これからも本作品をよろしくお願いいたします。
【Lily】
一服した後の犬用おやつの残骸を通りすぎると、道端にサンズが立っていた。
「よぅ、覚えておいてほしいことがあるんだ、が……お前さんその髪どうした?」
私の髪型に気づいたのかサンズが驚いた様子で聞いてくる。
まぁ今までポニーテールだった奴が急に短髪になってたらそりゃ突っ込まれますわな。
「あー……ワンボーに切られた」
「……嘘だろ?」
「マジです」
なんならフリスクに証言してもらおうか、と付け加える。
「いや、いい。災難だったな。……ところで、覚えておいて欲しいことがあるんだが」
あ、話が戻った。
「俺の兄弟は凄い必殺技を持っているんだ」
え、と言わんばかりにフリスクが小さく口を開けた。
「もし青色の攻撃だったら動かなければ当たらない。」
青色というか水色に近いけどね。
そう思いながらさっき見たワンボーの剣を思い出す。確かに動かなければ当たり判定がなかった。
「いい覚えかたがあるんだ」
そう言ったサンズにフリスクはどんな?、と言わんばかりに首を傾げる。
「止まれって標識。あれが見えたらお前さんも止まる、だろ?」
「そりゃな」
フリスクもコクリと頷いた。
「普通赤が止まれだが青の止まれ があると想像してくれ」
……分かりやすくていいけど、何で止まれの標識知ってるんだろう。確か地下になかったよね?……あぁ、外に出た記憶があるからか?
そう思いながら頷いておいた。
「簡単だろ?戦う時は、青い止まれの標識と覚えておけばいい」
「なるほど」
フリスクは少し考える素振りをした後、コクリと頷き、口をパクパクと動かした。
「へっ、礼には及ばないさ」
あぁ、お礼を言ったのかと思いながらサンズに手を振って通りすぎる。
つるっ
「うおっ!?」
「お姉ちゃん!?」
足元を見ていなかったのが悪かったのか、滑って転んだ。いってぇ。
「ってー……これ氷か」
ゲームと一緒だなと思いながら立ち上がる。氷は鏡のように私の姿を写し出していた。
「転ばないように気をつけてね。さもないと私みたいに無様な姿を晒す羽目になるから」
「う、うん」
「へっ……」
おいサンズ、笑ってんじゃねーぞ。
キレそうになりながらスケートの要領で氷の上を滑る。
「おー……」
ついーっと滑りながら看板を盗み見る。
『北:氷
南:氷
西:氷
東:Snowdinの町……と氷』
……あぁ、もう町か。つか氷しつこいわと思いながらも今度は無事に雪の上に立つ。
ちゃんと雪の上に立っているか確認したのち、フリスクに手を振って合図を送る。その合図を確認したフリスクも私に手を振り返した後、すーっと氷の上を滑ってくる。
「うわっ」
「おっと!?」
最後の最後でバランスを崩したのかフリスクが倒れ込んでくるのを受け止める。
「大丈夫?」
「うん、ありがとうお姉ちゃん」
そのまま抱きついてくるフリスクの頭をなでる。かわいい。
………つかサンズの驚愕の視線が痛い。こんなに甘えるフリスク見たことないのか?
ふとした疑問が頭を掠めた。……というか、見たことがないと仮定したら、フリスクどんだけ無茶してんのって話だよなぁ……
甘えて頭をぐりぐりと擦り付けてくるフリスクを見て苦笑する。
「あっちの道には行かなくていいの?」
「んー……いく」
「そっか、じゃあ行こうか」
フリスクの意思を確認して離れる。すると今度は手を握ってきたから握り返す。
「それじゃあね、サンズ。忠告ありがとう」
「……あぁ」
こっちを見ていたサンズに手を振って歩きだした。