守りたいもの   作:行方不明者X

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30.三つ目のパズルとカラータイル

【Lily】

 

次は……確か、あのパピルスの顔のパズルだったっけ、と思い出す。

 

「……あれっ」

「どした?」

「道の先にパピルスがいる……」

 

道を抜けた先にパピルスがいるのに気がつき、フリスクは驚いたような声をあげてから近づいていった。私もフリスクの後に続く。

 

「サンズが最近靴下コレクションを始めたんだ。まったく……悲しいもんだ……」

「色々ツッコミたいことはあるけど、待って。なにそれ」

 

呆れたような顔でそう言ったパピルスに思わずツッコミを入れた。なんやねん靴下コレクションて。そんなを艦○れ始めたみたいに言われても困るんだけど……

 

「面倒を見てくれるクールな骨がいなくなったら……サンズのヤツ、どうなっちゃうんだろうな???」

「……」

 

……まぁ、一人立ちとかならまだしも、もし殺されたりだったとしたら、愛しい弟の幸せを願ってる彼のことだ、キレるだろうな。……あのルート(Genocide)で見せた顔のように。

彼特有の高笑いを聞き流しながらそう考える。

話は切り上げられたらしく、フリスクが動いたのに気付き、私も歩きだす。

 

少し歩いてスイッチの前辺りまでくると、ついてきていたパピルスが勢いよく話しかけてくる。

 

「人間!!……んん……あー……なんと言えばいいか……」

「……どしたよ、口ごもって」

 

話しかけてきたはいいものの、パピルスは言いにくそうに口ごもる。

 

「お前が来るのが遅くて……凄く時間が余ったんでな……」

「……おう…?」

 

フリスクは不安そうに手を握ってくる。かわいい。……てかそんなに時間かかったっけ?

 

「パズルを俺様の顔っぽく改造したのだ!……運悪く、雪が地面に凍りついて固まっちゃったけどな」

「あぁ…そういうこと…」

 

そこまで恐ろしい事ではなかったことに安心したのか、フリスクはほっと息をつく。

 

「というわけで解き方が変わるのだ!そして、今回も、あのぐうたら兄弟がいないと来た!」

 

最後は怒ったように顔をしかめながらパピルスはそう説明する。……こうやってわざわざ説明してくれるのも彼のいい所だよなぁ

 

「何が言いたいかっていうとな……」

 

一呼吸置いてパピルスは決めポーズを取る。

 

「心配するな、人間!このグレートな、パピルス様が難問を解いてやろう!」

 

パピルスが言ったことにフリスクはきょとんとする。……風がないのにスカーフが靡くってどうなってんの?

 

「さすれば俺様もお前も先に進める!」

 

フリスクは顔を少し綻ばせながら話を聞く。……多分だけど、彼の優しさが嬉しいんだろうな。

 

「しかしだな、もし二人で挑戦する気があるなら…答えは教えないでおいてやるからな!」

 

パピルスが話し終わると、フリスクはパクパクと口を動かして彼に何か言った。

 

「む、そうか?なら頑張るのだぞ!」

 

……二人で頑張ってみる、と言ったのかな?

話し終わると、フリスクはにこにこしながらパズルに向かう。

 

「お姉ちゃん、頑張ろう!」

 

気合い充分なフリスクが言う。かわいい。その言葉に頷き、私もパズルに向かう。

 

「……どうやって解くんだろ……」

「んー……」

 

……答えは知ってるけど、フリスクのためにならないと判断して、考えるふりをする。……時間かかるかなー、これ。

――――――――――――――――――――――

数十分はたっただろうか。

 

一歩踏み出してバツを丸に変えてはその丸を三角に変えたりと試行錯誤していると、フリスクがはっと思い付いたように顔をあげた。

 

「お姉ちゃん、分かったかも!」

「え、マジか」

「うん!一回リセットしてくるから待ってて!」

 

そう言ってフリスクは駆け足でスイッチを押し、すぐに戻ってくる。……一瞬、『リセット』って言葉に肩が強張った。

 

「あのね、お姉ちゃんはそこのバツ印の所に立っててほしいの」

「いいよ」

 

フリスクに指定された左側で一番上(多分左目にあたるところ)のバツの上に立つ。

 

「で、あとはね……これをこうして……」

 

残りのバツをフリスクは丸に変えていく。全てを丸に変えると、フリスクはスイッチを自信満々でスイッチを押した。

 

カチッ

 

という音がして、丸が黄緑になって答えが固定される。

 

「やった!解けた!」

「良かったね、フリスク」

「うん!」

 

余程嬉しいのか、抱きついてくるフリスクの頭をなでる。正直言ってかわいすぎ。

 

「うわ!!!俺様の助けなしで解いちゃったぞ……信じられん!」

「凄いでしょ、私の妹」

 

驚くパピルスにフリスクを自慢しておく。

 

「さてはお前たちもパズル好きだな?」

「まぁ嫌いじゃないよ」

 

フリスクと一緒にやる時もあるし、解いてて楽しいしな。

 

「なら、次のパズルもきっと気にいるぞ!お前には簡単すぎるかもな!!ニェッ!ヘッ!ヘッヘッヘッ!!!」

 

まぁどんなのかにもよるけどな、と思いながら、去っていくパピルスを見送る。

 

「……あ」

 

見送って目線をずらした先にサンズがいるのに気付いた。

 

「フリスク、あそこにサンズがいるよ」

「え?……あ、本当だ」

 

気がついていなかったフリスクに声をかけ、二人でサンズに近づいていく。

 

「おい、なぜ俺に助けを頼まなかった?俺はずっとここにいたんだが」

「嘘つけおい」

 

つかいつの間にそこにいたの?と疑問をぶつけると、笑って誤魔化された。……十中八九彼の能力であるショートカット……つまりは瞬間移動を使ったんだろうと見当をつける。

 

「そんじゃあね」

 

話を切り上げ、フリスクの手を引いて次のエリアに進む。

――――――――――――――――――――――――

次のエリアは……あのカラータイルか。

 

そう考えつつ道を抜けると、橋と灰色の床を挟んで向こう側にサンズとパピルスが話し合っているのが見えた。パピルスの近くには機械もある。……合ってるっぽいな

 

橋の近くまで行くと、こちらに気がついたらしい二人がこっちをみる。

 

「おい!人間よ!」

「なんじゃらほい」

 

このネタ古いなと思いながらパピルスに返事をする。

 

「このパズルはきっと気に入るはずだぞ!偉大なるアルフィス博士が作ったのだからな!」

 

……ここでアルフィスの名前が出てくるんだっけ。失念してたな。

実を言うと、これを覚えておけば後に出てくるメタトンのカラータイルパズルの時もアルフィスが関係してるって気付けたりする。よく見ると機械の形も変形前のメタトンそっくりだしね。

 

「この床が見えるだろう!?俺様がこのスイッチを入れたら……色が変わり始めるぞ!色によってそれぞれ効果は異なる!」

「へぇ、どんな?」

「それを今から説明するのだ!」

 

私がそう聞くと、パピルスは説明を始める。

 

「赤い床は通行禁止!その上を歩くことは出来ないぞ!

黄色の床は電撃だ!踏んだらお前をビリビリさせるぞ!

緑の床は警報が鳴る!もし踏んだら……モンスターとの戦闘が始まっちゃうのだ!!

オレンジの床はオレンジの匂いがするぞ。踏んだら爽やかな香りが体に染みつく!

青の床には水が入っている。進みたいなら泳いで通れる。だが…お前からオレンジの匂いがしたら!ピラニアがお前に噛みつくぞ!

そして、もし青い床の隣が黄色だったら、青のタイルもビリビリするようになるぞ!

紫色の床は滑る!次の床までつるーっと滑っちゃうぞ!だが、滑るだけではなく……レモンの匂いがつく!!ピラニアはレモンの匂いが嫌いだ!レモンの匂いなら、紫と青の床は通ることが出来る!

最後に、ピンクの床だ。これは……何も起きない!どんな時に通っても大丈夫だ」

 

相槌を打ちながら私は忘れないようにそれを反芻する。ここで忘れたら洒落にならん。……というか、床に水入ってるのってどういう原理になってんの?

 

「どうだ!?わかったか???」

 

その質問に、『Player』はもちろんと答えたらしく、フリスクは頷いた。

 

「よし!それじゃあ最後に言っておく事がある」

 

パピルスの言葉に、なぁに、と言わんばかりにフリスクは首を傾げる。

 

「このパズルはな……完全なランダムに組み上がる!!!」

「マジかよ…」

 

パピルスの言葉にフリスクは衝撃を受けたらしく、握っていた手に力がこもる。

 

「俺様がこのスイッチを引っ張れば……まったく見たことのないパズルができあがるのだ!俺様ですら解き方はわからない!」

 

……まぁ答え知ってるけど、バタフライエフェクトがないとは言い切れないためじっと床を見つめておく。

 

「ニェッヘッヘ!いくぞ……!」

 

そう言うとパピルスは機械を操作し始める。すると、床が鮮やかな色のタイルに変色していく。そして、変色していくのが早くなる。……さて、どうなる…?

 

ガシャン!!

 

という音がして、変色が止まる。……ゲーム通りに赤とピンクのタイルで。

 

「………」

「………」

 

私達が呆然としていると、パピルスはくるくると回りながら退場していった。……あれどうやって進んでるんだ…?

 

「……えっと、通りやすいやつで良かったなー…」

「せやな」

 

なんとか言葉を見つけたフリスクがそう言った。

タイルの上を変わらないうちに渡ってしまう。途中、好奇心で赤色のタイルを踏もうとしたが、マジで通れなくなっていた。……どうなってんの?

 

「実は、あのスパゲッティは大分前からあったんだ……」

「あ、そうなの?」

 

無事タイルの上を渡り終えると、サンズがそう話しかけてくる。

 

「俺の兄弟が作ったにしちゃいい出来だったと思うぜ」

「……その言い方、パピルスってもしかしてメシマズなの?」

「おう。あいつは料理の練習を初めてから、かなり成長したんだ」

「マジか」

 

うん、まぁ知ってたけどな。

 

「あの調子なら来年には食えるものが出来るだろうよ」

「へぇ、楽しみだね」

 

……まぁ、サンズにとって『来年(未来)』なんて有って無いようなものなんだろうけどな。

そう思いながら話を切り上げる。

 

「じゃあね」

 

サンズに別れを告げ、先に歩きだすフリスクの後を追った。


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