【Lily】
しばらくすると、パピルスは私をもう一度ぎゅーっと抱き締めてから、もう大丈夫だ、と言って離れていった。
「ん、もう平気?」
「あぁ、大丈夫だ!!ありがとうな、人間!!」
さっきとは見違えるほど明るい笑顔でパピルスは言う。……花が咲いて見えるような笑顔ってこんな感じの笑顔のことを言うんだろうか。さすがリアルスター。
心の中で考えながら、私はパピルスの頭をもう一度撫でる。
「にぇ~……」
幸せそうに目を細め、パピルスは頬を緩ませる。激かわか。
心がぴょんぴょんするのを感じながら、私はパピルスの頭から手を退け、布団を整える。
「そういえば、あの小さい人間は何処に行ったんだ?」
「あぁ、ほら、私リュック投げっぱなしだったでしょ?それ取りに行ってもらったんだよ。もうそろそろ帰ってくるんじゃないかな?」
そんな風に談笑していると、今度は普通に扉が開いた。
「ただいまー」
「おー、おかえりー。ありがとね、取ってきてくれて」
「どういたしまして!」
部屋に入ってきたのはリュックを持ったフリスクだった。お礼を言えばフリスクはにっこり笑い、そして持ってきたリュックを私に渡すと、口をパクパクと動かしてパピルスに何かを言う。
「……あぁ、ちゃんと仲直りできたぞ!!」
……仲直りできたか聞いたのか。………ん?まさかこの子……
ふとフリスクに目線を向けると、グーサインをパピルスに気付かれないようにしながらこちらに向けて出していた。……やっぱ取り持ってくれたのフリスクだったか。ということは、この子扉の外で会話聞いてたな?
フリスクの頭を撫でてお礼の気持ちを伝える。先程のパピルスと同じように幸せそうに目を細めながらフリスクはそのまま動かなかった。かわいい。
「………あ、そういえば」
「? なんだ?」
ふと、疑問に思った事をパピルスに聞く。
「この子とデートするんじゃなかったの?」
「………そうだったな!!」
デートの約束を思い出したらしく、少し顔を赤くしながらパピルスは言う。
「え、でもお姉ちゃん……」
「あー、私はここで飴でも舐めながら見てるよ」
戸惑うように私を見るフリスクに飴の包みを剥がしながら言う。
「………二人一緒じゃないのか?」
「パピルス……デートってさ、一対一でするもんなんだぜ……?」
「そうなのか!?」
パピルスの疑問にツッコミを入れてから私はフリスクを引き寄せてこそっと耳打ちする。
「………友達になりたいんでしょ?チャンスじゃない?」
そう言えば、フリスクははっとしたような顔をしてから少し考えこむ。しばらくすると、フリスクはこくりと深く頷き、パピルスに向き直る。そして、パクパクと口を動かした。
「………!!!そうだな!!」
どうやらデートフラグは成立したらしく、パピルスが頷く。
二人を見守りながら、私は包みを退けた飴を口の中に放りこむ。……ん、うま。
「それじゃあ……デート、スタートだ!!!」
パピルスの掛け声とともに、世界が白黒に切り替わった。