*コメントが来たのにうかれながら、作者は決意で満たされた。
【Lily】
奥に進むと、一番最初に目に入ってくるのは木の葉の絨毯。そして、横に目をやると、フロギーが一匹(一体?)ちょこんと座っていた。
プルルルル……
ふと、フリスクが持っていた携帯がなる。フリスクはちょっと迷ってから電話に出た。
「もしもし?トリエルよ。部屋から出たりしてないわよね?」
電話の相手はトリエルさんだった。というか流石皆のママ、鋭い。
ギクリとしたフリスク。
「その先にはまだあなたに説明してないパズルがあるの。二人で解こうとするのは危険よ。……いい子でいるのよ、いいわね?」
念を押すようにトリエルさんはそう言って電話を切った。
フリスクはそっとポケットの中に携帯を入れると、ちょっと考えてからフロギーと会話をしにいった。
いい子にしてなくていいの?、と言えば、
「……前にお姉ちゃんが言ってたでしょ?自分がやりはじめたことにはちゃんと責任をもちなさいって。それに、お姉ちゃんがいるから怖くないもん!」
……マジか、前になんとなく言ったこと覚えてたか。嬉しいな。
「
フリスクがセーブポイントに向かったのを見送っていると、フロギーが話しかけてきた。というよりも、戦闘みたいにアナウンスが流れる感じで翻訳してくれた。
「でしょ?私の自慢の妹だもの」
そう言ってセーブし終わったであろうフリスクを連れてマモノのアメがある部屋にはいる。
「お姉ちゃん、なんだろうあれ。持ってっていいのかな?」
「……飴みたいだよ、リコリス味じゃないといいな」
「絶対違うと思うよ」
「というかリコリス味だったら置いた人(?)恨むよ、私」
ゲームでも言っていたけど、こっちにはリコリス味の飴が一応ある。一回どんな味か気になって買って食べてみたけど、アレはヤバい。もの凄くヤバい。
リコリス味の恐怖を思いだして顔の血の気が引くのを感じながら、私は飴を十数個リュックの中に詰め込んだ。小さいから結構入る。
「………お姉ちゃん、取りすぎじゃない?」
「えっ、だってあんまり持ってかないでとは書いてないし、持ってて損はないと思うんだけど…」
「まぁそうだけどさ……」
しまった、大人気なかったか。…でも、フリスクの命には変えられないしさ。
そう思いながら飴を一個取って味見に口に含んだ。
……あ、結構美味しい。
「何してるの?」
「飴の味見。食べる?」
「うん、一個ちょうだい」
また飴を一個取ってフリスクに渡した。フリスクは包みをどけて口の中でころころ飴を転がした。
「…美味しいね、このアメ」
「そうだね、何個か取っといて正解だったでしょ?」
「うん」
二人で飴を舐めながら部屋を出て進む。すると、いきなり前から飛び出してくるものが。
「うわっ!?」
背景が白黒に切り替わる。……なんだ、戦闘か。ビックリした。
*
うん、知ってる。
アナウンスにリアクションを返しながら、私はフリスクを見た。
これがトリエルさんの居ない初戦闘だけど、『Player』は何を選ぶのか。
しばらく迷ったあと、彼女は『ACT』を押し、そしてパクパクと口を動かした。
*|Froggit didn't understand what you said,but was flattered anyway.《Froggitは言葉の意味を理解出来なかったが、それでもお世辞に照れている。》
……お世辞を押したのか。じゃあさっき口を動かしていたのはお世辞言ってたからか。何て言ったんだろう?
『(感慨深く)ゲコッ……』
フロギーがそう言った瞬間、フリスクに向かって小さい虫のような追尾弾幕が展開される。
攻撃されると思わなかったのか、フリスクは立ち竦んでしまった。
「!?」
「フリスク避けろ!!」
私の声に我に反ったフリスクは、なんとか避けていたけど、そのうちの一つが当たりそうになる。
「あっ…」
「!」
ガキン、という音が響いた。私が思わずカッターで弾幕を弾き飛ばした音だ。
……なるほど、ある程度の固さがあれば弾き飛ばせるのか。これはいいことを知った。
私はそのままフロギーから守るようにフリスクの前に立った。
*|Froggit seems reluctant to fight you.《Froggitはあなたと闘うことに抵抗を感じている。》
後ろを見ると、彼女は『ACT』ボタンを押し、名前が黄色になったのを確認したのか、『MERCY』ボタンに手を伸ばした。
*
*
見逃したらしい。戦闘終了アナウンスが流れた。
私はカッターをパーカーのポケットにしまい直ししゃがんでフリスクと目線を合わせる。
「大丈夫だった?怪我ない?」
「うん、お姉ちゃんが守ってくれたからぼくは大丈夫。お姉ちゃんは?」
「私も大丈夫だよ。」
怪我はないらしい。良かった。
「……次からは気をつけてね?」
「うん」
頷いたフリスクの頭を撫でてから、私は立ち上がり、そのまま次の部屋に移った。
―――――――――――――――――――
次の部屋なんだっけ、と歩きながら考えていると、フリスクが前に出て進み始めた。
「あ、気をつけろよフリス――……『ずぼっ』ファッ!!?」
あ、ありのまま今起こったことを説明するぜ!!
私がフリスクに注意を呼び掛けようとした瞬間……フリスクが消えていた……何を言ってるか分からねーと思うが「いったー……」いやそれ所じゃねぇ妹の安否を確認せねば。
そう言えばこの部屋落ちるギミックの部屋だったっけと私は思い出しながら、フリスクが落ちた穴を覗き込む。
「フリスクー!無事ー!?」
「……大丈夫ー!通る所あるからそっち通って戻るね!」
頼もしい返事が返ってきた。どうやらダメージとかは受けてないらしい。
少しすると、向こうの壁に空いた穴からフリスクが抜け出してきた。
「あー、良かった、無事だったか…」
「うん、お姉ちゃんもあの穴通れそうだったし、落ちてきたら?」
「いや、それには及ばないよ」
「え?」
そう言って私は部屋の隅まで行き、
助走をつけて、
タッタッタッタッ
思いっきり地面を蹴った。
ダンッ
そして、華麗に着地する。
スタッ
前から考えていたここで落ちなくてもすむ方法。結局、走り幅跳びの要領で飛び越えればいいんじゃないかと思って実践してみた。……飛び越えられる距離じゃなかったらヤバかったなこれ。あと私が走り幅跳び得意じゃなかったりしたらもっとヤバかった。
「お姉ちゃんすごい!!」
「そんな事ないよ、私よりちゃんとした選手とかのほうがもっと飛べるさ」
「そうなの?」
結論:ゴリ押し戦法とか思いながら、私は興奮するフリスクにそう言った。かわいい。
「行こうか」
リュックを背負い直し、私は歩き出した。