【Lily】
道なりに進んでいくと、ゲームでも見た長い一本橋が現れる。……あ、この橋の下にカメラ仕掛けられてるんだっけ。
カメラの存在を思い出し、橋の下に目線を向けると、こちらにレンズを向けているカメラを見つける。…やっぱあったな。
「お姉ちゃーん?なんかあったのー?」
「何でもない、今行くよー」
カメラから視線を反らし、橋を渡り始めていたフリスクに続いて橋を渡る。……あ、すげぇ眺めいいわここ。あと全く揺れない。魔法で補強してあるのか?
「……あ、パピルスとサンズだ」
橋からの眺めを楽しみながら歩いていると、フリスクが橋の終わりにいるパピルスとサンズに気が付き声をあげた。パピルスもこちらに気づいた素振りを見せる。
「人間!これが最後の一番危険なチャレンジだ!!見よ!命にかかわる恐怖の一本橋!」
パピルスがそう言うと、上からモーニングスターの砲弾と槍と犬が吊るされ、下からは火炎放射機と槍と砲台がセットされる。……下からは分かるけど上はどうやって吊るしてんだ?機械とかなんもないぞ…?あと何で犬が居るんだよ。
取り敢えずツッコミたいことは多々あるがそれを飲み込み話を聞く。
「そして俺様が合言葉を言うと、起動するのだ!!砲弾が襲い!トゲは激しく揺れ!刃がお前を切り刻む!全てが暴力的にまで動くぞ!」
想像しただけだけど軽くスプラッタだわそれ。R-18Gやん。
「生き残る術はほとんど無い!!!」
だろうよ。殺しに来てるもんこれ。誰だこんな残虐トラップ作ったヤツ。
「準備はいいか!?」
「あ、心の準備がちょっと…」
「しかし!今!から!ヤバイ事!始めちゃうぞ!」
「無視!?」
私の声が小さくて対岸には聞こえなかったのか、パピルスはトラップを作動させようとする。
………しかし、トラップはいつまで経っても作動しなかった。
「………で?なんだよこの間は」
仕掛けが動かず不思議そうにしているフリスクと一緒に首を傾げていると、サンズがパピルスに声をかける。
「間!?なんだって!?今からやる所だ!!い…いま起動しているところなのだ!!」
パピルスがそう言うので待ってみる。……が、また妙な間が空いただけで何も起きなかった。
「………んー、っと、動いていないように見えるんだが」
またサンズがパピルスに声をかける。
「えーっと!!!このチャレンジは!!!うーんと……ちょっと……人間を倒すには簡単すぎたかなって」
パピルスは観念してそう言った。……本当優しいなぁ、パピルスは。
「そうだな!やっぱりやめるぞ!!!」
パピルスは大きな声でそう宣言する。
「俺様は良識のあるスケルトンだからな!!!俺様のパズルはみんな公平なんだ!俺様のトラップは巧妙に作られてるのだ!だけどこのやり方は物理的すぎるよな!」
うんうんと頷いておく。……よかったよスプラッタにならなくて。
「下がってよーし!」
そうパピルスが声をかけると、するするとトラップは引っ込んでいった。
「フゥー!」
後ろを向いて大きな声で息を吐くパピルス。……傷つけなくてすんだことに安堵しているんだろうか。……それともトラップが故障してただけなのか?
ちらりとフリスクを見ると、きょとんとしてパピルスを見つめていた。
「何を見ている!!これもまた俺様の決定的な勝利なのだ!!!ニェッ!!ヘッ!!……ヘッ???」
……最後なんかイントネーション違くなかったか。というかいつの間に勝負してたっけ私ら。
余計な事を考えながら去っていくパピルスを見送り、姿が見えなくなった所で橋を渡りきる。渡り終えると、フリスクはサンズに話しかけにいった。
「あいつが何をしようとしてるのかさっぱり分からん。俺だったら、とりあえずブルー攻撃の対策を考えておくな」
なかなか上手い言い回しだなと私は思った。この言い回しならサンズが言っていた『止まっていれば当たらない攻撃』のことだと勘違いしやすい。だが、実際は『ソウルを青くする攻撃』のことを言っている。……流石としか言いようがない。
「忠告ありがとう。じゃあね」
話は終わりだと言わんばかりに口を閉ざしたサンズに手を振り、雪を踏みしめて先に進む。
……ようやくスノーディンの町についたのかと、少し安堵した。