すぐフリスクに駆け寄って、抱き締めてあげたかった。
背中を支えて、あげたかった。
そう願っても、無力な私は―――何もできない。
「…………おねーちゃん」
不意に、フリスクが私のことを呼んだ。
「大丈夫、だからね」
私の心を見透かしたように、振り向かずに言葉を続ける。
「いままで、散々……お姉ちゃんに守られてきたんだ。今度は、ぼくが………お姉ちゃんを守るよ」
「!!!」
掠れた声で言葉にされたそれは、酷く痛々しくて
誰よりも強い決意が滲んでいた。
*
『ACT』が使えないならば、と考えたのか、フリスクは真っ暗な闇に手を伸ばそうとする。
*Nothing happened.
だが、やはり何も起こらない。
*
*Nothing happened.
それでもフリスクは手を伸ばし続けて……限界がきてしまったのか、伸ばされた腕がぶらりと下がる。
*
【やっと諦めたの?】
沈黙したフリスクを見て、カミサマは目を細めた。
【はははは、やっぱり〈決意〉なんて、とんでもない役立たずじゃないか】
カミサマはそう言うと、私を見る。
【でも……これで、今度こそ、僕は、君を………】
嬉しそうに頬を染め、何かを呟きながら、カミサマは此方に手を伸ばしてくる。
………ここで、終わりか
当たり前だよなぁ、ゲーム通りだなんていくはずなかったんだ。
目線の先のフリスクを見て、目を閉じる。
――――守れなくてごめん、フリスク……
*……
*
アナウンスが続いて、我に返った。
この、アナウンスは。
*
絶望しかけていた心に、希望が灯る。
――――そうだ。こんな所で、私が絶望してどうする。
まだ、フリスクは………
*
諦めずに、足掻いて足掻いて足掻いてるじゃないか。
――――あの子の姉である私が、先に諦めちゃダメだろうが!!
自分にそう叱咤すると同時に、突如として、瞼を閉じていても伝わるほどの光が溢れてきた。
【なっ………!?】
カミサマの驚くような声が響く。きっと、フリスクが奇跡を起こしたんだろう。―――例えば、『ACT』を別のコマンドに変えるとか。
手を動かしてみる。
カミサマが動揺して封じられたのが解けたのか、動く。同時にビリビリと身体が裂けそうな程の痛みが走るが、知ったことか。そんなの後でいくらでも痛がればいい。今は、今だけは。
「………っ、あっ………」
足を動かす。
手を動かす。
身体を起こす。
悲鳴をあげる身体を無視して、立ち上がる。
【え、Chara、嘘でしょ……?!】
ぐらつく視界をしかと開けば、フリスクの前を塞ぐカミサマの驚愕の表情が目に入る。どうせこの傷で何故立てるのか不思議でたまらないんだろう。そんなの今はどうでもいい。
足を動かして、フリスクの元へと歩き出す。フリスクの決意が造り出した、美しい光を伴って七色に輝くコマンド―――『SAVE』に向かって。
「! お姉ちゃん!?」
私が近付いていることに気が付いたらしいフリスクは、真っ直ぐに狼狽えるカミサマを射抜いていた視線を私に向ける。その視線に笑顔を浮かべ、応えてみせる。
「ははは、すげーな、フリスク……遂にそんなもんまで創っちゃったかぁ」
「お姉ちゃん!! 休んでてよ!!」
私を見て、フリスクは顔を歪めてそう言った。
確かに、本来なら私はもう引っ込んでいるべきなんだろう。
でも。
「いやだよ。フリスクが闘ってるのに、逃げてたまるか」
意地を張ってそう言って、フリスクの横に並び立つ。
口から滑り出す言葉のままに、私はフリスクに言う。
「だって、言ったじゃない。『つらいときは二人で半分こ』って」
私があの日の約束を告げれば、フリスクは目を見開いた。
「私達は、あの日からずっと支え合ってきたじゃないか。だから……一生のお願いだから、あなたを支えさせて。あなただけに、最後まで闘わせたくないよ」
私が滅茶苦茶な言葉でフリスクに想いを伝えれば、フリスクは目を閉じて、そして――――
「あぁ、もう。分かったよ」
溜め息を一つ吐いて、
「―――二人で、皆を助けに行こう」
笑顔で、頷いてくれた。
「あぁ、勿論」
お互いに相手の差し出した手を握って、握り返す。固くその手を繋いで、私達はカミサマに向き直った。
【どうして、あり得ない、なんで!?】
狼狽えるカミサマを前に、私達は輝いている『SAVE』に向かって手を伸ばし、触れる。
*
そしてそのまま手を動かして、カミサマの中心部にあるソウルに向かって手を伸ばす。
*
問いかけるアナウンスに対する、返事はない。
*……
それでも手を伸ばし続ける。
手を伸ばす。
手を伸ばす。
手を伸ばす。
―――――――どくん
不意に、心臓が大きく跳ねるような感覚が、届いた。
*
私達の『SAVE』に応えて、キラリと、カミサマのソウルが閃光を発した。
思わず目を閉じて、次に目を開けると、
*
顔を靄で覆われた、長い髪を一つに結わえた彼女がそこに佇んでいた。
迷わず、フリスクはその人に向かって『ACT』を押して、駆けていく。手を引っ張られながら、遅れないようについていく。
*
とん、と軽く、フリスクは拳を彼女の身体に当てる。
それを受けて、彼女の身体が少し跳ねた。
*
『人間は皆死ぬのだ!』
彼女は頭を振って距離を取ると、背後に槍を出現させる。それと同時に足下にサークルと槍が出現した。現れた槍を引っ掴み、飛んでくる槍をはね除ける。
*
攻撃が止むと、フリスクはまた行動に出た。
*
フリスクが彼女に向かって口を動かすと、彼女はまた反応した。
*
『貴様らが我らの本当の敵』
それでも彼女は攻撃を続け、槍を飛ばす。はね除け、払う。
*The Lost Soul stands there.
攻撃が止む。フリスクは、また行動に出る。
*
にぱっと、フリスクはいつもの彼女のような豪快な笑顔を作った。
それと同時に、彼女の顔を覆っていた靄が消えていく!
*
『まぁ、人間にもいいやつはいるんだろうな!』
記憶を取り戻した彼女―――アンダインは此方に駆け寄ってきて、どんと肩を叩いた。
何かを、託されたような気がした。
*
笑顔のアンダインが消えると同時に、またカミサマが現れた。
とくん、とくんという感覚が、何処からか伝わってくる。
【一体、何が起こって……!?】
動揺するカミサマを尻目に、私達はまた『SAVE』に手を伸ばした。
*Within the depths of ASRIEL's SOUL,something's resonating……!
そしてまた、閃光が走る。
*The Lost Soul appeared.
次に現れたのは、黒地に白の水玉模様のワンピースを着た彼女だった。
フリスクは『ACT』を叩き、踞る彼女に向かって口を動かす。
*
それを聞いて、彼女はピクリと反応する。
*
『私のことが、憎いでしょう……?』
彼女は靄で覆われた顔で此方を見て、そう呟く。そして、箱型の機械を飛ばし、拒絶するように此方を攻撃する。それを、フリスクは彼女に改造してもらった携帯で撃ち落とした。
*The Lost Soul stands there.
機械を全て撃ち落とすと、フリスクは携帯を使って、何処かに電話をかけた。
*
少し遅れて目の前の彼女から携帯の着信音が鳴り響く。
*
そして震える手で腰辺りにあったらしいポケットから携帯を取り出して、それをじっと見つめる。
*
『嘘をつき続けなきゃ……』
携帯から目を逸らし、彼女は爆弾を飛ばしてきた。それを、フリスクは撃ち落とした。
*The Lost Soul stands there.
全てを撃ち落として、フリスクはまた彼女に行動を起こした。
*
フリスクが口を動かすと、だんだんと彼女の顔の靄が晴れていく!
*Suddenly,the memories are flooding back!
『ううん、違うわ! 好きでいてくれる人がいる! そして、私もあなたが好き!』
靄が晴れると同時に走り出して此方にやってきた彼女―――アルフィスは私達の手を握って、そう叫んだ。
また何かを、託された気がする。
*
にっこりと微笑んだアルフィスが消えると、未だ狼狽えるカミサマの前に戻ってきた
【僕の中から、力が消えていく……!?】
勢い良く、カミサマは私を見た。
【……そうか、Chara、君がソイツを……!!】
そして怒りを顕にするカミサマを無視し『SAVE』を押す。
*Within the depths of ASRIEL's SOUL,something's resonating……!
また、閃光。
*
その次に現れたのは、靄で顔を覆われた大小二人のスケルトンのモンスター。
片方は骨を構えて、片方は項垂れるように顔を伏せて。
そんな彼らに向かって、フリスクは口を開いた。
*|You told the Lost Soul a bad pun about skeleton《あなたはLost Soulたちにスケルトンをかけた駄洒落を言った》.
フリスクの口から紡がれたであろう言葉に、二人はそれぞれの反応する。
*
*
一方は地団駄を踏み、一方は顔を上げて少し笑った。
『人間を捕らえなくては!』
『もう諦めろよ。俺はそうしたさ』
それでも二人は拒絶するようにそう言って、此方に骨を呼び出して攻撃してくる。それを、右手のナイフを奮って弾き飛ばした。
*
ぼんやりとそこに佇む彼らに、フリスクは行動を起こした。
*
フリスクは背の高い方の彼に話しかけたのか、背の高い方の彼が少し反応する。
*
『そうすれば皆が、』
『努力しても何も報われないんだぞ?』
攻撃をしてくる彼らの攻撃を、弾き、受け流す。
*The Lost Souls stands there.
攻撃が止むと、フリスクはまた行動に出た。
*|You asked the Lost Soul to cook something for you《あなたはLost Soulに何か料理をしてくれるよう頼んだ》.
フリスクの言葉に応じるように、彼らはピクリと反応する。
*
『もう二度と会えないんだ』
だが、もう一人の彼の方は、絶望してしまったように顔を伏せてしまった。そしてそのまま拒絶するように攻撃をしてくる。その骨を、弾く。
*The Lost Souls stands there.
全ての骨を弾くと、フリスクはまた行動に出た。
*You told the Lost Soul a bad pun about skeletons.
*Suddenly,the memories are flooding back!
フリスクが今度は小さい方の彼に向かって精一杯口を動かすと、彼らにかかっていた靄が晴れていく!
『いや! 待て!! お前は友達だ!!! 捕らえるなんて絶対できん!!!』
『いいや。ちびっ子のことは信じてるぜ』
そう強く言い切った彼ら―――パピルスとサンズは私達に向かって笑った。
何かを―――想いを託された気がする。
ふと、サンズにじっと見られていることに気付く。
それに対して笑い返せば、サンズは呆れたように肩を竦めた。
*
彼らが消えると、カミサマの前に戻ってきた。
【また、力が抜けていく……!!!!】
カミサマが、激昂する。
【最後までそっちにつく気なんだね!! ならもう知ったことか!!!】
怒りを含んだ叫びが、空間に響く。
【ソイツごと消えちゃえばいい!!】
その叫びを無視して、『SAVE』に触れる。
*Within the depths of ASRIEL's SOUL,something's resonating……!
閃光が走った。
*The Lost Souls appeared.
最後に現れたのは、顔を靄で覆われた白い毛に全身を包まれたモンスター達。
現れた彼女達に向かって、フリスクは直ぐに行動を起こした。
*|You tell the Lost Soul that you have to go if you're going to free everyone 《あなたはLost Soulに皆を自由にするには行かなければならないと伝えた》.
フリスクが口を動かすと、彼女がピクリと反応する。
*
『これはあなた自身の為なのよ』
『私の行いを許してくれ……』
それでも彼女は頭を振って、そう言う。彼の方は、ただ赦しを乞うように項垂れる。そんな彼らの手の先から、炎が溢れて飛んでくる。身体に鞭打って、フリスクを抱え上げて回避する。
*The Lost Souls stands there.
炎が止むと、フリスクは私の腕から飛び降りてまた行動に移した。
*
彼女達に向かってフリスクが首を横に振ると、彼女達の身体が跳ねた。
*
『もう誰もここから出ないように』
『これが私の義務なんだ』
それでも彼らは攻撃を行ってくる。囲い込むような炎の輪の綻びの部分にフリスク共々滑り込む。
*The Lost Souls stands there.
その攻撃が止むと、フリスクは彼女に向かって駆け出した。
*
*Something about this is so familiar to her……
そしてその勢いのまま彼女に飛び付き、ぎゅうっと抱き付いた。
『……』
その頭を撫でようとした手から、炎が溢れ出す。急いで彼女から離れたフリスクは、その炎を回避し、事無きを得た。
*The Lost Souls stands there.
攻撃が止むと、フリスクは今度は彼の前に立った。
*You hug the Lost Soul.
そして、彼女と同じように、抱き付いた。
その瞬間、彼女達にかかっていた靄が晴れていく!
*Suddenly,the memories are flooding back!
『あなたの運命はあなた次第よ!』
『君は私達の未来だ!』
靄が消えた彼女達―――トリエルさんとアズゴア王はそう言って、私達を強く抱き締めた。
想いを、託された。
*|You feel your friends's SOULs resonating within ASRIEL《ASRIELの中から友達のソウルが鳴り響くのを感じる》!
彼女達が消えると、カミサマの前に戻ってくる。
皆の想いを胸に、私達は『SAVE』に手を伸ばした。
*
*
カミサマの中に居た皆が私達を思い出してくれたからか、身体が暖かいもので満たされていく。
*|It seems that there's still one last person that needs to be saved《救わなければならない誰かがまだ残っているようだ》.
今まで感じたことの無かったその感覚を感じていると、不意に、アナウンスがそう続く。
*
アナウンスと同時に、フリスクは考え込み始める。
*……
そして、フリスクは顔をあげ、前を見た。
*
「………ねぇ、お姉ちゃん」
不意に、フリスクが私を見る。
「ぼくさ、今すっごい馬鹿な事考えてるんだけど………着いてきてくれるよね」
決意で輝く強い瞳が、私を射抜く。これから何をするつもりなのか察し、本気でやり遂げる気なのだと考えて、
―――笑みを返す。
「あぁ、勿論。どこまでもついていくよ、フリスク」
そう応えれば、フリスクは、この世界で一番美しく微笑んだ。
「ありがとう」
そして、私達は繋いだ手をまた強く握り締め、私はフリスクを支えて、フリスクは、目の前のカミサマに向けて、手を差し伸べた。
*
「アズリエル!」
凛とした声が、空間に響き渡った。
【えっ? 何をしてるの……!?】
その瞬間、脳裏に何かが過っていく。
目を閉じてそれに集中する。
穴に人間が落ちてきたこと。
そこに通りかかった白い毛に包まれた気弱そうな子供が、落ちてきた人間を助けたこと。
その人間を『家族』として受け入れて優しく笑う、一つの家族のこと。
次々と切り替わるそれを見て、これはカミサマの記憶だ、と直ぐに察した。
*You feel your friends's SOULs resonating within ASRIEL!
目を再び開けば、目の前のカミサマは困惑していた。
それを無視して、『SAVE』を押す。
【な……何をしたの……?】
戸惑うように顔を歪めるカミサマは、脈動する自身のソウルに手を当てる。
【何だよこの気持ち……? 僕に何が起こってる?】
そして顔を歪めて、拒絶するように頭を振った。
【嫌だ! 嫌だ! 僕には誰もいらないんだ!!】
そう叫ぶカミサマの手から、流星群が降り注ぐ。今までの比じゃない量の中を、フリスクと一緒に避けていく。
*………
攻撃が止むと同時にまた『SAVE』を押した。
そして、カミサマに向かって、一歩づつ、近付いていく。
【やめろ! 僕から離れろ! 聞いてるのか!?】
そんな私達を拒絶し、カミサマは叫んだ。
【八つ裂きにしてやる!】
その声と同時に、また星が降った。
だが、その星は、私達に一つも当たることはなかった。
*………
『SAVE』を、押す。また、進む。
【………Chara……なんで僕がこんなことをしてるかわかる……? どうして君をここに留めているのか……?】
そんな私達に向かって、カミサマは語りかけてくる。
*………
『SAVE』を押す。
【それは……君が特別だからさ、Chara】
カミサマは、悲しそうに顔を歪める。
【君しかいないんだ、僕をわかってくれるのは。君しかいないんだ、遊び甲斐のある相手は】
カミサマの手から、炎がこぼれる。それは当たらずに、ただ落ちていく。
*……
『SAVE』。
【………それだけじゃない。僕は………僕は……】
カミサマは泣きそうな顔で、此方を見る。
【僕にとって君が大切だからなんだよ、Chara! 誰よりも君のことが大切だからさ!】
*……
『SAVE』。
【まだ終わらせたくないんだ。まだ君にいなくなってほしくないんだ】
カミサマの目から、涙が一粒落ちる。
【まだ君みたいな誰かにもう一度さよならを言いたくないんだ……】
*……
『SAVE』。
【だからお願い……もうやめて……】
ぼろぼろと涙を溢し、震える声でカミサマは言う。
【いいから僕に勝たせてよ!!】
そして私達に向かって、極光を打ち出した。
成す術もなく、呑み込まれる。
身体が、意識が、全て消し飛ばされそうになる。
―――それでも
【やめて!!】
光の中で立ち続けるフリスクの背を支え、歯を食い縛る。
全身の感覚が、消えていく。
【もうやめてよ!!】
尚も太くなる光を耐える
耐える
耐える
耐える
――――――不意に、光が消えた。
*……
最後に残った『SAVE』に、触れる。
【Chara……】
カミサマの――アズリエルの悲しそうに歪む顔から、絶えず涙が落ちていく。
*……
『SAVE』。
【すごく寂しいよ、Chara……】
*……
『SAVE』。
【すごく怖いよ、Chara……】
*……
『SAVE』。
【Chara、僕は……】
*……
―――――『SAVE』。
【ぼくは…………】
――――――ただ、君を……救いたかっただけなんだ………