守りたいもの   作:行方不明者X

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58.Waterfall探索⑩

【Lily】

 

次は………あ、モンスターキッド君が壁の上に押し上げてくれるところか。

 

歩いた先にあった洞窟に入りながらそう思い出し、目の前の崖をよく観察する。…………私ならなんとか登れそうだけど……フリスクにはちょっと無理がありそうだな……

そんな事を思いながら、傘を畳んで二人にかからないように振って水滴を飛ばし、傘立ての中に傘を戻す。……さて、どうすっかな。

 

「おい、このガケ、すげー険しいな……」

「そうだね……」

 

私と同じく傘を傘立てに戻したフリスクがモンスターキッド君に話しかけると、崖を見ながらモンスターキッド君がそう言った。

 

「……なぁ、アンダインに会いたいんじゃないか……?」

 

モンスターキッド君は崖を見てからフリスクにそう訊ねた。その質問に、フリスクは少し間を開けてから頷く。

 

「そっか、じゃあ肩に乗れよ」

 

そう言ってモンスターキッド君がしゃがもうとするのを慌てたようにしながらフリスクは止める。そして、パクパクと口を動かした。

 

「……。服ぐらいいいよ。おいらしょっちゅう転んで汚しちゃうしさ。ほら、乗れよ」

 

フリスクにそう言ってモンスターキッド君はしゃがむ。それを見てフリスクは困ったのか、助けを求めるように私を見る。

 

「……うーん、じゃあさ、一回退いてくれないかな?私はその崖登れそうだし、上から引っ張り上げるからさ、そうすれば君の負担も少ないでしょ?」

「おう、いいぜ!」

 

モンスターキッド君の優しさを踏みにじる訳にもいかず、私は負担を減らす案を口にし、一旦モンスターキッド君を崖の前から退かす。そして崖の岩に手をかけ、一気に登る。……うん、ロッククライミング(公園とかによくあるやつな)、やっといて良かったわ。

 

「いいよー」

 

崖を登りきり、フリスクを引っ張りあげられるようにかがみ、手を伸ばす。フリスクは戸惑ったような顔をしてから、モンスターキッド君の肩に乗り、私に手を伸ばした。

 

「よいせっ…と!」

 

こちらに伸ばされたフリスクの腕を掴み、最後は抱き締めるようにして引っ張りあげ、崖の上にそっと降ろす。すると、フリスクは心配そうに崖の下に残されたモンスターキッド君を見た。

 

「まっ、先にいけよ。気にすんな、抜け道探しはトクイなんだ!」

 

フリスクの心配を笑い飛ばすようにモンスターキッド君はフリスクに笑いかけ、走っていこうとする。そして案の定ぬかるみに足をとられてスッ転んだ。今のは痛い。だがすぐに立ち上がり、今度はちゃんと走っていく。……あの子、大人になったら絶対モテるよな……

 

「………さてと、行こうか」

 

モンスターキッド君が見えなくなるまで見送り、私はフリスクにそう呼び掛ける。

 

「……うん」

 

フリスクは私を見上げて頷いた。それを見て、私はフリスクの手を繋いで奥に歩を進めた。

 

――――――――――――――――――――

 

次は……セーブ部屋か。

 

道なりに進んで行った先に薄く光が見え、そう判断する。フリスクも決意の光が見えたらしく、光に駆け寄っていった。

フリスクが光に手を翳してセーブしている間に、私は壁にあった石板に目を通す。………まだ新しい方だな、これも。

 

『人間はモンスターの力を恐れて、宣戦布告した。

奇襲を仕掛けてきたのだ。慈悲など無かった。』

 

私が石板を読み終わると、今度はフリスクが石板を読み始める。フリスクに場所を譲り、私は次の石板の前に移動して目を通す。

 

『もはや戦争とも呼べない状態だった。

人間たちはあまりに強く、我々はあまりに弱い。

ひとつもソウルを奪えないまま、数えきれないモンスターが塵と化していった……』

 

………博士がソウルを解析した訳じゃなさそうだな。

石板の終わりまで読み、私はさっき立てた仮説を取り消した。……じゃあ、推論を立ててそれで判断したのか…?

 

「………ひどい」

 

隣に来ていたフリスクの呟きで思考の海から自我を引き戻す。横目で見たフリスクの顔は、本当に悲しそうな顔をしていた。

 

「……そうだね。これが当時の人間がモンスターに対してやった事だ」

「………どうして、こんな事が出来たんだろう……」

 

私が肯定すると、悲しそうな顔のまま、フリスクはそう言った。

 

「…………この石板にも書いてある通り、怖かったんじゃないかな?自分たちよりも強い魔法の力を持つモンスターが」

「でも、だからって……やっぱり殺していい理由にはならないよ!!!」

 

泣きそうなフリスクの声が部屋に響く。………あぁ、いい子だなぁ、本当に。

私は感情的になって目に溜まった涙を拭うフリスクの頭を撫でる。

 

「うん、そうだね、フリスク。………その気持ちを、絶対に忘れないでね」

「………うん……」

 

私の言葉にしっかり頷いたフリスクの頭から手を離し、今度は手を繋ぐ。

 

「………いこっか」

「うん」

 

フリスクの確認を取って、私とフリスクは橋の上を歩き始める。……さて、此処からが正念場なんだよな。

――――――――――――――――――――――

 

橋の上をしばらく歩いていくと、ふと、空気がガラリと冷たく張り詰めたモノに変わる。………来たか。

 

「…………フリスク、いつでも走れるようにしておいて。嫌な予感がする」

「! うん、分かった」

 

フリスクに準備を呼び掛け、周りを注意深く観察しながら進んでいく。………今私の視点はゲームのように俯瞰じゃなくて正常。なら、探せば道がちゃんと見つかる筈だ。そう判断し、より一層注意深く観察すると………あった。あの広い広場が。

そこに行くまでのルートを目で計算し、最短はどれかを導き出す。………このルートが一番速いな。

そんな風に思案していると、

 

ぼうっ

 

「!!」

 

直ぐ目の前の橋が円形に青白く光り始める。警戒を一層強め、フリスクの手を強く繋ぎ直す。

 

「フリスク、準備はいい?」

「うん!」

 

私達の周りを囲むように青白く橋が光り始める。

 

そして、青白い光の中から、槍が勢い良く突き出した。

足元から、ビリビリと射抜かれるような殺気を感じながら、私は、

 

「走るぞ!!」

 

フリスクに呼び掛け、槍が消えた瞬間を狙って走り出した。




※これ完結するの来年になりそうですね………
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