守りたいもの   作:行方不明者X

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43.デートと扉

【Lily】

 

パピルスと別れ、歩を進めていくと、次第に空気の温度があがっていき、肌を刺すような寒さから丁度いいぐらいの涼しさになる。

 

「お、丁度いいぐらいの気温になった」

 

そのまま横の川を流れる氷を横目で見ながら進んでいくと、大きな穴がぽっかりと口をあけていた。………ここから先がウォーターフォール、つまり、皆大好き正義のヒーロー寿司ネキことアンダイン姐さんとのリアル鬼ごっこである。………頑張らんと。

 

「お姉ちゃん?」

 

いきなり立ち止まったことを不思議に思ったのか、フリスクが振り向いて私に声をかけてくる。

 

「なんでもないよ、行こっか」

 

私はフリスクに笑顔を向けて誤魔化し、ウォーターフォールに足を踏み入れた。

―――――――――――――――――――

 

「……おぉ」

 

中に入って、洞窟の中の美しさに思わず感嘆の声が出る。……ゲームでも見た時綺麗だなと思ったけど、現実で見ると何時間でも見てられる程綺麗だわ。くそっ、カメラを持って来なかったんだ私は!!かわいいフリスクとこの美しい風景がマッチして素晴らしい一枚になっただろうに…!!!

 

心の中で血涙を流しつつ、私はモンスターキッド君に話しかけるフリスクの後をついていく。

 

「よっ!アンダインにこっそり会いに行くんだろ?」

 

いや会ったら殺されるわと出かかった言葉を飲み込み、モンスターキッド君に笑顔を作る。

 

「君も?」

「そうだぜ!カッケーよな……アンダインが一番だよな!?」

 

誰と比べてるかにもよるけどな……と思いながら、肯定の意味を込めて頷くと、モンスターキッド君は嬉しそうに目を輝かせる。かわいいな。

 

「だよな!!はぁ……おっきくなったらアンダインみたいになりたいよ……」

 

うっとりとしながらモンスターキッド君はそう言った。……慕われてんな寿司ネキ。

ふと、はっと何かに気づいたようにして慌ててモンスターキッド君は私たちに小さな声で囁く。

 

「なぁ、母ちゃんたちにはおいらが言ったことヒミツな」

「おー、わかったよ」

 

私が返事をすると、フリスクもいいよと言わんばかりに頷いた。

話が終わると、フリスクは次に魚人のモンスターに話しかけにいく。

 

「花を信用するな……それがこの世界の真理の一つさ……」

 

それは身に染みるほど知ってるよ………

とあるヤンデレクソ花を思い出して遠い目になる。……多分今も着いてきてんだろうな……

 

『この人生に価値を与えてくれるのはエコーフラワーを説明することだけなんて……絶対誰にも知られたくない……』

 

思いっきり知られてますがな。隣のエコーフラワーから聞こえてきた声に思わず心の中で突っ込みをいれる。……あ、ぼんやりと光ってて綺麗だなこの花。

 

「……この花、花の傍で話した事を録音出来るみたいだね!」

 

フリスクがエコーフラワーの美しい水色の花弁を触りながら言う。

 

「そうだね、じゃあ今話してるこの会話も録音されてんのかな?」

「どうなんだろうねー」

 

フリスクはニコニコ笑いながら花弁から手を離し、隣にあったセーブポイントに触れる。しばらくすると、セーブが終わったらしく、頬杖をついているサンズに話しかけにいく。

 

「よぉ。………何?仕事を掛け持ちしてる奴に会うのは初めてか?ラッキーなことに、二つ仕事があるってことは休み時間も二倍ってことだ。」

 

いやその理論はおかしくね……?と心の中でツッコミを入れる。……普通減らない?

 

「グリルビーズにでも行くか。お前も来るか?」

「!」

 

サンズの誘いにフリスクは思いっきり首を縦に振る。

 

「お前さんも来るか?」

 

サンズが私に目をやりながら言う。一瞬眼孔が消えたような気がする……怖いよ……

 

「あー……私はいいよ。此処で待ってるから二人で行ってきな」

「そうか。じゃあ、行くか」

 

顔が引き吊りそうになるのをなんとか耐え、サンズに笑顔を向けて誘いを断り、此処に残る事を告げる。

 

「ついてこい。こっちに近道があるんだ。」

 

サンズを見てからフリスクがちらりと気がかりそうに私を見る。

 

「……先行ったりしないよ。楽しんでおいで」

 

その言葉に一応安心したのか、フリスクはまだ少し不安そうな顔をしながらサンズに着いていった。一度、私が居るかを確認するためにか振り向いた。ちゃんと居るよという意味を込めて手を振ると、フリスクはまた前を向いてサンズに着いていった。

 

「………行ったかな?」

 

姿が見えなくなったのを確認し、振っていた手を降ろす。

………さて。これで調べられるかな?

 

私は、さっきから視界の端に見えていた本来此処にあるはずのない灰色の扉をノックした。


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