守りたいもの   作:行方不明者X

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※乱文注意


42.Snowdin通過

【Lily】

 

「お姉ちゃん、怪我はもう大丈夫?」

 

デートを終えた後、パピルスの電話番号を手に持ったままフリスクが尋ねてくる。

 

「おー、大丈夫だよ。念のため飴二個食べたしな」

 

そう言ってすっかり痛みの引いた体を動かし、パピルスのベッドから降りる。……うん、違和感とかはないな。

 

「………そう言えば、私のパーカーは?」

 

ふと、いつも着ている私のパーカーが何処にもないことに今更気付いた。

 

「あぁ、それなら……」

 

フリスクが何かを言いかけたところで、バンッと勢いよく扉が開く。

 

「パーカーならここだぞ!!」

 

入ってきたのは、私のパーカーを持ったパピルスだった。……あ、服元に戻った。

 

「切れていたりしたところがあったからな、縫っておいたぞ!」

「え、ごめん、わざわざありがとう……」

 

パピルスが掲げたパーカーは、私が気絶している間に縫ってくれたらしく、殆どの所の切り口が縫われてあった。

パピルスからパーカーを受け取り、袖に腕を通す。……おぉ、綺麗に縫われてら。ホント器用だな……

チャリ、と袖に手を通す時にずっと着けていた腕輪が擦れて音を立てる。

 

「あー……これ無くすと嫌だし外しとくか……」

 

腕輪を外し、パーカーのジッパーをあげる。

 

「……その腕輪、どうしたのだ?」

「ん、これ?」

 

パピルスが腕輪に興味を持ったらしく、声をかけてくる。

 

「自分で作ったんだよ。……ちょっとしたお守り代わりにつけてるのさ」

「そうなのか……」

 

水色、橙色、紫色、赤色、青色、緑色、黄色のそれぞれのハートが揺れる。……これは、私が作ったものだ。私の決意を示すためと、フリスクが幸せであるようにという祈りを込めただけの、ただの腕輪。……私の、決意。

リュックに腕輪をしまい、リュックを背負う。

 

「よいしょっと」

 

……あ、ちょっと軽くなった。

 

「……あ、フリスク、携帯とメモちょっと貸して」

「? はい」

 

フリスクから電話とメモを借り、パピルスの電話番号を登録する。……あ、これこうすれば登録できるやつだ。

 

ピッ

 

「!」

 

携帯を好き勝手に弄っていると、トリエルさんの携帯番号が表示された。

 

「………よし、登録出来たよ!」

「ありがとうお姉ちゃん」

 

何事もなかったかのように表示を消し、さっさと番号を登録してフリスクに携帯を返す。……そう言えば、トリエルさんの電話イベ、どうなったんだろう。

 

「……取り敢えず、間違ってないか確認の電話してみて」

「うん」

「パピルス、電話出しといて」

「分かったぞ!」

 

パピルスは返事をして電話を取り出す。……今どっから出した……?

 

プルルルル………

 

フリスクが電話をかけると、

 

プルルルル………

 

パピルスの手の中にあった携帯が振動する。

 

『「繋がったぞ!」』

 

パピルスが出て、電話が繋がる。……電話からと真正面からの声がハモって変な感じに聞こえんな。

 

「うし、大丈夫そうだな。しまっときな」

 

フリスクは私の言葉に頷くと、電話を切ってポケットの中に突っ込む。

 

「さて。……じゃあ、そろそろお暇しましょうかね」

 

私がそう言うと、パピルスは少し顔を曇らせる。それを気付かなかったフリをして、私は部屋のドアを開けようとする。

 

「………待て」

 

ノブに手をかけた瞬間、パピルスが声をかけてきた。

 

「………途中まで、送るぞ」

――――――――――――――――――――

【Papyrus】

 

「これでしばらく雪ともお別れかー」

 

ざくざくと、感触を楽しむかのように雪を踏みながら笑う人間。……もう少しで、この人間達は王様の所までいくのだろう。

 

「………待ってくれ」

 

Waterfallに続く一本道で、俺様は声をかける。

 

「ん、どうしたのPapyrus?」

 

俺様の声に応えて、人間は振り返る。

 

「……地上への道を教えてやろう!」

「え、ホントに?」

 

俺様がなんとかそう告げると、人間は驚いたように目を瞬かせる。

 

「洞窟の終わりにたどり着くまで進み続けるのだ。そして……首都に到着したら、結界を通るのだ。」

「結界……?」

 

小さな人間が不思議そうに俺様の言葉を繰り返す。

 

「そうだ。それが俺様たちを地下に封じ込めている魔法のカベだ。」

「壁か……」

 

少し考えこむように腕を組む大きい方の人間。

 

「結界に入るのは簡単だが、決して出ることはできない……ただし、強いソウルを持つ者だけは例外だ。……そう、お前たちのような!!!」

 

そこで大きな人間が顔を少し下に向けて雪を見つめる。

 

「だから王様は人間のソウルを欲しがっているのだ。」

「そうなんだ……」

 

顔をあげた大きな人間と、小さな人間が揃って納得したような顔をする。

 

「彼はソウルの力で結界を破ろうとしている。そうすれば俺様たちモンスターも地上に帰ることができる!」

 

俺様は思わず大きな声で言って、いい忘れたことがあったことに気付いた。

 

「……そうだ、言い忘れるところだったが……出口に辿り着くには、お前たち、は……」

 

ふと、そこまで言いかけて、目を逸らして忘れようとしていた恐ろしい事も思い出し、俺様は言葉を続けられなくなった。

 

「……どうしたの?」

 

大きな人間が、俺様が言葉に詰まったのに気付いて心配そうな顔をする。その顔から、俺様は目を逸らしてしまう。

……この人間たちが、また、傷付いてしまわないか、俺様は気付いてしまっていたのだ。

 

さっき、大きな人間を抱えた時、思わず無い背筋が寒くなるほど、冷たかった。

顔は青ざめて、目は硬く閉じられて。

………また、あんな風に、人間たちがならないのかと、俺様は

 

「Papyrus」

 

ふと、大きな人間の声が近くで聞こえる。そして、俺様の顔を下から見上げるようにして、傍に居た人間が、

 

「………大丈夫だよ」

 

俺様を元気付けるかのように、にっこりと笑った。

その笑顔に、俺様はとても安心した。……人間は凄いな、モンスターの気持ちが分かっちゃうなんて。

 

「……ゴホンッ、話の続きをするぞ人間!」

 

俺様は気を取り直し、人間たちに説明する。

 

「出口に辿り着くには、お前たちは王様の城を通り抜けなきゃならない。全てのモンスターを統べる王……彼は……その………

 

人間たちが真面目な顔になり、俺様を見つめる。

 

「彼はデカくてぼんやりしたお人好しだ!!!」

 

俺様の言葉に何故かガクッと躓いた人間たち。……石でもあったのか?

 

「そ、そう……」

「そうだぞ!!みんな彼のことが大好きなんだ。」

 

俺様は王様のことを想って誇らしい気持ちになる。……そうだ、あの王様が人間たちを傷つける訳ないのだ。

 

「お前たちはこう言うだけでいい。『すみません、DREEMURRさん……おうちに帰ってもいいですか?』

そうすればすぐに彼は自らお前を結界に案内してくれるだろう!」

「そう……」

 

相槌を打つかのように頷く人間。

 

「とにかく!!!話は以上だ!!!」

「そっか、ありがとうPapyrus、教えてくれて」

 

にっこりと、そっくりの笑顔で笑う人間たち。その顔に、俺様も思わず笑顔になる。

 

「俺様はいつでもクールなお前たちの友達だからな!!!いつでも戻ってきていいぞ!!!」

「あはは、ありがとう」

 

ボソッと小さく、大きな人間が笑った後に何か言ったような気がした。……きっと気のせいだな!!!

 

「じゃあね、Papyrus」

「またねー!」

「ああ、またな!!!」

 

俺様に手を振って、人間たちはWaterfallへと歩いていった。……途中、小さな人間が一度振り向いて、また俺様に手を振った。

 

「…………さて。」

 

…人間たちが見えなくなったところで俺様は振っていた手を降ろし、スカーフを巻き直す。

 

大きな人間の笑顔を思い出しながら、俺様は決意を抱く。

 

「Undyneに、報告(お願い)しにいかなきゃな」

 

……この先にはUndyneが待っている。彼女はきっと、人間を捕まえようとするだろう。だから、俺様は……

 

弱気になりそうになるのを頭を振って振り払い、俺様も歩きだす。

 

…………ニェッヘッヘ、俺様は、クールな友を守るのだ。




※彼って、一度体験したことがトラウマになりそうな性格だなと思って。ファンの方本当にごめんなさい

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