守りたいもの   作:行方不明者X

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53.Waterfall探索⑥

【Lily】

 

ナイスクリームさんに会ってまた一本アイスを買い、元の道に戻ってくる。………さて、どこから行こうか。次のエリア広いんだよな……

 

私がアイス片手に思案していると、フリスクが立っていたかざんちゃんに話しかけにいく。

 

「星ってなに?」

 

可愛い声でゲーム通りの台詞が口にされる。

 

「さわれるの?たべられるの?ころせるの?」

 

そして、最後にかざんちゃんはフリスクをじっと見て、

 

「きみは星なの?」

 

と、純粋な瞳で訊ねた。

 

「………違うよ。この子は、星じゃない」

 

私はフリスクの傍に行って、かざんちゃんに笑いながらそう返した。

 

「……ふぅん。じゃあ、きみは?」

「私?私も違うよ」

「そっか」

 

私が笑顔のまま答えれば、かざんちゃんは納得したように頷き、口を閉ざした。……この子を、星になんかしてたまるか。

 

「……さて、どっちから行く?」

「うーん……こっち!」

 

芽吹きそうになった思いを振り払って私が問えば、フリスクは橋がかかっている方を指差す。……あー、先に行く方を選んだか。

 

「オーケイ、行こうか」

「うん!」

 

橋を渡って、私達はまた進みだした。

―――――――――――――――――――

次のエリアには………確か、エコーフラワーがあるんだっけな?

思い出しながら、淡く発光する川の流れを目で追う。………綺麗だけど、どうやって光ってんだろうこれ。

 

そう考えながらまた橋を渡って対岸に着くと、フリスクは視界に入ったらしいエコーフラワーに近付いていく。

 

『……えっ?願い事何もないの?』

 

私も近付いて耳を澄ますと、子供の声が聞こえてきた。

 

『………うーん、ひとつある、けど……ちょっと馬鹿らしいから』

 

次のエコーフラワーから、会話の続きであろう声が聞こえた。……お願い、か……

少しセンチメンタルになりつつ、右に曲がって歩いていくフリスクの後に続く。……あ、この道って、確か……

 

「…? お姉ちゃん、草むらがあるよ」

「本当だ。………なんであんなとこにぽつんと……」

 

道を進むと、光るキノコと草むらが見えてきた。……ここ、四番目の子の武器のエリアか。

草むらに興味を持ったらしいフリスクが、近付いていってガサガサと中を掻き分け、何かを持って戻ってくる。

 

「お姉ちゃん、これ、トウシューズだよね?」

「せやな。………どうする?履く?」

「ううん、やめとく」

 

持ってきて見せてくれたのは、所々汚れているトウシューズだった。……あーぁ、土汚れがついてら。

 

「私が持っとくよ。貸して?」

「うん。……あと、これもいい?」

「ん?もちろん」

 

私がフリスクからトウシューズを受け取って土汚れを払っていると、フリスクは履いていたチュチュを渡してきた。

 

「履いてなくていいの?」

「うん。これだけでいい」

 

そう言ってフリスクは首に巻いたままだったバンダナに触れた。………大方、パピルスに言った事を嘘にしちゃいけない、と『Player』は考えたんだろうな、と予想をつける。『Player』には見えていなくても、フリスクはバンダナ着けてるのにね。

どうやらゲームとは違い、フリスクが装備を着けても、先に着けていた装備は外れないらしい。……『Player』には外してるように表示されているんだろうけど。

 

「……わかった、じゃあしまっとくね」

 

リュックを降ろし、チュチュとトウシューズをセットにして入れる。そして、また背負い直す。……ごめんね、ちょっと借りるね。

 

心の中で謝りつつ、来た道を戻る。そして、また右に曲がって進み、曲がり角で、

 

プルルルル……

 

電話がかかってきた。……あぁ、電話イベか。

フリスクはすぐにポケットから携帯を引っ張り出し、電話に出る。すると、

 

『もしもし!こちらパピルス!!!』

 

明るいパピルスの声が聞こえた。今度は加減したらしく、フリスクは耳から携帯を離さなかった。そして、フリスクはどうしたの、と言わんばかりに少し首を傾げる。

 

『服装のこと聞いたの覚えているよな?』

 

パピルスの言葉に、フリスクはコクリと頷いた。そして、どうしてと言わんばかりにまた首を傾げる。

 

『いや、友達がお前たちのこと知りたがっててな……』

 

『友達』という言葉に、私はアンダインのことだと理解する。分かってたけどね。

 

『彼女のお前たちへの印象は……最悪なんだ』

 

まぁそうだろうな、とパピルスの言葉に内心頷く。……ゲームだった時の彼女の言葉を解釈させてもらうなら、『人間は自分たちの夢を邪魔する悪役』だもんな。

 

『けどお前たちだってとっくに知ってるよな!』

 

その言葉でフリスクもアンダインのことだと察したらしく、深く頷いた。

 

『そして分かってると思うが……さっき俺様は彼女にお前の服装を話した!例のバンダナを!』

 

パピルスは少し罪悪感を滲ませた声でそこまで言う。

 

『わかってる、わかってる……あんなわざとらしい質問をしたんだから……お前たちはもうきっと服装を着替えているよな!!おりこうさんだ友よ!』

 

電話越しに聞こえた言葉に、フリスクは顔に少し罪悪感を滲ませた。……着替えてないしな。

 

『これでお前たちは安全だし俺様は嘘をついてない!!!誰も何もだましていない!!!』

 

最後の言葉が自分に言い聞かせるような言葉に私には聞こえた。………きっと、アンダインに服装のこと話してから気が気でなかったんだろうな、と思った。

 

『みんなと友達になるぐらい簡単だ!!!』

 

何故か、また私には自分に言い聞かせているように聞こえた。……思い詰めないでほしいと、言いたかった。

 

『………すまない、人間。大きな人間に代わってくれないか?』

 

ふと、そこで切れるはずだった会話が続く。パピルスの言葉に頷いたフリスクが私に携帯を差し出してくる。……私か。なんだろう?

 

「………もしもし?」

『おぉ!!出たな人間!!』

「いやそんな怪人が出たみたいに言われても……」

 

携帯を受け取り、話しかけてみると、パピルスの声が近くでした。

 

「それで、どうしたの?」

『……あー……えっと……』

 

私がパピルスに本題を聞くと、パピルスは話し辛そうに言い淀む。

 

『…………怪我とか、してないか……?』

 

しばらくして携帯から聞こえたのは、こちらを心配する声だった。

 

『……実はな、彼女にお前たちのことを話してから、気が気でなかったんだ』

 

ぽつりと、パピルスは言う。

 

『……また傷つかないかって。………怖かったんだ』

 

正直に、パピルスは話す。

 

『俺様は、また……友達を傷つけたのかって』

 

そこまで聞いて、私は内心で頭を抱えた。……どうやらというか、やっぱりというか、私がぶっ倒れたのはパピルスにとってもかなりのショックだったらしい。

 

『………怪我、してないよな……?』

 

らしくない沈んだ声で、パピルスは訊ねてくる。……その優しさに

 

「うん、大丈夫。怪我してないよ」

 

私は嘘を吐いた。

 

『そうか!!それを聞いて安心したぞ!!!』

 

そう答えると、電話の向こうの声が、いつも通りの明るい声になる。

 

『小さい方の人間にも言っておいてくれ!!すまないと!!』

「分かったよ、パピルス。……じゃあね」

『あぁ、またな!!』

 

そう言って、電話を切る。………心配させちゃってたなぁ……

 

「貸してくれてありがとう」

「ううん、どういたしまして。それで、なんの話だったの?」

「うーんとね、怪我とかしてないかって話。あと、フリスクにごめんねって謝ってたよ」

 

携帯を返しながらそう言うと、フリスクは少し悲しそうな顔をした。

 

「……謝るのはいいんだけど、怪我のこと、ホントのこと言わなくて良かったの?」

「うん、これ以上心配させたくないしね」

 

笑いながらそう言えば、フリスクは少し間を開けてからそっか、と言って頷いた。


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