【Lily】
サンズと別れて氷を滑って左の道に行く。……確か雪だるまの所だったか?
そう考えながら顔をあげると、にっこりと笑った顔の雪だるまが鎮座していた。それにフリスクが話しかけにいった。
「こんにちは。雪だるまです」
「あ、どうも、この子の姉のリリーです」
なかなか礼儀正しい雪だるま君に挨拶を返しておく。フリスクもペコリと頭を下げた。
「僕はこの世界を見て回りたいんです、だけどこの通り僕は動けない。親切な旅人さんたち、お願いです……僕の欠片を持って旅をしてくれませんか?」
「……だってさ、どうする?」
フリスクは腕を組んで少し考えたあと、コクリと頷いた。すると、フリスクの手のひらに雪の欠片が現れた。
「ありがとう……お達者でね!」
そう言って別れを告げた。………というかこれ溶けたりしない?大丈夫か?
一抹の不安を感じつつ雪の欠片を見つめた。……これどうしまおうかな……
――――――――――――――――――――――
あのあとなんとか雪の欠片をしまい、元の道を抜けて次の道に進む。すると、その先ではパピルスがサンズに怒鳴っていた。
「お前は本当に怠け者だな!!!一晩中昼寝してたんだろう!!」
「それは普通さ……睡眠って言わないか?」
あ、サンズがツッコミたかったこと代弁してくれた。
「言い訳、無用だ!」
いや、昼に寝るから昼寝なのでしてね……?と思いながらパピルスがこっちに気づいた素振りを見せたので手を振っておく。
「オーホー!人間が来たぞ!……ってニェェェェェッ!?その髪はどうした大きい方の人間!?」
「あー……これはワンボーにちょっと……」
「そうか……それは災難だったな……」
やべぇ、リアルオーホーが聞けた。超嬉しい。つかかわいい。
心が癒されるのを感じながら驚くパピルスの問いに答える。……確かパズルは壁に触れたら電流が流れるパズルになってるんだったっけ、と思い出す。
「とにかく、お前を止めるべく、俺様たちはいくつかパズルを作ったのだ!」
おぉ、と言わんばかりにフリスクは口を開く。
「このパズルを見ればお前は、ショックを受けることだろう!」
物理的にも精神的にもな、と思いながら話を聞く。
「なぜならな、このパズルはなんと見えない……ビリビリ迷路なのだ!!!」
「なんだと!?」
取り敢えずリアクションを取っておく。
「お前たちが迷路の壁に触れれば……このオーブがお前たちにボリューム満点の電撃をお見舞いする!楽しそうだろ???」
ビンゴ。
記憶違いがなかったことに安心しながらパピルスがどこからか出したオーブに注目する。
……人が死ぬレベルの電撃だったりしないだろうな?
「しかし!お前たちが得るであろう楽しみの量はおそらく、小さいだろうな。よし、進んでもいいぞ!」
「え」
「なんだ?」
「いや……」
思わず声が出た。……だって今オーブ持ってるのパピルスだよね?このままだと電撃くらうのパピルスだけどいいのか?
ゲーム通りの展開だけどさすがに戸惑ってしまった。
「……えいっ」
ここが道だと思ったのか、少し考えていたフリスクが一歩踏み出そうとした。……そのとたん、何か見えないものに邪魔された。
瞬間、パピルスに電撃が流れて真っ黒焦げになる。
……つか骨が真っ黒焦げになるレベルって真剣に考えたらヤバいじゃん。
「サンズ!!!何やってんだ?!?!」
瞬時に回復したパピルスが地団駄を踏みながらサンズに怒鳴る。正直言って理不尽である。
「オーブを人間に持たせなきゃいけないんじゃないか」
「あぁ、そっか」
すぐに気がついてこっちに向かってパズルを解きながら歩いてくる。もう一度言う。パズルを解きながらである。……もうこれヒントどころの話じゃねぇよ…丸っきり答えだよ……
「これ持ってちょうだい!」
「ん、分かった」
さすがにフリスクにあの電流を浴びさせる訳にもいかず、私がパピルスからオーブを受け取った(あ、あの空中受け渡しじゃないよ?)。そのままオーブを覗き込んでみる。……あ、中で電流みたいなのがパチパチ弾けてて綺麗だなこれ。
オーブを抱え直して前に向き直る。
「よーし、やってみろ!」
パピルスから許可が出たからフリスクの前に立って迷路を通る。……ぶっちゃけパピルスの足跡辿ってるだけだけどね…
慎重に迷路を抜けると、パピルスが驚きの声をあげた。
「信じられん!カタツムリのようにつるつると!!いとも簡単に解いたな……すこぶる簡単に!」
いや、カタツムリはそこまで早くないけどねと心の中でツッコミをいれながらパピルスにオーブを返す。
「しかしだな!!次のパズルはそう簡単じゃないぞ!」
え、と言うようにフリスクは口を少し開く。
「俺様の兄弟、サンズが考えたのだ!!お前はきっと混乱するだろうな!!」
あー、あの言葉探しかとサンズが考えたパズルを思い出す。……あれパズルっていうよりもクロスワードだよな、うん。
「覚えとけよ!ニェーッヘッヘッヘッヘ!!」
そう考えていると、彼特有の高笑いをあげてパピルスは奥に進んでいった。
「ありがとな……パピルスは楽しんでるみたいだ」
ふと、サンズが話しかけてくる。そう話す目は、確かに弟を愛する兄の目をしていた。
「ところで、あいつの妙な服装に気付いたか?」
「あー、あの服……っていうよりも鎧みたいなやつ?」
「そうだ」
妙って言われても思い当たりがあの服装しかねぇよと思いながらサンズを見る。
「数週間前に仮装パーティー用で作ったんだ」
「え、あれマジで自作?」
「おう」
「マジか……」
現実でみたパピルスのあのバトルボディは、ちゃんと金属光沢があった。……あれを作ったとか凄すぎない?どんだけ手先器用なんだパピルスは……
「そっからもう着っぱなしでさ……あれを『バトルボディ』って呼んでるんだ」
「……ん?着っぱなし?」
「おう」
「………洗ってないの?」
「いや、洗って乾かしてまた着てる」
「あぁ、なんだびっくりした」
ゲームだった時もツッコミたかったことにそう答えてくれたサンズ。着っぱなしはさすがに汚い。
「なぁ」
フリスクがサンズの呼び掛けに首を傾げる。
「俺の兄弟ってクールだろ?」
……あぁ、伝説の質問きたな。
その質問に、私とフリスクは笑って頷いた。
「そんじゃ、行こうか」
「うん」
「じゃあね、サンズ」
「おう」
サンズに手を振って道を進んだ。