【Lily】
街に入ると、空気がほっとするような物に変わる。……やっぱ非戦闘区域だからかな?空気が穏やかだわー……
戦闘でちょっと荒んだ心を癒されつつ、 『ようこそスノーディンの街へ』と書いてある掲示を通りすぎる。……やっぱ自動翻訳かかってんな。
「……さて、まず何処から見に行く?」
「んー………このお店!」
そういってフリスクは一番近くにあった店に入っていく。それに続いて私も入る。……あ、ここでバンダナ売ってたっけ?買わないとな。
「ようこそ、旅人さん。いらっしゃい」
「どうも」
店に入ると、兎のモンスターが出迎えてくれる。……へぇ、中はこうなってるんだ。
中をキョロキョロ見渡していると、彼女は驚いたように目を丸くさせる。
「あら!スノーディンへようこそ!新顔がここに来た、なんて何年ぶりかしらね。どこから来たのさ?首都?観光客っぽくはないわね。二人で来たのかい?」
「はい」
あ、案外マシンガントークやなこの人……
若干頬が引き吊るのを感じながら、頷いておく。
「あの、売り物、どんなものがありますか?」
「あぁ、何が欲しいのかしら?」
彼女からの追及を避けるため、話を逸らして商品を見せてもらう。……一つだけ、腹筋のマークが書いてあるバンダナが置いてあった。
「………あの、これいただいていいですか?」
「ん?これかしら?50ゴールドだよ」
「えーっと………これでいいですか?」
レッサードッグからもらった60ゴールドから代金を出して彼女に手渡す。彼女は金貨を数え、数え終わるとにっこりと満面の笑顔でバンダナを差し出してくる。
「お買い上げありがとさん。はい、どうぞ」
「ありがとうございます」
それを受け取り、思わず見つめる。……これで三番目の子の装備は揃ったな。ごめんね、借りるね。
「お買い上げありがとさん。またおいでなさいな!」
「あ、フリスクちょっといい?」
買い物が終わったらしいフリスクを呼び止める。バンダナを広げて柄が見えないように裏返し、フリスクの首に苦しくならないぐらいに巻き付けて後ろで縛る。……というかシナモンバニー本当に美味しそうだな。
「はいよ、マフラー代わりに巻いておけばそこまで寒くないでしょ?」
「……うん、ありがとうお姉ちゃん」
フリスクはにっこりと笑ってそう言ってくれた。……パピルスとお揃いの巻き方っぽくなったのは気にしない方向でいこう、うん。
店を出て買ったシナモンバニーとバイシックルをリュックにしまい(またちょっと重くなった)、背負い直してフリスクに訪ねる。
「次何処行く?」
「んー……さっきの兎の人が言ってたんだけど、隣は宿屋さんなんだって。それは後にして……うん、先に図書館に行こう!」
そう言ってフリスクは箱の隣の光に触れ、空中で何も無いところに手をさ迷わせ、目についたらしいかまくらっぽいものの看板を読み始める。……やっぱり触れた人にしかセーブ画面は見えないようになってるのか。
光から目を逸らし、フリスクに近づいて私も看板を見る。
『町外れまで歩くのは面倒?そんな時は雪下トンネル!効率的な設計になってるよ』
なんだろうこの雑なテレフォンショッピングみたいな書き方……
私が思わず顔をしかめながらそう思っていると、フリスクが私のパーカーの裾を引っ張る。興味を示したらしいフリスクがうずうずしながらこっちを見ていた。
「……入ってみてもいい?」
「いいよ」
「やった!」
まぁ可愛すぎる妹の頼みを断れるはずがなかったよネ!
快くOKを出すと、フリスクは穴の中に入っていく。確かパピルスとサンズの家辺りに出口があったはずと思い、出口の方を見ると、さっき入ったばかりのフリスクがもう穴を抜け出てきていた。はえぇなおい。
ぶんぶんと嬉しそうに私に手を振るフリスクに手を振り返すと、向こうの穴に入り、すぐにこっちの穴から顔を出す。……だからはえぇよ。
「どうだった?」
「あっという間で楽しかったよ!お姉ちゃんもやったら?」
「あー……私は遠慮するわ」
「そっかー」
嬉しそうに話すフリスクの誘いを断っておく。……いや、やってみたいけどここで遊んでたら先に進めないじゃん……?
一回ちらりとかまくらを見て、フリスクは立っている住人達に話しかけにいく。それを横目で見ながら、私も町を探索しはじめた。