※乱文注意
【Lily】
DATE START!!!
いつものアナウンスでデートが始まったことが告げられる。……なんか心なしかアナウンスさん楽しそうに感じる。あ、実況そして解説は僭越ながら私リリーが務めさせていただきます。
『よーし!!デートを始めるぞ!!』
明るい声でパピルスが言う。
『実は俺様、こういうのは初めてなんだ』
安心しろ、フリスクも私もデートしたことない。
パピルスの発言に心の中でツッコミを入れる。
『だが心配するな!!俺様の辞書に「準備不足」の文字はない!!!』
そう言ってパピルスはシュバッと一冊の本を取り出す。……おう待て、その本どっから出した。
『図書館からデートマニュアルを借りてきたのだ!!!きっと最高の時間になるぞ!』
「なんで図書館にそんな本があんの………?」
思わず真顔でツッコむ。………普通ないよね?
デートに熱中しているらしいパピルスには私の発言は聞こえなかったらしく(まあ小声だったしね)、パピルスはそのままデートを続けて本を開く。
『なになに……ステップ1……Cキーを押して「デートパワー」を集めてくれ』
メタ発言キター。思わず心の中でツッコミを入れる。……つかゲームの時も思ったけどデートパワーってなんや。
口の中で飴を転がしながら見ていると、『Player』は言われた通りCキーを押したらしく、ゲームだった時のように色々なメーターが表示される。………うん待って、犯罪って何?つかリールあったっけ?あと人口関係ないよな?……ちなみに日付と時間によって変わる所は何故か見えない。……まぁ、そりゃそうか。
『ワーオ!!分かったような気がするぞ!!』
分かんなくていいわ。
本を持ちながら言ったパピルスにツッコミを入れかけたのを飲み込む。……黙っとかないとぐだぐだになるよね、うん。
『ステップ2に進んでも良さそうだな!!!』
「せやな………」
若干遠い目になりながらパピルスに同意すると、パピルスはまた本を読み始める。
『「ステップ2……相手をデートに誘おう」』
……マジでなんで図書館にデートマニュアルがあるのか管理人に問い詰めたい。思わずそう思う。何故あるし。
『コホン!』
本を一回しまい(何処にしまったのかが気になるが置いといて)、パピルスは小さく咳払いをして顔をキリッとさせる。……ちょっとかわいいと思ったのはナイショ。
『人間!!このグレートなパピルス様は……お前と親密なデートをしたいぞ!!!』
フリスクはパピルスのその言葉にこくりと頷く。
『ほ、ほんと???キャー!!!』
目をキラキラさせながらパピルスは頬に手をあてて嬉しそうに笑う。……なかなかかわいいな、うん。
『じゃあパート3に進むぞ!!』
その言葉にフリスクはまた頷く。
『「ステップ3……素敵なファッションを披露しよう」』
そこまで読んでパピルスははっとしたように本から顔をあげてフリスクを見る。
『……ちょっと待てよ。「素敵なファッション」か……お前のその今装備しているバンダナ……もう既に素敵なファッションをしていたというのか?』
パピルスの言葉にフリスクはこれ?と言わんばかりに首に巻いてあるバンダナを指差す。
『待てよ……そのファッション、今日はずっと装備していたな?』
フリスクは頷いてからそれがどうしたか聞くように首を傾げる。すると、パピルスは頬を赤くして手をまた頬に当てる。
『もしかして……お前は最初っからデートする気満々だったのか!??』
え、と言わんばかりにフリスクの動きが一瞬固まったが、フリスクは直ぐに頷く。すると、世界が雷を受けたかのように一瞬明るくなった。……うわまぶしっ
『そんな!!!全部計画通りだったなんて!!!』
衝撃を受けたかのようにパピルスは目を見開く。……待った、スケルトンに目玉ないはずなのになんであんの?
『俺様よりデートの達人じゃないか!!!』
「いやそんなことはな『ぐわー!!凄まじいデートパワー……!!』聞いて!!?」
思わずフリスクと一緒に首を横に振るが、パピルスは気付かなかったらしく私の発言が食いぎみに遮られる。……あれ、前にもこんな事なかった……?
遮られてショックを受けていると、パピルスの頭上に『DATE POWER』とかかれたゲージに青いものが貯まっていく。
「…あ、ちなみにパピルスとおんなじ巻き方だぞー」
「そ、そこまでか!?」
遮られたショックから直ぐに立ち直って、外野から補足(という名の野次)を入れてみると、パピルスは一層驚いた顔を見せた。……あ、ちょっとデートパワーが増えた。
『ニェッ!』
はっとしたようにパピルスは我に返る。
『ニェーッヘッヘッ!!』
そして一瞬焦ったようにしてから彼特有の高笑いをあげた。
『これで勝ったと思ったら大間違いだぞ!!』
いや別に思ってないけど……
思わずツッコミを入れる。彼がそう言っているうちに横からすすーっと『テンション』とかかれた折れ線グラフがフェードインしてくる。……うわっ、上がり下がり激しいなおい。
『俺様、偉大なるパピルス様は……今までデートで負けたことはないし、これからも無敵だ!!!』
まぁ一回もデートしたことがないならそうだろうな。思わず出かかったツッコミを飲み込み、状況を見つめる。……というかいつの間にデートって勝負になったんだろう。あれか、『惚れた方が負け』的な感じか?
『お前のペースに合わせるなんて簡単だ!!!』
そう言ってパピルスはカッコつけるように顔をキリッとさせる。
『見てろよ、俺様も、服くらい、着れるからな!!!実際……普段着の下にはいつも勝負服を着ているからな!!いつデートになってもいいようにな!!!』
いやそんな勝負下着みたいに言われても……と思わず思った。……というか動き辛くないのかそれは。
『見よ!!』
そう言って今度はパピルスがフェードアウトしていき、すぐにまたフェードインしてくる。……例の肩がバスケットボールになってる服に着替えて。……いや、脱ぐだけにしても着替えんの速すぎない?瞬間早着替えかなんかか?
『ニャハー!どうだ、このとっておきファッションは!!』
心の中でツッコミを入れていると、パピルスはそう言って胸を張る。『Player』は『好きだ』って答えたらしく、フリスクは直ぐ様グーサインを出す。それを見てパピルスはまた目を見開いた。……だからその目玉は何処にあったんだよ。
『なんと………!!!真剣に褒めてくれたぞ……!!!』
そう言うとまたフラッシュが走り、『DATE POWER』のゲージがまた貯まっていく。その直ぐ後にテンションゲージがフェードアウトしていった。
『だがな……』
若干目をそらしながらパピルスが続けた言葉にフリスクは首を傾げる。
『この服の真の力をお前は知らない!!!』
そんなRPGの装備の効果みたいに言われてもな……と遠い目をしながら思う。
私は口の中で小さくなった飴を噛み砕き、もう一つ飴をリュックから取り出す。
『よって……今のはノーカンだ!!!』
パピルスがそう言うと、『DATE POWER』のゲージが巻き戻っていく。そんなのありなのか……?
『これ以上ゲージは伸びないぞ!!!………俺様の秘密に気付けば話は別だがな!!!』
秘密?と言わんばかりにフリスクは戻した首をまた傾げる。………うん、かわいい。
『まぁ無理だろうな!!!』
パピルスがそう言うと、フリスクはムッとしたような顔をしてパピルスに近付いて体をペタペタと触り始める。……探しだしてやろうとムキになってら。あとパピルスちょっと恥ずかしがってね?
飴を口の中に放りこみ、状況を見守る。フリスクが上半身の方を調べようとすると、パピルスがそれに応じてしゃがんだりしているのを見て心が暖まった。……ゲームではなかったからね、そういう描写。
しばらくすると、『Player』は帽子を調べたらしく、フリスクは帽子を指差した。
『俺様の帽子……?俺様の帽子……俺様の帽子!』
正解だと言わんばかりにパピルスは彼特有の高笑いをあげる。すると、パピルスが被っていた帽子が上に浮いた。……もう一度言う、上に浮いた。……え、マジック?いや魔法か……?
『そ、その……遂に俺様の秘密を見つけたようだな!!!こうなっては仕方があるまい!!』
少し恥ずかしそうにしながらパピルスは帽子の下から出て来た箱を持つ。……よく潰れなかったな。
『このプレゼントは、お前へのプレゼントだ!!!』
その言葉にフリスクは一瞬固まり、それから自分の事を指差す。そしてちょっと照れ臭そうにしながらパピルスから箱を受け取り、リボンをほどく。……中には、パスタが入っていた。
『これが何だか分かるか?』
いやーちょっとワカラナイデスネーと言わんばかりにフリスクは首を横に振る。
『ニェッヘッヘ!残念でした!騙されたろ!』
え、と言わんばかりにフリスクは固まる。……微妙に顔が見えない位置だから感情が分かり辛い。
『これは一見パスタのように見えるけども……ただのパスタじゃないぞ!!』
結局パスタやん、と言いかけるのを飲み込む。……あ、また『DATE POWER』ゲージがフェードインしてきた。
『このパスタはもはや芸術!オーク樽でじっくり熟成させた贅沢パスタ……』
パスタって熟成させるものだっただろうかと思案する。……あれ、するもんだったっけ?
『そしてマスターシェフ、パピルスによる調理!』
ただしアンダイン式である。と脳内でパピルスの発言に補足を加える。
『人間!!とうとうクライマックスだな!!!これがとどめだぞ!!』
フリスクはパピルスとパスタを交互に見比べる。そして、手を合わせて口を少し動かすと、フォークでパスタを絡めとって口に運んだ。……あ、顔が渋くなった。
その(パピルスから見て)迷いない動作にパピルスは目を見開く。
『なんという情熱的な表情だ!!!』
どこがだ……という目線をパピルスに送る。するとこちらの目線に気付いたのか、パピルスは小さく手を振った。……うんまぁそういう意味じゃないけど取り敢えず手を振り返しておく。
『気に入ってくれたのだな!嬉しいぞ!』
そう言ってパピルスはフリスクに向き直り、頬を赤くする。
『そして料理だけではなく!!!俺様の事まで好きだなんて!!!』
パピルスがそう言うと、またフラッシュが走ってゲージがあがっていく。……あ、これ自滅?
『うわぁぁ!!』
またフラッシュが走る。……目がいてぇ。
『おごぉぉ!!』
事前にフラッシュが走る前に瞼を閉じた。……あ、眩しくない。
『んのおおおおお!!!』
パピルスが叫び声をあげると、ゲージはMAXを越えて伸びていった。……お、もうそろそろかな?
『……人間。これではっきりしたぞ』
だんだん白くなった部屋の中で、パピルスの声がする。
『お前はもう俺様に夢中なんだ。』
……フリスクの今超困惑した顔してんだろうなとなんとなく見当をつける。……結構すれ違ってるもんな……
『お前のやること。お前の言うこと何もかも。全部俺様のためだったのだな。』
それはどうなんだろうか……と心の中でツッコミを入れる。
『人間。お前にも幸せになってほしいんだ。……俺様の気持ちを打ち明けるぞ。』
決心したような声でパピルスは言う。
『聞いてくれ。人間。俺様は、パピルス様は……』
そこで、また白黒の世界に戻る。
『俺様は…んん……なぁ、ここら辺熱くないか?俺様だけか??』
一瞬戸惑ったようにしてから、パピルスは話を逸らすかのように違う話題を口にした。
『………。……ああ、もう……』
そして、気まずそうにパピルスはフリスクから目を逸らす。
『人間、その……すまん』
そして、本当に申し訳なさそうに断りの返事を返した。
『お前が俺様を愛しているほど、俺様はお前を愛していない。恋愛対象として見てはいないのだ』
え、何この空気……と言わんばかりにフリスクはキョロキョロと辺りを見回す。……というか、今日会ったばっかで好きになれる奴なんて早々居ないわな……初対面で口説く奴も早々居ないけど。
『でも、ものすごく頑張ったんだぞ!お前が口説いてきたということは……お前とデートしなくてはならないということだと思って。』
目をキョロキョロと動かしながらパピルスは言う。
『そして、デートの中で恋の花が咲くと思い込んでいた!!!そうすればお前の情熱に応えられるとな!』
また顔を赤くしながらパピルスは続ける。
『だがしかし……この、偉大なるパピルス様も……失敗してしまった。今までと全く同じ気持ちだ。』
パピルスはまたフリスクから目を逸らながら言う。……一瞬とある漫画思い出したのは内緒な。
『そして、お前とデートしてしまったせいで……さらに深くお前を……俺様への愛の中へ引き込んでしまった!!!』
申し訳なさそうな声でパピルスは続ける。
『逃れられない情熱の牢獄の、奥深くへ』
なんかカッコいい例えだなというズレた感心を抱く。……いや普通そんなこと言える奴いないぜ…?
『大切な友達に俺様はなんてことを……?』
そこでパピルスはふと何かに気付いたかのように考えこむ。
『いいや!待て!それはおかしい!』
そして大きな声で叫ぶ。
『俺様は何も間違えないのだ!!!人間!!!この苦境を乗り越える助けになってやろう!!!』
困惑したらしいフリスクが助けを求めるように私を見る。………私もこのカオスをどうしたらいいか分からないという意味を込めて首を横に振ると、フリスクは諦めてパピルスに向き直った。
『俺様はクールな友達として……このことは全部なかったことにする。』
フリスクに気を遣うような声音でパピルスは続ける。
『何と言っても、お前は最高にグレートだからな。お前の友情を失うことこそが悲劇なのだ。だからどうか……キスをしてやれないからといって泣かないでくれ。』
別に泣かんと思うけど………と口にしかけるのを何とか飲み込み、そのまま話を聞く。
『だって、そもそも俺様唇ないし。』
「せやな」
パピルスの言葉に同意する。……いやあったらこえぇよ。もう殆ど別のクリーチャーじゃねぇか。
『それにな、いつか俺様と同じ位グレートな誰かが見つかるぞ』
あー、だろうな……と私は密かに思う。フリスクかわいいし。絶対にその魅力が分かってくれる奴がきっといると私は思う。………遊びで手ぇ出そうとしたら容赦しないけどな。
『ん、いや、それは違うか……だが二番目として、お前を支えてやることは出来る!!!』
そう言ってパピルスは彼特有の高笑いをあげ、またフェードアウトしていく。そして、何か忘れたように直ぐ様戻ってきた。
『あ、俺様と連絡が取りたかったら……』
パピルスはフリスクに何かの紙を渡す。
『これが俺様の番号だから……いつでも電話してくるといいぞ!!……友人的なお付き合いでな。よし、この辺にしといてやる!!!』
最後は困ったような顔で付け加え、パピルスはにかっと笑って高笑いをあげた。
そこで、世界に色が戻ってきた。