【Lily】
扉を開けて最初に思って口にした一言。
「さっっっむ!!」
いや雪あるし一応覚悟してたけどさっむくない?何これ。
「フリスクは寒くない?」
「うん、大丈夫」
フリスクが平気そうならいいけどさ……あー、パーカーの中を半袖にしてくるんじゃなかった……
私が寒さで少し震えていると、キョロキョロしていたフリスクが茂みの中を覗いて固まった。
「……?どうした?」
「…お姉ちゃん、この中にカメラがあったんだけど……」
「え、マジ?」
……あぁ、そう言えばスノーディンには所々カメラが仕掛けられてたな。記憶を探って思い出した。
……あ、いいこと思い付いた。
「フリスク、そのカメラ茂みから出せる?」
「え?……うん、多分」
「あー、じゃあ出してちょっと私に向けてくれない?」
「いいよ」
フリスクはがさがさと茂みを漁ってカメラを引っ張り出すと、私の指示通りカメラを向けてくる。
私はカメラに背を向け、そしてばっと振り返ってこういった。
「きさま!見ているなッ!」
シュゴォォーッという効果音がつきそうなポーズでいい放つ。……ここ砂漠とは真反対の場所だけどね。
「………何やってるの?」
「気にしないでフリスク。ちょっとやってみたかっただけ」
怪訝そうな顔でこっちを見るフリスクに動機を話す。……監視とかされたことなかったからちょっとテンション上がってやった。反省なんかしてないよ?
…というかこのネタアルフィスに通じるだろうか。通じたらいいな
「ありがとう、もう大丈夫だよ」
「そう?じゃあ元に戻すね」
そう言うとフリスクはまたがさがさと茂みにカメラを隠した。
「じゃあ、行こうか」
「うん」
―――――――――――――――――――――
【Sans】
次はどんな奴だ?この最初のルートだけを繰り返す奴?一番いい結果を生み出すルートを繰り返す奴?それとも……俺の兄弟を、皆を殺すルートを繰り返す奴か?
その思考は足跡を見て止まった。
「足跡が二つ…?」
一つは十中八九あのクソガキのだろう。じゃあ、その隣を歩くコイツは誰だ?
ばっと顔を上げて去っていった奴らを見る。……確かに、二つ人影が、あの木のところでしゃがんでいるのが見えた。人影が立ち上がる。
遠目でみたそいつは、クソガキより背が高く、黄緑の地に黄色の線が一本入った服を着ていた。
パキッ
「うおっ!?え、折れた!?」
木を越えて少ししたところで木が折れたことに驚いてそいつは振り向いた。気づかれないように林の中に近道を使って移動する。
「嘘だろオイ……さっき調べた時絶対に折れないような感じだったじゃん……」
ブツブツと何か言いながらそいつは前に向き直ってまた歩き出す。
「……ん?大丈夫だよ××××、オバケなんかいないよ。……いや、いたわ。しかも普通に話してたわ」
隣にいるクソガキにからからと笑ったそいつは、クソガキが審判の時に浮かべる顔をしていた。
一瞬で思考回路が塗り替えられる。
アイツはなんだ?
何で今此処にいる?
誰だ?
何がしたい?
どういうつもりだ?
アイツらが橋の前に立つ。俺は足音を立ててソイツらに近づいた。
「人間。ここでの挨拶のしかたを知ってるか?……こっちを向いて、俺と握手しろ」
ゆっくりとソイツらは振り向き、俺の目の前にいたクソガキが俺の手を握った。その瞬間、
ブォォォォー
ブーブークッションの音が静かな林に響いた。
「………くっ」
手を握ったクソガキが唖然としてる間に、ソイツは吹き出した。
「あはははははっ!!」
そして腹を抱えて笑い始める。
「マジかよ、ふふふっ、なんでブーブークッションなのさっ、あははははっ!」
今度はこっちが唖然とする番だった。……その顔でそんなに笑う奴を、俺は知らない。
「ひー、ひー……ごめん、笑いすぎちゃったね。私はLily、この子の姉さ」
笑いすぎて出た涙を拭い、黒く長いポニーテールを揺らしてそいつは名乗った。