※死ネタ注意
ぼくには9こ上のお姉ちゃんがいる。
いそがしいお父さんとお母さんの代わりに、ずっとそばにいてくれるやさしいお姉ちゃん。
「Frisk?どした、そんなに見つめて」
「おねーちゃん……」
「……もしかして遊びたい?」
「うん」
「いーよ、何して遊ぼっか」
ぼくが思ってることなんでもおみとおしで、おべんきょうしててもぼくとあそんでくれる。
「お姉ちゃん、おべんきょうしてるの?」
「あー、うん。ちょっと待っててくれる?直ぐに終わらせるから」
「うんっ」
たまにあそべなくても、すぐにおわらせてあそんでくれる、だいすきなお姉ちゃん。
「Frisk」
ふとした時になでてくれたり。
「ねぇ、こんなの作ってみたんだけど、いる?」
いろんなものを作ってくれたり。
「ご飯できたよー、今日はハンバーグ!」
ぼくのだいすきなハンバーグを作ってくれたり。
それから、
「………おとうさん、おかあさぁん……!!!!」
………お父さんとお母さんがとおくに行ってしまったときも、何もいわないでそばにいてくれた。
ねぇ、お姉ちゃん。
「だいすきだよ、お姉ちゃん」
――――――――――――――――
今日、父さんと母さんの葬式が終わった。フリスクには両親が居なくて、トリエルさんに引き取られたという仮説もあったけど、まさか、こんな風に別れが来るなんて………
で、まぁ今親族の大人達が話し合って私とフリスクを誰が引き取るかを話し合ってるっぽいけど、なんか雲行きが怪しい。……『孤児院』とかいうワードが出てきてる時点で覚悟はしてるけど、大丈夫かな、これ。
ふと、きゅっと服の裾を引っ張られる感覚がした。目を向けると、フリスクが震えながら私の服の裾を強く握っていた。
「……どした?」
「………」
聞いても黙ってるってことは……なんか我慢してるのかな?
実際側にいて分かったことだけど、悲しいときフリスクは周りに気を遣いすぎて感情をあんまり出さない。その所為で周りからちょっと誤解を受ける所がある。……これ悪い癖だな。多分母さんとかに心配かけたくないために我慢するようになったんだろうね。それで癖になっちゃったんだろうな。くっそ、そんな癖つけない為に側に居たのになー……
「……大丈夫。どんなとこでも、私が――「ううん」
気休め程度になるかなと思って言おうとした言葉は、他でもないフリスクによって遮られた。
「大丈夫、お姉ちゃん。ぼく、がんばる。天国のお父さんとお母さんに心配かけないように、自分でがんばる。」
涙を流しながら私を見上げたフリスクの目は、決意で満たされていた。
「
「えっ」
それを、私は即座に否定した。
「それはダメ。絶対にダメ。」
多分、ここでこれを認めてしまったら、この子は凄く無理をする。それが主人公というものだから。
漫画とかの主人公はこういう経験を得て、こういう決意をするけど、
「でも……」
「あぁ、全部を否定する訳じゃないよ?その決意は素晴らしいものだとは思う。でもなフリスク、君、私に迷惑かけたくないからそんなこと言ってるだろ」
「それは……」
ほらやっぱり。
「だとしたらとんだ思い違いだぞ?あのな、君みたいな子はまだ私みたいな年上に甘えて許される歳なんだよ。だからそんなこと言うな。頑張るなら――」
私はそこで言葉を切って、フリスクと目線を合わせる。
「私も頑張るから、二人でがんばろうぜ、相棒」
私は妹に死んでほしくない。辛い思いをさせたくない。だからせめて、こうやって言葉で妹を縛る。
「甘えたいときは甘えて、辛いことがあったら半分こ。楽しいことは二人で楽しんで2倍にしよう。その方が、父さんと母さんも喜んでくれると思うんだわ。」
そうじゃない?と問い掛けてみれば、フリスクはちょっと考えてから小さく頷いた。
「じゃあ約束ね、小指出して?」
「……うん」
「ゆーびきーりげーんまん、うそつーいたーらくすぐりの刑に処す」
「えぇっ!?」
私が唐突に歌詞を変えた事に驚いてフリスクは目を見開いた。
「ハリセンボンじゃないの…?」
「だって針千本飲ませるとか絶対痛いじゃん……」
「そうだけどね……えぇ……?」
いいの……?と不思議そうに首をひねるフリスクにちょっと癒された。
「まぁ、されたくなければ嘘吐かなければいいのさ。そうでしょ?」
「う、うん、そうだね……」
それから、と私は言葉を続ける。
「約束追加。辛い時は絶対に話すこと。いいね?」
そう笑顔で言って、私はフリスクの手をとって立ち上がる。
「ま、この後どうなるかわかんないけどさ、がんばろうぜ、相棒」
「……!うん!」
にっこり笑ったフリスクを撫で、私はフリスクを連れてどっか空いてる所がないか探すために歩きだした。
………つか葬式で笑うとか超不謹慎だな…父さん母さん、ごめん、許して。