守りたいもの   作:行方不明者X

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44.より暗く、暗い場所で(Dark Darker yet Darker)

【Gaster】

 

 

 

……………――――コン、コン、コン

 

 

 

間の空いたノックが空間に響く。音が聞こえた方を見れば、あるはずのない灰色の扉が現れていた。

 

 

 

ギィ

 

 

 

扉が軋む音を立てて、扉が開く。そして、近付いてくるこの空間に入り込んだ人物は、よく見覚えのある顔の少女だった。

 

『………Chara王女?

「ちげぇよ」

 

溢した疑問に即答されて思わず目を見開く。呆れたようにこちらを見る少女は、一瞬見間違う程に似ていたが、確かにChara王女ではなかった。

そして彼女は、私の言葉がどうやら理解する事が出来るらしいと遅れて気付き、再度目を見開いた。

 

君は私の言葉が解るのかい?

「まぁな。……この空間のせいか雑音みたいなのが混じって聞こえにくいけど」

 

理解出来ない訳ではないよ、と彼女は付け足す。………彼女は誰だろうか。今更ながら、そんな疑問が湧く。

 

「………あぁ、そう言えば自己紹介がまだだったね。私はLilyだよ」

 

私の心の中を読んだかのように、彼女……Lilyは名を名乗った。

 

そうか、私の名は……

()()()()()、Gasterだろ?」

 

Lilyの口から私の名が出た事に驚愕する。……これまでのTimeline(今まで)で彼女に会った事など一度も無い筈。なのに何故、彼女は私の名を知っているのか。あの少女(Frisk)になら、何度か会った事があるが……何故?

 

「………何で私が貴方の名前を知ってるか不思議?」

 

思案しようとした私の事を見透かしたかのように彼女は言う。

 

ああ、不思議だとも。君とは初対面のはずだし、何故私の言葉が理解出来るのかも分からない。それに、君は本来此処に来れないはずだろう?それも分からない。

 

質問を肯定し、つらつらと次々沸いてくる疑問を並べる私を、彼女は只真っ直ぐに見つめる。

 

『………君は一体何者なんだ?

 

私は土のような色をした瞳を見つめ返す。すると、彼女は少し目を伏せ、

 

「………さぁね、何者なんだろうね、私は」

 

と、私の質問に答えた。

 

『………ふむ、自分でも分からない、か。実に興味深いな。

「はは、やっぱりアンタはそういう奴かよ」

 

私が純粋に興味を示せば、彼女は頬を引き吊らせながら乾いた笑い声をあげる。そして、真剣な顔をして私を見る。

 

「そんなアンタだからこそ、協力してほしいことがあるんだけど」

『………ほう。

 

彼女は私に取引を持ち掛けてくる。

 

「協力してくれたら……そうだな、私が知ってる範囲であれば何でも教える」

例えば?

「例えば?……そうだな、この世界についてとかどう?」

 

………この世界について?

私はその言葉に興味を抱く。

 

「………あはは、気になる?」

ああ、とてもね。

「そう。じゃあ、取引する?」

 

私はニヤリと笑って手を差し出してきた彼女を暫し見つめ、思案する。

 

………彼女と取引を結んだとして。彼女が話す情報はどれぐらいだ?そのメリットは?デメリットは?

 

 

そうしばらく悩み、私は………

 

『………よろしく頼むよ、協力者君

 

彼女の手を取った。

 

「あはは、こちらこそよろしく、博士」

 

手を握り返した彼女が言った『博士』という言葉に思わず目を丸くする。………あぁ、博士なんて呼ばれたのはいつ以来だっただろうか。ふと、遺してきてしまった二人を思い出す。彼らは元気にしているだろうか。

 

「さて、まずは情報交換しようか。じゃあまず最初に……」

 

彼女は胡座をかいて座り込み、私に情報を与え始めた。




彼が言う二人とは、とある兄弟の事です。

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