守りたいもの   作:行方不明者X

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27.Snowdin探索④

【Lily】

 

道なりに進むと、テーブルの上に置いてあるパスタとその奥にある電子レンジが目に留まった。……あぁ、これパピルスが用意したパスタか。ということはここはセーブエリアか。

そう思ってゲームでセーブポイントがあった辺りを目を凝らして見つめる。……あった。

 

「……あれ?パスタだ……」

 

フリスクはパスタに先に気付いたのか、不思議そうな声をあげ、私の手を離してパスタへと近づいていった。……というか、電源コードが入ってなければ意味ないよな、このレンジ……

 

「……お姉ちゃん、このパスタ凍ってる……」

「まぁ、こんな寒いところにあればそりゃな……」

 

つんつん、と指でパスタを触ってからフリスクは私にそう言った。そして、地面に紙が置いてあることに気付き、紙を拾い上げて読み始めた。

 

「……」

 

読み始めて少しすると、フリスクが少し口元を綻ばせた。

 

「なんて書いてあったの?」

「読んでみて」

 

フリスクが渡してきた紙を受け取って読む。

 

『人間!!このパスタを召し上がれ!(なんと、このパスタは罠なのだ……パスタがお前をおびき寄せ!お前はすっかりパスタに夢中……先に進むことすら忘れてしまう寸法だ!!お前はグレートなパピルス様に完全にハメられるのだ!!!)ニェッヘッヘッ、パピルスより』

 

紙には、ゲーム通りパピルスからの手紙が書いてあった。……自動翻訳が効いているらしく、大文字で『PAPYRUS』と書いてあるはずのところが『パピルス』になっていたことを除けば。

 

「……このパスタ、罠なんだ……」

「ねー。……でも、敵とはいえ、ぼく達の為に作ってくれたんだよ。嬉しいよ」

 

嬉しそうに言うフリスクに少し驚く。……あぁ、この子、ちゃんと人の思いやりを汲み取れる子になってたんだな、と気づいて、私も嬉しくなる。

 

「そうだねー」

 

紙を元にあった場所に戻し、ふとテーブルの後ろの壁見ると、ルインズで見たような小さな穴が空いていた。……あ、ここでチーズ使えるんじゃね?

 

思い立った私は、リュックからチーズを引っ張り出してカッターで切り出す。……あ、寒いところに居たからか切りにくくなってる……かてぇ……

 

「何してるの?」

「ん?ここにネズミの穴が空いてたからさ、チーズお裾分けしようかなって思ったんだけど……」

「! いいね!」

 

私が何かしているのに気がついて、セーブを終えたらしいフリスクが話しかけてきた。それに返答をすると、フリスクは顔を明るくして賛成した。……かわいい。

 

「……うし、切れた。これ、穴に置いてきてくれないかな?」

「いいよ!」

 

やっと切れたチーズをフリスクに渡し、駆けていくのを見届ける。……フリスクが穴の傍に置いて少しすると、ネズミがひょっこり顔を出した。

 

「ネズミさん、良かったらどうぞ!」

 

フリスクとチーズを交互に見比べてから、ネズミはチーズを持って穴に引っ込んでいった。

 

「受け取ってくれたよ!」

「おー、良かったね」

 

嬉しそうに駆けてくるフリスク。うん、めっちゃ可愛い。

 

「さて、行こうか」

 

萌え死しそうになりながらフリスクの小さい手を取って進み始めた。

―――――――――――――――――――――

次はあの犬夫婦戦だったかと思いだし、ふと目に入ってきた看板の文字を読む。

 

『警告:犬結婚』

 

「いやそれだけかよ」

 

ツッコミを入れた。……いや、ゲームだった時も思ったけど、もうちょっと何か書こうぜ……?

 

「……あ、お姉ちゃん。またカメラあったよ」

「え、マジか」

 

そういやこの木の所にあったなと思いながらフリスクが指差した辺りを見る。……キラリと何かが光を反射したのを見つけ、あれかと見当をつけた。……これもはや盗撮じゃね?

 

「何かする?」

「んー、ネタ思い付かないしいいや」

 

前にネタをやったのを思い出したのかフリスクがそう言ってくるのを断る。結構高い所にあるし、取りに行って怪我したらやだしね。

 

「……どっちから行こうか」

「じゃあ右から行くー」

「ん、了解」

 

フリスクに判断を委ね、右側(ゲームだと下の道)に進む。…確か次のエリアに進む所に針山が生えてて、それを解くためのヒントが雪に埋もれてるんだっけかな?

そう考えていると、周りが白黒に切り替わる。

 

Lesser Dog appears.(Lesser Dogが現れた)

 

……あぁ、レッサードッグ戦か。

これも確か撫でまくれば終わるんだっけと思いながら攻撃に備えてカッターと玩具のナイフを取り出す。

 

*LESSER DOG- ATK 12 DEF 2

Wields a stone dogger made of pomer-granite.(ポメ・グラナイト製の短犬を装備している)

 

頑丈そうな鎧着て尚且つ盾持ってる割にディフェンス低いなコイツ。あと『短犬』って何さ……

頭の中で流れたアナウンスにツッコミを入れながら、カッターとナイフを構えた。

 

『(ハッハッ)』

 

息を吐く音が聞こえると、ドドドドドドという効果音が聞こえそうなレベルでレッサードッグは突撃してくる。

 

「あっぶね!」

 

それをフリスクを抱き寄せて回避した。

 

Lesser Dog cocks its head to one side.(Lesser Dogは首をかしげている)

 

レッサードッグを見れば、アナウンス通りかわいく首を傾げていた。……愛嬌のある顔だからなおのことかわいいんだけど、コイツ犬版ろくろ首だからな……

 

*|You barely lifted your hand and Lesser Dog got excited. 《ちょっとだけ手を上げてみた。Lesser Dogは興奮した》

 

そんな事を考えていると、フリスクがちょっとだけ手を上げ、アナウンスが流れる。レッサードッグを見ると、首が少し伸びていた。……かわいさ半減である。

 

『(小さいひと鳴き)』

 

わん、と小さく鳴いたあと、レッサードッグは手に持っている短犬を振り回してくる。

 

ガキィン

 

青色から白色に変わった刃を咄嗟にナイフの方で受け流し、はっとする。……これ傷ついてないよな?こっちの方で受け流すんじゃなかったなー……

ちょっと後悔しながらナイフを確認する。当たり処が良かったらしく、傷はなかった。……よかった。借り物だからな、傷つけたらアカン。

 

Lesser Dog is barking excitedly.(Lesser Dogは興奮して吠えている)

 

……確かこれでもう大丈夫だったはずだ。

そう思いながらフリスクを見ると、『MERCY』に手を伸ばしていた。

 

「……あっ、ちょっと待ってフリスク」

「?」

 

『MERCY』に伸ばされた手が止まる。……良いこと思い付いた。

レッサードッグに向き直り、私は近づいていく。

 

「ハッハッ……」

「……ほーらよしよしよしよし!いい子だね!」

「お姉ちゃん!?」

 

そしてレッサードッグを撫でてみる。……いやだって、首どこまで伸びるのか気になるじゃん…?

フリスクの静止を無視して、レッサードッグを撫でる。

 

ぎゅんっ

 

………しばらく撫でていると、そんな音がしそうなぐらいに首が思いっきり伸びた。

 

「うおっ!!?」

「!?」

 

そして、

 

ゴッ

 

と上の方で鈍い音がした。

 

「………何今の音……」

「……多分、首が伸びすぎて天井に当たったんじゃない……?」

「あー……」

 

それが案外当たったらしく、するすると伸びた首が引っ込んできた。……大きなたんこぶをつけて。

 

「あー…大丈夫…?」

 

さすがに罪悪感を感じ、雪を掴んで少し固め、背伸びしてたんこぶに当てて冷やし、首元をそっと撫でる。

 

「………わんっ」

 

満足したのか、満面の笑顔でレッサードッグは鳴いた。

それを見て、フリスクはほっとしたように一つ息をついて『MERCY』に手を伸ばした。

 

YOU WON!(あなたは勝利した)

You earned 0XP and 0gold.(0XPと0goldを得た)

 

……あれ、レッサードッグから金貨もらえなかったっけか。うっかりしてた。

周りに色が戻ってくるのを見ながら、私は去っていくレッサードッグを見送った。

 

「あ、お姉ちゃん、見てこれ……」

「ん?」

 

さっきレッサードッグが突っ込んできたときに雪が吹っ飛ばされたのか、ヒントの一部が顔を出していた。

 

「なんかあるのかな…」

「どけてみる?」

「うん」

 

フリスクと雪をどけていく。少しすると、ゲームで見た通りのヒントが出てきた。

 

「あっちの方にこれどかす仕掛けがあるっぽいね。……行ってくるからちょっと待っててくれないかな?」

「うん、分かった」

 

フリスクに待っててもらい、仕掛けを動かしにいく。バツ印がついている辺りにつくと、地面の色が変わっている場所があった。……これか。

そのまま足で地面を探ると、何か固いものが当たる。それを思いっきり踏み抜いた。

 

カチッ

 

という音がして、スイッチが嵌まる。……これで大丈夫かな?

雪を踏み締めてフリスクのもとへ戻る。

 

「針山引っ込んだー?」

「引っ込んだよー!」

 

歩きながらフリスクに聞けば、そう返事が返ってくる。……大丈夫そうだな。

 

「お待たせ、行こうか」

「うん!」

 

一列に並んで道を歩く。…さて、そろそろくるかな?

 

ざく、ざく、ざく

 

黒いフードを被った二人組がちょうどこっちに歩いてくる。ビンゴ、と思いながらポケットに手を突っ込んでナイフとカッターを握りしめる。

 

「何のにおいだ?」

「どこのにおいかしら?」

 

あ、二人一緒に喋るのかなと思ったけど、二人連続で喋ってる感じなのね、これ。……というか二人とも結構綺麗な声してんな……いいなー

 

「においの元が居るなら……」

「……私たちの元へおいで!」

 

行かないよ……と思いながらぐるぐると周り始める二人を見つめる。…というか、この人達は目が見えてないのか…?

 

「ふぅむ…ここから怪しいにおいがするな……」

 

あ、もうそろそろかと気を引き締める。

 

「なんだかとても排除したくなるにおいだ。」

「……排除するわ!」

 

そう言った瞬間、世界が白黒に切り替わった。





【挿絵表示】


拙いながら、彼女を描かせていただきました。大体こんな感じの容姿だと思ってくだされば幸いです。

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