これからも本作品をよろしくお願いいたします。
【Lily】
*
フードを取った夫妻が鼻擦りをしている。……ラブラブだねぇ。
*DOGAMY- ATK 14 DEF 5
*
*
………知ってるのは『嗅いだもの』だけ、ねぇ。ということは、この人達は『人間の匂いを嗅いだことがある』のか……?へぇ。
ちょっと興味を引かれながらカッターとナイフを引っ張り出す。
『妻のノミをくらえ。』
『やめて、本当に……』
そう言いながら二人は手に持った斧を振り回してくる。……ヤベェ、受け止めきれるかな。
ちょっと不安になりながらカッターとナイフで受け流す。
ヒュッ
「っ!!」
受け流しきれなかった斧がフリスクに向かう。それを止めるために腕を伸ばす。
ザクッ
「………いって!!」
「お姉ちゃん!!」
服と一緒に肉が切られる。血が滴って雪に落ちた。……あー、腕絶ちきられなくてよかった…運がよかったな
「フリスク、無事?」
「お姉ちゃん、腕が……!」
「大丈夫だよ、気にすんな」
……痛みからしてそこまで傷は深くないと判断し、犬夫妻を見据える。
*
まぁ、結果は黒だろうな、と思いながら鼻をすんすんと動かす二人を見る。
*DOGGERESA-ATK 14 DEF 5
*|This puppy finds her hubby lovely.SMELLS ONLY?《この犬は夫を魅力的だと思っている。匂いだけ》
ドガレサさん酷くないすか。……まぁ、目が見えてないみたいし仕方ないけどな、と苦笑しながら痛む腕を動かしてナイフを握る。
『人間と馴れ馴れしくするな』
『あれはあなたの夫じゃないのよ?』
そう声が聞こえると、二人が素早く私とフリスクを挟み、ドガミーさんが私達を挟んで反対側にいるドガレサさんに向かってハートの弾幕を飛ばし始めた。
「愛してるよ、ドガレサ!」
「まぁ…!」
あ、ゲームだった時は分かんなかったけどこれこんな感じの弾幕なのね。
なかなかに情熱的な弾幕だなと思いながら青色のハートの弾幕の部分に潜り込んでやり過ごす。
*The Dogs a re-evaluating your smell.
私達を挟んだまま鼻をすんすんと動かす二人。それを見ながらフリスクは『ACT』を押して地面の上を転がった。……よかった、覚えてたのね。私も直ぐ様地面を転がる。……うわ傷口いってぇ。
*|You roll around in the dirt and snow.《あなたは土と雪の上を縦横無尽に転がり回った》
*
転がったことによって雪の上を血が赤く模様を作っていた。……まぁ冷えて痛みをあんま感じなくなったから気にしないでいいかな?
『人間の尻尾を蹴ってやろう』
『……え、人間って尻尾があるの?』
ないよ。とドガレサさんの疑問に心の中で返す。あるのは某サ○ヤ人だけです。
余計な事を考えていると、またハート弾幕が飛んでくる。それをまた青色のハートに潜り込んでやり過ごした。
*
もう少しか、と油断しないように気を引き締めてナイフとカッターを握る。
*
*|After rolling in the dirt,you smell all right!《地面をゴロゴロした後なので、あなたの匂いは良くなっていた》
『何!この匂いはまるで……』
『あなたって本当は子犬だったの!?』
二人の顔が驚愕に染まる。……子犬ではないけどな、と思うと、少し罪悪感が心をつついた。
多少弱くなった弾幕が飛んでくる。それをまた青色のハートに潜り込んでやり過ごす。
*|The Dogs think that you may be a lost puppy.《犬夫婦はあなたのことを迷子の子犬だと思っている》
迷子……まぁ間違ってはないな。と思いながらカッターをおろす。
『ACT』を押したフリスクがドガミーさんに近づいて、頭を少しなでた。
*
『わお!!!他のわんこからのなでなでだ!!』
『ねぇ。私をおいてどういうつもり!』
かなり加減されたハート弾幕が飛んでくる。当たりそうになったやつを弾き返す。……あともう一押しかな?
*The Dogs think that you may be a lost puppy.
「フリスク、ドガレサさんも撫でたげて」
「うん」
フリスクにそう伝えると、『ACT』を押してドガレサさんをなでにいった。
*
『犬が犬をなでる……ステキ!』
『僕がここに居るのに……』
ドガミーさんの方をみると、しゅんとしたように顔を項垂れさせていた。嫉妬してら。
またかなり加減された弾幕が飛んでくる。それをフリスクを引き寄せて回避した。
*
これでもう大丈夫だと安心してカッターとナイフをしまった。
*
*
そうアナウンスが流れた途端、世界に色が戻ってきた。
「犬が犬をなでる???」
「新しい世界が開けたわね……」
感慨深そうに頷く二人を尻目に、私はまた痛みだした腕の傷をみる。……あー、血、めっちゃ流れてんな……大丈夫かなこれ……頭が微妙にぼーっとすんだけど……
「ありがとう、怪しい子犬たちよ!」
「あ、待って。……ねぇ、血を流している方の子犬さん」
「……?はい…?」
去っていこうとしたドガミーさんを呼び止めてから、ドガレサさんが私に近づいてくる。……というか何で血が流れてるの知って……あぁ、血の匂いか。
「これ、受け取ってくれないかしら」
そう言って差し出されたのは少し大きめの綺麗な包帯。
「……さっき、あなたを切ったのは私なの。ごめんなさい」
「え、あ、いいえ……怪しい匂いがあったら誰だって警戒しますし、気にしないでください。貴女は貴女の仕事をしただけですよ」
深々と頭を下げるドガレサさんに、フォローを入れる。
「…ありがとう、そう言ってくれて嬉しいわ。でも、私が気になるから、もらってくれないかしら」
そう言ってまた包帯を差し出してくる。
「……分かりました。有り難く使わせていただきます」
彼女の優しさに対して強情になる訳にもいかず、ドガレサさんの手から包帯を受け取る。
「ふふ、ありがとう。……それじゃあね」
少し微笑んで、彼女はドガミーさんと一緒に去っていった。
「………お姉ちゃん!!」
二人の背が見えなくなった辺りで、流石に限界がきてぼすっと雪の上に尻餅をつく。すると、フリスクがこっちに向かって駆けてくる。
「お姉ちゃん、リュック降ろして!!」
「あー……分かったからちょっと落ち着きなさい」
「……うん」
肩に引っ掛けておいたリュックを渡しながらそう言えば、フリスクは涙目で頷いた。
がさがさとフリスクがリュックを漁り、しまっておいた私の分のアイスを引っ張り出し、包装を剥いて私に渡してくる。
「食べて!」
ずいっと差し出されたそれを受け取り、アイスにかじりつく。すっ、と頭が冷えて思考がクリアになる。……あ、美味しい。結構濃厚な味だな。
しばらく食べていると、徐々に腕の痛みが引いていき、体が怠かったのが消えた。腕の傷を見ると、薄い傷痕を残してほとんど治っていた。
「……おー、なんかやっぱ魔法みたいだな」
「そうだね…」
また何もない所をみて、フリスクはほっ、としたように息をついた。
「あとはこの包帯を巻いておけば……」
服の袖をまくり、ドガレサさんからもらった包帯を少し使ってぐるぐると傷痕を隠すように巻き付ける。……あー、あんま上手く巻けなかった。ま、いっか。
「これで、よし、と」
包帯を止め、服の袖を元に戻して立ち上がる。
「お姉ちゃん、大丈夫…?」
「うん、立ち眩みもないし、大丈夫だよ」
そう受け答えしながら、ドガレサさんからもらった包帯の残りを見る。……あれはゲームだった時にはなかった行動だ。やっぱり、あの人達も生きているんだと再認識する。
「はい、リュック」
「ん、ありがとう」
リュックをフリスクから受け取り、残りをしまってまた背負う。
「行こうか」
「うん」
また私達は雪の上を歩き始めた。