これからも本作品をよろしくお願いいたします。
*たくさんの人が見ていることを知り、驚きながらも作者は決意で満たされた。
【Lily】
「待たせてごめん、フリスク」
「大丈夫だよ」
セーブポイントのすぐ傍の木に寄りかかってフリスクは待っていた。
「お姉ちゃん、何してたの?」
「んー?……ナイショ!」
「えー!」
教えてよー、と笑いながらくっついてくるフリスクの頭を撫でる。キラッと雪が反射した光で糸が煌めいた。
……さっき私が彼に研究ノートを渡した理由。それは彼の誤解を解くためだ。私を警戒するってことは、少なくとも一回はCharaちゃんの顔を見てる。だから、操られていたとは言え、実行犯となってしまったフリスクの事を嫌っている可能性がある。ならば、この子を操る
……ノートには一応彼に宛てた手紙と、『Player』とこの子を繋ぐ『糸』の事を書いてある。これで、少しでもこの子と彼が本当の友達になれる可能性が上がるといいんだけど。
「……お姉ちゃん?大丈夫?寒い?」
「…大丈夫だよ、気にしないで」
いけない、また考えすぎそうになったらしい。
「というか、お姉ちゃんのパーカー、ボロボロになっちゃったね……」
「あー……そうだね、父さんと母さんに顔向け出来ないわこれ」
実は、私が着ているパーカーとフリスクが着ている上着は事故に合う前に父さんと母さんが買ってくれたもの。実質、これが父さんと母さんの形見だ。……それをいくらフリスクを守るためとはいえボロボロにした私って……とんだ親不孝者だな……
父さんと母さんに向けて申し訳ない気持ちになりながら、私はフリスクから離れ、ぼんやりと見えるセーブポイントを見た。これの事も書いて大丈夫だったかな…?次会った時質問攻めにされそうだな
「……あれ、あの箱……」
ふと、看板とその隣にあった箱が目に入る。…あれアイテムボックスだよな。そういえば、アイテムボックスって何個かあるけど、中身が一緒ってどういうことなの?次元歪んでない?
「あ、あれ?あれはね、なんかグローブが入ってたよ」
「え、ごめんフリスク、それちょっと見せて」
「いいよ、はい」
どうやらもう中身を見てたらしい。フリスクはズボンのポケットから丈夫そうなグローブを一組取り出した。それを受け取る。
……私の記憶が間違ってなければこれ三番目の子のやつだよな…?……ごめん、借りるね
そう心のなかで謝罪してフリスクにグローブを渡す。
「霜焼けになるといけないから手袋がわりにつけときなよ」
「あ、そうだね」
私からグローブを受け取ったフリスクは、じっとグローブを見つめてから、片方だけ左手につけて、もう片方を私に差し出した。
「お姉ちゃん、寒そうだから。かたっぽだけでもつけて?」
「……ありがとう、フリスク。そうするよ」
フリスクの優しさに心が暖まった。頬が緩むのを感じながら右手にグローブをつけた。
「あれ、そういえばフリスク、リボンは?」
「リボンは箱にしまったよ」
ふといつの間にか頭から消えていたリボンの事を聞くと、そう返事が帰って来た。……捨てたとかじゃなくてよかった。
「じゃあ、行こうか」
フリスクの右手を握り、雪の上を歩きだした。
ざく、ざく、と音をたてながら左の道(ゲームだと上の道)に曲がると、ふとフリスクが足を止めた。
「……どしたフリスク?」
「……なんか曲が聞こえない?」
「え?」
耳を澄ましてみるけど、何も聞こえない。あるのはゲームとそっくりの釣竿が地面にささっている風景と、風の音。曲は聞こえない。
………おい、まさかこれfunイベントか?
funイベントはゲームが進行していくうちにいつの間にかたまっていく『fun』という数値が一定以上溜まると起こるイベントだ。確か非公式日本語版だとファイルを弄ったりしてその『fun』の数値を弄れたはずだけど……
「……あ、終わった」
フリスクがポツリと呟いて、私の手を放して釣竿へと近づいていった。……funイベントか、覚えておこう。
ざばっ、と水から何かが出て来たのをフリスクは取り、中身をみる。……あれ写真だったっけか。ちょっと違うけど魚に手紙書くやつでどっかの松を思い出したんだけど。
「……お姉ちゃん」
「どうした?」
「この釣竿の人、魚に電話番号書いてる……」
……フリスク、そんな憐れむような目を写真に向けてやるな。