守りたいもの   作:行方不明者X

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※二人目から七人目の子のRuins脱出理由を捏造しています。ご注意を。


14.会話と過去

【Toriel】

 

これは夢だ、と思った。どうして、とも思ったわ。

 

「Chara…?」

 

さっき襲われていた我が子の姉と言うその子は、Charaにそっくりだったのだから。

 

ぱっちりと開かれた瞳。

 

ピンク色の頬。

 

にっこりと笑う口元。

 

この地下にあの子が帰って来たとまで勘違いするぐらい、そっくりだった。

 

あの子があのまま大人になっていたらこんな美人さんになっていたのかしら、と思った。

 

「初めまして、私はこの子の姉のLilyと言います。よろしくお願いします」

 

礼儀正しく自己紹介をしたあの子とそっくりな彼女は、Lilyと名乗った。

――――――――――――――――――――――

「Torielさん」

 

本を読んでいると、ひょっこりと彼女が顔を出した。服の破れた所からチラリと見えた包帯が少し痛々しかった。

 

「あら、どうしたの我が子よ?……あら…?」

「あぁ、妹なら疲れてしまったみたいで。ベッドちょっとお借りして眠ってます」

「そうなのね」

 

妹さんの姿が見えないと思ったら眠っていたのね。後でパイを持って行かないと。

 

「………あの、Torielさん」

「何かしら?」

 

少し顔を伏せてから、彼女は私にこう問いかけた。

 

 

 

 

「…私って、誰かに似てますか?」

 

――――――――――――――――――――――

【Lily】

トリエルさんの目が少し見開かれた。……やっぱりっつーかなんつーか、Charaちゃん似なんだなこの顔。

 

「…どうしてそう思ったのかしら?」

「いえ、なんとなくなんですけど……もしかして合ってました?」

「えぇ、昔此所にいた子に。……もしかしたら親戚だったのかもね?」

「そうですねー」

 

まぁ、これでこの顔はCharaちゃん似ということに確信が持てた。……でも、それだけだとフラウィーがあそこまでご執心(というよりも狂ってた?)だった理由が分からないんだよなー……どういうことだ?

……つーか、Charaちゃん似ってことは、私、もしかしたらサンズに警戒される可能性が出て来たな……どうするかなー……

 

「……あ、すみません、空き瓶ってあります?」

「あるわ、それがどうかしたの?」

「いえ、もしよろしければ一つ頂けないかと思いまして」

「あぁ、それなら台所にあるから持っていっていいわよ」

「ありがとうございます」

 

よっしゃ、空き瓶ゲットだぜ!……ネタはおいといて何に使うかって言うと、トリエルさんの炎弾幕対策だ。火には水ぶっかければいいんじゃないかと。それに、もし弾幕が被弾してもすぐにかければ火だるまは防げるし火傷をすぐ冷やせる。……まぁ無いよりマシかなと。

……あ、あったあった。

 

流し台の傍にあった空き瓶に水をいれ、蓋を締める。水が入って結構重くなったけど、振り回す分には問題なしと判断する。……振り回すで思い付いたけどこれ鈍器にもなるじゃん。こっわ。

水ぶっかけること以外に乱用しないことを肝に銘じ、水入り瓶を持って部屋に戻る。フリスクはまだ眠っていた。

 

リュックの中のドーナツとかを潰さないように水入り瓶をいれる。……あ、そうだ。トリエルさんの部屋探索してねぇや。

 

改めて部屋を出て廊下を歩く。…あ、ガマだ。前世(そもそも死んだっけ?)ではよく用水路とかに生えてるの見かけたけど、今世では生では初めてみたな。確かウォーターソーセージとか言われてるんだっけ?

 

カチャリ、とドアを開けて中に入る。ゲームとほとんど同じように、部屋は水色で統一されていた。

………棚の上に飾ってあるキンポウゲの花が結構目立つ。

 

棚から目を放し日記を覗きこむ。……これプライバシーの侵害だよな。トリエルさんごめんなさい、許して。

ゲーム通り丸が着けてあるところには寒いギャグが書いてあった。……これ一応サンズのことも書いてあるんだったっけと思いながらページを捲って日を遡る。あ、あった。……ふぅん、そんなギャグ言ったんだ。相変わらず寒いなオイ。でもトリエルさんには結構嬉しい出来事だったみたいで、読んでいるこっちにも伝わるぐらい嬉しそうに書いてあった。

それから遡ると、七人目の子の事が書いてあった。

……あぁ、あの子はアズゴア王に怒って出ていっちゃったのか。話すんじゃなかったという後悔が書いてある。

……まさかゲームでは見れなかった他の子達の事が書いてあるのか?

気になって遡ると、六人目の子の事が書いてあった。ビンゴらしい。

……その子は自らアズゴア王にソウルを渡しにいったらしい。あぁ、確かその子のソウルは緑色(優しさ)だったっけか。止めたけど出ていってしまったと書いてあった。

また遡る。次は五人目の子の事だ。

…Ruins中を探索しつくして、新しい知恵を求めて抜け出していってしまったらしい。寝てる間に抜け出していってしまったと書いてある。涙を溢したのか、ページが少しよれていた。

ページを捲る。四人目。

……今度は堂々とトリエルさんに頼み込んで出ていってしまったらしい。止められなかったとまた後悔している文が書いてある。

またページを捲る。三人目。

……大丈夫だと勇んで出ていってしまったと書いてある。もっと強く引き留めれば良かったとまた後悔している。

捲る。二人目。

……何日か一緒にいたが、我慢の限界で出ていってしまったとある。……また、後悔している。

ページをもっと遡ると、とあるページが目に留まる。……Charaちゃんとアズリエル君が死んだ日の事が書いてあるページだ。

そこには、さっきみたページの倍以上に気持ちが伝わってくる。

 

どうして気づけなかったのか。

どうして止められなかったのか。

もっと、私がしっかりしていれば。

 

……こちらまで、辛くなるような日記だった。

そして、その最後の一行には。

 

次に落ちてきた子達を絶対に守るという固い決意が記されていた。

 

……この決意を抱き続けていたからトリエルさんは今まで壊れられずにいたのかと、何処かで妙に納得する。そして、改めて彼女を尊敬した。

母であり続けるという事は辛い事だ。時には人を狂わせてしまうことだってあると私は思う。それをトリエルさんはずっと続けてきたんだ、凄い事じゃないか。

 

日記を赤丸がついているページまで戻し、私は部屋から抜け出した。後ろ手でドアを閉め、次の部屋に向かう。

 

「……私だ」

 

途中であった鏡を覗き、私の顔を確認する。本当にCharaちゃん似だなこの顔。

鏡から離れ、ゲームでは開かずの扉だったドアをノックする。

 

コン、コン、コン

 

………返事はない。

ドアノブに手をかけて開けようとしても開かない。まぁ、ここはやっぱりゲーム通りだよな。

 

諦めて部屋に戻ってくる。まだフリスクは寝ていた。……これ寝すぎじゃね?大丈夫?

ノートに二人目から七人目の子の脱出理由とフラウィーが狂っていて、そして気になる事を言っていた事を書き込む。

リュックの中にノートとペンをしまい、私はベッドに寄りかかって目を閉じる。……色々ありすぎてちょっと疲れた。休もう……

 

私の意識は黒に落ちた。




※8/27誤字修正

アズゴレ→アズゴアでした。申し訳ございません。

ケモナー兄貴さん、ご報告ありがとうございました

※10/15追加誤字修正

肝に命じ→肝に銘じ

ガモ→ガマ

でした。すみません……

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