【Lily】
さて、このエリアは確かあの夫妻の見逃し条件が分かるんだっけな、と思いながら2つ並んだ見張り小屋の真ん中にある看板に近づく。
『匂い危険度ランク
・雪の匂い―雪だるま
白ランク
場合によっては黄色ランク
・疑わしくない匂い―子イヌ
青ランク
辺りを転がったあとの匂い。
・怪しい匂い―人間
みどりランク
何としてでも排除!』
緑ランクなのに赤で書いてあるのはなんでですかねぇ……と思いながら横にいるフリスクを見る。『排除』という言葉で嫌な想像をしてしまったのか、顔が少し青くなっていた。
「……そんな風に青くならなくても大丈夫だよ。いざとなったら雪の上を転がればいいじゃない?」
私がそう言えば、その手があったかと言わんばかりにフリスクはこっちを見る。
「……まぁ、とにかくこれでこの見張り小屋の二人の対策は分かったし、行く?」
「うん」
フリスクが頷いたのを確認し、来た道を戻り始めた。
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ざくざくと雪を踏み締めながら次のエリアはサンズのクロスワードだったかと思い出した。……個人的にはあの氷のやつとナイトメアちょっと怖いから苦手なんだよな……
フリスクが立ち止まったのに気づいて顔をあげると、ちょうどこっちに気づいたパピルスと目が合った。
「人間!!!心の準備はいいか……」
そこまで言って、パピルスはパズルらしきものが何処にもない事に気づいて、顔をしかめる。
「サンズ!!パズルはどこだ!!!」
「そこにあるだろ。地面の上に。」
声を張り上げたパピルスにサンズは飄々と返した。
「まぁ見てな。これを乗り越えるなんて不可能だぜ」
そんなことはないんですよねぇ……とうっかり口に出しそうになるのを飲み込み、地面の上にあった紙を拾ってフリスクに渡して一緒に見る。そこにはゲームと同じように『良い子の言葉探し』と書いてあった。……やっぱコイツこえぇよ。
「……お姉ちゃん」
「ん?」
「…これ、パズルじゃなくてクロスワードだよね……?」
「……クロスワードじゃなくてサーチワードパズルじゃない?」
「あ……えへへ……」
フリスクが不思議そうにしながら小声でそう聞いてくるのを苦笑しながら訂正する。……やっだかわいい。
フリスクはしばらく紙を眺めたあと、そっと地面に紙を置き、パピルスのもとへと歩いていった。
「サンズ!!!何も起きないじゃないか!」
「おっと。やっぱり今日のクロスワードを用意した方が良かったかな」
「はぁ?クロスワード!?」
サンズが言ったクロスワードという言葉に反応してパピルスはまた顔をしかめる。
「何でそんなもの出すのだ!!!俺様が思うに……ジュニアジャンブルの方が難しいに決まってる。」
ちょっとテンションを落としながらパピルスはそう言った。
「え?マジかよお前。あの超簡単なパズルだろ?あれ赤んボーン向けだぜ」
パピルスの言葉にサンズがそう反論する。……つかそれもやっぱり言うんだな。赤ん坊とボーンをかけてるのか。やかましいわ。
「んな、あほな。……人間!!!お前はどう思う!」
急にこっちに話を振られて驚いたような素振りをしてから、フリスクは腕を組んで考え始める。……そして、少ししてからパクパクと口を動かした。
「おかしいだろ二人とも!クロスワードは簡単すぎる。問題の解き方がいっつも同じじゃないか。全部の欄に『Z』って書いて埋めるだけ……だって俺様はクロスワードをやっているといつも……つまんなくて寝てしまうからな!!ニェーッヘッへ!!」
あ、その反応ってことはクロスワードって答えたのね……つか待って。それ解いたって言うのか……?
「大きい人間!!お前はどうだ!!」
「……え?私?」
「そうだぞ!」
ちょっと疑問に思っていると、私に話が振られた。……まさか声をかけられるとは。思わず聞き返しちゃったよ……なんて答えようかなー
「んー……難易度にもよるけど、ジャンブルかな?」
「そうだろう!」
私がそう答えるとパピルスは嬉しそうに顔を綻ばせた。……かわいいなぁ
「人間たちはとても頭がいいんだろうな!!奴らもジュニアジャンブルが難しいと思うなら!!ニェ!ヘッ!ヘッヘ!」
いや、それは個人差だな。と心の中で反論した。
そう言って上機嫌でパピルスは奥へと引っ込んでいった。それを手を振って見送る。……今のセリフ、ゲームで『ジャンブル』って答えた時と一緒だったな…
そんな風に考えていると、ぐいっと手が引っ張られた。
「おっと……どうしたフリスク」
引っ張られた方の手を見ると、フリスクが手を握っていた。そして、近くに来ていたサンズを指差した。
「兄弟の機嫌をとるためにジャンブルって言ってくれてありがとうな」
サンズがそう口を開いた。
「昨日は星占いを『解く』のに苦戦してたな」
「星占いを?」
「そうだ。パピルスは妙なところに問題を見出だすんだ」
「へぇ……まぁ、『知りたい』って思うことは良いことじゃないか?」
『知らない』ってのは怖い事だからなぁ、と付け加えれば、サンズは少し驚いたような顔をした。
「へっ……そうだな」
少し笑ってサンズは口を閉ざす。……もうこれ以上話すことはないっぽいな。
「行こう、お姉ちゃん」
「そうだね。……じゃあな、サンズ」
サンズに背を向け、フリスクに手を引かれながら次のエリアに移動した。